婚約者が選んだのは私から魔力を盗んだ妹でした

今川幸乃

文字の大きさ
33 / 38

アルフの言葉

しおりを挟む
「何と言うか……色々大変だったんだね」

 二人きりになると、アルフはほっとしたような、同情するような、そんな溜め息を漏らします。

「ありがとう。おかげで父上も母上にきちんと言うべきことを言ってくれた」
「いやあ、さすがにあんな状況になってもまだ戸惑っているのはどうかと思ってしまった。でもあれは僕じゃなくても、第三者であれば誰でもそう思ったことだと思う」

 アルフは少し照れたように言いました。

「いや、そんなことはないわ! そもそもアルフ以外の第三者だったらもしあんな場面に遭遇したとしても絶対面倒事を避けてあそこまで言ってくれない! むしろアルフは何であそこまでしてくれたの? そもそも今日だっていくらリリーが帰ってくるからって別にわざわざ会いに来てくれなくても良かったのに」

 そもそもアルフとリリーは正確には婚約者ではないので、リリーが嘘をついていたことが発覚したならそっと遠ざかればいいだけです。
 そうすれば二人を婚約させようという話は自然となかったことになっていたに違いありません。

 が、私の言葉になぜかアルフは少し沈黙します。
 先ほどはあれほど勇敢に父上に食ってかかっていたというのに。

「いや、それは……」
「え、どうしたの?」
「実は、ずっとあなたのことが心配だったんだ。今回のことも、バートン伯爵はどういう風にことを穏便に収めるかしか考えていなくて、ミアさんのことは大して考えていなかっただろう? 母上とリリーは言うに及ばず、パーシーもテイラー伯爵も自分たちの名誉を保つことしか考えていない。だからせめて僕だけはミアさんのことを考えようと思って」
「一体何でそこまで?」

 確かにそこまで思ってくれていれてなければあそこまで色々してくれることはなかったでしょう。
 とはいえなぜそこまでしてくれたのでしょうか。ただいい人というだけではなかなかそこまでにはならなかったはずです。

「僕がリリーとうまくいっていない時も、何かと相談に乗ってくれただろう? それがすごく嬉しくて、リリーと気まずくなってもミアさんと話すと不思議と気持ちが落ち着くようになっていたんだ……あっ」

 そこで不意にアルフは何かに気づいたように言葉を止めました。

「あ、すいません、気が付いたらなれなれしく話してしまっていて」
「いいの、そもそも年もほぼ同じでしょ? 私が義姉になることもなくなった訳だし、もう気を遣う必要もないわ」

 急にアルフが恐縮し始めたので逆に私は驚いてしまいます。
 というか、今日のアルフは態度が堂々としすぎていて、私に対する口調が変わっていたのに何の違和感もなかったです。
 私の言葉にアルフはほっとしたように息を吐きます。

「そ、そうか、それは良かった」
「ええ、それにアルフがそう言ってくれて嬉しかった。これまで自分が抱えている問題は全部自分で何とかしなきゃって無意識に思っていたから……」
「大変だったね。これからは少しでいいから僕を頼ってくれ」

 そう言ってくるアルフは少しの間でまるで別人のように頼もしくなっていました。
 そんな彼の姿を見て私は胸をなでおろすとともに、胸が熱くなるのを感じるのでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】姉は全てを持っていくから、私は生贄を選びます

かずきりり
恋愛
もう、うんざりだ。 そこに私の意思なんてなくて。 発狂して叫ぶ姉に見向きもしないで、私は家を出る。 貴女に悪意がないのは十分理解しているが、受け取る私は不愉快で仕方なかった。 善意で施していると思っているから、いくら止めて欲しいと言っても聞き入れてもらえない。 聞き入れてもらえないなら、私の存在なんて無いも同然のようにしか思えなかった。 ————貴方たちに私の声は聞こえていますか? ------------------------------  ※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています

〈完結〉ここは私のお家です。出て行くのはそちらでしょう。

江戸川ばた散歩
恋愛
「私」マニュレット・マゴベイド男爵令嬢は、男爵家の婿である父から追い出される。 そもそも男爵の娘であった母の婿であった父は結婚後ほとんど寄りつかず、愛人のもとに行っており、マニュレットと同じ歳のアリシアという娘を儲けていた。 母の死後、屋根裏部屋に住まわされ、使用人の暮らしを余儀なくされていたマニュレット。 アリシアの社交界デビューのためのドレスの仕上げで起こった事故をきっかけに、責任を押しつけられ、ついに父親から家を追い出される。 だがそれが、この「館」を母親から受け継いだマニュレットの反逆のはじまりだった。

【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜

よどら文鳥
恋愛
 伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。  二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。  だがある日。  王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。  ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。  レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。  ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。  もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。  そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。  だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。  それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……? ※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。 ※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)

妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません

編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。 最後に取ったのは婚約者でした。 ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。

妹が私の婚約者を奪った癖に、返したいと言ってきたので断った

ルイス
恋愛
伯爵令嬢のファラ・イグリオは19歳の誕生日に侯爵との婚約が決定した。 昔からひたむきに続けていた貴族令嬢としての努力が報われた感じだ。 しかし突然、妹のシェリーによって奪われてしまう。 両親もシェリーを優先する始末で、ファラの婚約は解消されてしまった。 「お前はお姉さんなのだから、我慢できるだろう? お前なら他にも良い相手がきっと見つかるさ」 父親からの無常な一言にファラは愕然としてしまう。彼女は幼少の頃から自分の願いが聞き届けられた ことなど1つもなかった。努力はきっと報われる……そう信じて頑張って来たが、今回の件で心が折れそうになっていた。 だが、ファラの努力を知っていた幼馴染の公爵令息に助けられることになる。妹のシェリーは侯爵との婚約が思っていたのと違うということで、返したいと言って来るが……はあ? もう遅いわよ。

妹と王子殿下は両想いのようなので、私は身を引かせてもらいます。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラナシアは、第三王子との婚約を喜んでいた。 民を重んじるというラナシアの考えに彼は同調しており、良き夫婦になれると彼女は考えていたのだ。 しかしその期待は、呆気なく裏切られることになった。 第三王子は心の中では民を見下しており、ラナシアの妹と結託して侯爵家を手に入れようとしていたのである。 婚約者の本性を知ったラナシアは、二人の計画を止めるべく行動を開始した。 そこで彼女は、公爵と平民との間にできた妾の子の公爵令息ジオルトと出会う。 その出自故に第三王子と対立している彼は、ラナシアに協力を申し出てきた。 半ば強引なその申し出をラナシアが受け入れたことで、二人は協力関係となる。 二人は王家や公爵家、侯爵家の協力を取り付けながら、着々と準備を進めた。 その結果、妹と第三王子が計画を実行するよりも前に、ラナシアとジオルトの作戦が始まったのだった。

私は家のことにはもう関わりませんから、どうか可愛い妹の面倒を見てあげてください。

木山楽斗
恋愛
侯爵家の令嬢であるアルティアは、家で冷遇されていた。 彼女の父親は、妾とその娘である妹に熱を上げており、アルティアのことは邪魔とさえ思っていたのである。 しかし妾の子である妹を婿に迎える立場にすることは、父親も躊躇っていた。周囲からの体裁を気にした結果、アルティアがその立場となったのだ。 だが、彼女は婚約者から拒絶されることになった。彼曰くアルティアは面白味がなく、多少わがままな妹の方が可愛げがあるそうなのだ。 父親もその判断を支持したことによって、アルティアは家に居場所がないことを悟った。 そこで彼女は、母親が懇意にしている伯爵家を頼り、新たな生活をすることを選んだ。それはアルティアにとって、悪いことという訳ではなかった。家の呪縛から解放された彼女は、伸び伸びと暮らすことにするのだった。 程なくして彼女の元に、婚約者が訪ねて来た。 彼はアルティアの妹のわがままさに辟易としており、さらには社交界において侯爵家が厳しい立場となったことを伝えてきた。妾の子であるということを差し引いても、甘やかされて育ってきた妹の評価というものは、高いものではなかったのだ。 戻って来て欲しいと懇願する婚約者だったが、アルティアはそれを拒絶する。 彼女にとって、婚約者も侯爵家も既に助ける義理はないものだったのだ。

とある侯爵令息の婚約と結婚

ふじよし
恋愛
 ノーリッシュ侯爵の令息ダニエルはリグリー伯爵の令嬢アイリスと婚約していた。けれど彼は婚約から半年、アイリスの義妹カレンと婚約することに。社交界では格好の噂になっている。  今回のノーリッシュ侯爵とリグリー伯爵の縁を結ぶための結婚だった。政略としては婚約者が姉妹で入れ替わることに問題はないだろうけれど……

処理中です...