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11. 部屋
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エーファは最初こそ自らの足で歩けない事に恥ずかしくもあったが、確かに起き上がるのも辛いため、結局は兄に運ばれる事となった。
「大丈夫、エーファの事は落としたりしないし、丸太を運ぶ訓練をよくしているからそれと一緒だよ。」
とそう言われれば、気にしなくていいのかと思うと同時に複雑であった。
(私は丸太…)
エーファは、ケヴィンの普段見る事のない甲斐甲斐しく看病しようと声を掛ける仕草に嬉しいと同時に申し訳無くもあった。
救護所の部屋にいた時は、お腹空いた?とか喉が渇いた?とやたらと聞かれ、喉が渇いたと言えば自ら騎士隊の食堂へ行き持ってきて、スプーンでひと掬いずつ飲ましてくれた。その際体勢を少し変えないといけなかったのだがエーファが痛みで顔を歪ませる度に泣きそうな顔をされるのだ。
そんな顔を見るのも申し訳ないと感じて、ちょっと休ませて、とエーファが目を瞑っていればスウスウといつの間にか寝息が聞こえ、ケヴィンの方が早く眠っていたのだった。
(打撲したらしいから、これはもう日にち薬よね。慣れるしかないわ)
エーファはそう思うが、地面に叩き付けられたようなものだったため全身に痛みがある。また、模造剣が当たった脇腹も痛い。慣れる事があるのだろうかと心配もあった。
☆★
痛みを堪えつつ運ばれた先は、騎士隊の寮の中にあるケヴィンに与えられた一室。一人部屋にしては空間はかなり広く、ベッドと簡易的な机と椅子、あとは小さな衣装棚があるのみ。他の部屋であれば四人で使う大きさの部屋を一人で使えるように不要なベッドなどは取り除かれている。奥まった隅には、簡易的な机と椅子が数個立て掛けて置いてある。
「とりあえず僕のベッドに寝かせるよ。」
「なんだ、まだ準備させてなかったのか?」
後ろからついてきたフォルクハルトが呆れたように言葉を吐く。
「僕はずっとエーファについていましたからね。今から準備してきます。
フォルクハルト司令官、ありがとうございました。」
と、ケヴィンが頭を下げる。
「いや…そうか。じゃあ手伝おう。」
「え?いいえ、滅相もない!お手を煩わせるわけには…!」
「そう気を遣うなって。
エーファ嬢も、きっと早く休みたいだろう。」
と、エーファへと視線を向けるフォルクハルトに、確かに落ち着きたいが眠気は無いと口を開く。
「あ、私はさっき充分過ぎるほど休ませてもらいました!
司令官さま、ありがとうございました。」
「はは、確かに元気そうだ!
私の事は、フォルクハルトと名前で呼んでくれて構わないよ。ではちょっと横になって待っていてくれるかな?
ケヴィンは仕事ではしっかりしているのに、ポンコツになったなぁ。さぁ、行くぞ!あ、ケヴィン鍵掛けるの忘れるなよ。」
「酷いなぁ、言われなくても行きますよ!
エーファ、一人で大丈夫?ごめん、すぐ帰ってくるから!」
そう言ってケヴィンとフォルクハルトは部屋を一旦出て行った。
(ふう…なんだか大事になっちゃった)
エーファは一人になり、今日あった事を振り返った。
コリンナと出掛ける時は、あわよくばケヴィンや騎士隊の姿が見られるかなとは思ったが、コリンナと出掛けられる事が楽しいくらいにしか考えていなかった。
それが、思わぬ結果をもたらせてしまった。ミヒャエル先生や、ロミーなど他の人達に頭は痛くないかとしきりに聞かれたが頭は鉄仮面を被っていたお陰か特に痛くは無かった。それよりも横腹と背中や腰、尻の痛みが酷い。先ほど、トイレに行くのもロミーに手伝ってもらったが一大事であった。
(お父様やお母様も驚くでしょうね…あ!ケヴィン兄さま、家に伝えてくれたのかしら?)
エーファは後で聞こうと思った。
(それにしても…あの人、どうなったのかしら。)
オットマーの振る舞いは少し横柄に感じた。だからコリンナとマルテが揉めていたが自分も腹に据え兼ねたものがあり手合わせに向かったのだ。
エーファは曲がった事があまり好きではない。だからこそ、図書館でコリンナから奪い取ったカサンドラ王女とのやり取りも少し気になったのだ。
(でも…王太子殿下にお声を掛けられたわ。)
カサンドラ王女の兄、フランツから昼間救護所を出て行く時に声を掛けられた。その時は特に嫌な感じはしなかったのだ。
自分が来ようとしなければ、フォルクハルトは不在にならなかったとは言っていたが、王太子という立場がある為、誰かがそばにいないといけないのだろうというのはエーファは理解している。それが司令官でなければいけなかったのかまでは分からないが、話し振りからして仲良さそうであったためそれが理由かもしれないとエーファはなんとなく考える。
少し意地悪く感じてしまったカサンドラと、自分のせいでもあると謝ってくれたフランツが兄妹なのはあまり結びつかないと思ってしまう。
(ま、どちらのお方とももうお会いする事は無いでしょうから、気にしないでおきましょう!)
エーファはそのように切り替えると、ベッドに横たわったまま部屋を少し見渡す。
(さっきのベッドより寝やすいわ。それに、思ったより広いお部屋なのね。)
救護所のベッドは簡素なベッドであったからか横になっていても体が痛かった。
エーファの住む、バルヒェット侯爵家のふかふかのベッドともまた違う、少し反発もあるが若干包み込まれるようなベッドはきっと辛い演習の疲れを癒やす役割もあるのではないかとエーファは考える。
寮に入りたての頃は同室の人がたくさんいて慣れないとケヴィンが言っていたと思い出すエーファ。いつの間にか一人の部屋になったんだと考えに耽っていた所で廊下からガタゴトと音が聞こえてきて、部屋の扉が叩かれた。
「エーファ、入っていい?」
「はい、どうぞ。」
そう返事をすると、ガチャガチャと鍵を開ける音がしてから扉が開けられる。
「どこに置く?ここか…こっち?」
ケヴィンとフォルクハルトが両端を持ってベッドと、シーツや布団一式をベッドに乗せて運んできたのだった。
「ありがとうございます!
えっと…どこでも。」
「入り口近くはよくないだろうから、ではそっちはどうだ?」
「あ、はい。」
と、フォルクハルトが提案してくれ、エーファがそれに答えるとケヴィンのベッドの向かいに置かれた。
「衝立もいるか?」
普段であれば、この広さの部屋にベッドが四つと、衝立である程度仕切られた空間が個人の部屋の扱いとなっているから、フォルクハルトは衝立は必要かと尋ねる。
「要りません。あったら、急変に気づけないと困りますので!」
「そうか。エーファ嬢、それでいいかな?」
「はい、ありがとうございます。」
(急変って…まぁそれほど心配してくれているのよね。)
「じゃあ後は…着替えか?ケヴィン、家には連絡を入れたか?」
「あ!いいえ、まだです。」
ケヴィンはハッとして、咄嗟に答える。
「そうか…家に連絡しなければ心配するだろう?エーファ嬢はその…侍女を連れていないみたいだし。」
「そういえばそうですね。
エーファ、今日はヘラは居なかったの?」
フォルクハルトの言葉に、今思い出したようにケヴィンは問うと、エーファが言葉を返す。
「はい。今日はコリンナの滞在するホテルにヘラと行ったんです。そこで一旦馬車とともにヘラも返しました。」
「そっか。じゃあ連絡を入れてくるよ。ついでに夕飯と、着替えも持ってこよう。」
「ありがとう、ケヴィン兄さま。」
「じゃあ私もこれで。」
と、フォルクハルトも部屋を出ようとした所で扉が叩かれた。
「誰?」
ケヴィンがそう問うと、
「バルヒェット侯爵家の使用人の方が正門に見えてます。お名前はヘラさんとお聞きしてます。
お通ししますか?」
と返答があった。騎士隊の門の所にいる係の者が、取次に来たのだ。
「え?ヘラ?うーん、そうだね。連れて来てくれる?」
「承知しました。少々お待ち下さい。」
そう返答があったあと、戻っていった。
「ヘラが来たんだ…なんだろうね。」
とケヴィンが首を傾げる。
「エーファ嬢、今日ここに来る事は伝えてあるのかな?」
とフォルクハルトが口を挟む。
「あ、いえ。家の者には伝えておりません。コリンナと出掛けるとは伝えたんですけど。」
「そうなんだね。もしかしたら、コリンナ嬢がカール殿と共に伝えに言ってくれたのかもしれないな。」
「え?」
「ええ?」
「あぁ…ケヴィンはあれからずっと救護所にいたから知らないだろうが、辺境伯軍のカール殿以外はその後の処理を多少手伝ってもらい、それが終わったら今日は解散したんだ。
カール殿は、コリンナ嬢から事情を聞くと言われて居なかったけど、謝罪がてら報告をしにバルヒェット侯爵家まで行ったのかもしれないと思ってね。」
「え、なんだか申し訳ないわ…」
「いや、まだ分からないけれどね。
というか、エーファ嬢は使用人を連れて歩かないのかな?」
「え!?今日はたまたまです。
…可笑しいでしょうか?」
「いやいや、悪く聞こえたら済まない!
私もそれほど貴族の女性のことを知っているわけじゃないが、一人じゃ危険だし使用人を引き連れているのかと思ったんだよ。」
「危険…ですか?
今日はコリンナと見学をする事を家の者には内緒にしたんです。行動するのも、コリンナと一緒だからと言えばヘラ…私の侍女なんですけれど納得してくれました。
普段は、引き連れてはいませんが図書館に行った時はヘラに一緒に行ってもらいました。…あまり出歩いてはいないので。」
「そうだよね、屋敷に引き籠もってばかりだったから余計今日は驚いたんだよ。まぁ出掛けた方がいいとは進言したけど、まさか騎士隊に来るとは思わなくてさ。」
とケヴィンが口を挟む。
「…ごめんなさい。」
「ほう。あまり出歩かなかったんだね。
でもコリンナ嬢とはどこで?すごく仲良さそうだったから。」
「あ、それは…」
と、エーファが続けて話そうとすると、再び扉が叩かれたのだった。
「大丈夫、エーファの事は落としたりしないし、丸太を運ぶ訓練をよくしているからそれと一緒だよ。」
とそう言われれば、気にしなくていいのかと思うと同時に複雑であった。
(私は丸太…)
エーファは、ケヴィンの普段見る事のない甲斐甲斐しく看病しようと声を掛ける仕草に嬉しいと同時に申し訳無くもあった。
救護所の部屋にいた時は、お腹空いた?とか喉が渇いた?とやたらと聞かれ、喉が渇いたと言えば自ら騎士隊の食堂へ行き持ってきて、スプーンでひと掬いずつ飲ましてくれた。その際体勢を少し変えないといけなかったのだがエーファが痛みで顔を歪ませる度に泣きそうな顔をされるのだ。
そんな顔を見るのも申し訳ないと感じて、ちょっと休ませて、とエーファが目を瞑っていればスウスウといつの間にか寝息が聞こえ、ケヴィンの方が早く眠っていたのだった。
(打撲したらしいから、これはもう日にち薬よね。慣れるしかないわ)
エーファはそう思うが、地面に叩き付けられたようなものだったため全身に痛みがある。また、模造剣が当たった脇腹も痛い。慣れる事があるのだろうかと心配もあった。
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「とりあえず僕のベッドに寝かせるよ。」
「なんだ、まだ準備させてなかったのか?」
後ろからついてきたフォルクハルトが呆れたように言葉を吐く。
「僕はずっとエーファについていましたからね。今から準備してきます。
フォルクハルト司令官、ありがとうございました。」
と、ケヴィンが頭を下げる。
「いや…そうか。じゃあ手伝おう。」
「え?いいえ、滅相もない!お手を煩わせるわけには…!」
「そう気を遣うなって。
エーファ嬢も、きっと早く休みたいだろう。」
と、エーファへと視線を向けるフォルクハルトに、確かに落ち着きたいが眠気は無いと口を開く。
「あ、私はさっき充分過ぎるほど休ませてもらいました!
司令官さま、ありがとうございました。」
「はは、確かに元気そうだ!
私の事は、フォルクハルトと名前で呼んでくれて構わないよ。ではちょっと横になって待っていてくれるかな?
ケヴィンは仕事ではしっかりしているのに、ポンコツになったなぁ。さぁ、行くぞ!あ、ケヴィン鍵掛けるの忘れるなよ。」
「酷いなぁ、言われなくても行きますよ!
エーファ、一人で大丈夫?ごめん、すぐ帰ってくるから!」
そう言ってケヴィンとフォルクハルトは部屋を一旦出て行った。
(ふう…なんだか大事になっちゃった)
エーファは一人になり、今日あった事を振り返った。
コリンナと出掛ける時は、あわよくばケヴィンや騎士隊の姿が見られるかなとは思ったが、コリンナと出掛けられる事が楽しいくらいにしか考えていなかった。
それが、思わぬ結果をもたらせてしまった。ミヒャエル先生や、ロミーなど他の人達に頭は痛くないかとしきりに聞かれたが頭は鉄仮面を被っていたお陰か特に痛くは無かった。それよりも横腹と背中や腰、尻の痛みが酷い。先ほど、トイレに行くのもロミーに手伝ってもらったが一大事であった。
(お父様やお母様も驚くでしょうね…あ!ケヴィン兄さま、家に伝えてくれたのかしら?)
エーファは後で聞こうと思った。
(それにしても…あの人、どうなったのかしら。)
オットマーの振る舞いは少し横柄に感じた。だからコリンナとマルテが揉めていたが自分も腹に据え兼ねたものがあり手合わせに向かったのだ。
エーファは曲がった事があまり好きではない。だからこそ、図書館でコリンナから奪い取ったカサンドラ王女とのやり取りも少し気になったのだ。
(でも…王太子殿下にお声を掛けられたわ。)
カサンドラ王女の兄、フランツから昼間救護所を出て行く時に声を掛けられた。その時は特に嫌な感じはしなかったのだ。
自分が来ようとしなければ、フォルクハルトは不在にならなかったとは言っていたが、王太子という立場がある為、誰かがそばにいないといけないのだろうというのはエーファは理解している。それが司令官でなければいけなかったのかまでは分からないが、話し振りからして仲良さそうであったためそれが理由かもしれないとエーファはなんとなく考える。
少し意地悪く感じてしまったカサンドラと、自分のせいでもあると謝ってくれたフランツが兄妹なのはあまり結びつかないと思ってしまう。
(ま、どちらのお方とももうお会いする事は無いでしょうから、気にしないでおきましょう!)
エーファはそのように切り替えると、ベッドに横たわったまま部屋を少し見渡す。
(さっきのベッドより寝やすいわ。それに、思ったより広いお部屋なのね。)
救護所のベッドは簡素なベッドであったからか横になっていても体が痛かった。
エーファの住む、バルヒェット侯爵家のふかふかのベッドともまた違う、少し反発もあるが若干包み込まれるようなベッドはきっと辛い演習の疲れを癒やす役割もあるのではないかとエーファは考える。
寮に入りたての頃は同室の人がたくさんいて慣れないとケヴィンが言っていたと思い出すエーファ。いつの間にか一人の部屋になったんだと考えに耽っていた所で廊下からガタゴトと音が聞こえてきて、部屋の扉が叩かれた。
「エーファ、入っていい?」
「はい、どうぞ。」
そう返事をすると、ガチャガチャと鍵を開ける音がしてから扉が開けられる。
「どこに置く?ここか…こっち?」
ケヴィンとフォルクハルトが両端を持ってベッドと、シーツや布団一式をベッドに乗せて運んできたのだった。
「ありがとうございます!
えっと…どこでも。」
「入り口近くはよくないだろうから、ではそっちはどうだ?」
「あ、はい。」
と、フォルクハルトが提案してくれ、エーファがそれに答えるとケヴィンのベッドの向かいに置かれた。
「衝立もいるか?」
普段であれば、この広さの部屋にベッドが四つと、衝立である程度仕切られた空間が個人の部屋の扱いとなっているから、フォルクハルトは衝立は必要かと尋ねる。
「要りません。あったら、急変に気づけないと困りますので!」
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「はい、ありがとうございます。」
(急変って…まぁそれほど心配してくれているのよね。)
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ケヴィンはハッとして、咄嗟に答える。
「そうか…家に連絡しなければ心配するだろう?エーファ嬢はその…侍女を連れていないみたいだし。」
「そういえばそうですね。
エーファ、今日はヘラは居なかったの?」
フォルクハルトの言葉に、今思い出したようにケヴィンは問うと、エーファが言葉を返す。
「はい。今日はコリンナの滞在するホテルにヘラと行ったんです。そこで一旦馬車とともにヘラも返しました。」
「そっか。じゃあ連絡を入れてくるよ。ついでに夕飯と、着替えも持ってこよう。」
「ありがとう、ケヴィン兄さま。」
「じゃあ私もこれで。」
と、フォルクハルトも部屋を出ようとした所で扉が叩かれた。
「誰?」
ケヴィンがそう問うと、
「バルヒェット侯爵家の使用人の方が正門に見えてます。お名前はヘラさんとお聞きしてます。
お通ししますか?」
と返答があった。騎士隊の門の所にいる係の者が、取次に来たのだ。
「え?ヘラ?うーん、そうだね。連れて来てくれる?」
「承知しました。少々お待ち下さい。」
そう返答があったあと、戻っていった。
「ヘラが来たんだ…なんだろうね。」
とケヴィンが首を傾げる。
「エーファ嬢、今日ここに来る事は伝えてあるのかな?」
とフォルクハルトが口を挟む。
「あ、いえ。家の者には伝えておりません。コリンナと出掛けるとは伝えたんですけど。」
「そうなんだね。もしかしたら、コリンナ嬢がカール殿と共に伝えに言ってくれたのかもしれないな。」
「え?」
「ええ?」
「あぁ…ケヴィンはあれからずっと救護所にいたから知らないだろうが、辺境伯軍のカール殿以外はその後の処理を多少手伝ってもらい、それが終わったら今日は解散したんだ。
カール殿は、コリンナ嬢から事情を聞くと言われて居なかったけど、謝罪がてら報告をしにバルヒェット侯爵家まで行ったのかもしれないと思ってね。」
「え、なんだか申し訳ないわ…」
「いや、まだ分からないけれどね。
というか、エーファ嬢は使用人を連れて歩かないのかな?」
「え!?今日はたまたまです。
…可笑しいでしょうか?」
「いやいや、悪く聞こえたら済まない!
私もそれほど貴族の女性のことを知っているわけじゃないが、一人じゃ危険だし使用人を引き連れているのかと思ったんだよ。」
「危険…ですか?
今日はコリンナと見学をする事を家の者には内緒にしたんです。行動するのも、コリンナと一緒だからと言えばヘラ…私の侍女なんですけれど納得してくれました。
普段は、引き連れてはいませんが図書館に行った時はヘラに一緒に行ってもらいました。…あまり出歩いてはいないので。」
「そうだよね、屋敷に引き籠もってばかりだったから余計今日は驚いたんだよ。まぁ出掛けた方がいいとは進言したけど、まさか騎士隊に来るとは思わなくてさ。」
とケヴィンが口を挟む。
「…ごめんなさい。」
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