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18. 朝食の前に
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「ナターシャ…!?どうした?何かあったのか!?」
朝。
いつものようにラドがナターシャの部屋に来た。食堂へとエスコートする為だ。僅かな時間でも一緒にいたいと、いつもにまして仕事の時間は集中し、時間を作っていたるラド。
それが、部屋に来るとナターシャは目の下に隈を作り、見るからにどよんとした暗い空気を纏っていた。
「いいえ。なんでもないの。食堂へ行きましょ。」
ナターシャは、いつものような元気もなく、そう言った。
「待って!なぁ…俺じゃ力になれないか?」
「!そんな事…!」
「何があった?心配事?それとも…ジョニー殿に何か言われた?」
「……」
「そうか。じゃあ、ジョニー殿に文句を言ってくる!!」
「待って!違うの!!お兄様は、関係…あるけど…違うの…」
「ん?…こっちへおいで。」
ラドは、一度部屋の奥に向かいソファへと促した。
「それで?」
ナターシャは、兄に矛先が向くといけないと思い、言うしかないと心を決め、ボソボソと言い出した。
「昨日…お兄様と話したの。」
「あぁ。」
「その時に、お兄様にね、一緒に帰るか、残るかって聞かれたの。」
「…そうか。」
「それでね…あの…」
「どうした?」
「ら、ラド様にお会い出来なくなると思ったら…」
「思ったら…?寝られなかった?」
ナターシャは話していて、なんだか凄く恥ずかしくなり、最後は言葉に出来ず首を縦に動かし頷いた。
ラドはそれを聞いて、ジワジワと嬉しさが込み上げて来たが顔には出さないようにし、おもむろにソファから立ち上がり、跪いた。
「!」
「ナターシャ。初めて会った日、話していたらナターシャが気になり出したんだ。それから一緒にいて、楽しい気持ちになる事ばかりで。俺はナターシャに会うまでは、女なんて皆一緒だと思っていたんだ。俺を見るわけでもなく、肩書きや顔を見るばかりで。でもナターシャは違った。俺を見ても何とも思っていなかった。それは、俺の中身を見てくれているんだと思ったんだ。だから…結婚して欲しい。このまま、我が国に、俺の傍にずっといてくれないか。」
そう言って、ラドはナターシャに向けて右手を差し出した。
「俺との未来は困難が付き纏うかもしれない。だが、俺がナターシャに出来うる全ての事をして、ナターシャの憂いを晴らせるようにすると誓う。どうか、俺との未来を考えてくれないか。」
(え!待って…!これって……)
ナターシャは、ラドに跪いてそう次々に嬉しい言葉を言われ、目には涙が溢れてきた。
(ラドとの未来…ウェーバー領に帰らない未来…)
ナターシャは、ラドとはこれからも一緒に居たいといつの間にか思っていた。初めは横柄な人で、感じ悪いし子供みたいだと思っていたのに。
けれどもウェーバー領に二度と帰らない未来は嫌だなと思った。だから…
「…いつか、一緒に実家に行ってくれる?」
と、聞いた。
「ああ。今すぐは難しいが、口うるさいじじぃどもにナターシャを紹介すればきっと近い内に行けるはずだ。」
「口うるさい?」
「そうだ。俺に、早く結婚をしろと口うるさく言ってきたり、さまざまな娘を口実をつけて会わせようとしてくるうるさい奴らだ。だが、俺が未来の王妃を決めたとあれば、文句は言わせん!だから、俺の手を取ってはくれないか?ナターシャ。」
未だ跪いているラドに、ナターシャは『そうだったわ!返事をしなくちゃ…』と思った。
「ええ。無作法者だけど、いいのかしら。」
「もちろん!ナターシャは、無作法者なんかじゃない。食事の所作も綺麗だった。だからもっと、侯爵家の令嬢として自信を持っていいんだ。」
(自信…)
「ありがとう…じゃあこれからもよろしくお願いします。」
「やった!もう、離さないからな!!」
「きゃ…!」
ナターシャが返事をし、ラドの差し出された手に自身の手を添えると、ラドは素早く立ち上がり、ナターシャを引き寄せ抱き締める。
ラドは、ナターシャの存在を確かめるようにきつく抱き締めたのだった。
「…申し訳ありませんが、朝食のお時間が…」
少しの間抱き合っていたラドとナターシャは、後ろからキャリーにそう声をかけられた。
(!そうだったわ!!)
ナターシャははっと顔を上げ、ラドの胸をゆっくりと押して離れようとした。
ラドは、キャリーに言われ、確かにそうだと少しだけ腕を緩めた。けれど、ナターシャが離れようとするのでもう一度ぎゅっと力を入れた。
「ナターシャ、離れるなんて淋しいだろ?でもまぁ、そうだな。せっかく気持ちが通じ合ったんだから仕事を投げ出したいがそうもいかないからな。」
そう言ったラドは、今度こそゆっくりとナターシャを離した。
「さぁ、食堂へ行こう。」
ラドはまた、ごく自然に、ナターシャの手を繋いだ。
「そう言えば…」
歩いている内に冷静さを取り戻したナターシャが、ラドへと話し掛ける。
「なんだ?」
「先ほど、未来の王妃って言われてましたよね?」
「う………」
「あれって、やっぱり、ラド様は王太子様って事ですか?」
「!!」
ナターシャは、今まで知らないフリをして有耶無耶にしてきたけれど、気持ちが通じ合った今ならと、今まで我慢していた言葉をやっと吐き出した。
朝。
いつものようにラドがナターシャの部屋に来た。食堂へとエスコートする為だ。僅かな時間でも一緒にいたいと、いつもにまして仕事の時間は集中し、時間を作っていたるラド。
それが、部屋に来るとナターシャは目の下に隈を作り、見るからにどよんとした暗い空気を纏っていた。
「いいえ。なんでもないの。食堂へ行きましょ。」
ナターシャは、いつものような元気もなく、そう言った。
「待って!なぁ…俺じゃ力になれないか?」
「!そんな事…!」
「何があった?心配事?それとも…ジョニー殿に何か言われた?」
「……」
「そうか。じゃあ、ジョニー殿に文句を言ってくる!!」
「待って!違うの!!お兄様は、関係…あるけど…違うの…」
「ん?…こっちへおいで。」
ラドは、一度部屋の奥に向かいソファへと促した。
「それで?」
ナターシャは、兄に矛先が向くといけないと思い、言うしかないと心を決め、ボソボソと言い出した。
「昨日…お兄様と話したの。」
「あぁ。」
「その時に、お兄様にね、一緒に帰るか、残るかって聞かれたの。」
「…そうか。」
「それでね…あの…」
「どうした?」
「ら、ラド様にお会い出来なくなると思ったら…」
「思ったら…?寝られなかった?」
ナターシャは話していて、なんだか凄く恥ずかしくなり、最後は言葉に出来ず首を縦に動かし頷いた。
ラドはそれを聞いて、ジワジワと嬉しさが込み上げて来たが顔には出さないようにし、おもむろにソファから立ち上がり、跪いた。
「!」
「ナターシャ。初めて会った日、話していたらナターシャが気になり出したんだ。それから一緒にいて、楽しい気持ちになる事ばかりで。俺はナターシャに会うまでは、女なんて皆一緒だと思っていたんだ。俺を見るわけでもなく、肩書きや顔を見るばかりで。でもナターシャは違った。俺を見ても何とも思っていなかった。それは、俺の中身を見てくれているんだと思ったんだ。だから…結婚して欲しい。このまま、我が国に、俺の傍にずっといてくれないか。」
そう言って、ラドはナターシャに向けて右手を差し出した。
「俺との未来は困難が付き纏うかもしれない。だが、俺がナターシャに出来うる全ての事をして、ナターシャの憂いを晴らせるようにすると誓う。どうか、俺との未来を考えてくれないか。」
(え!待って…!これって……)
ナターシャは、ラドに跪いてそう次々に嬉しい言葉を言われ、目には涙が溢れてきた。
(ラドとの未来…ウェーバー領に帰らない未来…)
ナターシャは、ラドとはこれからも一緒に居たいといつの間にか思っていた。初めは横柄な人で、感じ悪いし子供みたいだと思っていたのに。
けれどもウェーバー領に二度と帰らない未来は嫌だなと思った。だから…
「…いつか、一緒に実家に行ってくれる?」
と、聞いた。
「ああ。今すぐは難しいが、口うるさいじじぃどもにナターシャを紹介すればきっと近い内に行けるはずだ。」
「口うるさい?」
「そうだ。俺に、早く結婚をしろと口うるさく言ってきたり、さまざまな娘を口実をつけて会わせようとしてくるうるさい奴らだ。だが、俺が未来の王妃を決めたとあれば、文句は言わせん!だから、俺の手を取ってはくれないか?ナターシャ。」
未だ跪いているラドに、ナターシャは『そうだったわ!返事をしなくちゃ…』と思った。
「ええ。無作法者だけど、いいのかしら。」
「もちろん!ナターシャは、無作法者なんかじゃない。食事の所作も綺麗だった。だからもっと、侯爵家の令嬢として自信を持っていいんだ。」
(自信…)
「ありがとう…じゃあこれからもよろしくお願いします。」
「やった!もう、離さないからな!!」
「きゃ…!」
ナターシャが返事をし、ラドの差し出された手に自身の手を添えると、ラドは素早く立ち上がり、ナターシャを引き寄せ抱き締める。
ラドは、ナターシャの存在を確かめるようにきつく抱き締めたのだった。
「…申し訳ありませんが、朝食のお時間が…」
少しの間抱き合っていたラドとナターシャは、後ろからキャリーにそう声をかけられた。
(!そうだったわ!!)
ナターシャははっと顔を上げ、ラドの胸をゆっくりと押して離れようとした。
ラドは、キャリーに言われ、確かにそうだと少しだけ腕を緩めた。けれど、ナターシャが離れようとするのでもう一度ぎゅっと力を入れた。
「ナターシャ、離れるなんて淋しいだろ?でもまぁ、そうだな。せっかく気持ちが通じ合ったんだから仕事を投げ出したいがそうもいかないからな。」
そう言ったラドは、今度こそゆっくりとナターシャを離した。
「さぁ、食堂へ行こう。」
ラドはまた、ごく自然に、ナターシャの手を繋いだ。
「そう言えば…」
歩いている内に冷静さを取り戻したナターシャが、ラドへと話し掛ける。
「なんだ?」
「先ほど、未来の王妃って言われてましたよね?」
「う………」
「あれって、やっぱり、ラド様は王太子様って事ですか?」
「!!」
ナターシャは、今まで知らないフリをして有耶無耶にしてきたけれど、気持ちが通じ合った今ならと、今まで我慢していた言葉をやっと吐き出した。
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