【完結】トリマーだった私が異世界という別の場所で生きていく事になりました。

まりぃべる

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1. これは一体どういう事?

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 その海辺には、一人の若い女性が、打ち上げられたように、波打ち際に横たわっていた。

 そこに現れた、近所に住むエイダという四十代の女性がいつものように海へ来ると、ここらでは見かけない真っ黒い髪を肩よりも少し長めに伸ばした女性が波打ち際に倒れているので驚いて駆け寄る。

「…さん、お嬢さん!」

「…ん……」

「お嬢さん!大丈夫かい!?」

 声を掛け体を揺さぶるエイダは、その人物が目を開けた事に心底ホッとして話し掛ける。

「お嬢さん、どうしたんだい?こんな所で。珍しい服装だねぇ、男物の服でも着たのかい?さぁ、とりあえずうちへおいでよ。」

 エイダは、その女性の体を引っ張り起こし、自分の家へと連れて帰った。





☆★

 その黒髪の女性は、大橋れな。

 目を覚ましたら海辺にいた。

 そこで、赤髪を背中まで伸ばしたエイダに声を掛けられ、目と鼻の先に家があるからうちへおいでと言われたのだ。

 家へ案内されると玄関入ってすぐ目の前のダイニングテーブルへと座らせてくれた。

 れなは波打ち際に居たのに、服がほとんど濡れていないのを不思議に思ったのだが、エイダがすぐに温かい紅茶を準備してくれたのでそちらに意識を向けた。

「お嬢さん、どうしてあんな所へいたんだい?」

「ありがとうございます。…分かりません……。私、なぜこんな海辺にいるのでしょう?」

 海からこの家までは五分と歩かず、ここまで歩いてくるまでに見覚えは全くなかった。

「まさか海に居たのは、船にでも乗せられていたのかい?でもそれにしては奴隷や、売られる人のようには見えないねぇ。刻印が無い。けれど、服装は男物だよね、逃げる時に適当に着たのかい?」

 エイダは、レナがここらでは見かけない変わった服装をしていた為、想像を巡らせながら言葉を口にしていた。

 レナは、仕事終わりに着ていたブラウスにジーンズを履いていた。

 エイダの周りでは、女性はワンピースか、スカートを履くのが主流だから、なぜ男物の服を?と思っていたのだった。

「刻印…?奴隷…?」

 一方れなは、頭を捻る。

(ええと、私は何してたっけ?うーんと……)

 そう。れなはーーー。



 れなは、幼い頃から動物が好きで、専門学校を卒業し念願だったトリマーの職業に就いたのが三年前。
 両親は放任主義で、地方から都会へ出たいと言ったら二つ返事で好きにしなさいと言ってくれた。

「元気でやっているならいいのよ。好きに頑張りなさい。私達も、好きに過ごすからね。」

 れなが就職すると両親は今まで住み慣れた家をさっさと売り払い、田舎に引っ越すと言った。

「山での生活って、子供がいたら大変でしょう?学校通うのにも、友達の家に行くのも遠いと大変かなって。今まで我慢してたのよ。私達は悠々自適に過ごすから、れなはれなで好きにしてね。」

 そう言われ、れなは淋しくなかったわけではないけれどそれでもいいかと思った。
自分はやりたい事があるから、とにかくやれる所まで頑張ろうと思った。

 幸いにも、仕事は楽しく、大変ではあっても三年続き、慣れてきてそろそろ独立したいと思い始めていた。


 その日も、いつもと同じように仕事が終わって十九時過ぎに職場を出た。

「はーやっと終わった!店は十八時までなのに、片付けとかやる事多過ぎ!」


 向かいの道路のコンビニに寄ってから帰ろうと、道路を渡りコンビニへ入った。

「何を買おうかな-。あ、雑誌!見てみよう!」

 様々な種類の犬がカットされたスタイルが載った雑誌。それが最近コンビニに売り出され、それをれなは雑誌の陳列棚から探していた。

 と、なんだか目の前が眩しいと思ったれなは外を見て驚く。

「なんだか、眩しい光が近づいてくる感じ?」


 ………それが、車のヘッドライトだと気づき、駐車場の車止めを乗り上げて店に突っ込んで来たと気づくのには時間がかかり、避ける間も無くれなはそれの犠牲になったのだ。




(最後に思い出すのは、あのヘッドライトの眩しい光ね。最近、ニュースでもよくやっている、ブレーキの踏み間違いってやつ?焦ったおじいさんの目を見開いた顔が今でも忘れられないわ。)

 そうれなは思い、でもそうするとここは何処なんだろうと新たな疑問を持った。

「あの、エイダさん。ここは何処なのですか?」

「あらまぁ!やっぱり海の向こうから来たのかい?逃げて来たのかね?だったらしばらくここにいなさいな。嫌な事は忘れなさいよ!ここは、スウォンヒルという国さ。」

(……死んだ後の世界というわけでも無さそうね。)

 れなは、どうして目が覚めたらこの国にいるのか全く意味が分からないが、自分はあの後多分命を落としたのだろうと薄々感じていた。
だからそれなら、せっかくここで目が覚めたのだし、新たに生きていけるのならそれでいいかと楽観的にそう思った。
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