【完結】周りの友人達が結婚すると言って町を去って行く中、鉱山へ働くために町を出た令嬢は幸せを掴む

まりぃべる

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8. 鉱山での仕事

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 通路は、昼休憩が終わるからか結構な人達がぞろぞろと歩いていて、アレッシアは圧倒された。


(はぐれるなよ、って確かにはぐれそうだわ。)


 通路は、まっすぐと進むのだが時折分かれ道があり、そこを曲がって行く人達もいる。きっと作業する場所がたくさんあるのだろうとアレッシアは思った。


(まるで迷路みたいね。)


 坑道は、景色が変わらない為同じように見えてしまう。迷わないようにしないと、と気を引き締めてジャンパオロについていく。




「ここが俺達の作業場。どんどん壁を掘り進んで行くんだ。それによって出た土や岩やなんかを、あの台車に乗せて中央屑置き場へ持って行く。
…アレッシアは初めて来たし、スコップで掘ってくれ。」

「うん、分かった。」


 少し歩くと、開けた場所に着きジャンパオロにそう言われる。長い柄のついたスコップや台車などの道具は広くなった所に乱雑に置かれていた。


 辺りを見渡すと、年齢は様々だが三十人ほどの男性達が同じような薄汚れた服をきている。頭に布を巻いている人や、髭を生やした人もいて、若いのはアレッシア達くらいであった。


「よう坊主!新入りか!?」


 そこへ、頭に布を巻いた体格の大きな男性が話し掛けてきた。


「…あぁ。」


 それに、ぶっきらぼうにジャンパオロが答える。


「相変わらずだなぁ、坊主は!
ん?…新入り、痩せてんなぁ!ここじゃそんな痩せっぽっちはすぐくたばっちまうぞ!食事、たんとお代わりして体を大きくしねぇとな!体調壊すんじゃねぇぞ!」

「は、はい。」

「じゃ、なんかあれば、採掘班長のパオロ様に相談するんだぞ!無理すんなよ!」


 ガハハハと、大きな口を開けて笑いながらアレッシア達から離れて台車の方へとパオロは行ってしまった。


「ふん!
あいつはここの班の班長だ。悪い奴ではないが、あの通り豪快な奴だ。」


 ジャンパオロは、自分よりもひとまわり以上も年齢が上に見える相手の事をそう言ってアレッシアへと教える。

 そこへ、グイドが戻ってきた。


「お待たせしました。
アレッシア、今日は初めてでしょうから無理をしませんように。」


 そう言って、道具を持ってきてくれた。


「いいですか、このように掘るんですよ。足を使って。そう、そうです。」


 グイドに教えてもらいながら、アレッシアは目の前にある坑道を掘り進めていった。





ーーー
ーー



カンカンカンカン…


「よーし、終わりだ!」


 どこからともなく甲高い音が鳴り響くと、パオロがそう言った。時間を知らせる合図だ。
働いていた人々は、道具を元あったようにそれぞれ置いていく。


「ハー終わった!」
「お疲れ-!」
「やった、飯だ-!」


 それぞれに声を上げ、また部屋や食堂の方へと戻っていった。


(思ったより疲れたわ…)


 アレッシアは、スコップで土壁を掘っていた。時折、硬い土や岩が出てきたりすれば力を入れ直し、息を荒げながらやっていた。そこは何が取れるのか、アレッシアには分からなかったがひたすら掘って先を進めて行った。


「僕らも行きましょう。
疲れたでしょう、早くお腹を満たせば疲れも少しは吹き飛びます。」

「あー腹減った!でも、あの人が多い食堂は苦手なんだよなー。行きたかねーけど仕方ねぇよな。席も急がねぇと座れねーし。」

「けれど、そのような事も慣れていきませんとね。
さ、アレッシア。早く行きましょう。」

「うん。」


 そう言われ、急いだ方がいいのかとアレッシアは駆け出そうとする。


「アレッシア、走るなよ!危ねぇだろ!」

「ジャンパオロが急かすからアレッシアが気を遣ってしまったのでしょうに。
アレッシア、ジャンパオロはお子様ですから、様々な経験をさせた方が良いのです。だから、席が埋まっていれば待てばいいのですから気になさいませんよう。」

「止めろよ!おれと三歳しか違わないくせに子ども扱いするなよ!」

「はいはい。では参りましょう。」


 アレッシアは、そのようにジャンパオロが言い、グイドがあしらうように話している姿を見て仲が良いと思った。


「ふふふ。」

「む。アレッシア、笑うなよ!」

「ごめんなさい。仲が良いなと思って。ジャンパオロさんは幾つなの?グイドさんも、私と同じくらいなのかしら。」

「ジャンパオロは十四、僕が十七ですよ。アレッシアは?」

「私は十六歳。
そっか、二人共、兄弟みたいね。」

「はぁー!?止めろよ、グイドが兄なんて!
てか…アレッシア十六なんだな。おれと同じくらいかと思ったんだけど。」

「さすがにそんな訳ないでしょうに!
…オホン、さぁ食堂に着きました。席を探しましょう。」


 グイドはそう言ってから、広い空間が広がる食堂へとついたからか咳払いをして、話を止めたのだった。






☆★

「あー今日も美味かったな!」


 夕食が終わり、ジャンパオロが腹をさすりながらそう大きな声を出す。


「そうですね、食事だけが楽しみですからね。」


 そう言ったグイドも、ちょっと食べ過ぎたかなと腹をさすっている。

 アレッシアが周りを見ると、食べ終えるとすぐに席を立っていく人達が増え、先ほどまでは満席であった石の椅子も、だんだんと空席が目立つようになる。
しかし二人は食べ終わってもなかなか席を立たないのでアレッシアは疑問に思って聞いてみた。


「この後は何かあるのですか?」

「この後ですか?
風呂の時間ですね。でも僕らは時間が後にしています。」

「ここ、労働者結構多いからなー。風呂は夕食終われば入れるからいつ入ってもいいんだぜ。でも部屋に帰ると、風呂の時間までに眠くなるから、ここでよく時間潰してんだ。」

「夕食が終われば、自由時間なのですよ。でも明日も作業がありますからね、風呂に入ったら寝るのが一番。夜更かしすると大変ですよ。」

「風呂…!!」


(え!?
お風呂があるのは嬉しいけれど、どんなお風呂なのかしら。一人ずつ入れるわよね?)


「そう、珍しいですよね。あまり知られてはいませんが、湯が湧き出ているそうです。鉱物が染み込んでいるのか、入ると疲れが癒され、また次の日の作業にも精が出ますよ。」

「人も減って来たし、そろそろ行こうぜ。」


 言われてみれば、もうほとんど人が居なくなっており、入り口近くの席に二人、いるだけとなっていた。


(あら?あの後ろ姿…)


 そのうちの一人、髪が黒く背中が大きな姿は、昼間ここに入ってきた時にガスパレと共にいた後ろ姿にとてもよく似ていた。
向かい側に座っている人は白衣を羽織っていた。茶色の髪で、頬杖をついてその人と話している。顔はこちらから見え、グイドより同じくらいか少し年上の見た目だ。


(服が、あまり汚れていないのよね。もう一人の人はガスパレさんじゃないわ。もっと若いもの。その人も、白衣を羽織っているなんて掘る仕事ではないのかしらね。)



「おい、アレッシア!早くしろよ!」


 考えながら歩いていたからか、少しゆっくりしていたらしく、すでに食堂から出ていたジャンパオロからそう声を掛けられたアレッシアは、慌てて早歩きをして向かった。

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