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19. 帰宅
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あれから、今後の話も含めていろいろと話した。
家を借りるではなく、とりあえず王宮の客室に住むか、一緒に侯爵家へ行くか考えて欲しいと言われた。
帰りはパン屋まで送ってくれると言って、近くまで来た。
すると、建物がなんだか騒がしい。八百屋からケルンがパン屋に入って行ったり、違う人がどこかからか荷物を持って入って行ったり。
私は、クスファーさんと顔を見合わせて急ぎ足で向かった。
「あ、姉ちゃん!すげぇよ!産まれたよ!男の子だよ!!」
「え!?マルアさんの?」
「そうだよ、他に誰がいるんだよ!」
ええー!朝は何も言ってなかったのに。
私は、クスファーさんに『今日は本当にありがとうございました!』と言って慌てて二階に上がった。
「マルアさん!」
「ああ…!カスガリンちゃん…。見てよ、ちっちゃいだろ?」
扉が開いていた寝室に入れば、ベッドで横になっているマルアさんと、その隣で眠る、布にくるまれた小さな男の子がいた。
そのベッドの隣には、ダイニングからイスを持ってきたのだろう。ディヴィスさんと八百屋のおばさんもベッド際に掛けていた。
「朝から少しあったみたいだが、カスガリンが出掛けてすぐ、陣痛が強くなってな。」
「でも、臨月まで働いて体動かしてたからだろうねぇ。すぐに産まれたよ。」
ディヴィスさんも、八百屋のおばさんもマルアさんに続けて教えてくれた。
「わぁ…可愛い!おめでとうございます!!」
「ありがとうねぇ。カスガリンちゃんが来てくれたおかげだよ。店番しなくて良くなってのんびりと休めたからねぇ。」
「そんな…!あ、あの!」
「おめでとうございます。いきなり上がって来てすみませんが、挨拶してもいいですか?」
私が、これからの事を話そうかと思ったら、後ろから声がした。
「おやまぁ!カスガリンちゃんのお相手さんかい?これまた素晴らしくハンサムだねぇ!」
「あの。不躾で申し訳ないのですが、私クスファー=コーフィスと申します。この度、リン=カスガさんと結婚を前提にお付き合いさせていただきたくご挨拶させていただきました。それで、急ではありますが、彼女を連れて行ってもよろしいでしょうか。」
「まぁまぁまぁ!彼女には本当にお世話になってねぇ!ここにいても確かに夜泣きとかで寝れないだろうね。イスで寝かせて申し訳ないなとは思っていたんだよ。おめでとう、でいいのかな?」
と、マルアさんが私に視線を向けて言った。
「はい、あの。前にも言いましたけど寝泊まりできて食事までいただけて本当にありがとうございました。恩返しができてないのにすぐに出ていってすみません。」
「何言ってんだい!毎日楽しかったよぉ!恩返しだったらすでにしてもらったよ。ねぇディヴィス?」
「いろいろな種類のパンを教えてくれた。それで充分さ。」
「うちの売れ残り野菜や果物も捨てずに済んで助かったしねぇ!」
ディヴィスさんも野菜屋のおばさんも頷いて言ってくれた。
そうか…一応恩を返せたのかな。
「しばらくはゆっくりと休憩しながらやるけど、また顔を見せにおいで!異世界から来て不安だったろ?幸せにおなりよ!」
「はい!」
マルアさんの優しい言葉に目が熱くなったけれど、笑顔を向けたかったから口角を上げて言った。
家を借りるではなく、とりあえず王宮の客室に住むか、一緒に侯爵家へ行くか考えて欲しいと言われた。
帰りはパン屋まで送ってくれると言って、近くまで来た。
すると、建物がなんだか騒がしい。八百屋からケルンがパン屋に入って行ったり、違う人がどこかからか荷物を持って入って行ったり。
私は、クスファーさんと顔を見合わせて急ぎ足で向かった。
「あ、姉ちゃん!すげぇよ!産まれたよ!男の子だよ!!」
「え!?マルアさんの?」
「そうだよ、他に誰がいるんだよ!」
ええー!朝は何も言ってなかったのに。
私は、クスファーさんに『今日は本当にありがとうございました!』と言って慌てて二階に上がった。
「マルアさん!」
「ああ…!カスガリンちゃん…。見てよ、ちっちゃいだろ?」
扉が開いていた寝室に入れば、ベッドで横になっているマルアさんと、その隣で眠る、布にくるまれた小さな男の子がいた。
そのベッドの隣には、ダイニングからイスを持ってきたのだろう。ディヴィスさんと八百屋のおばさんもベッド際に掛けていた。
「朝から少しあったみたいだが、カスガリンが出掛けてすぐ、陣痛が強くなってな。」
「でも、臨月まで働いて体動かしてたからだろうねぇ。すぐに産まれたよ。」
ディヴィスさんも、八百屋のおばさんもマルアさんに続けて教えてくれた。
「わぁ…可愛い!おめでとうございます!!」
「ありがとうねぇ。カスガリンちゃんが来てくれたおかげだよ。店番しなくて良くなってのんびりと休めたからねぇ。」
「そんな…!あ、あの!」
「おめでとうございます。いきなり上がって来てすみませんが、挨拶してもいいですか?」
私が、これからの事を話そうかと思ったら、後ろから声がした。
「おやまぁ!カスガリンちゃんのお相手さんかい?これまた素晴らしくハンサムだねぇ!」
「あの。不躾で申し訳ないのですが、私クスファー=コーフィスと申します。この度、リン=カスガさんと結婚を前提にお付き合いさせていただきたくご挨拶させていただきました。それで、急ではありますが、彼女を連れて行ってもよろしいでしょうか。」
「まぁまぁまぁ!彼女には本当にお世話になってねぇ!ここにいても確かに夜泣きとかで寝れないだろうね。イスで寝かせて申し訳ないなとは思っていたんだよ。おめでとう、でいいのかな?」
と、マルアさんが私に視線を向けて言った。
「はい、あの。前にも言いましたけど寝泊まりできて食事までいただけて本当にありがとうございました。恩返しができてないのにすぐに出ていってすみません。」
「何言ってんだい!毎日楽しかったよぉ!恩返しだったらすでにしてもらったよ。ねぇディヴィス?」
「いろいろな種類のパンを教えてくれた。それで充分さ。」
「うちの売れ残り野菜や果物も捨てずに済んで助かったしねぇ!」
ディヴィスさんも野菜屋のおばさんも頷いて言ってくれた。
そうか…一応恩を返せたのかな。
「しばらくはゆっくりと休憩しながらやるけど、また顔を見せにおいで!異世界から来て不安だったろ?幸せにおなりよ!」
「はい!」
マルアさんの優しい言葉に目が熱くなったけれど、笑顔を向けたかったから口角を上げて言った。
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