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6. 新たなる提案
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「そうだなぁ…君にとってもメリットがある話なんだが…僕ではなくて、違う人に会って欲しいんだ。彼なら充分紹介するに値する人物であるし、何より君にとってもメリットになると思うよ。」
そう言ったミロシュに、ナターシャにはまたもや人に会わないといけないのかと思った。
ナターシャは、販路拡大を目指して来たが、それは商人組合などに登録し、一般庶民に購入して貰えないかと思ったのだ。高くて庶民には購入して貰えないなら、騎士団など、そういう団体に売り込めたらとは思ったがいきなり公爵家の人達と対峙するなんて思ってもみなかった。それに加えて、公爵家のミロシュから〝紹介に値する人物〟と言わせた人なんて、またも緊張するのではないかと思ったのだ。
「あの…それは遠慮出来ませんか?」
そう口走ってしまうほど、ナターシャは、避けたいと思っていた。
「うーん、そうだね。どうしてもと言うなら止めておこう。けれど、悪い話ではないと思うんだ。顔を繋いでおく事が出来るならしておいて損はないよ。そうだ!君の絹のハンカチを売り込めばいい。販売をしに隣国から来た、で合っているかな?」
そう言われ、ナターシャは確かにそうだと思った。販路拡大をしに来たのだから、会える人には会いハンカチを見せる事に意義があるのだから。ナターシャだって〝こんな上質な絹は他では見ない〟と思っているから、うちのハンカチを見せれば必ず売れると確信して隣国までやって来たのだ。
ナターシャ自身、高位貴族であるのに偉ぶらず、むしろそういう人達と接するのを避けてしまうのは伸び伸びと育てられた家庭環境にある。
高位貴族であればあるほど、〝こうあるべき〟〝こうしなければならない〟と人物像を押し付けられる。
だが、テイラー侯爵家はそういう事をしてこなかった。それは両親の教育方針といえる。まして、ナターシャは侯爵家を継ぐわけでもなく、悠々自適な三番目の娘として育てられた。あと一年で社交界デビューも出来る年齢になるが、自分はしなくていいとさえ思っている。
でも、ここで逃してしまってはせっかくの販路拡大のチャンスも逃してしまうかもしれない。
高位貴族の人達と会うのは緊張するから嫌だという気持ちと、ハンカチを他の人にも購入してもらいたいという気持ちで迷う。ーーー結果、出た言葉は。
「分かりました。ではその違う人に会わせて下さい。ハンカチを見せる機会を与えて下さるという事でよろしいのですよね?お願い致します。」
「ハハハ。まぁ、口実はそれで行こう。懸命な判断だよ。そうすれば、母の言う〝お礼をする〟事にもなるだろうからね。じゃあ、母が言っていた、〝僕達の結婚〟の話は無かった事にしてもいいかな?」
「はい、もちろんです。私には寝耳に水なお話でしたし、何より身分が釣り合いませんから。」
「いや、君、侯爵家だろう?充分釣り合うがね。ただ、残念ながら僕には、付き合っている彼女がいるんだ。まだ母には紹介してないがね。」
「そうなのですね。紹介されないのですか?イェレナ様のあの感じでしたらすぐにでも結婚出来そうでしたけれど。」
「いや…あれで自分の気に入った子にはあんな感じなんだが、気に入らないとかなり手厳しいからね。頃合いを見ているんだよ。」
「そうでしたか…。上手くご結婚出来るとよろしいですね。」
「…そうだね。ありがとう。頑張るよ。」
ミロシュは、力なくそう言った。父からは許可はすでに出ている。しかし、気が強い母にどう言えば彼女と結婚出来るのか、そう悩んでいるのだった。
ナターシャは、始めはどうなる事かと思ったが、本来の目的である販路拡大に一歩近づけたかと思うと、とりあえずはこれで良かったのだと安堵した。紹介される人物の事は、ひとまず考えない事にしたのだった。
そう言ったミロシュに、ナターシャにはまたもや人に会わないといけないのかと思った。
ナターシャは、販路拡大を目指して来たが、それは商人組合などに登録し、一般庶民に購入して貰えないかと思ったのだ。高くて庶民には購入して貰えないなら、騎士団など、そういう団体に売り込めたらとは思ったがいきなり公爵家の人達と対峙するなんて思ってもみなかった。それに加えて、公爵家のミロシュから〝紹介に値する人物〟と言わせた人なんて、またも緊張するのではないかと思ったのだ。
「あの…それは遠慮出来ませんか?」
そう口走ってしまうほど、ナターシャは、避けたいと思っていた。
「うーん、そうだね。どうしてもと言うなら止めておこう。けれど、悪い話ではないと思うんだ。顔を繋いでおく事が出来るならしておいて損はないよ。そうだ!君の絹のハンカチを売り込めばいい。販売をしに隣国から来た、で合っているかな?」
そう言われ、ナターシャは確かにそうだと思った。販路拡大をしに来たのだから、会える人には会いハンカチを見せる事に意義があるのだから。ナターシャだって〝こんな上質な絹は他では見ない〟と思っているから、うちのハンカチを見せれば必ず売れると確信して隣国までやって来たのだ。
ナターシャ自身、高位貴族であるのに偉ぶらず、むしろそういう人達と接するのを避けてしまうのは伸び伸びと育てられた家庭環境にある。
高位貴族であればあるほど、〝こうあるべき〟〝こうしなければならない〟と人物像を押し付けられる。
だが、テイラー侯爵家はそういう事をしてこなかった。それは両親の教育方針といえる。まして、ナターシャは侯爵家を継ぐわけでもなく、悠々自適な三番目の娘として育てられた。あと一年で社交界デビューも出来る年齢になるが、自分はしなくていいとさえ思っている。
でも、ここで逃してしまってはせっかくの販路拡大のチャンスも逃してしまうかもしれない。
高位貴族の人達と会うのは緊張するから嫌だという気持ちと、ハンカチを他の人にも購入してもらいたいという気持ちで迷う。ーーー結果、出た言葉は。
「分かりました。ではその違う人に会わせて下さい。ハンカチを見せる機会を与えて下さるという事でよろしいのですよね?お願い致します。」
「ハハハ。まぁ、口実はそれで行こう。懸命な判断だよ。そうすれば、母の言う〝お礼をする〟事にもなるだろうからね。じゃあ、母が言っていた、〝僕達の結婚〟の話は無かった事にしてもいいかな?」
「はい、もちろんです。私には寝耳に水なお話でしたし、何より身分が釣り合いませんから。」
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