【完結】周りの友人達が結婚すると言って町を去って行く中、鉱山へ働くために町を出た令嬢は幸せを掴む

まりぃべる

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9. 鉱山での入浴

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「ここに、着替えがあるので各自持って行くのです。」



 グイドにそう言われ、食堂の隣にある小部屋を覗くと、そこは様々な大きさの作業着や男物の下着、布団カバーやシーツ、毛布などが整頓されて木で造られた棚に置かれていた。


「アレッシアは…これくらいか?」

「そうですね。ジャンパオロと同じくらいでしょうか。」

「おれを小さいように言うな!もう一年もすりゃ、グイドを抜かしてやるからな!」


 グイドよりも頭一つ小さなジャンパオロが、またもそう叫ぶ。アレッシアとジャンパオロとは背の高さが同じほどであるので、男心としては早く背が高くなりたいようで悔しそうな顔をしている。


「ふふ。ありがとう。」


 少し大きめのその新しい作業着をアレッシアが持つと、グイドはジャンパオロを横目に見てあしらいつつ更に説明をする。


「着替えは汚れたらいつでもここから持っていって大丈夫です。汚れた服は、この籠に入れて下さい。洗濯する人がやってくれるみたいです。」


 そう言って、腰くらいの高さまである、人がゆうに入れる大きさの籠をグイドは指差す。


「その点は楽だよなー。服も支給されるし、食事だって付いてる。洗濯もしなくて済むからな。」

「そうですね。あ、でも下着は人が穿いたのが嫌な人は、自分が持ってきたものを穿き続ける人もいますね。その場合は、この籠に入れずに自分で洗わないとですが。」

「!」


(そうなのね。そういえばここには、男物の下着しかないわ。私、自分のを持ってきてよかった!)


「じゃあついでに風呂へ行こうぜ。」

「…アレッシア、一度部屋に戻りますか?」

「なんでだよ、面倒じゃねぇか!」

「あ…えっと……一度戻りたい。場所を教えてくれれば、私一人で行くわ。」

「ジャンパオロ、慣れた僕らとは違うのですよ。アレッシアに気を遣わせないように!
大丈夫ですよ、アレッシア。一度部屋へ戻りましょう。」


 そう言って、グイドはニコリと笑ってジャンパオロの頭を軽くこついた。





☆★

 部屋に戻ったアレッシアは、自分の下着を持ち、部屋の外で待ってくれていたジャンパオロとグイドと共に風呂へと向かう。



 食堂から伸びる通路を奥へと歩いた先に、大きな衝立が正面に置かれたところにたどり着いた。衝立の奥ではもくもくと湯けむりが立ち上っている。
 衝立を横から回り込むと、木製で出来た棚に籠が等間隔に置かれている。籠が無い棚には、手を広げた大きさの布が綺麗に畳まれて入っていて、その前には床にこれまた大きな濡れた布がたくさん入った籠が置かれている。脱衣所、だ。

 その奥にはまた衝立が置かれ仕切られていて、湯がコポコポと沸くような音がしている。


「体を拭く布はここにありますからね、使い終わったらこの下にある籠に入れます。
この棚の籠には、着替えを入れます。」

「おい!アレッシア、悪いがお前は最後な!待ってろよ。
おれとグイドが先に入ってくるから、お前はその椅子にでも座って待っててくれ!」

「済みません。ジャンパオロは恥ずかしがり屋で人に裸を見られたくないのです。それなのに僕に背中を洗って欲しいなんてカワイイ奴でしょう?」

「うるせぇなぁ!時間が無くなる!早く入るぞ!
おい、アレッシア!向こう向いて座れよ!おれの体、見るんじゃねぇぞ!」

「え、見ないよ!」


 アレッシアは今まで遠慮していたがさすがに、そのように言い返してしまう。だがジャンパオロは気にもせずに口笛を吹きながら着替え始めたので、アレッシアは慌てて近くにあった木で出来た丸い椅子に座りジャンパオロとグイドから背を向けた。


「ひゃっほーい!」

「やめ、やめなさい!ほら、座って!」


 パタパタと風呂場へと向かったのだろう、すぐに衝立の向こうから声が聞こえる。ジャンパオロがはしゃぎ、グイドが体を洗おうとしているのかと想像が出来、アレッシアはクスリと笑ってしまう。


(なんだか、小さかった頃のカストの事を思い出しちゃうわ。真面目で、しっかり者のカスト。まだお別れして一日と経っていないのね…元気でいてね。)


 今は十二歳になった、弟のカストは父の跡を継ぐべく十歳の頃から学問だけでなく少しずついろんな経営についてを学んでいった。その為、少し年齢よりも大人びた口調をする時が増え、アレッシアも反抗されたり負かされる事も増えてきたのだ。
そんなカストも、幼い頃はアレッシアの近くで絵を描いたり、後を追いかけてきて共に遊んだ事もあった。


『おねぇたま』


 とそう言って、まだ上手く発音出来ない頃から、アレッシアの後を必死についてくる姿は、なんともあどけなく、とても愛おしく思ったものだった。



 長く、想いを巡らせていたようだ。
 アレッシアは不意に、ザバーと言う大きな水音と、ジャンパオロの声が聞こえた。


「はー良い湯だった!今日も疲れが吹っ飛んだ!なぁ、グイド!!」

「そうですね、さっぱりしました。」


 アレッシアはジャンパオロとグイドを見ないように、体を逸らすと膝に置いた手を握りグッと力を入れる。意識をしないようにしているのだ。
 ややもすると、着替え終わったようで二人がアレッシアの傍に来て声を掛けた。


「次はアレッシアな!」

「お待たせしました。僕らは衝立の外に居ますから。」


 そう言ってさっさと衝立の外にあるベンチに座りに行った。


(…良かった。一緒に入る事になったら、どうしようかと思ったわ!)


 アレッシアは早速、服を脱いで風呂場へと向かった。


「わぁ…!」


 アレッシアは、裕福ではなかったとはいえ伯爵の家であるから風呂は家にあり、使っていた。
だが、それとは全く別物だと思うほどの湯量である。


 三段ほど段差があり、そこを下へ降りると正面に湯船と、右側には洗い場がある。湯船は広く、何十人が一緒に入れるだろうか。さながら地底湖、のようである。
湯は、何箇所かある壁の割れ目から湯船へと常に流れ出ていて、湯は溢れている。洗い場の方にも、壁から湯が流れ出ている箇所が五箇所あり、それを桶に溜めて体を洗えるようになっている。

 アレッシアは早速、体を洗い、下着も丁寧に洗ってから桶に置いて、湯船へと入った。


(はー……本当に生き返るわぁ……!)


 アレッシアは、買い出しに町まで出掛けていたとはいえ、体力がずば抜けてあるわけではない。そこらの屋敷で引き篭もっている令嬢よりは体が動かせるだけだ。だから、今日半日ではあったが、スコップで体中を使って掘る事はとてつもなく大変であった。周りの者達に比べると、何度も休憩を挟みながらやったが、腕や腰などそこら中が痛くなった。
それでもアレッシアが掘った箇所は柔らか目の土であったらしく、離れた箇所で掘っていた人はミノととんかちでカンカンと高い音を鳴らしながら掘り進めている人達もいた。


(今日から、かぁ…そういえば、いつまでここで働けばいいのかしら。なんだ、あれよあれよという間に働く事になって、誰も詳しく教えてくれてないのだもの。)


 アレッシアは足をバタバタとさせた後に目を瞑り、今日一日あった事を思い返していた。
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