【完結】異世界からおかえりなさいって言われました。私は長い夢を見ていただけですけれど…でもそう言われるから得た知識で楽しく生きますわ。

まりぃべる

文字の大きさ
22 / 25

22. 意識改革

しおりを挟む
「きっとそれだよ!後で、ツェルテッティン伯爵にも話を聞かせてもらわないとな。もし、それが流行病の対策になるのだったら、素晴らしいよ!」

 そう言って満面の笑みを浮かべ、私を抱き締めてくれた。ここは、いろんな人がいるバラ園なのですけれど…私は恥ずかしくなって、

「ユリウス様、恥ずかしいです!皆が見ています!」

 と赤い顔になりながら言った。

「いいじゃないか!結婚が出来るかもしれない!あー…まぁ、まだアイネルの気持ちがついてきてくれないとダメだろうけど、でも兄上が結婚出来るかもしれない!アイネルは本当に素晴らしい知識を得たね!」

 そう言って、ゆっくりと離してくれた。
…あら?私、ユリウス様が離れてしまって、淋しく思ってしまったわ。もう少し抱き締めて欲しかっただなんて…!

「ん?どうした?」

「い、いいえ!なんでもありませんわ!」

 そう言って私は、そっぽを向いてしまった。照れてしまったのよ…顔も真っ赤だろうし。





 あれからまた、他愛もない話をしながらお弁当を食べ終え、バラ園を散策して屋敷へと帰ってきた。


「お父様とお話されたいみたいなの。お時間あるかしら?」

 執事のディランに伝えた。
すると、ディランは、

「分かりました。伺って来ますので応接室でお待ちください。」

 と言ってくれた。
私達は手を洗ってから応接室へ行った。どうやら、手を水で洗い流すって、贅沢だったみたいね。



「ユリウス殿下。ご挨拶が遅れまして。」

 そう言って挨拶もそこそこにお父様は慌てて入って来た。どうしたのかしら?

「いいえ、ヘンツ伯爵。今日は少し聞きたい事がありまして、お時間を頂きました。その前に…五年前、アイネルの肩を押した件は、大変申し訳ありませんでした。」

 と、いきなり頭を下げた。

「え!?いえいえ、謝罪は結構だとあの時申し上げました。アイネルもこの通り元気です。それでいいではありませんか。」

 と、お父様は席について落ち着いたと思ったのにまた、取り乱して言った。

「許していただきありがとうございます。わだかまりがありましてどうしても言いたかったのです。…では、聞きたかった事ですが、ツェルテッティン領では、流行病はどうでしょうか?」

「流行病?…そう言えば、五年以上前は、よく腹を壊したり、熱を出す領民がいて仕事が捗らないという訴えなどはあったが、ここ最近はそんなのは無いな。」

「やはり…。」

「どうされましたか?聞きたい事ってそれでしたか?」

 あら。お父様、何か拍子抜けって感じですわね。…でもそうだったのね。この領地では流行病が無かったのね。だから私は知らなかったのだわ。

「はい。…?ヘンツ伯爵こそどうされましたか?」

「い、いや…なんだ…わしはてっきり…。(結婚させて下さいと言いに来たかと思ったのだが違ったのか…。)と、ところで、まだ他の領地では流行病はあるのですか?」

「そうなのです。でも、このツェルテッティン領地ではこの五年で流行病が無いと聞いて、アイネルにこの五年で作った物を聞いてなんとなく理由が分かりました。きっと、水場が大切なのでしょう。」

「水場?」

「はい。アイネルは、手をたらいで洗うだけでは綺麗にならないと言った。汚れがそこにまだあるからと。水場で洗い流す方がいいと考え、水場をたくさん作ったと聞いた。」

「そう言えば…。そうでしたか。アイネル、そんな意図があったのか。アイネルが言うがまま、やらせておったが良い方に向かったという事か。見栄えがいいからとか綺麗だからかと思っておったわ。」

 ほう。とお父様は驚嘆して下さった。まぁ、私もクレンヴィス国の常識もよく分からずに言っていたものね。

「ありがとうございます!お義父上!」

「お、お義父上!?いや、まだ早い…いやでも…うーん…。」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

婚約者に嫌われた伯爵令嬢は努力を怠らなかった

有川カナデ
恋愛
オリヴィア・ブレイジャー伯爵令嬢は、未来の公爵夫人を夢見て日々努力を重ねていた。その努力の方向が若干捻れていた頃、最愛の婚約者の口から拒絶の言葉を聞く。 何もかもが無駄だったと嘆く彼女の前に現れた、平民のルーカス。彼の助言のもと、彼女は変わる決意をする。 諸々ご都合主義、気軽に読んでください。数話で完結予定です。

公爵令嬢は運命の相手を間違える

あおくん
恋愛
エリーナ公爵令嬢は、幼い頃に決められた婚約者であるアルベルト王子殿下と仲睦まじく過ごしていた。 だが、学園へ通うようになるとアルベルト王子に一人の令嬢が近づくようになる。 アルベルト王子を誑し込もうとする令嬢と、そんな令嬢を許すアルベルト王子にエリーナは自分の心が離れていくのを感じた。 だがエリーナは既に次期王妃の座が確約している状態。 今更婚約を解消することなど出来るはずもなく、そんなエリーナは女に現を抜かすアルベルト王子の代わりに帝王学を学び始める。 そんなエリーナの前に一人の男性が現れた。 そんな感じのお話です。

なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい

木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」 私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。 アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。 これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。 だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。 もういい加減、妹から離れたい。 そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。 だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。

婚約破棄ですか、では死にますね【完結】

砂礫レキ
恋愛
自分を物語の主役だと思い込んでいる夢見がちな妹、アンジェラの社交界デビューの日。 私伯爵令嬢エレオノーラはなぜか婚約者のギースに絶縁宣言をされていた。 場所は舞踏会場、周囲が困惑する中芝居がかった喋りでギースはどんどん墓穴を掘っていく。 氷の女である私より花の妖精のようなアンジェラと永遠の愛を誓いたいと。 そして肝心のアンジェラはうっとりと得意げな顔をしていた。まるで王子に愛を誓われる姫君のように。 私が冷たいのではなく二人の脳みそが茹っているだけでは? 婚約破棄は承ります。但し、今夜の主役は奪わせて貰うわよアンジェラ。

【完結】溺愛される意味が分かりません!?

もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢 ルルーシュア=メライーブス 王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。 学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。 趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。 有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。 正直、意味が分からない。 さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか? ☆カダール王国シリーズ 短編☆

婚約者を義妹に奪われましたが貧しい方々への奉仕活動を怠らなかったおかげで、世界一大きな国の王子様と結婚できました

青空あかな
恋愛
アトリス王国の有名貴族ガーデニー家長女の私、ロミリアは亡きお母様の教えを守り、回復魔法で貧しい人を治療する日々を送っている。 しかしある日突然、この国の王子で婚約者のルドウェン様に婚約破棄された。 「ロミリア、君との婚約を破棄することにした。本当に申し訳ないと思っている」 そう言う(元)婚約者が新しく選んだ相手は、私の<義妹>ダーリー。さらには失意のどん底にいた私に、実家からの追放という仕打ちが襲い掛かる。 実家に別れを告げ、国境目指してトボトボ歩いていた私は、崖から足を踏み外してしまう。 落ちそうな私を助けてくれたのは、以前ケガを治した旅人で、彼はなんと世界一の超大国ハイデルベルク王国の王子だった。そのままの勢いで求婚され、私は彼と結婚することに。 一方、私がいなくなったガーデニー家やルドウェン様の評判はガタ落ちになる。そして、召使いがいなくなったガーデニー家に怪しい影が……。 ※『小説家になろう』様と『カクヨム』様でも掲載しております

婚約破棄された令嬢が呆然としてる間に、周囲の人達が王子を論破してくれました

マーサ
恋愛
国王在位15年を祝うパーティの場で、第1王子であるアルベールから婚約破棄を宣告された侯爵令嬢オルタンス。 真意を問いただそうとした瞬間、隣国の王太子や第2王子、学友たちまでアルベールに反論し始め、オルタンスが一言も話さないまま事態は収束に向かっていく…。

生まれたことが間違いとまで言っておいて、今更擦り寄ろうなんて許される訳ないではありませんか。

木山楽斗
恋愛
伯父である子爵の元で、ルシェーラは苦しい生活を送っていた。 父親が不明の子ということもあって、彼女は伯母やいとこの令嬢から虐げられて、生きてきたのだ。 ルシェーラの唯一の味方は、子爵令息であるロナードだけだった。彼は家族の非道に心を痛めており、ルシェーラのことを気遣っていた。 そんな彼が子爵家を継ぐまで、自身の生活は変わらない。ルシェーラはずっとそう思っていた。 しかしある時、彼女が亡き王弟の娘であることが判明する。王位継承戦において負けて命を落とした彼は、ルシェーラを忘れ形見として残していたのだ。 王家の方針が当時とは変わったこともあって、ルシェーラは王族の一員として認められることになった。 すると彼女の周りで変化が起こった。今まで自分を虐げていた伯父や伯母やいとこの令嬢が、態度を一変させたのである。 それはルシェーラにとって、到底許せることではなかった。彼女は王家に子爵家であった今までのことを告げて、然るべき罰を与えるのだった。

処理中です...