【完結】トリマーだった私が異世界という別の場所で生きていく事になりました。

まりぃべる

文字の大きさ
2 / 32

2.ここに置いてくれるって

しおりを挟む
「ここにしばらく居なさいな。うちは息子が一人いるけどね、今は首都バリウェリーに働きに出ているから私一人で住んでいるだけでね。だからどうだい?」

 エイダに言われたれなは、ありがたい言葉だと思い、頷いて返事をした。
れなは、この国の事が何も分からないのに放り出されたから、いろいろと聞けるエイダと一緒に居られる事はとてもありがたいと思った。

「ありがたいです。私は大橋れなと言います。」

「オオ…?何だって?」

 エイダには聞き取れないのかそう聞き返されたので、れなは少し考え、エイダにも苗字は言われなかったし自分の名前だけ言えばいいかと思った。

「れなです。レ、ナ!」

「おお、レナね!素敵な名前だ!さっきも言ったけど私はエイダだよ。ただ、うちは狭いんだ。悪いけど息子の部屋を使ってもらってもいいかい?ベッドのシーツはちゃんと洗ってあるのを出すからね。」

「ありがとうございます!でもエイダさんは?」

 レナは、ベッドを自分だけ使って、エイダは何処で寝るのだろうと思って聞き返す。

「私には私の部屋があるよ。息子はすぐ近くの首都バリウェリーに行ってなかなか帰って来ないし、帰って来たら床で寝るから気にしなくていいからね!」

「え?床!?気にします!その時はベッドをお返ししますから!」

「ハハハハ!息子は保安院に勤めていてね、一応どんな場所でも眠れるように訓練されているから大丈夫だよ!あ、そうそう今から朝ご飯なんだ。ちょっと準備するから待ってな!私はそのあと、仕事に行くからね。」

 そう言ったエイダは壁際に設置されたキッチンで準備をしだした。

 レナは、食事まで準備してくれると言うので申し訳ないとは思ったが、確かにお腹もすいている。仕事が終わりコンビニで何か買って帰ろうとしていたのだから当然なのかもしれない。
 だからレナは、お礼に、仕事がもし手伝えるものなら手伝おうとエイダに聞いてみる事にした。

「エイダさん、仕事は何をしに行くのですか?私も手伝えますか?」

「いいのかい?体が何とも無いのなら来てくれると助かるよ。私はね、こっから少し進んだ先にある首都バリウェリーで靴磨きをしているんだよ。」

「靴磨き?」

 レナは靴磨きとは珍しい仕事なのだなと思った。

「そうさ。旦那に教えてもらった靴磨きはもうかれこれ二十年以上しているから
ね、ベテランの域だよ!」

 それを聞いて、レナは、先ほどエイダは一人と言っていなかったかと疑問に思ったが、それが顔に出ていたのかエイダは続けて言った。

「あぁ、旦那は息子が三歳の頃亡くなってね。そっから靴磨きで生計を立て、息子は私が一人で育てたんだよ。さ、朝食は昨夜の残りのスープと、ライ麦パンね!食べようか。」

 エイダはいつの間にか準備を終え、テーブルに食事を置いた。

 食事は、レナが見た事食べた事あるような物だ。世界が違っても、同じような食べ物で安心した。

(良かった…食べ物は普通だわ。美味しそう!ゲテモノが出てきたらどうしようかと思っちゃった!)

 レナはありがたく思い、エイダにお礼を言ってから手を合わせて食事を頂いた。




☆★

「レナはこれに着替えなよ。私のお古で悪いけれどね。洗ってあるからさ。」

 食事を終えて手早く片付けをしたエイダは、一度奥の部屋に入って少しして出掛ける為の荷物と、レナにも服を持ってきた。

「え?あ、ありがとうございます。」

 エイダが後ろを向いてくれ、素早く持ってきてくれたワンピースに着替えると、エイダは頷いた。

「うん、いいね。済まないね。儲けがあれば帰りに買って帰ろうね。じゃあ、行こうか。」

 レナは買ってもらう事に申し訳ないと思いながらも、確かに着替えは欲しいと思った。

(今は私、一文無しだから、その分何か出来る事をしよう。)

 そうレナは思い、エイダに声を掛ける。

「エイダさん。それが靴磨きの道具ですか?」

 麻袋に入ったそれは、両手に抱える程の大きさだった。

「あぁ、そうだよ。ちょっと大荷物なんだけどね。」

 そう言って、歩き出すエイダにレナは少しでも恩を返そうと言葉にした。

「それ、私が持ちます!」

「おや、いいのかい?助かるよ。でも重いからね。辛くなったら交代するから言ってちょうだい。」

 そう言ってエイダは、レナの両手に麻袋を手渡すと、玄関扉を開けた。
受け取ったレナは、想像したよりも麻袋が重くて腕にずっしりときた為、持って行けるのかと不安になった。
険しい顔になったレナを見たエイダは笑って、レナに声を掛ける。

「ハハハハ!重いだろう?少ししたら交代するから。」

「はい…すごいですね。これを仕事の日はいつも持って行くんですか?」

 レナは、痺れそうになる腕を気にしながら聞いた。

「そうだよ。それが道具だからね。それがないと仕事にならないね。」

 そう聞いてレナは、

(仕事かぁ…私も仕事見つけないとな。私が仕事で使っていたハサミとかクシとかあったら、ここでも仕事出来るのに。って、トリマーなんて仕事、この国にあるのかな?)

 と疑問に思った。
 歩き出してからすぐに、

「ほら、見えてきたよ。あれがスウォンヒル国の首都バリウェリーさ。」

 とエイダが言った。
 その言葉通り、高さがかなりある塀が視界に入ってきた。どうやら塀に囲まれた首都のようで、少し先に大きな門が見えてきた。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

大嫌いな従兄と結婚するぐらいなら…

みみぢあん
恋愛
子供の頃、両親を亡くしたベレニスは伯父のロンヴィル侯爵に引き取られた。 隣国の宣戦布告で戦争が始まり、伯父の頼みでベレニスは病弱な従妹のかわりに、側妃候補とは名ばかりの人質として、後宮へ入ることになった。 戦争が終わりベレニスが人質生活から解放されたら、伯父は後継者の従兄ジャコブと結婚させると約束する。 だがベレニスはジャコブが大嫌いなうえ、密かに思いを寄せる騎士フェルナンがいた。   

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

婚約破棄されるはずでしたが、王太子の目の前で皇帝に攫われました』

鷹 綾
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。 --

【完結】婚約破棄される前に察して距離を置いていたら、幼なじみの第三王子が本気になっていました〜義妹と元婚約者? もう過去の人です〜

井上 佳
恋愛
婚約者に裏切られた侯爵令嬢は、 嘆くことも、復讐に走ることもなかった。 彼女が選んだのは、沈黙と誇り。 だがその姿は、 密かに彼女を想い続けていた第三王子の心を動かす。 「私は、国よりも君を選ぶ」 婚約破棄、王位継承、外交圧力―― すべてを越えて選び取る、正統な幸福。 これは、 強く、静かな恋の物語。 2026/02/23 完結

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜

入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】 社交界を賑わせた婚約披露の茶会。 令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。 「真実の愛を見つけたんだ」 それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。 愛よりも冷たく、そして美しく。 笑顔で地獄へお送りいたします――

【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し

有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。 30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。 1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。 だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。 そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。 史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。 世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。 全くのフィクションですので、歴史考察はありません。 *あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。

処理中です...