【完結】その令嬢は可憐で清楚な深窓令嬢ではない

まりぃべる

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「ふう…お疲れさまでした、と。
 みんな、大丈夫かい?」


 ホテルに着いてロビーで受付を済ませた一行は案内された部屋に入ると、誰ともなくふうと息を漏らし、それに合わせてシーグルトは声を掛けた。


 その隙にバートとブリット、ボエルは体を伸ばしたり首を動かしたりしながら持ってきた手荷物を振り分けるように部屋の奥のベッドルームへ行ったり、手前の使用人用に造られた小部屋へと忙しなく動いている。


 カリーネが乗っている事もあり休憩は何度も長めに取ってはいたが、馬車に一日中乗っていると振動もあり体も痛くなるから体を動かしているのだろうとそれを目で追いながらアウロラは思い、口を開く。


「えぇ、私は大丈夫ですお父様。
 お父様とお母様は大丈夫ですか?」

「私はちょっと疲れちゃったわ…お風呂に入りたいくらいだけれど、お腹も空いたわねぇ…。」


 太陽が顔を出す前から走って来た馬車は、休憩を何度も取ったこともあり夕方近くになってやっと王都の指定されたホテルへたどり着いた。

 領地を、アウロラと共に出たのは久し振りだったからかカリーネは終始楽しそうにはしゃいでおり、休憩で立ち寄った小さな湖でも水辺に足をつけたりもしていた。
 馬車の小窓から見える風景をアウロラやシーグルドと共に見ながらあーでもないこーでもないと嬉しそうに会話を交わしていた。
 だからか、部屋に入ったカリーネは正面奥に見えた三人ほどがゆったりと座れる布張りのソファへといそいそと駆け寄り背を預けると、呟くようにそう口を開いた。


 それなりの高級ホテルで、高位貴族や国賓が泊まるに相応しい調度品に囲まれており、部屋も広いため皆でゆっくり出来そうではあるが確かに皆疲れていたのだ。


「カリーネ、大丈夫かい?休憩も充分したけれど、長く乗っていたから疲れたよね。
 おいバート、ブリット。早速、風呂の準備をしてやってくれ!
 食事処は一階にあるみたいだけど、軽いものを部屋に持って来させよう。」


 そうカリーネへと心配そうに言葉を掛けながら、シーグルドも近くの一人掛けのソファへと腰を下ろした。


「ありがとう。そうしてくれる?ちょっと…休むわ。」


 カリーネも元は公爵家の娘であったからか、体力に自信があるわけでもなくソファに倒れ込んだようにグッタリとしている。少しずるずると体を横たえてひじ掛けに頭を乗せて体勢を崩していた。

 その間に、シーグルドに言われた侍従のバートや侍女ブリット、ボエルは風呂の準備や食事の注文をするためバスルームへ行ったり、ロビーに確認に行ったりしていた。

 それを横目に、アウロラはカリーネの傍へ行き声を掛けた。


「お母様。足を揉んで差し上げてもよろしいですか?」

「あら、アウロラ。そんな事いいのよ…って言いたいけれど、やってくれるなら好きにしてちょうだい。」


 アウロラは、領地で馬の世話も領民や使用人達とともにやってきている。その要領で、母にマッサージをしようと思ったのだ。
 馬車移動であるから、低いヒールではあったがカリーネが履いていた靴を脱がせ、足首を持ってプラプラと揺らした。それだけでカリーネはフーっと深く息を吐いた。


「ごめんね、カリーネ。やっぱりもう少しゆっくり時間を掛けて来た方が良かったねぇ…」


 シーグルドが、滅多に見ない妻のグッタリとした姿を見て申し訳なさそうに言った。


「あら、いいのよぉ。私も、馬車の中で一泊するより早くホテルに着きたいと思ったのだもの。
 それに、久々のアウロラとのお出かけだったし、少しはしゃぎ過ぎたのかもしれないわねぇ…今日はきっとよーく眠れるわぁ…」


 そう言いながらすでに半分目を瞑っていたカリーネのふくらはぎを、アウロラはソファの下のふかふかな敷物に膝をつき、優しい力でほぐし初めた。


「あら…アウロラ…上手ねぇ……」

「お母様、無理をしては王都観光へ行けませんよ?
 お祖父様も心配されますわ。」

「そうねぇ…そう…ねぇ……」


 そう言いながらすでに意識を無くしていったカリーネを労りながら、足を揉んでいたアウロラだったが、部屋に入ってきたボエルに驚きの声をあげられた。


「軽いお食事をすぐに作って届けてくれるそうです…ってアウロラ様!?」

「しっ!…お母様が起きちゃうわ。」

「あぁ、すみません!
 ですが、アウロラ様のお膝が…」


 敷物の上ではあるが、膝をついている事を咎められたアウロラは苦笑しながら反論した。


「だってお母様が辛そうだったのよ。私はいいのよ、それなりに体力もあるし。」


 アウロラは領地で、馬とともに走り回っているし、カルロッテとの学びの中で、ダンスや、護身術、弓引きなど体力を使うものもたくさんあった。そのためそこらの貴族子女より体力はある。なんなら、軟弱な男には勝てるんじゃないかとさえアウロラは思っている。


「そうは言われますが…」


 そう言ったあと、続いて奥に続く風呂の確認をしに行ったバートとブリットが戻って来て同じ事を口にした。


「風呂の湯が溜められそうです…て、アウロラ様!?」
「ど、どうされました!?」

「もう!あなた達だって疲れているでしょう?だったら、動ける人がやれる事をやった方がいいわよね?
 だから気にしないで!ね?」


 アウロラは苦笑しながらそう言った後、バートに再度聞いた。


「溜めれそうって?お祖父様のお屋敷と同じって事?」

「そうですね、レイグラーフ公爵様のお屋敷と同じく、取っ手を回せばお湯が出てくるようになっております。」

「水とお湯が出る二種類の取っ手があり、適温に合わせる感じでございます。」

「まぁ!凄いわね。じゃあ思ったよりも早く入れそうね。」


 領地のフランソン家では、水を沸かしてから浴槽に運ぶという方法であったが、レイグラーフ公爵家では温かい湯を風呂場にある取っ手から出す事が出来た。このホテルも貴族が泊まるため設備がいいのだろう。それが出来るのであれば思ったよりも早くお風呂に入れそうだとアウロラは答え、続けて指示を出す。
 普段であれば、シーグルドが指示を出すのだが、ソファに身を預けて目を瞑っている父を見て、存外疲れているようだと感じたからだ。

 シーグルドは普段、フランソン領から王宮へ仕事に向かう時には、馬車の時もあれば騎乗する事もある。馬についての相談役でありその事で王宮に出向くフランソン伯爵家は国王からも信頼が厚く、代々王宮の官職が寝泊まりする区画に部屋を与えられている。そのため王都に屋敷を構えてはおらず、王宮での仕事が片付けば、馬車や騎乗で領地へと帰っていく。
 だから個人での移動は慣れているのだが、そんなに移動の慣れていないカリーネと共に移動する時には体調を慮ってゆっくりになるため、いつもより疲れてしまったのだ。


「お風呂の湯が溜まったら、お母様は少し寝かせておいてもいいから、先にお父様から入ってもらいましょうか。その間に、食事も運ばれてくるでしょうから。
 バートもブリットもボエルも、疲れてるでしょうけれど、もう少し頑張ってちょうだい。」

「滅相もない!ありがとうございます。」
「アウロラ様、ありがとうございます。カリーネ様のお世話を済みません。」
「ありがとうございます。」


 バートもブリットもボエルも、指示と労いの言葉を受けて答えた。


「ブリット、お母様がお風呂に入ったらまたマッサージをお願いね?私は簡易的な事しか出来ないから。その間は荷物の整理をお願い。
 あと、喉が渇いたの…あ、ボエルありがとう。」


 アウロラの言葉に、バートとブリットは頭を下げて荷物を片付けに行くが、ボエルは部屋の隅にある簡易的なキッチンですでにお湯を沸かしていた。


「とんでもない!
 アウロラ様も、疲れていないわけではないでしょう?無理をされませんように。」


「…ありがとう。」


 アウロラは、幼い頃より自分についている十歳年上のボエルには見透かされているのだろうと思い、呟いた。
 確かにアウロラも疲れてはいる。だが、馬に乗って領地を駆け回ったりもしているし、馬の世話をするため木桶に水を汲んで運んだりもしている。だから両親よりは動けるのだ。それに、何もしていなければ結婚の事を考えてしまう。だから無理矢理にでもすべき事をやっているとも言えた。


(それに…もしも結婚してしまったら、私は嫁ぐ身だもの、両親とも気軽に会えなくなってしまうだろうし。)


 だから母の足を揉む事なんて苦に思う事もなく、率先してやりだしたのだ。


「さ、一旦手を止めて、飲んで下さいませ。」

「ええ、ありがとう。」


 ボエルが淹れてくれたお茶は、ミルクが少しだけ入っていて疲れた体を癒してくれるようだった。意外と体が凝り固まっていたのだろう、温かいそれは、心にも染みわたるようだった。


「…美味しい。
 ボエルも、飲んでね?」

「はい。」


「…うん?良い香りだ。私にもくれるかい?」


 いつの間にか、シーグルドも目を開けてこちらを見ており、そう口を開く。


「もちろんです。シーグルド様はストレートにされますか?」

「そうだね、宜しく頼むよ。
 …私は、寝てたか?」

「うふふ、少しだけ。
 そういえばお父様、お相手のお名前はいつ教えて下さるのでしょうか?」

「ん?言って無かったか…?」

「ええ。それに、馬車の中ではそんな話にもなりませんでしたし。」


 カリーネがいたからか、今回の目的である相手方の話は一切馬車では出なかったのだ。アウロラと遠出だとウキウキとしたカリーネを前に、出来なかったのだ。


「確かにそうだった…。
 お相手は、ショールバリ侯爵家の長男でね。なんて言ったかなぁ父親はインマルって言うんだけど……あーそうそうそう、ビリエル、ビリエル=ショールバリ殿だよ。」

「ショールバリ侯爵家…」

「うん、知っているかい?
父親であるインマル殿は私と学生時代同じ学年ではあったが仲が特によかったわけでは無くてね。
文官で、私も特に知らなかったんだが王宮で士官してるそうだ。」

「そうなのですね。特に存じ上げませんが…ショールバリ侯爵家は、主な特産品が確かワインでしたかしら?」

「おお、そうだよ。西側の領地でね、ここ王都からはそれなりに距離があるけれど、ワインは有名だよね。僕は飲まないけれど。」

「お父様はお酒が苦手でしたよね?」

「そうだね、飲めないわけじゃないけど、美味しい物って他にもたくさんあるし、酔っ払ってしまって、何か合っても困るからね。馬にも乗れなくなるのもなぁ。」

「酔って、頭が働かずに馬に乗って、落馬されて亡くなる事故って意外とあるそうですものね…」

「アウロラはよく知ってるねぇ。そうなんだよ、だから馬車に乗るって分かってる夜会とかでは飲むけど、好んでは飲まないし、ショールバリ侯爵家のワインは辛口で味も濃いらしい。
 …だから、アウロラ。縁が無ければそれでもいいよ。」

「お父様?」

「ここまで来て何を言う、とでも思ったかい?けどね、本心だよ。
 アウロラが気に入れば結婚すればいいし、気にいらなければ止めれば良い。どちらにしても会わない事には相性なんて分からないからね。」


 父から、温かい表情で優しい言葉を聞いて、アウロラは緊張していた心が少しだけ和らいだのだった。

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