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20. 結婚式
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「ナターシャ…!あぁ本当に素敵よ!もう!私より先に結婚するなんて、本当に驚いたわ!」
そう言葉を発したのは、ナターシャの姉ジンジャー。ナターシャより六歳年上の二十一歳だが、未だに結婚の相手が決まってはいない。領地経営を手伝っている今が楽しいと言っているからだ。
隣には、兄ジョニーもいる。
ラドがナターシャへと求婚した日から三ヶ月が経ち、今日は、結婚式当日だ。
以前と変わらないナターシャのあてがわれた部屋に、ジンジャーとジョニーが顔を見に来た。
二人は、両親と共に結婚式参列の為にアレクシナツニーシ国に昨日到着した。その際前々から幾度も、ラドが王宮に泊まるよう促したが、頑なに父フォルスが拒み、ヴェルケホテルに滞在している。
あれから、ジョニーはテイラー侯爵家の領主代理として、王族相手と、アレクサンダー公爵家、更には騎士団と契約を交わし、ホクホク顔だった。ただ、さすがに一気に量は増やせないと、納期は出来た順に、という確約を取り付けた。
その間二週間程で一度帰って行った。父フォルスに報告をし、今後の方針を決める為だ。
ラドとナターシャが初対面の時のハンカチは、結局ナターシャの贈り物という事になった。
金額を付ける段階で、『ナターシャと出会えた記念という、付加価値が付いた』とかで破格の値段を払うとラドが言ったからだ。しかしそれではナターシャが納得せず、『対価という言葉を知らないの?それこそ身分不相応だわ!商品をちゃんと見てくれないならもう知らない!』と怒り出したのだ。ナターシャはウェーバー産の絹の事となると、〝スイッチ〟が入ってしまうのだ。
これにはラドがかなり驚き、『す、済まない…悪気があったわけではないんだ。ではナターシャが金額を付けてくれるか。』と焦りながら言うと、『そう……じゃあ、これは記念として贈り物にするわ!貢ぎ物、ではないわよ?出会えた記念なら、そうするべきよね?』とナターシャがにっこりとして答えた。ラドは機嫌が直ったと安堵して『ナターシャがそれでいいならそうしよう!』と胸をなで下ろしながら答えたのだった。
これの出来事を知った者達は、『あの無愛想な王太子が尻に敷かれている…』と囁いた。
ラドは、気持ちが通じ合ってすぐに父ドラガン国王に報告。その後主要な役人達を集め、未来の王妃となる人を決めたと報告した。
初めこそ反発が出たが、近頃のラドを間近で見ている者は、ラドの雰囲気が柔らかくなったのを感じていて賛成をする者が多かった。
反発に対しては、ラドが『早く結婚しろと言っていたのは何処の誰だ!?俺が決めた!だからと言って我が国を蔑ろにしているわけではない!………どうか、皆の力が必要なんだ。お願いだ、彼女と結婚させてくれ!』と怒りに任せて早口で言ったが途中冷静になり、なんと皆に頭を下げたのだった。それには重鎮たちもそれぞれ顔を見合わせ納得した。
そうと決まれば、やっと決めてくれたんだからと、ラドの早く結婚したいという意思を尊重し、心変わりされては大変だと三ヶ月後でならという結論に至った。
ラドが二十五歳になり、早く跡継ぎを、と思っていた役人達は皆一様にホッと胸をなで下ろした。
ナターシャへの王太子妃教育も、立ち振る舞いや礼儀作法はそこまでやる必要が無かった。さすが侯爵家、今まで学んできたことで充分通用するものだったのだ。あとは国の歴史や伝統、貴族の事を学んだり、王太子妃の仕事を学ぶ位だったのも幸いして、無事に三ヶ月後に結婚が出来る事となった。
ウェディングドレスは、もちろんウェーバー産の絹糸で作られた最高級品だ。三ヶ月で良く出来たと思ったら、ナターシャの母アンリエッタが準備をしていたのだ。自分も結婚が早かったから、いつ出来てもいいように、と。
「ナターシャ、よく似合っているよ。」
ジンジャーの隣にいるナターシャの兄ジョニーもそう声を掛ける。
今日は、ナターシャの父と母もこの国に来ているが、ここには来ず、ヴェルケホテルから教会にそのまま向かうそうだ。ナターシャに直接声を掛けると、悲しくて涙が出てみっともないからとフォルスは会えないらしい。アンリエッタは『仕方ないわねぇ!娘の結婚式っていうのは、父親にとったら辛いものらしいものね。私のお父様もそうだったもの。』と笑っていた。
結婚式の会場は、あの日見た公園の教会。
ナターシャは、あそこで自分が結婚式を挙げるなんて思ってもみなかったが、あそこであれば、国民も見に来れるからとラドが推したのだとか。警備が大変だと、ミロシュ様に言われたとラドは笑っていた。
「さぁ、そろそろ…!!」
ラドが部屋へと入ってきた。
ナターシャは、ラドが固まっているのを見て、どうしたのかと首を傾げた。
(何か私、変かしら?)
「ナターシャ…!あぁ、綺麗過ぎて言葉がない。結婚式なんて行きたくないが…挙げなければ結婚出来ないからな…クソ!」
「ラド。そろそろ行くんだろう?ブツブツ言ってないで、しっかりやってきなよ。…妹を、よろしく頼む。」
「あぁ、ジョニー。言われなくても分かっている。さぁ、ナターシャ、行こうか。…幸せになろうな!」
ジョニーはあれから数回ラドと会い、すっかり親しくなったのだ。同じ年齢であるし、立場は違えど跡継ぎという点など、分かりあえる所もあったようですぐに打ち解けたのだった。
ラドは、ナターシャへと手を差し伸べ、エスコートをしながら、教会へと向かう馬車が待つ場所へと向かったーーー。
ナターシャは、お礼をすると言われて驚いたが、それがいつの間にか隣国で結婚する事になってしまった。
販路拡大しに来たが、それどころか人生の伴侶を得る事が出来た。
末永く、幸せは続いていくーーー。
☆★
これで、完結です。
最近挑戦していますが、この書き方(三人称?)は難しい…。それでも、最後まで読んで下さいましてありがとうございました!
しおりを挟んでくれた方、お気に入り登録してくれた方、本当にありがとうございました。励みになります♪
そう言葉を発したのは、ナターシャの姉ジンジャー。ナターシャより六歳年上の二十一歳だが、未だに結婚の相手が決まってはいない。領地経営を手伝っている今が楽しいと言っているからだ。
隣には、兄ジョニーもいる。
ラドがナターシャへと求婚した日から三ヶ月が経ち、今日は、結婚式当日だ。
以前と変わらないナターシャのあてがわれた部屋に、ジンジャーとジョニーが顔を見に来た。
二人は、両親と共に結婚式参列の為にアレクシナツニーシ国に昨日到着した。その際前々から幾度も、ラドが王宮に泊まるよう促したが、頑なに父フォルスが拒み、ヴェルケホテルに滞在している。
あれから、ジョニーはテイラー侯爵家の領主代理として、王族相手と、アレクサンダー公爵家、更には騎士団と契約を交わし、ホクホク顔だった。ただ、さすがに一気に量は増やせないと、納期は出来た順に、という確約を取り付けた。
その間二週間程で一度帰って行った。父フォルスに報告をし、今後の方針を決める為だ。
ラドとナターシャが初対面の時のハンカチは、結局ナターシャの贈り物という事になった。
金額を付ける段階で、『ナターシャと出会えた記念という、付加価値が付いた』とかで破格の値段を払うとラドが言ったからだ。しかしそれではナターシャが納得せず、『対価という言葉を知らないの?それこそ身分不相応だわ!商品をちゃんと見てくれないならもう知らない!』と怒り出したのだ。ナターシャはウェーバー産の絹の事となると、〝スイッチ〟が入ってしまうのだ。
これにはラドがかなり驚き、『す、済まない…悪気があったわけではないんだ。ではナターシャが金額を付けてくれるか。』と焦りながら言うと、『そう……じゃあ、これは記念として贈り物にするわ!貢ぎ物、ではないわよ?出会えた記念なら、そうするべきよね?』とナターシャがにっこりとして答えた。ラドは機嫌が直ったと安堵して『ナターシャがそれでいいならそうしよう!』と胸をなで下ろしながら答えたのだった。
これの出来事を知った者達は、『あの無愛想な王太子が尻に敷かれている…』と囁いた。
ラドは、気持ちが通じ合ってすぐに父ドラガン国王に報告。その後主要な役人達を集め、未来の王妃となる人を決めたと報告した。
初めこそ反発が出たが、近頃のラドを間近で見ている者は、ラドの雰囲気が柔らかくなったのを感じていて賛成をする者が多かった。
反発に対しては、ラドが『早く結婚しろと言っていたのは何処の誰だ!?俺が決めた!だからと言って我が国を蔑ろにしているわけではない!………どうか、皆の力が必要なんだ。お願いだ、彼女と結婚させてくれ!』と怒りに任せて早口で言ったが途中冷静になり、なんと皆に頭を下げたのだった。それには重鎮たちもそれぞれ顔を見合わせ納得した。
そうと決まれば、やっと決めてくれたんだからと、ラドの早く結婚したいという意思を尊重し、心変わりされては大変だと三ヶ月後でならという結論に至った。
ラドが二十五歳になり、早く跡継ぎを、と思っていた役人達は皆一様にホッと胸をなで下ろした。
ナターシャへの王太子妃教育も、立ち振る舞いや礼儀作法はそこまでやる必要が無かった。さすが侯爵家、今まで学んできたことで充分通用するものだったのだ。あとは国の歴史や伝統、貴族の事を学んだり、王太子妃の仕事を学ぶ位だったのも幸いして、無事に三ヶ月後に結婚が出来る事となった。
ウェディングドレスは、もちろんウェーバー産の絹糸で作られた最高級品だ。三ヶ月で良く出来たと思ったら、ナターシャの母アンリエッタが準備をしていたのだ。自分も結婚が早かったから、いつ出来てもいいように、と。
「ナターシャ、よく似合っているよ。」
ジンジャーの隣にいるナターシャの兄ジョニーもそう声を掛ける。
今日は、ナターシャの父と母もこの国に来ているが、ここには来ず、ヴェルケホテルから教会にそのまま向かうそうだ。ナターシャに直接声を掛けると、悲しくて涙が出てみっともないからとフォルスは会えないらしい。アンリエッタは『仕方ないわねぇ!娘の結婚式っていうのは、父親にとったら辛いものらしいものね。私のお父様もそうだったもの。』と笑っていた。
結婚式の会場は、あの日見た公園の教会。
ナターシャは、あそこで自分が結婚式を挙げるなんて思ってもみなかったが、あそこであれば、国民も見に来れるからとラドが推したのだとか。警備が大変だと、ミロシュ様に言われたとラドは笑っていた。
「さぁ、そろそろ…!!」
ラドが部屋へと入ってきた。
ナターシャは、ラドが固まっているのを見て、どうしたのかと首を傾げた。
(何か私、変かしら?)
「ナターシャ…!あぁ、綺麗過ぎて言葉がない。結婚式なんて行きたくないが…挙げなければ結婚出来ないからな…クソ!」
「ラド。そろそろ行くんだろう?ブツブツ言ってないで、しっかりやってきなよ。…妹を、よろしく頼む。」
「あぁ、ジョニー。言われなくても分かっている。さぁ、ナターシャ、行こうか。…幸せになろうな!」
ジョニーはあれから数回ラドと会い、すっかり親しくなったのだ。同じ年齢であるし、立場は違えど跡継ぎという点など、分かりあえる所もあったようですぐに打ち解けたのだった。
ラドは、ナターシャへと手を差し伸べ、エスコートをしながら、教会へと向かう馬車が待つ場所へと向かったーーー。
ナターシャは、お礼をすると言われて驚いたが、それがいつの間にか隣国で結婚する事になってしまった。
販路拡大しに来たが、それどころか人生の伴侶を得る事が出来た。
末永く、幸せは続いていくーーー。
☆★
これで、完結です。
最近挑戦していますが、この書き方(三人称?)は難しい…。それでも、最後まで読んで下さいましてありがとうございました!
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