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13. 午後
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ラドとの食事は楽しかった。二人だと緊張するかと思ったが、意外にも様々な話をしてくれた。
ナターシャが上に兄と姉がいると知ると、『俺は一人だから羨ましい』と言っていた。だから気心知れた人とは、要らぬ事まで言い合うのだと言っていた。ミロシュとも同じ年齢で、幼馴染みだと言っていた。
この国は刺繍が盛んで、特にアレクサンダー家の刺繍は繊細で真似できないと言っていた。イェレナとは結局ハンカチの話が出来なかったが、きっとイェレナからも話が来るだろうとラドは言っていた。あのハンカチに刺繍がしたいと言ってくるのではないかと。
ナターシャは、イェレナとハンカチの話をしたいと思っていたので本当にそうなったらいいなと思っていた。ただ、イェレナはミロシュと話していた時に思ったが、少々話を聞かない事もあるかもしれないと感じたので、上手く話が出来るかは疑問に思った。
「午後は、騎士団の演習なんだ。演習場所はナターシャの部屋からもすぐに来れる広場だから…な。」
最後にそう言われたので、ナターシャは、
「…そうですか。怪我をされないよう、お気を付け下さいね。」
と返事をすると、
「あ、あぁ…ありがとう。」
と、言っていた。
ナターシャとキャリーが部屋に戻ると、
「ナターシャ様、騎士団の演習を見られますか?」
と聞いた。
「え!?どうして?」
と、ナターシャは驚いてキャリーへと聞いた。
ナターシャは、先ほど別れ際にラドが『ナターシャの部屋からすぐに来れる場所で演習する』と聞いて、反芻していたから思っている事が分かったのかとびっくりしたのだ。
しかしそうとは知らず、それを見たキャリーは、はぁー、と大きなため息を付いてナターシャに告げる。
「あれはどう見ても、ナターシャ様に見に来て欲しいとラド様は言われていたようにお見受けしましたよ。予定が無いのであれば、見に行くのも、このアレクシナツニーシ国を知る良い機会かもしれませんよ。」
「え!ラド様はそんな風に言われてたかしら?ま、まぁ、確かにこの部屋から近いとは言われていたけれど…きっと、近くだから声が煩かったらごめんという意味だと思ったわ。それに、確かに隣国を知りたいと思ったけれど……私は、王都の街並みを歩きたかったんだけどなぁ…。」
「王都の街並みは、それこそ私と二人だけでは無理ですよ。」
「分かってるわよ……まあ、ハンカチを購入するって言ってくれたし、見に行ってみましょ!あとで、庭に出てもいいか聞いてみるのと、それから、書庫か図書館があれば行かせてもらいたいわよね!でも、余所者の私が入っては行けないのならダメでしょうけれど。」
「…本当にそう思って、言われてます?」
「どういう事?」
「もう、ここが王宮だと本当は、認めておられますよね?それに見に行きたいなら素直に言っていいのですよ?」
キャリーは、わざわざ理由を付けて言った為に、ジロリとナターシャを見遣る。
キャリーが何故そのように言うか…午前中に、王都の宿屋に荷物を取りに戻る時、馬車が置いてある場所へ連れて行かれる途中でこの建物を少しだけ見る事が出来た。
また、馬車の小窓からも少しだけ外を見たのだ。その時に、この建物はかなり広く大きく、高くそびえ立つ塔も幾つか見えたのだ。
それを見て二人で、『すごい!』とはしゃぎ合っていたのだ。
ナターシャも、ラドとの食事の時間とても楽しそうに話していた。だいぶ打ち解けたと言っていいだろうと。だから、もう少し素直に自分の気持ちを言ってくれてもいいのに、とキャリーは歯痒く思ったのだ。
「キャリー………そうね。頭の隅では見たままを理解しようとしているわ。けれど、思い返せばミロシュ様もラド様も、ここが王宮とは言っていないのよ。」
「だから違うと思いたいのですか?」
「それもあるけど…でも言われないなら、敢えて口に出さなくてもいいでしょう?」
「まぁ、それは…。」
「それにね、私、だからこそどうすればいいのか戸惑っているのよ。ミロシュ様は、アレクサンダー公爵家の人だって分かっているけれど、ラド様はどこの人かははっきり紹介されていないもの。でも、それでも話し方は砕けていいと言って下さったし、作法までもよ?もし本当に思っている事が合っていたら?エドが言ったように。」
「貴族より上、と?」
「そう。そんな人と一緒に食事やなんかしていいのかって迷ったのよ?でも、ラド様は当然のように案内して下さるし…だからもうなるようにしかならないでしょう?」
「…そうでございますね。」
「けどね、キャリー。距離を置いた方がいいのかも迷ってるの…」
「騎士団演習の見学ですね?では、無しにして、部屋で一旦ゆっくりしましょう。そのように…」
「待って!…本音を言うと、見たいわ。私は気付かなかったけれど、誘ってくれたようにキャリーは思ったのでしょう?断ったら、悪いわよね?」
ナターシャはそう言ったが、本当は『誘われたかもしれない』位は思った。だが、『そんな事ない。部屋が近いから賑やかくなるかもしれないよ、と言いたかったのだ』と思い込む事にしたのだ。けれど、キャリーも誘われたのだと言ったので、それを口実にして見に行くのもいいかなとも思ったのだ。
ナターシャ自身、何故そう思うのかはいまいち良く分かっていないが、演習の見学は無しとキャリーに言われると否定したくなったのだ。
「そうですね。ナターシャ様がしたいようになさればいいと思いますよ。…服を変えますか?」
「ええそうね。キャリー、お願い出来る?」
キャリーは、ラドは明らかにどうにかナターシャを国へ帰らないように画策していると思ったし、意外と分かりやすいんだなと思っていた。だからこそ、ナターシャも正直になればいいのにと思って言葉を掛けたのだ。
けれどナターシャの方は、意外にも心でいろいろと葛藤をしているらしく、思い悩んでいるようだと感じた。
だが、服の着替えを提案すると、無意識なのだろう、弾けんばかりの嬉しそうな表情をしているナターシャを見て、
(あぁ、難しく考えたりしないで、今のありのままの気持ちが答えなんじゃないかしら。早く自分の想いに気付くといいですね。)
と微笑ましく思うキャリーなのであった。
ナターシャが上に兄と姉がいると知ると、『俺は一人だから羨ましい』と言っていた。だから気心知れた人とは、要らぬ事まで言い合うのだと言っていた。ミロシュとも同じ年齢で、幼馴染みだと言っていた。
この国は刺繍が盛んで、特にアレクサンダー家の刺繍は繊細で真似できないと言っていた。イェレナとは結局ハンカチの話が出来なかったが、きっとイェレナからも話が来るだろうとラドは言っていた。あのハンカチに刺繍がしたいと言ってくるのではないかと。
ナターシャは、イェレナとハンカチの話をしたいと思っていたので本当にそうなったらいいなと思っていた。ただ、イェレナはミロシュと話していた時に思ったが、少々話を聞かない事もあるかもしれないと感じたので、上手く話が出来るかは疑問に思った。
「午後は、騎士団の演習なんだ。演習場所はナターシャの部屋からもすぐに来れる広場だから…な。」
最後にそう言われたので、ナターシャは、
「…そうですか。怪我をされないよう、お気を付け下さいね。」
と返事をすると、
「あ、あぁ…ありがとう。」
と、言っていた。
ナターシャとキャリーが部屋に戻ると、
「ナターシャ様、騎士団の演習を見られますか?」
と聞いた。
「え!?どうして?」
と、ナターシャは驚いてキャリーへと聞いた。
ナターシャは、先ほど別れ際にラドが『ナターシャの部屋からすぐに来れる場所で演習する』と聞いて、反芻していたから思っている事が分かったのかとびっくりしたのだ。
しかしそうとは知らず、それを見たキャリーは、はぁー、と大きなため息を付いてナターシャに告げる。
「あれはどう見ても、ナターシャ様に見に来て欲しいとラド様は言われていたようにお見受けしましたよ。予定が無いのであれば、見に行くのも、このアレクシナツニーシ国を知る良い機会かもしれませんよ。」
「え!ラド様はそんな風に言われてたかしら?ま、まぁ、確かにこの部屋から近いとは言われていたけれど…きっと、近くだから声が煩かったらごめんという意味だと思ったわ。それに、確かに隣国を知りたいと思ったけれど……私は、王都の街並みを歩きたかったんだけどなぁ…。」
「王都の街並みは、それこそ私と二人だけでは無理ですよ。」
「分かってるわよ……まあ、ハンカチを購入するって言ってくれたし、見に行ってみましょ!あとで、庭に出てもいいか聞いてみるのと、それから、書庫か図書館があれば行かせてもらいたいわよね!でも、余所者の私が入っては行けないのならダメでしょうけれど。」
「…本当にそう思って、言われてます?」
「どういう事?」
「もう、ここが王宮だと本当は、認めておられますよね?それに見に行きたいなら素直に言っていいのですよ?」
キャリーは、わざわざ理由を付けて言った為に、ジロリとナターシャを見遣る。
キャリーが何故そのように言うか…午前中に、王都の宿屋に荷物を取りに戻る時、馬車が置いてある場所へ連れて行かれる途中でこの建物を少しだけ見る事が出来た。
また、馬車の小窓からも少しだけ外を見たのだ。その時に、この建物はかなり広く大きく、高くそびえ立つ塔も幾つか見えたのだ。
それを見て二人で、『すごい!』とはしゃぎ合っていたのだ。
ナターシャも、ラドとの食事の時間とても楽しそうに話していた。だいぶ打ち解けたと言っていいだろうと。だから、もう少し素直に自分の気持ちを言ってくれてもいいのに、とキャリーは歯痒く思ったのだ。
「キャリー………そうね。頭の隅では見たままを理解しようとしているわ。けれど、思い返せばミロシュ様もラド様も、ここが王宮とは言っていないのよ。」
「だから違うと思いたいのですか?」
「それもあるけど…でも言われないなら、敢えて口に出さなくてもいいでしょう?」
「まぁ、それは…。」
「それにね、私、だからこそどうすればいいのか戸惑っているのよ。ミロシュ様は、アレクサンダー公爵家の人だって分かっているけれど、ラド様はどこの人かははっきり紹介されていないもの。でも、それでも話し方は砕けていいと言って下さったし、作法までもよ?もし本当に思っている事が合っていたら?エドが言ったように。」
「貴族より上、と?」
「そう。そんな人と一緒に食事やなんかしていいのかって迷ったのよ?でも、ラド様は当然のように案内して下さるし…だからもうなるようにしかならないでしょう?」
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「けどね、キャリー。距離を置いた方がいいのかも迷ってるの…」
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「そうですね。ナターシャ様がしたいようになさればいいと思いますよ。…服を変えますか?」
「ええそうね。キャリー、お願い出来る?」
キャリーは、ラドは明らかにどうにかナターシャを国へ帰らないように画策していると思ったし、意外と分かりやすいんだなと思っていた。だからこそ、ナターシャも正直になればいいのにと思って言葉を掛けたのだ。
けれどナターシャの方は、意外にも心でいろいろと葛藤をしているらしく、思い悩んでいるようだと感じた。
だが、服の着替えを提案すると、無意識なのだろう、弾けんばかりの嬉しそうな表情をしているナターシャを見て、
(あぁ、難しく考えたりしないで、今のありのままの気持ちが答えなんじゃないかしら。早く自分の想いに気付くといいですね。)
と微笑ましく思うキャリーなのであった。
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