【完結】いつも微笑んでいる侯爵様とニコリともしない伯爵令嬢のお話

まりぃべる

文字の大きさ
12 / 31

12. 本当に畏怖する人物

しおりを挟む
 ボニートは、伯爵家といえどもコネリアーノ国で一番影響力のあるバジーリオを怒らせてしまったと焦っていた。しかし、下手に口を開いても余計に怒らせるだけだと考え倦ねている。騎士団長でもあり、普段は決断力も即決する能力も素晴らしくあるのだが、今だけは迷っていた。


 ヴァルフレードも、普段優秀である為こんなに怒られた事もない。
また、この婚約の話は昨夜屋敷に帰ってから聞いたのだ。バジーリオ伯爵にも思惑があるが、こちらの打診を受けると言ってくれたのだから朝一にソルディーニ家へ向かうと。その際、『バジーリオ伯爵は、今は地位は違うとはいえ、国王よりも威厳があるお方。節度ある態度でいかねば、婚約話は無くなると思いなさい』と口酸っぱく言われたのだ。
そして、それは、残念ながら的中してしまった。
その為、どう反応すればいいのか迷っている。


 しかし、そこでいち早く動いたのは、アルフォンシーナだった。結婚が無くなると言われ、さすがに勝手に決めないで、と思ったからだ。


「お父様?私、先ほどなんとお伝えしたか覚えておりますの?」

「…なにがだ。」


 叫び終わり、フーフーと肩で息をしていたが、怒りが少しだけ落ち着いたのだろう。アルフォンシーナの静かな語りかけにバジーリオは言葉だけで対応する。


「私は、落ち着いて、と言いました。私はすでに、何があろうとヴァルフレード様と婚約を結べるものと思っております。お父様はこの話をして下さった時に、私に『選べ』と申しました。だから私は選びましたのよ、ヴァルフレードと婚約を結ぶ事を。それを、お父様の勝手な感情で無かった事にすると仰るのですか?お父様は、私の幸せを勝手に踏みにじると仰るのですか!?」


 アルフォンシーナは、静かに怒りを露わにしたのだ。その怒りは、娘を大事に想って言葉を発したと思っていたバジーリオにかなりの衝撃を与えた。
 アルフォンシーナもまた、遥か昔、コネリアーノ国の王城がウディネにあった頃の王族の血が流れているのだ。人を黙らせるような圧を発していた。しかも、可愛い愛娘から叱られたのだ。


「あ、アルフォンシーナ…だってね…」

「だってね、ではありません!そもそも、私は七歳の頃の事は覚えていないのです。だから、それは今関係ありません。そうですよね?お父様?」

「うむ…いや、しかし…」

「お父様!!」

「……お前は、ヴァルフレードと結婚したいのか。」

「そう申し上げています!私の言葉を聞いてらっしゃらなかったの!?」

「いや、聞いておったとも。わかった……ボニート殿、ヴァルフレード殿。申し訳無かった。頭に血が上ってしまった。書類を作成していただけるか。」

「…よろしいのですか。」

「う、うむ…アルフォンシーナが言うのだ。確かに素行は、申し訳ないが調べさせてもらっているが、ヴァルフレードは何の問題も無いのだ。むしろこれ以上の人物は探すのに苦労するほどである。
だから、まぁ、アルフォンシーナの相手には不足ない。あのバカ王子の対応も国防軍の協力も必要だろう。済まなかった。よろしく頼む。」


(いやー、一時はどうなるかとおもったが、バジーリオ伯爵の機嫌が持ち直して良かった。真に怒らせると怖いのは、アルフォンシーナ嬢の方かもしれない…。)


(バジーリオ伯爵はさすが国王よりも迫力があったが、それを沈めたアルフォンシーナもすごいな…怒らせないようにしなければ。まぁ、そんな事はないだろうが。)


 ボニートとヴァルフレードも、そう心の中で思った。


(しかし…バジーリオ伯爵が言った言葉も気になる。あとで聞いてみたいが、バジーリオ伯爵の機嫌を損ねてもいけないか。アルフォンシーナは覚えていないと言ったし…もし本当に、俺が言った言葉を忠実に守っていたのだとしたら…?何気なくそう思ったのだが、そうなのかもしれない。それであれば俺は…。)


 ヴァルフレードはアルフォンシーナヘ償いたいと思った。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

割込み王女に祝福を(婚約解消いただきました。ありがとうございました)

久留美眞理
恋愛
 没落貴族の令嬢ベアトリックスは、父を亡くした後、母の再婚相手のブライトストーン子爵の養女となった。この義父の借金を返済するために、義父によって新興成金の息子エドワードとの縁談を画策されてしまう。家門を救い、母を守るため、彼女はこの結婚を受け入れる決意をし、エドワードと婚約が成立した。ところが、王宮の茶会で会った王家の第三王女が、エドワードにひと目惚れ、ベアトリックスは婚約を解消されてしまった。借金を肩代わりしてもらえたうえ、婚約破棄の慰謝料まで貰い、意に添わぬ結婚をしなくてよくなったベアトリックスはしてやったりと喜ぶのだが・・・次に現れた求婚者はイトコで軍人のレイモンド。二人は婚約したが、無事に結婚できるのか?それともまた一波乱あるのか?ベアトリックスの幸福までの道のりを描いた作品 今度の婚約は無事に結婚というゴールにたどり着けるのか、それとも障害が立ちはだかるのか?ベアトリックスがつかむ幸福とは?

殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!

さら
恋愛
 王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。  ――でも、リリアナは泣き崩れなかった。  「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」  庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。  「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」  絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。  「俺は、君を守るために剣を振るう」  寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。  灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。

新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました

ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」 政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。 妻カレンの反応は—— 「それ、契約不履行ですよね?」 「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」 泣き落としは通じない。 そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。 逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。 これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。

病弱令嬢ですが愛されなくとも生き抜きます〜そう思ってたのに甘い日々?〜

白川
恋愛
病弱に生まれてきたことで数多くのことを諦めてきたアイリスは、無慈悲と噂される騎士イザークの元に政略結婚で嫁ぐこととなる。 たとえ私のことを愛してくださらなくても、この世に生まれたのだから生き抜くのよ────。 そう意気込んで嫁いだが、果たして本当のイザークは…? 傷ついた不器用な二人がすれ違いながらも恋をして、溺愛されるまでのお話。

何度時間を戻しても婚約破棄を言い渡す婚約者の愛を諦めて最後に時間を戻したら、何故か溺愛されました

海咲雪
恋愛
「ロイド様、今回も愛しては下さらないのですね」 「聖女」と呼ばれている私の妹リアーナ・フィオールの能力は、「モノの時間を戻せる」というもの。 姉の私ティアナ・フィオールには、何の能力もない・・・そう皆に思われている。 しかし、実際は違う。 私の能力は、「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」。 つまり、過去にのみタイムリープ出来るのだ。 その能力を振り絞って、最後に10年前に戻った。 今度は婚約者の愛を求めずに、自分自身の幸せを掴むために。 「ティアナ、何度も言うが私は君の妹には興味がない。私が興味があるのは、君だけだ」 「ティアナ、いつまでも愛しているよ」 「君は私の秘密など知らなくていい」 何故、急に私を愛するのですか? 【登場人物】 ティアナ・フィオール・・・フィオール公爵家の長女。リアーナの姉。「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」能力を持つが六回目のタイムリープで全ての力を使い切る。 ロイド・エルホルム・・・ヴィルナード国の第一王子。能力は「---------------」。 リアーナ・フィオール・・・フィオール公爵家の次女。ティアナの妹。「モノの時間を戻せる」能力を持つが力が弱く、数時間程しか戻せない。 ヴィーク・アルレイド・・・アルレイド公爵家の長男。ティアナに自身の能力を明かす。しかし、実の能力は・・・?

遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした

おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。 真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。 ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。 「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」 「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」 「…今度は、ちゃんと言葉にするから」

勘違い令嬢の離縁大作戦!~旦那様、愛する人(♂)とどうかお幸せに~

藤 ゆみ子
恋愛
 グラーツ公爵家に嫁いたティアは、夫のシオンとは白い結婚を貫いてきた。  それは、シオンには幼馴染で騎士団長であるクラウドという愛する人がいるから。  二人の尊い関係を眺めることが生きがいになっていたティアは、この結婚生活に満足していた。  けれど、シオンの父が亡くなり、公爵家を継いだことをきっかけに離縁することを決意する。  親に決められた好きでもない相手ではなく、愛する人と一緒になったほうがいいと。  だが、それはティアの大きな勘違いだった。  シオンは、ティアを溺愛していた。  溺愛するあまり、手を出すこともできず、距離があった。  そしてシオンもまた、勘違いをしていた。  ティアは、自分ではなくクラウドが好きなのだと。  絶対に振り向かせると決意しながらも、好きになってもらうまでは手を出さないと決めている。  紳士的に振舞おうとするあまり、ティアの勘違いを助長させていた。    そして、ティアの離縁大作戦によって、二人の関係は少しずつ変化していく。

処理中です...