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19. ダンスの誘い
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「ヴァルフレード?」
アルフォンシーナは、ヴァルフレードが何も話して来ないのでそう振り返り声を掛ける。
「あ、す、済まない…。テレンツィオ王子が、アルフォンシーナを口説こうとしていたから苛立ってしまったよ。では、気を取り直して。
…アルフォンシーナ、あなたと踊る栄誉を私に与えて下さいませんか?」
ヴァルフレードは、軽く体を屈めて恭しくそう言った。
「まぁ!フフフ。えぇ、喜んで!」
アルフォンシーナは初めて、ダンスの誘いに乗り、にこやかにダンスフロアへと向かった。
ヴァルフレードは、普段舞踏会に参加してもダンスを踊らない。それは男性にしては珍しいのだが、ヴァルフレードは友人達と会話をしながら、アルフォンシーナへと視線を向け、近寄りそうな輩がいればそれとなくアルフォンシーナへと距離を詰め、その輩へ睨みを効かせて蹴散らしていたのだ。…たまに間に合わずに、輩がアルフォンシーナを誘うが、見事に玉砕していた。
普段ダンスフロアにいない二人が笑みを浮かべて軽やかにステップを踏んでいるのを見て、周りの者達は驚くと共に見惚れていた。
ヴァルフレードへと普段熱い視線を送っている令嬢達は、自分達にいつも振り撒いてくれる笑顔とは明らかに違う顔をアルフォンシーナへと向けている為に諦める者も多かった。尤も、推しのような者で、本命は別にいる令嬢も少なくは無かった。
アルフォンシーナは顔が整っている為、愛想は無かったが狙っている令息もかなりいた。だが、今まで見た事もない大輪が咲いたような華やかな笑顔をヴァルフレードへと向けているのを見て、見惚れると同時に恋に破れてもいた。
「アルフォンシーナ。あぁ…君と踊れる日が来るなんて。本当に幸せだよ。」
「ヴァルフレードったら…。でも、私もよ。私も、こんな風に踊れるとは思ってもみなかったわ。」
「アルフォンシーナ、そんな風に言ってくれて嬉しいよ。
…幼い日の君には、言葉足らずで傷つけてごめん。でも、アルフォンシーナが他の奴と踊らないでいてくれたからこそ、今、俺は皆の前でこうしてアルフォンシーナの初めてのダンスのパートナーとして踊れて本当に嬉しいんだ。見てくれよ、今日の参加者はアルフォンシーナがこんなに可愛い笑顔が出来る女性だったのかと、男性陣は皆、悔しい顔をしているよ。」
「もう…!そんな事はないわ。
けれど、そうね。私も、誘いを断っていたからこそ、ヴァルフレードと初めてのダンス、…を踊れ…たの?」
「ん?どうしたの?アルフォンシーナ。」
(待って…仮装祭りで、私は仮面を被ってダンスを踊ったわ。その時も、爽やかな香りをしている年上の男の子と踊ったのよ。それって…)
「ねぇ、ヴァルフレード。あなたって…もしかして、フレード?」
「え?フレード?…あぁ、仮装祭りの事かな?シーナ。」
「!!」
(そうだったの!?なんだ…そっか。良かった…!)
「フフフ。もう!そうなら言ってくれても良かったのに!」
「え?言ったら、きっと断られたかと思ってね。
初めはもちろん、何故?と思ったよ。仮装祭りなんて、行った事なかったから。でも、アルフォンシーナ…シーナと一緒に過ごせて、本当に嬉しかったんだ。正体が分からなかったからこそ、アルフォンシーナは、会話をしてくれたのだとカンディダやブルニルタに言われたし。
国防軍に入隊してからも毎年シーナの元へ行きたかったのに、仕事がそうはさせてくれなくて。手紙を送るのにも、もう出すのが怖くなってね。出さなかったらそれだけで接点が無くなるから嫌だったんだけど、もしも返事が来て、いつなら参加出来る?と聞かれたらと。入団したての頃なんて、希望の休みなんてそうそう取れないからね。ましてや新米は地方の警備が主な仕事だ。
それに、父からはとりあえずは仕事に集中しろとも言われたし。」
「フレード…」
「なに?シーナ!」
「もう!…でも、良かった……。」
「え?何が?」
「相手が、フレードでって事よ。」
「どうして?」
「どうしてって…」
「ねぇ、どうして俺で良かったの?違う人がとか思った?」
「思ってないわ!フレードだったら、って思ってはいたわ。だって…仮面を被っていたら、顔の表情なんて分からないもの。馬鹿にされたりしないし、気楽で、それでいて楽しかったから、待ち遠しかったのよ。だから…」
「あぁ、ごめんよ、シーナ。
もうそんな顔、ここではしないでくれよ。あーいや、ダメというか、可愛過ぎるんだ。他の奴には見せたくないよ。シーナ、愛しているよ。今すぐ抱き締めたいよ。」
「や、やだわ!ヴァルフレードったら!」
「あー戻ってしまったか。ねぇ、フレードって呼んでいいんだよ。」
「もう!た、たまになら、呼んであげますわ!」
「怒った顔も可愛いね、シーナ。」
ヴァルフレードとアルフォンシーナは、囁き合いながら軽やかに、今まで踊れなかった時間を取り戻すかのようにいつまでも踊っていたのだった。
アルフォンシーナは、ヴァルフレードが何も話して来ないのでそう振り返り声を掛ける。
「あ、す、済まない…。テレンツィオ王子が、アルフォンシーナを口説こうとしていたから苛立ってしまったよ。では、気を取り直して。
…アルフォンシーナ、あなたと踊る栄誉を私に与えて下さいませんか?」
ヴァルフレードは、軽く体を屈めて恭しくそう言った。
「まぁ!フフフ。えぇ、喜んで!」
アルフォンシーナは初めて、ダンスの誘いに乗り、にこやかにダンスフロアへと向かった。
ヴァルフレードは、普段舞踏会に参加してもダンスを踊らない。それは男性にしては珍しいのだが、ヴァルフレードは友人達と会話をしながら、アルフォンシーナへと視線を向け、近寄りそうな輩がいればそれとなくアルフォンシーナへと距離を詰め、その輩へ睨みを効かせて蹴散らしていたのだ。…たまに間に合わずに、輩がアルフォンシーナを誘うが、見事に玉砕していた。
普段ダンスフロアにいない二人が笑みを浮かべて軽やかにステップを踏んでいるのを見て、周りの者達は驚くと共に見惚れていた。
ヴァルフレードへと普段熱い視線を送っている令嬢達は、自分達にいつも振り撒いてくれる笑顔とは明らかに違う顔をアルフォンシーナへと向けている為に諦める者も多かった。尤も、推しのような者で、本命は別にいる令嬢も少なくは無かった。
アルフォンシーナは顔が整っている為、愛想は無かったが狙っている令息もかなりいた。だが、今まで見た事もない大輪が咲いたような華やかな笑顔をヴァルフレードへと向けているのを見て、見惚れると同時に恋に破れてもいた。
「アルフォンシーナ。あぁ…君と踊れる日が来るなんて。本当に幸せだよ。」
「ヴァルフレードったら…。でも、私もよ。私も、こんな風に踊れるとは思ってもみなかったわ。」
「アルフォンシーナ、そんな風に言ってくれて嬉しいよ。
…幼い日の君には、言葉足らずで傷つけてごめん。でも、アルフォンシーナが他の奴と踊らないでいてくれたからこそ、今、俺は皆の前でこうしてアルフォンシーナの初めてのダンスのパートナーとして踊れて本当に嬉しいんだ。見てくれよ、今日の参加者はアルフォンシーナがこんなに可愛い笑顔が出来る女性だったのかと、男性陣は皆、悔しい顔をしているよ。」
「もう…!そんな事はないわ。
けれど、そうね。私も、誘いを断っていたからこそ、ヴァルフレードと初めてのダンス、…を踊れ…たの?」
「ん?どうしたの?アルフォンシーナ。」
(待って…仮装祭りで、私は仮面を被ってダンスを踊ったわ。その時も、爽やかな香りをしている年上の男の子と踊ったのよ。それって…)
「ねぇ、ヴァルフレード。あなたって…もしかして、フレード?」
「え?フレード?…あぁ、仮装祭りの事かな?シーナ。」
「!!」
(そうだったの!?なんだ…そっか。良かった…!)
「フフフ。もう!そうなら言ってくれても良かったのに!」
「え?言ったら、きっと断られたかと思ってね。
初めはもちろん、何故?と思ったよ。仮装祭りなんて、行った事なかったから。でも、アルフォンシーナ…シーナと一緒に過ごせて、本当に嬉しかったんだ。正体が分からなかったからこそ、アルフォンシーナは、会話をしてくれたのだとカンディダやブルニルタに言われたし。
国防軍に入隊してからも毎年シーナの元へ行きたかったのに、仕事がそうはさせてくれなくて。手紙を送るのにも、もう出すのが怖くなってね。出さなかったらそれだけで接点が無くなるから嫌だったんだけど、もしも返事が来て、いつなら参加出来る?と聞かれたらと。入団したての頃なんて、希望の休みなんてそうそう取れないからね。ましてや新米は地方の警備が主な仕事だ。
それに、父からはとりあえずは仕事に集中しろとも言われたし。」
「フレード…」
「なに?シーナ!」
「もう!…でも、良かった……。」
「え?何が?」
「相手が、フレードでって事よ。」
「どうして?」
「どうしてって…」
「ねぇ、どうして俺で良かったの?違う人がとか思った?」
「思ってないわ!フレードだったら、って思ってはいたわ。だって…仮面を被っていたら、顔の表情なんて分からないもの。馬鹿にされたりしないし、気楽で、それでいて楽しかったから、待ち遠しかったのよ。だから…」
「あぁ、ごめんよ、シーナ。
もうそんな顔、ここではしないでくれよ。あーいや、ダメというか、可愛過ぎるんだ。他の奴には見せたくないよ。シーナ、愛しているよ。今すぐ抱き締めたいよ。」
「や、やだわ!ヴァルフレードったら!」
「あー戻ってしまったか。ねぇ、フレードって呼んでいいんだよ。」
「もう!た、たまになら、呼んであげますわ!」
「怒った顔も可愛いね、シーナ。」
ヴァルフレードとアルフォンシーナは、囁き合いながら軽やかに、今まで踊れなかった時間を取り戻すかのようにいつまでも踊っていたのだった。
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