【完結】いつも微笑んでいる侯爵様とニコリともしない伯爵令嬢のお話

まりぃべる

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18. 舞踏会での謝罪

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 微笑みを絶やさない侯爵と、笑顔が無かった伯爵令嬢は今、かなりの注目を浴びていたーーー。


 今夜は、舞踏会。


 アルフォンシーナは、ヴァルフレードにエスコートされながら会場へと入った。
 今日初めて、家族とは一緒の馬車に乗らず、ヴァルフレードが迎えに来てその馬車に乗って来たのだ。


 馬車止めでも、ヴァルフレードが初めて馬車から女性を下ろす為にエスコートをする。それが愛想が無かったアルフォンシーナだったから、周囲の人達が一斉にざわついた。しかも、アルフォンシーナが笑顔でヴァルフレードへと視線を送っていたのだ。ヴァルフレードもいつもニコニコと皆に振り撒いていた笑顔とは違い、心から愛おしい誰もが分かるような表情でアルフォンシーナへと視線を向けていた。


 秘かにヴァルフレードを狙っていた女性達はハンカチを握りしめていたり、人目も憚らず地団駄を踏んでいた。

 しかし、絵になるその様子に、ほぅと息を漏らして見惚れるものも多くいた。


(思った以上だ…アルフォンシーナをから守り抜かねば!)


 まだ、公にむけて婚約発表をしたわけではないから、ヴァルフレードは今までもアルフォンシーナへ近づくものへ牽制はしていたが、より一層気を付けなければと新たに思った。





「アルフォンシーナ。テレンツィオ王子が挨拶をされたいと言ってきた。一緒に来てくれるか。」


 ヴァルフレードと共に会場で、話しかけられた友人達に囲まれていた時に、アルフォンシーナは近寄って来たバジーリオにそう言われた。


「はい。お父様。」

「バジーリオ伯爵。私もご一緒してよろしいでしょうか。」


 ヴァルフレードは、バジーリオへとそう堪らず声を掛ける。バジーリオは視線を送り、頷くとすぐに王族が座っている方に向かったので、アルフォンシーナと一緒に向かう事とした。


「挨拶って、謝罪だろうか。」


 ヴァルフレードが、アルフォンシーナへとそう声を掛ける。先日の、パルミーロ第二王子が出来事は、全員が見ていたわけではないが、知っている者は知っている。だが、今回は公の場であるから、形だけの挨拶、という名の謝罪だとヴァルフレードは思った。 


「ええ…。」


 アルフォンシーナも、少し口数が少なく、緊張して向かう。


「大丈夫。俺がいるから。」


 ヴァルフレードは、アルフォンシーナへとそう言葉を掛ける。


(本当は、アルフォンシーナを向かわせたくない。テレンツィオ王子が、アルフォンシーナを見て、どう思うだろうか。いや、逆もしかり、か…アルフォンシーナ、どうか、テレンツィオ王子に心惹かれたりしないでくれ…!)


 ヴァルフレードもまた、緊張して進んだ。




☆★

「私の娘、アルフォンシーナと、その婚約者の、ヴァルフレード=アンドレイニです。」


 バジーリオは、テレンツィオ王子が座っている席に向かうと、そう簡単な挨拶をした。


「やぁ、君が…。私は、フィラハ国のテレンツィオです。この度は…いや。と……。
いえ。我がフィラハ国は、なかなかの後進国であるから、コネリアーノ国から学ぶ事はたくさんあると思っています。これからも、この素晴らしいコネリアーノ国と友好関係を築いていけたらと思っています。ですから、気が向いたらでいいので、ぜひとも我が国に遊びに来て下さい。新婚旅行でもね。」


 テレンツィオは、アルフォンシーナにどうしても謝罪がしたいから会う機会を設けて欲しいとピエトロに伝えた。しかし、ピエトロと一緒にいたアルフォンシーナの義兄のベルトルドは、即答はしなかった。バジーリオだったら、愛娘に謝罪とはいえ、王宮に呼び出して会わせようとするかと思案したのだ。
 否、絶対に断るだろうと見越す。しかし、断っただけではきっとフィラハ国のメンツが立たないだろうとしばらく考え、『舞踏会にピエトロのであるバジーリオの娘を紹介する分には問題ないだろう』と提示した。その際、『アルフォンシーナには婚約者がいるのでそちらも同席する』事をもちろん告げたのだ。なぜ、ヴァルフレードもとそう言ったのかは、なんとなくの牽制である。
 ベルトルドは、以前からヴァルフレードがアルフォンシーナへ求婚の申し込みをしているのを知っていた。家族で話題になっていたからだ。
それにピエトロを迎えに行く際、義実家の部屋にはヴァルフレードとその父ボニートが正装していた為に瞬時に理解したのだ。『あぁ、やっと義父が許したのだ』と。
 バジーリオが三姉妹を溺愛しているのを知っている。そして、末娘には特に甘い事も。しかし、パルミーロが起こしたが引き起こってしまった。万が一また他の輩に可愛い愛娘が言い寄られないとも限らない為、早々に手を打ったのだと。


「勿体ないお言葉、感謝申し上げます。はい。もしもフィラハ国へ伺う際には、私は一介の貴族なだけでございますからが、楽しませていただきます。
きっと、王子が国王となられた暁には、距離があるとはいえ友好国となっているでしょうから、気軽に行き来できるようになると思いますもの。」


 アルフォンシーナは、暗にパルミーロには会わない事を告げたのだ。


「……そうだね。僕は、近い内に国王となる。その為に各国と交流を深めに外遊しているのです。では、お幸せに。
…もっと早くあなたに会えていれば良かった。」

「テレンツィオ王子、今日はこのような機会をありがとうございます。テレンツィオ王子にも、輝かしい未来が待っている事と思います。では、失礼致します。」


 ヴァルフレードが後ろを見ながらそう挨拶をして、バジーリオにも視線を送り、アルフォンシーナの腰に手を添えて先を進んだ。
後ろには、テレンツィオと顔を繋ぎたい貴族が列を成していた。それを逆手に取り、切り上げたのだ。


(最後、何て言った?早くあなたに会えていれば?俺なんて、九年だぞ九年!国の王子がなんだ!
七歳の時のアルフォンシーナなんて、と、騎士になどと敬称を付けてキラキラとした目で俺を見たんだぞ?絶対に渡さないからな!)


 ヴァルフレードは睨みを効かせていたものの公の場である為に表情にはそれほど出していなかった。
しかしその実、王子相手に腸が煮えくりかえる程苛立っていたのだった。
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