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互いの事情
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アルフの気持ちを知った私はそれまでが嘘のように心が軽くなりました。
もうこれまでのように何事も一人で解決しようとしなくても良いのです。
そこでふと私は先ほどまで話していたためか、喉が渇いているのを感じます。きっとアルフも同じでしょう。
「そうだ、何か来てもらってからずっとばたばたしてたからお茶でも淹れるね」
「ありがとう」
そう言って私はキッチンに向かうと、紅茶とありあわせではありますが、焼き菓子を持って部屋に戻りました。
温かい紅茶を淹れてお菓子が軽くお腹に入ると、先ほどの疲れが少しとれたような気がします。
「そう言えば母上はなぜあそこまでリリーばかり可愛がっていたんだ?」
「どうだろう。正直なところはよく分からないけど、多分私よりリリーの方が母上に似ているからじゃない?」
「ああ、言われてみればそうかもしれないな」
アルフは少し驚きます。
「でも、そんなことで? それにリリーが可愛いとしてもミアにそこまで辛く当たるだろうか?」
「前に精霊の話をした時、リリーが私をかばって怪我したって言ったでしょう? それまでは母上も私のことをそこまで嫌ってはいなかったんだけど、私のせいで自分の好きなリリーが傷ついたと思って今みたいな極端な考えになったんじゃないかって思ってる」
そんな私の言葉を聞いてアルフは首をかしげます。
「……なるほど。でもリリーのしていたことを考えるとあまりミアをかばって自分が怪我するタイプには見えないけど」
「だから、多分だけどリリーはただ怪我したのを母上に気に入られるために私をかばったことにしたんじゃないのかな」
「確かにリリーならそんなこともやりかねないな」
私の言葉にアルフは納得したように頷いたのでした。
「そう言えばずっと私の話ばかりだけど、アルフはどうなの?」
「僕か? そんな他人に話すほど特別の話もないけど、僕の家、ノーランド侯爵家は侯爵家とは名ばかりの貧乏貴族なんだ」
「え、そうだったの!?」
これまであまり深い付き合いはなかったけど、とてもそうは見えませんでした。
「ああ、そうだ。ここ最近領内の産業がうまくいかなくて、急に税収が減ってしまって。もちろん体面に関わるから気づかれないように気をつけてはいたからね。多分僕がリリーの相手にされそうになっていたのは家柄がいいからなんだけど、本来なら僕は同じ侯爵家の令嬢と婚約するのが普通だろう? でもそれとなくうちが貧乏であることを気づかれて避けられていたらしい」
「そうだったのね」
最初はアルフはどこか自信なさげな様子でした。あれはリリーとうまくいってないからだと思っていましたが、実際は家の窮状が原因だったのかもしれません。
「そんな時たまたまこの家から声がかかって、失礼ながら父上は格下の家でもいいと思ったらしい。しかも君がパーシーと婚約していたからテイラー伯爵の事も密かにあてにしていたようだ」
「なるほど……」
アルフはアルフで色々と苦労していたようです。私は助けられるばかりで全然気がつきませんでした。これから恩返しが出来るといいのですが。
そんなことを話していると、ドアがノックされます。
「誰でしょうか?」
「わしだ。馬車の用意が出来たが、最後に二人の見送りをするか?したくないならそれでもいいが」
そんな父上の声が聞こえてきました。
もうこれまでのように何事も一人で解決しようとしなくても良いのです。
そこでふと私は先ほどまで話していたためか、喉が渇いているのを感じます。きっとアルフも同じでしょう。
「そうだ、何か来てもらってからずっとばたばたしてたからお茶でも淹れるね」
「ありがとう」
そう言って私はキッチンに向かうと、紅茶とありあわせではありますが、焼き菓子を持って部屋に戻りました。
温かい紅茶を淹れてお菓子が軽くお腹に入ると、先ほどの疲れが少しとれたような気がします。
「そう言えば母上はなぜあそこまでリリーばかり可愛がっていたんだ?」
「どうだろう。正直なところはよく分からないけど、多分私よりリリーの方が母上に似ているからじゃない?」
「ああ、言われてみればそうかもしれないな」
アルフは少し驚きます。
「でも、そんなことで? それにリリーが可愛いとしてもミアにそこまで辛く当たるだろうか?」
「前に精霊の話をした時、リリーが私をかばって怪我したって言ったでしょう? それまでは母上も私のことをそこまで嫌ってはいなかったんだけど、私のせいで自分の好きなリリーが傷ついたと思って今みたいな極端な考えになったんじゃないかって思ってる」
そんな私の言葉を聞いてアルフは首をかしげます。
「……なるほど。でもリリーのしていたことを考えるとあまりミアをかばって自分が怪我するタイプには見えないけど」
「だから、多分だけどリリーはただ怪我したのを母上に気に入られるために私をかばったことにしたんじゃないのかな」
「確かにリリーならそんなこともやりかねないな」
私の言葉にアルフは納得したように頷いたのでした。
「そう言えばずっと私の話ばかりだけど、アルフはどうなの?」
「僕か? そんな他人に話すほど特別の話もないけど、僕の家、ノーランド侯爵家は侯爵家とは名ばかりの貧乏貴族なんだ」
「え、そうだったの!?」
これまであまり深い付き合いはなかったけど、とてもそうは見えませんでした。
「ああ、そうだ。ここ最近領内の産業がうまくいかなくて、急に税収が減ってしまって。もちろん体面に関わるから気づかれないように気をつけてはいたからね。多分僕がリリーの相手にされそうになっていたのは家柄がいいからなんだけど、本来なら僕は同じ侯爵家の令嬢と婚約するのが普通だろう? でもそれとなくうちが貧乏であることを気づかれて避けられていたらしい」
「そうだったのね」
最初はアルフはどこか自信なさげな様子でした。あれはリリーとうまくいってないからだと思っていましたが、実際は家の窮状が原因だったのかもしれません。
「そんな時たまたまこの家から声がかかって、失礼ながら父上は格下の家でもいいと思ったらしい。しかも君がパーシーと婚約していたからテイラー伯爵の事も密かにあてにしていたようだ」
「なるほど……」
アルフはアルフで色々と苦労していたようです。私は助けられるばかりで全然気がつきませんでした。これから恩返しが出来るといいのですが。
そんなことを話していると、ドアがノックされます。
「誰でしょうか?」
「わしだ。馬車の用意が出来たが、最後に二人の見送りをするか?したくないならそれでもいいが」
そんな父上の声が聞こえてきました。
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