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25. 侯爵家へ
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コーフィス侯爵領地へは馬車で行く。
荷物を運ぶ馬車も、先に運べるものは事前に運んでいたみたいで、今は後ろに残りの荷物を積み込んだ馬車が一台だけ付いてきていた。
コーフィスさんは私の隣に座っている。
王宮からヤマトテイに行く際、初めて馬車を使った時にエスコートされながら馬車の乗り方を教わった。
だけれどこの揺れはなかなか慣れない。
まぁ、王宮にあった馬車もこの侯爵家の馬車も、とてもクッション性があって普通の馬車よりはよっぽど乗りやすいらしいけれど。
馬車の中では、これからの事や、クスファーさんが幼い頃領地でどのような遊びをしていたかなどさまざまな事を話した。
その間、ずっと手を繋いでくれていたので恥ずかしかったけれど、でもとても嬉しかったの。
誰も見ていないからって、頬にキスをされた時は呼吸が止まるかと思ったわ!
馬車の両方の側面に付いた小窓は空いているし、御者は馬車の前方で馬の操縦をしているから見られていないのかドキドキして余計によ!
だけれど、クスファーさんはそのあと何故か急に少し離れて目を瞑っていたから、少しさみしく思ってしまったわ。
本人にどうされたのですかと聞いても、『自分と闘っているのだ。少し頭を冷やす。』と言っていてよくわからなかったから、疲れたのかと思ってそっとしておいた。
ずっと座っていてお尻が板のように固まってきたんじゃないかと心配しだした 頃、ようやく屋敷が見えてきたみたい。
それからは、領地を目に焼き付けたわ。
畑が広がっている小高い丘に、横に広がる、壁で囲まれた屋敷だった。
両端は三階位の高さで真ん中はそれよりも少し高い、レンガで出来たお城のような建物が見えてきた。
傾きかけた太陽に照らされてとても幻想的だった。
屋敷の門の前には、壁で囲まれた門扉がある。そこで馬車は一旦止まった。前に座っている御者と、外にいる門番とが一言二言話して、すぐにまた馬車が動いて門の中へ入って行く。
「少し建物までは距離があってね。歩いても行けるけど、馬車で進んでもらおう。」
馬車が今度こそ止まり、クスファーさんがエスコートして降ろして下さった。
すると、屋敷はどこぞの博物館かと思う程立派なのはもちろんの事、玄関入ってすぐの広いホールに通路を挟んで十人ほどの二列に並んだ人達がお辞儀をしていたのでかなり驚いた。
一番手前の、金と白が混じった髪の男性が『お帰りなさいませ。クスファー様。』と言って頭を下げると、下げたままの人達が『お帰りなさいませ。』と揃って言ったのでそれもまた圧巻だった。
「ただいま。出迎えご苦労。伝えていたよね。今日からここに住む俺の大切な人リン・カスガだ。早速案内するよ。行こう。」
クスファーさんはいつもの事なのだろう。その光景を見ても特段気にせず中へと促してくれた。
さすがは侯爵様なのね。だけれどここに私も住まわせてもらうなんて…緊張するわ。
私も、侯爵夫人になる為これからは学んだ事を実践していかないとね。言葉遣いや姿勢も常に気を付けないといけないな、とそう考えながら入って行った。
荷物を運ぶ馬車も、先に運べるものは事前に運んでいたみたいで、今は後ろに残りの荷物を積み込んだ馬車が一台だけ付いてきていた。
コーフィスさんは私の隣に座っている。
王宮からヤマトテイに行く際、初めて馬車を使った時にエスコートされながら馬車の乗り方を教わった。
だけれどこの揺れはなかなか慣れない。
まぁ、王宮にあった馬車もこの侯爵家の馬車も、とてもクッション性があって普通の馬車よりはよっぽど乗りやすいらしいけれど。
馬車の中では、これからの事や、クスファーさんが幼い頃領地でどのような遊びをしていたかなどさまざまな事を話した。
その間、ずっと手を繋いでくれていたので恥ずかしかったけれど、でもとても嬉しかったの。
誰も見ていないからって、頬にキスをされた時は呼吸が止まるかと思ったわ!
馬車の両方の側面に付いた小窓は空いているし、御者は馬車の前方で馬の操縦をしているから見られていないのかドキドキして余計によ!
だけれど、クスファーさんはそのあと何故か急に少し離れて目を瞑っていたから、少しさみしく思ってしまったわ。
本人にどうされたのですかと聞いても、『自分と闘っているのだ。少し頭を冷やす。』と言っていてよくわからなかったから、疲れたのかと思ってそっとしておいた。
ずっと座っていてお尻が板のように固まってきたんじゃないかと心配しだした 頃、ようやく屋敷が見えてきたみたい。
それからは、領地を目に焼き付けたわ。
畑が広がっている小高い丘に、横に広がる、壁で囲まれた屋敷だった。
両端は三階位の高さで真ん中はそれよりも少し高い、レンガで出来たお城のような建物が見えてきた。
傾きかけた太陽に照らされてとても幻想的だった。
屋敷の門の前には、壁で囲まれた門扉がある。そこで馬車は一旦止まった。前に座っている御者と、外にいる門番とが一言二言話して、すぐにまた馬車が動いて門の中へ入って行く。
「少し建物までは距離があってね。歩いても行けるけど、馬車で進んでもらおう。」
馬車が今度こそ止まり、クスファーさんがエスコートして降ろして下さった。
すると、屋敷はどこぞの博物館かと思う程立派なのはもちろんの事、玄関入ってすぐの広いホールに通路を挟んで十人ほどの二列に並んだ人達がお辞儀をしていたのでかなり驚いた。
一番手前の、金と白が混じった髪の男性が『お帰りなさいませ。クスファー様。』と言って頭を下げると、下げたままの人達が『お帰りなさいませ。』と揃って言ったのでそれもまた圧巻だった。
「ただいま。出迎えご苦労。伝えていたよね。今日からここに住む俺の大切な人リン・カスガだ。早速案内するよ。行こう。」
クスファーさんはいつもの事なのだろう。その光景を見ても特段気にせず中へと促してくれた。
さすがは侯爵様なのね。だけれどここに私も住まわせてもらうなんて…緊張するわ。
私も、侯爵夫人になる為これからは学んだ事を実践していかないとね。言葉遣いや姿勢も常に気を付けないといけないな、とそう考えながら入って行った。
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