【完結】侯爵家の娘は、隣国へ販路拡大しに来ました!

まりぃべる

文字の大きさ
19 / 20

19. 何者であっても

しおりを挟む
「や、まぁ…そうだ。…とりあえず、席に着こう。」

 食堂が見えたので、話は食べながらという事になった。ラドも、この後仕事があるから時間が無くなってきているのだ。

「まずは食べよう。俺は時間が少ししかないが、ナターシャは、ゆっくり食べればいいからな。」

 そう、ナターシャへと気遣うラド。ナターシャは、それに一つ頷いた。

「ナターシャ、それについては、済まないと思っている。俺が王太子だと、初めから言っていればナターシャはきっと、俺と気兼ねなく話してくれないと思ったんだ。」

「…。」

「何度も言おうか迷ったんだ。あの公園に行った時も。あの場所は癒しの場所ではあるが同時に、王族としての責務に、どちらが前か分からなくなった時に出向いて自分を鼓舞する場所でもあるんだ。遥か昔ではあるが、この地を守る為に亡くなっていった人達がいる。それを忘れない為に、その人達の魂に誓うんだ。俺が治める国となった時も今と変わらず平和で豊かな国としていくと。…でも、それをナターシャへ口に出して言う事は躊躇った。を、見てくれているのに、肩書きを見てしまうんじゃないかって……済まない!」

 ラドは、謝罪を繰り返し、頭を下げた。

「頭を上げて下さい!…ラド様は言ってくれなかったけれど、私も怖くて聞けなかったので同罪ですから!」

(それに、薄々気付いていたもの。ラド様が何者であっても、いつの間にか惹かれていたのは事実だわ。)

「…ナターシャ…今までと変わらず接してくれないか?」

「あ!……ええ。」

 ナターシャは、知らず言葉遣いも丁寧な物言いへと変化していた。
その事にラドは距離が出来てしまったと感じて、やはり王太子という肩書きは面倒だと思った。

「ラド様が言うから、許可してくれたのだから、いいって事よね?では今までと同じように接しちゃうわよ?だったら…お願いがあるのだけれど……」

「ああ、咎めたりはしない。公の場では、言葉遣いは正さないといけないから気をつけろよ。それでお願いとはなんだ?ナターシャの言う事なら、俺は何でも聞くぞ!」

 ラドはナターシャが元に戻してくれた為、安堵してそう言った。

「何でもって…ええと、本来私王太子妃の器じゃないのよ…それに、知識もないし。だから、教えて欲しいの。」

「あぁ、王太子妃教育ってやつだろ。教えたくてウズウズしている奴が山ほどいるから心配するな。それから、何度も言うが、ナターシャなら大丈夫だ!侯爵家で学んできたものはちゃんとものになっているから。俺と初対面の時も、ちゃんと挨拶出来ていたしな!」

「…そう?」

(ウズウズ?山ほど?お手柔らかにして欲しいけど…)


「あ、それから!イェレナの奴にはしばらく会わせないからそのつもりでいろよ!」

「え!?」

「ミロシュに聞いたんだが、まだミロシュとナターシャを結婚させる事を諦めてないらしくてな。俺らが正式に夫婦となるまで会わせてやるもんか!あのババァはいつもそうだ!いつも勝手に決めようとする!ミロシュもそのせいで好いた奴となかなか結婚出来ないのによ!」

(な、なんだか口が悪いような…)

「ラド様。イェレナ様をそんな風に仰らなくても…」

「仕方ないだろ!いきなりイェレナはナターシャとミロシュを結婚させるって言ってたと聞いたんだ。まぁ、それだからミロシュはと思って俺に紹介したとも言ってたから、あいつのお陰と言えなくもないが…まだ諦めてないとは!」

「ミロシュ様は、お相手の事をまだイェレナ様に言われてないのですか?」

「あぁ…まだだと言っていた。」

「だからですって!ミロシュ様も『僕は結婚したい人がいます!』って言えば、イェレナ様もきっと認めて下さると思うわ。私、イェレナ様からハンカチの感想も聞きたいのになぁ…。」

「悪いが、まだ先だな。だが、大層喜んでいたと聞いたぞ。確かにミロシュも言えばいいんだが、何分、イェレナはワガママなんだ。どう出てこられるか恐ろしいんだろ。」

「そういうものかしら?」

(イェレナ様はきっと、悪い人ではないと思うのよ。王族気質なのじゃないかしら…。)


「そろそろか…俺は仕事だ。あー行きたくない!せっかくナターシャと気持ちが通じ合えたのに…」

 そう言いながらもラドは仕事へと向かう。

「よし、ナターシャ!早く結婚しよう!そうすれば、同じ部屋でいつまでも一緒に過ごせるからな!」


 今日もラド、改めラドヴァン王太子は、ナターシャへの想いが溢れている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

後妻の条件を出したら……

しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。 格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。 だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。 しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。

私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。

百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」 妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。 でも、父はそれでいいと思っていた。 母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。 同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。 この日までは。 「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」 婚約者ジェフリーに棄てられた。 父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。 「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」 「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」 「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」 2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。 王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。 「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」 運命の恋だった。 ================================= (他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

治癒魔法で恋人の傷を治したら、「化け物」と呼ばれ故郷から追放されてしまいました

山科ひさき
恋愛
ある日治癒魔法が使えるようになったジョアンは、化け物呼ばわりされて石を投げられ、町から追い出されてしまう。彼女はただ、いまにも息絶えそうな恋人を助けたかっただけなのに。 生きる希望を失った彼女は、恋人との思い出の場所で人生の終わりを迎えようと決める。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

捨てられた地味な王宮修復師(実は有能)、強面辺境伯の栄養管理で溺愛され、辺境を改革する ~王都の貴重な物が失われても知りませんよ?~

水上
恋愛
「カビ臭い地味女」と王太子に婚約破棄された王宮修復師のリディア。 彼女の芸術に関する知識と修復師としての技術は、誰からも必要性を理解されていなかった。 失意の中、嫁がされたのは皆から恐れられる強面辺境伯ジェラルドだった! しかし恐ろしい噂とは裏腹に、彼はリディアの不健康を見逃せない超・過保護で!? 絶品手料理と徹底的な体調管理で、リディアは心身ともに美しく再生していく。 一方、彼女を追放した王都では、貴重な物が失われたり、贋作騒動が起きたりとパニックになり始めて……。

処理中です...