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17. 婚約者二人の一日
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今日もアルフォンシーナは、アンドレイニ侯爵家の屋敷へと訪問している。
あれから更に三日が経ち、明日の舞踏会の参加の為の話をすると称して、ヴァルフレードはアルフォンシーナを招いた。
「今日もお会い出来るなんて。お仕事は良かったのですか?」
「午後から休みをもらったんだよ。今まではなかなか休みをもらえなくて苦労したけれどね。アルフォンシーナに早く会いたくて、明日も会えるのに呼び寄せてしまった俺の事、嫌がってはいないだろうか。」
「まぁ!ヴァルフレード様がそのように心配なさるとは思いませんでしたわ。私も…お会いしたかったので、嬉しいですわ。」
アルフォンシーナも、照れながらもそう答えた。ヴァルフレードは惜しげもなくアルフォンシーナへ愛を伝えてくる為、アルフォンシーナも、伝えられる事は伝えようと思ったのだ。
「!!
そうか…!良かった!明日の舞踏会は、迎えに行くからね。
それで…アルフォンシーナ。お願いがあるのだが……」
「え?ヴァルフレード様が私に?何でしょうか。」
アルフォンシーナは、改まってそう言われた為に何を言われるのかと身構える。
「婚約者同士なのだし、俺の事をヴァルフレードと呼んでくれないか?」
「え!」
「いや、ほら…やはり、様と付けられると、そりゃ名前を呼ばれるだけで嬉しいけれど、でもはやりそろそろ他人行儀かと思うんだ。どうかな。試しに呼んでみてくれないか。」
(試しに、って…でも確かにそうよね。婚約者となったら、ゆくゆくは結婚して夫婦となるわけだものね…。)
「ヴァルフレード?」
「~~~!!」
ヴァルフレードは、嬉しさのあまり顔を逸らし口を押さえる。
(なんだあの上目づかいに俺に問いかけるように呼ぶなんて…!!可愛過ぎるだろ!)
「あ、ありがとう。慣れてくれ。」
(いや、そう言うけど、呼ばれた俺の方が慣れないといけないのではないか!?まともに顔を見れないぞ……だって顔を見たら、可愛過ぎて抱き締めたくなってしまう!どうすればいいんだ!?)
「ヴァルフレード?なぜこちらを見ないのですか?」
「や、そ、そんな事はない!アルフォンシーナが可愛過ぎるから、ちょっと視線をずらしているだけだ!アルフォンシーナの可愛さは視界に留めている!」
「え?」
今度はアルフォンシーナが赤面する番で、ヴァルフレードの横顔を見ると確かに顔が少し赤くなっているように見えた。
(照れていらっしゃるの?ヴァルフレード様…いえ、ヴァルフレードが?あの、いつも毅然として優雅な雰囲気を持っておられるのに。恥ずかしいとかあるのね。…私も、そう言われて恥ずかしいけれど、でもちゃんと気持ちを伝えてくれるのは嬉しいわ!)
ヴァルフレードとアルフォンシーナの交流は、こうやってお互いの気持ちを言い合うと少し間があく事もよくあった。けれどそれは、お互い、心地よい間であった。
お互いの気持ちを全身で感じ取っているのだ。そのように、穏やかにゆっくりと愛を育んでいる。
「そ、そうだ!アルフォンシーナ。明日の舞踏会には、ドレスを贈る事が出来なくて済まない。今度、贈らせてもらえないだろうか。」
少し落ち着いたヴァルフレードは、アルフォンシーナへと言葉を掛ける。
「あら!そんな。よろしいですのに…」
「いや、男として、愛する女性にドレスを贈るのは楽しみでもあるんだ。俺からのドレスを受け取ってくれるかい?」
「嬉しいわ。もちろん!」
そう微笑んだアルフォンシーナを見たヴァルフレードは、今にも抱き締めたい気持ちを押さえ、ポケットに手をあてる。
「その代わりと言ってはなんだけど、これをアルフォンシーナに。明日、付けてくれると嬉しいな。」
ポケットから取り出したのは、手のひらに入るほどの小さな小箱だった。それを開け、アルフォンシーナへと中身を見せる。
「これは、アンドレイニ侯爵家に伝わるものでね。当主の女性に代々伝えられるものだよ。デマントイドガーネットというんだ。
今回は、ドレスがどんなのか分からないけれど、どんなのにでも合いそうなやつを母が選んで、譲ると言ってくれたんだ。
付けてみてもいい?」
それは、主張し過ぎない小ぶりな宝石に金の台座がついたイヤリング。透き通るような翠色で、ヴァルフレードの瞳の色と似ていた。
「ヴァルフレードみたい…。」
アルフォンシーナがそう呟くと、ヴァルフレードはまた、思考が止まったように顔を赤くして視線を逸らした。
(アルフォンシーナ…!俺みたいだなんて…!このまま抱き締めて、部屋へ連れて行ってもいいだろうか。…いやいやいや!ダメだよな!)
頭を左右に振って雑念を飛ばしたヴァルフレードは、アルフォンシーナにイヤリングを付けようと、開けた小箱からイヤリングを取り出した。
「高価なものよね。いいのかしら。」
アルフォンシーナはそう心配したが、ヴァルフレードはそっと耳へと手を伸ばす。
「言ったろ。これはうちに伝わるものだと。俺はまだ跡を継ぐわけではないが、いずれ父の跡を引き継いで当主となる。その隣には、アルフォンシーナ以外考えられない。だから、アルフォンシーナのものだという事だよ。それに、母はもう少し大ぶりなものがいいらしい。これは使っていないんだ。だから、使ってやってくれると、こいつも喜ぶかな。」
そう言って笑うヴァルフレードに、アルフォンシーナは優しく微笑みで返した。
「ありがとう。ヴァルフレード。付けて?」
それは、アルフォンシーナにとてもよく似合っていた。アルフォンシーナは初めて、舞踏会を楽しみにしていたのだった。
あれから更に三日が経ち、明日の舞踏会の参加の為の話をすると称して、ヴァルフレードはアルフォンシーナを招いた。
「今日もお会い出来るなんて。お仕事は良かったのですか?」
「午後から休みをもらったんだよ。今まではなかなか休みをもらえなくて苦労したけれどね。アルフォンシーナに早く会いたくて、明日も会えるのに呼び寄せてしまった俺の事、嫌がってはいないだろうか。」
「まぁ!ヴァルフレード様がそのように心配なさるとは思いませんでしたわ。私も…お会いしたかったので、嬉しいですわ。」
アルフォンシーナも、照れながらもそう答えた。ヴァルフレードは惜しげもなくアルフォンシーナへ愛を伝えてくる為、アルフォンシーナも、伝えられる事は伝えようと思ったのだ。
「!!
そうか…!良かった!明日の舞踏会は、迎えに行くからね。
それで…アルフォンシーナ。お願いがあるのだが……」
「え?ヴァルフレード様が私に?何でしょうか。」
アルフォンシーナは、改まってそう言われた為に何を言われるのかと身構える。
「婚約者同士なのだし、俺の事をヴァルフレードと呼んでくれないか?」
「え!」
「いや、ほら…やはり、様と付けられると、そりゃ名前を呼ばれるだけで嬉しいけれど、でもはやりそろそろ他人行儀かと思うんだ。どうかな。試しに呼んでみてくれないか。」
(試しに、って…でも確かにそうよね。婚約者となったら、ゆくゆくは結婚して夫婦となるわけだものね…。)
「ヴァルフレード?」
「~~~!!」
ヴァルフレードは、嬉しさのあまり顔を逸らし口を押さえる。
(なんだあの上目づかいに俺に問いかけるように呼ぶなんて…!!可愛過ぎるだろ!)
「あ、ありがとう。慣れてくれ。」
(いや、そう言うけど、呼ばれた俺の方が慣れないといけないのではないか!?まともに顔を見れないぞ……だって顔を見たら、可愛過ぎて抱き締めたくなってしまう!どうすればいいんだ!?)
「ヴァルフレード?なぜこちらを見ないのですか?」
「や、そ、そんな事はない!アルフォンシーナが可愛過ぎるから、ちょっと視線をずらしているだけだ!アルフォンシーナの可愛さは視界に留めている!」
「え?」
今度はアルフォンシーナが赤面する番で、ヴァルフレードの横顔を見ると確かに顔が少し赤くなっているように見えた。
(照れていらっしゃるの?ヴァルフレード様…いえ、ヴァルフレードが?あの、いつも毅然として優雅な雰囲気を持っておられるのに。恥ずかしいとかあるのね。…私も、そう言われて恥ずかしいけれど、でもちゃんと気持ちを伝えてくれるのは嬉しいわ!)
ヴァルフレードとアルフォンシーナの交流は、こうやってお互いの気持ちを言い合うと少し間があく事もよくあった。けれどそれは、お互い、心地よい間であった。
お互いの気持ちを全身で感じ取っているのだ。そのように、穏やかにゆっくりと愛を育んでいる。
「そ、そうだ!アルフォンシーナ。明日の舞踏会には、ドレスを贈る事が出来なくて済まない。今度、贈らせてもらえないだろうか。」
少し落ち着いたヴァルフレードは、アルフォンシーナへと言葉を掛ける。
「あら!そんな。よろしいですのに…」
「いや、男として、愛する女性にドレスを贈るのは楽しみでもあるんだ。俺からのドレスを受け取ってくれるかい?」
「嬉しいわ。もちろん!」
そう微笑んだアルフォンシーナを見たヴァルフレードは、今にも抱き締めたい気持ちを押さえ、ポケットに手をあてる。
「その代わりと言ってはなんだけど、これをアルフォンシーナに。明日、付けてくれると嬉しいな。」
ポケットから取り出したのは、手のひらに入るほどの小さな小箱だった。それを開け、アルフォンシーナへと中身を見せる。
「これは、アンドレイニ侯爵家に伝わるものでね。当主の女性に代々伝えられるものだよ。デマントイドガーネットというんだ。
今回は、ドレスがどんなのか分からないけれど、どんなのにでも合いそうなやつを母が選んで、譲ると言ってくれたんだ。
付けてみてもいい?」
それは、主張し過ぎない小ぶりな宝石に金の台座がついたイヤリング。透き通るような翠色で、ヴァルフレードの瞳の色と似ていた。
「ヴァルフレードみたい…。」
アルフォンシーナがそう呟くと、ヴァルフレードはまた、思考が止まったように顔を赤くして視線を逸らした。
(アルフォンシーナ…!俺みたいだなんて…!このまま抱き締めて、部屋へ連れて行ってもいいだろうか。…いやいやいや!ダメだよな!)
頭を左右に振って雑念を飛ばしたヴァルフレードは、アルフォンシーナにイヤリングを付けようと、開けた小箱からイヤリングを取り出した。
「高価なものよね。いいのかしら。」
アルフォンシーナはそう心配したが、ヴァルフレードはそっと耳へと手を伸ばす。
「言ったろ。これはうちに伝わるものだと。俺はまだ跡を継ぐわけではないが、いずれ父の跡を引き継いで当主となる。その隣には、アルフォンシーナ以外考えられない。だから、アルフォンシーナのものだという事だよ。それに、母はもう少し大ぶりなものがいいらしい。これは使っていないんだ。だから、使ってやってくれると、こいつも喜ぶかな。」
そう言って笑うヴァルフレードに、アルフォンシーナは優しく微笑みで返した。
「ありがとう。ヴァルフレード。付けて?」
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