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15.処遇
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フランツはものの三十分ほどで国王陛下への経緯を報告する書類を作成し、それを政務室にいた使用人に届けさせた。オットマー=デーニッツを騎士隊から除籍させ、北のフレンズブルック国に遠征させるという内容だ。
そしてデーニッツ伯爵家にもそのように報告する内容の書類も合わせて作り、了承が得られればすぐにデーニッツ伯爵家に送って欲しいと言づけも忘れない。
王族同士の繋がりもあり、それらしい人物がいれば手配してほしいとフレンズブルック国の王は内密に話を周辺諸国にしていたから、書状と共に本人を送りつけても問題は無い。
オットマーが収容されている宮殿内にある地下収容所に向かおうとフランツとフォルクハルトは政務室を出て歩き出した。
収容所は、犯罪容疑が掛かった者が連れて行かれる場所だ。身分問わず収容される場所で、仕切りはあるが鉄格子で分けられているだけで家具といえばベッドだけでかなり簡素なものだ。
他に手洗い用の水場と、用足しの場所もその中にあるが見張りの騎士が通る通路からは背丈ほどの衝立で僅かに隠れる程度で少しずれてしまえば丸見えである。
そんな収容所は、身分高い者が入れば今までいた場所とは考えられないほど劣悪な環境のため発狂したり精神を壊す者さえいる。だから外に叫び声などが漏れないよう、地下に作られているのだ。
「あぁ、そういえば…カサンドラ王女殿下、一昨日図書館に行っていたらしいな。」
「また!?
あいつ、いっつも公務や勉強を抜け出して好き勝手して…今度は何やらかしたの?」
「やらかす前提か…まぁそうだが。
コリンナ嬢が先に手にした本を、自分が読むから渡せと言い、奪い取ったそうだ。」
「はぁ…そうか。全く、あいつは…。
自分が偉いなどと勘違いしている癖を、早く直せと言ったのにまだ直せてないのか…」
「コリンナ嬢は酷く落胆していたそうだ。
そのまま家に帰り、事情を家族に説明していたら辺境軍と戦争になったかもしれんぞ?」
「…確かに。
カール殿や、バッヘム辺境伯なら家族を大切にしているからやりかねない。
え?じゃあ黙っていてくれたの?」
「いや、どうだろうか。
それが、近くにいたエーファ嬢が声を掛け、家にも同じ著者の本があるから貸そうかと提案したらしい。」
「なるほど!それであんなに仲良く見えたのか…。きっと恩を感じたのかもしれないな。
エーファ嬢のその声掛けがあったから、戦争を免れたって事だな、うんうん。」
「そうとも言える。
ベッハム辺境伯が国家に敵意が無いのは普段から充分みてとれるが、家族を蔑ろにされたらそれは分からない。ましてや辺境伯軍は強い。獰猛な野生動物と戦っているからか、気迫が違う。」
「そうだね。…やっぱり、カサンドラも処分対象だよね?」
「…正直に答えた方がいいなら答えるが…」
「当たり前だ!忖度は無しにしてくれ。国の為を思う僕の気持ち、フォルクなら知ってるだろう?」
「痛いほど知ってる。
だが、カール殿と同じようにフランツも、妹を大切に想っているんだろう?」
「だからだよ。
カサンドラが嫌いなわけじゃない。幼い頃は無垢で純粋だったんだ。だが、今はもう分別のつく十九歳で大人だ。あいつのためでもあるし、国のためでもある。
…本来なら、どこかの国の王族にでも嫁がせたかったんだけどな。」
「…そうだな。善悪の区別をしっかりつけさせられなかった周りも悪い。…いや、言っても聞かないけどさ。」
「言うね-、そうだよ。悪いのは父上と母上だ。もっと幼少期から厳しくしていれば多少は違っただろうに、今さら無理だね。
まぁ、僕も同罪だけど。」
「フランツは注意していただろう?」
「フォルクの言うとおり言っても聞かないからね、距離を置いてしまった。」
「あぁ…」
「あいつもここに連れて来ないといけないんだよな、本当は。」
「さぁな。我が儘が過ぎる、自分の気持ちに正直、と言えばそれまでだ。
だが罪状を作ろうと思えばどうとでも作れるが、別にここに連れてこなくても罪状は手配出来る。」
「そうだな…ちょっとそこは考えてみるよ。」
「フランツ、抱え込むな。」
「…ありがとう。フォルクがいて良かったよ。」
「あぁ……。
そうだ、フレンズブルック国に奴を連れて行くなら手続きが終わり次第俺が行くから言ってくれ。」
「頼めるか?」
「当たり前だ。見届けるのが筋だろ。」
「分かった、ありがとう。よろしく頼むよ。」
そう話していると、やっと地下収容所へ続く扉の前についた。重厚な扉の向こう側が、階段が長く下へと延びていて収容所に続いている。
扉の前には、騎士隊の兵士が扉を挟んで両側に一人ずつ立っている。
「フランツと騎士隊のフォルクハルト司令官だよ。
オットマーを見に来たから、中に入れてくれる?」
「はっ!」
兵士がガチャガチャと扉の鍵を開け、重い扉をこちら側に引き開けた。数歩進んだあとに今度は鉄格子があり、そこは鍵はついていないが右側と左側で引っ掛けるようになっておりフランツが開けて入っていく。通路は横に四人並べばいっぱいになるほどの広さで、等間隔に腰よりも高い位置で壁に明かりが点されているので、歩くには申し分ない明るさだ。
「何度来ても慣れないね。」
「そうだな。」
王太子と騎士隊司令官という身分の二人は、頻度はそれほど多く無いがここに来た事はある。ジメジメと湿気もあり、あまりいい環境とはいえない場所だ。
コツコツと二人の足音が響くが、下に降りていくにつれ大きな声が聞こえてきた。
「誰かきたのか!?おい、もしかして、親父か!?」
「「…」」
フランツとフォルクは顔を見合わせ、互いに一つため息を吐いた。
「おい、誰だよ!おい、出せって、なぁ??」
「煩いなぁ。ここにいるの、君一人じゃないんだからね。」
堪らずフランツが声を上げると、オットマーは更に大きな声を出した。
「だ、誰だ!?おい、こっちに来いよ、なぁ!?」
「いいから静かにしなよ。聞こえないの?」
「き、聞こえてはいるさ!だから…」
「じゃあ静かにしてよ。
あまり五月蠅くすると、周りにも迷惑だし声を出せなくしてやろうか?」
「!??」
そんな物騒な言葉が聞こえた為、さすがにオットマーは口を噤んだ。その間に、フランツとフォルクハルトはオットマーの収容された部屋の前まで来ると、フランツは軽い感じで挨拶をするように口を開いた。
「あぁ、最初からそうやって大人しくしていないとだめじゃないか。
オットマー=デーニッツ。君は近々、この国を出て、フレンズブルック国へ遠征に行く事になったよ。」
「え、は!?」
「フレンズブルック国って、どういう所か知ってる?雪が、大量に降るらしいよ。降りすぎて、外に出られないほどみたい。
あぁ、でも大丈夫。遠征とは名ばかりだし君は退屈にならないと思うよ。
だってそこの国王陛下がね、君を引き取っていい暮らしをさせてくれるんだって。良かったねー!」
「えっと…いい暮らし、ですか?」
「そう!言うことを聞いていれば、きっとそれなりの自由はあるんじゃないかな?…知らないけど。」
「え?え?フランツ王太子殿下…意味が…
そもそも、なぜ僕が!?なぜここに入れられているんですか!」
「そんな事も分からないの?騎士隊に所属してたんでしょ?何学んでたの?
…あぁ、何もしてこなかったから今ここにいるのか。過ちって本当は自分で気づいた方がいいんだけど、いつまで経っても気づけないだろうから特別に教えてあげるよ。
騎士道に反したよね?素人に手をあげたんだ。目撃者もたくさんいるから誤魔化せないからね。
でも、これでこのエルムスホルン国は暫く安泰だよ。フレンズブルック国からも優遇してもらえるなぁ。オットマー、君のおかげだね!
なぁ、フォルク?」
「そうですね。
今まで、騎士隊に所属してから真面目に過ごす日々は無いに等しいオットマーだったが、最後にいい仕事をしてくれた。それだけは感謝する。」
「え、え?司令官も、何言ってるんです?
あの!親父を、いや父上を呼んでくれませんか?父上ならきっと何とかしてくれるはず!」
「あのね、デーニッツ伯爵は伯爵としての仕事があって忙しいでしょう?
成人した出来の悪い息子の尻拭いなんて無駄な時間を使わせるのは勿体ないよ。そんな時間があれば、領民や国の為に働いてくれたほうがよっぽど実になるからね。」
「オットマー。
再三、猶予はやった。次は無いから態度を改めろと何度も言ったよな?」
「え…司令官…だって僕、伯爵家の出だし…」
この期に及んでオットマーがまだそんな口を叩くものだから、フランツが静かな怒りを込めて発言する。
「なに?君、伯爵家だったら何やってもいいって、そう言いたいの?」
「い、いえ…でも…」
「騎士隊に所属すれば、身分なんて関係ないって教わらなかった?
いや、騎士隊に限らず、街中でだってそうだよ。貴族だったら何やってもいいわけじゃない。なんで自分が偉いって錯覚しちゃうのかなぁ?」
フランツは自分の妹の事も重ね、苛つきながらそれでも感情を抑えながら話す。
「とにかく、自分がやった事に責任は持ってもらわないとね。親が何でも尻ぬぐいしてくれるなんて恥ずかしい思い、捨てなきゃ駄目だよ。」
「フランツ、告げるべき事は言った。もうここに用は無いだろう?」
そう言って、フォルクハルトはフランツの背を押す。
「…うん、そうだねありがとう。
じゃあね、オットマー。反省はしっかりするんだよ。君、素人に怪我を負わせたんだからね。」
フランツはフォルクハルトの言葉に従い、歩み出した。
「え、ち、ちょっと!待って下さい!
王太子殿下!司令官!」
もう、オットマーの声に振り返る事もなくフランツとフォルクハルトは地上へと進んで行ったのだった。
そしてデーニッツ伯爵家にもそのように報告する内容の書類も合わせて作り、了承が得られればすぐにデーニッツ伯爵家に送って欲しいと言づけも忘れない。
王族同士の繋がりもあり、それらしい人物がいれば手配してほしいとフレンズブルック国の王は内密に話を周辺諸国にしていたから、書状と共に本人を送りつけても問題は無い。
オットマーが収容されている宮殿内にある地下収容所に向かおうとフランツとフォルクハルトは政務室を出て歩き出した。
収容所は、犯罪容疑が掛かった者が連れて行かれる場所だ。身分問わず収容される場所で、仕切りはあるが鉄格子で分けられているだけで家具といえばベッドだけでかなり簡素なものだ。
他に手洗い用の水場と、用足しの場所もその中にあるが見張りの騎士が通る通路からは背丈ほどの衝立で僅かに隠れる程度で少しずれてしまえば丸見えである。
そんな収容所は、身分高い者が入れば今までいた場所とは考えられないほど劣悪な環境のため発狂したり精神を壊す者さえいる。だから外に叫び声などが漏れないよう、地下に作られているのだ。
「あぁ、そういえば…カサンドラ王女殿下、一昨日図書館に行っていたらしいな。」
「また!?
あいつ、いっつも公務や勉強を抜け出して好き勝手して…今度は何やらかしたの?」
「やらかす前提か…まぁそうだが。
コリンナ嬢が先に手にした本を、自分が読むから渡せと言い、奪い取ったそうだ。」
「はぁ…そうか。全く、あいつは…。
自分が偉いなどと勘違いしている癖を、早く直せと言ったのにまだ直せてないのか…」
「コリンナ嬢は酷く落胆していたそうだ。
そのまま家に帰り、事情を家族に説明していたら辺境軍と戦争になったかもしれんぞ?」
「…確かに。
カール殿や、バッヘム辺境伯なら家族を大切にしているからやりかねない。
え?じゃあ黙っていてくれたの?」
「いや、どうだろうか。
それが、近くにいたエーファ嬢が声を掛け、家にも同じ著者の本があるから貸そうかと提案したらしい。」
「なるほど!それであんなに仲良く見えたのか…。きっと恩を感じたのかもしれないな。
エーファ嬢のその声掛けがあったから、戦争を免れたって事だな、うんうん。」
「そうとも言える。
ベッハム辺境伯が国家に敵意が無いのは普段から充分みてとれるが、家族を蔑ろにされたらそれは分からない。ましてや辺境伯軍は強い。獰猛な野生動物と戦っているからか、気迫が違う。」
「そうだね。…やっぱり、カサンドラも処分対象だよね?」
「…正直に答えた方がいいなら答えるが…」
「当たり前だ!忖度は無しにしてくれ。国の為を思う僕の気持ち、フォルクなら知ってるだろう?」
「痛いほど知ってる。
だが、カール殿と同じようにフランツも、妹を大切に想っているんだろう?」
「だからだよ。
カサンドラが嫌いなわけじゃない。幼い頃は無垢で純粋だったんだ。だが、今はもう分別のつく十九歳で大人だ。あいつのためでもあるし、国のためでもある。
…本来なら、どこかの国の王族にでも嫁がせたかったんだけどな。」
「…そうだな。善悪の区別をしっかりつけさせられなかった周りも悪い。…いや、言っても聞かないけどさ。」
「言うね-、そうだよ。悪いのは父上と母上だ。もっと幼少期から厳しくしていれば多少は違っただろうに、今さら無理だね。
まぁ、僕も同罪だけど。」
「フランツは注意していただろう?」
「フォルクの言うとおり言っても聞かないからね、距離を置いてしまった。」
「あぁ…」
「あいつもここに連れて来ないといけないんだよな、本当は。」
「さぁな。我が儘が過ぎる、自分の気持ちに正直、と言えばそれまでだ。
だが罪状を作ろうと思えばどうとでも作れるが、別にここに連れてこなくても罪状は手配出来る。」
「そうだな…ちょっとそこは考えてみるよ。」
「フランツ、抱え込むな。」
「…ありがとう。フォルクがいて良かったよ。」
「あぁ……。
そうだ、フレンズブルック国に奴を連れて行くなら手続きが終わり次第俺が行くから言ってくれ。」
「頼めるか?」
「当たり前だ。見届けるのが筋だろ。」
「分かった、ありがとう。よろしく頼むよ。」
そう話していると、やっと地下収容所へ続く扉の前についた。重厚な扉の向こう側が、階段が長く下へと延びていて収容所に続いている。
扉の前には、騎士隊の兵士が扉を挟んで両側に一人ずつ立っている。
「フランツと騎士隊のフォルクハルト司令官だよ。
オットマーを見に来たから、中に入れてくれる?」
「はっ!」
兵士がガチャガチャと扉の鍵を開け、重い扉をこちら側に引き開けた。数歩進んだあとに今度は鉄格子があり、そこは鍵はついていないが右側と左側で引っ掛けるようになっておりフランツが開けて入っていく。通路は横に四人並べばいっぱいになるほどの広さで、等間隔に腰よりも高い位置で壁に明かりが点されているので、歩くには申し分ない明るさだ。
「何度来ても慣れないね。」
「そうだな。」
王太子と騎士隊司令官という身分の二人は、頻度はそれほど多く無いがここに来た事はある。ジメジメと湿気もあり、あまりいい環境とはいえない場所だ。
コツコツと二人の足音が響くが、下に降りていくにつれ大きな声が聞こえてきた。
「誰かきたのか!?おい、もしかして、親父か!?」
「「…」」
フランツとフォルクは顔を見合わせ、互いに一つため息を吐いた。
「おい、誰だよ!おい、出せって、なぁ??」
「煩いなぁ。ここにいるの、君一人じゃないんだからね。」
堪らずフランツが声を上げると、オットマーは更に大きな声を出した。
「だ、誰だ!?おい、こっちに来いよ、なぁ!?」
「いいから静かにしなよ。聞こえないの?」
「き、聞こえてはいるさ!だから…」
「じゃあ静かにしてよ。
あまり五月蠅くすると、周りにも迷惑だし声を出せなくしてやろうか?」
「!??」
そんな物騒な言葉が聞こえた為、さすがにオットマーは口を噤んだ。その間に、フランツとフォルクハルトはオットマーの収容された部屋の前まで来ると、フランツは軽い感じで挨拶をするように口を開いた。
「あぁ、最初からそうやって大人しくしていないとだめじゃないか。
オットマー=デーニッツ。君は近々、この国を出て、フレンズブルック国へ遠征に行く事になったよ。」
「え、は!?」
「フレンズブルック国って、どういう所か知ってる?雪が、大量に降るらしいよ。降りすぎて、外に出られないほどみたい。
あぁ、でも大丈夫。遠征とは名ばかりだし君は退屈にならないと思うよ。
だってそこの国王陛下がね、君を引き取っていい暮らしをさせてくれるんだって。良かったねー!」
「えっと…いい暮らし、ですか?」
「そう!言うことを聞いていれば、きっとそれなりの自由はあるんじゃないかな?…知らないけど。」
「え?え?フランツ王太子殿下…意味が…
そもそも、なぜ僕が!?なぜここに入れられているんですか!」
「そんな事も分からないの?騎士隊に所属してたんでしょ?何学んでたの?
…あぁ、何もしてこなかったから今ここにいるのか。過ちって本当は自分で気づいた方がいいんだけど、いつまで経っても気づけないだろうから特別に教えてあげるよ。
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なぁ、フォルク?」
「そうですね。
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成人した出来の悪い息子の尻拭いなんて無駄な時間を使わせるのは勿体ないよ。そんな時間があれば、領民や国の為に働いてくれたほうがよっぽど実になるからね。」
「オットマー。
再三、猶予はやった。次は無いから態度を改めろと何度も言ったよな?」
「え…司令官…だって僕、伯爵家の出だし…」
この期に及んでオットマーがまだそんな口を叩くものだから、フランツが静かな怒りを込めて発言する。
「なに?君、伯爵家だったら何やってもいいって、そう言いたいの?」
「い、いえ…でも…」
「騎士隊に所属すれば、身分なんて関係ないって教わらなかった?
いや、騎士隊に限らず、街中でだってそうだよ。貴族だったら何やってもいいわけじゃない。なんで自分が偉いって錯覚しちゃうのかなぁ?」
フランツは自分の妹の事も重ね、苛つきながらそれでも感情を抑えながら話す。
「とにかく、自分がやった事に責任は持ってもらわないとね。親が何でも尻ぬぐいしてくれるなんて恥ずかしい思い、捨てなきゃ駄目だよ。」
「フランツ、告げるべき事は言った。もうここに用は無いだろう?」
そう言って、フォルクハルトはフランツの背を押す。
「…うん、そうだねありがとう。
じゃあね、オットマー。反省はしっかりするんだよ。君、素人に怪我を負わせたんだからね。」
フランツはフォルクハルトの言葉に従い、歩み出した。
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王太子殿下!司令官!」
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