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11. 朧気な記憶
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「……?」
アレッシアは、ふと声が聞こえた為に意識が浮上する。
「…どうすりゃ………!?」
「ですから!…今までと変わらずですよ、忘れるのです。」
「無理じゃね!?なんでーーも、グイドも普通なんだよ!」
「それは…ジャンパオロより大人ですから?」
「はぁ!?」
「それより、もう少し声を落として下さい!アレッシアが起きてしまいます。」
そのように聞こえたので、はて、自分は風呂場にいたはずでは?と思ったアレッシアは、目を開けてからゆっくりと体を起こした。体を動かした事で、ベッドがギシリと音を立てる。
「…アレッシア?起きましたか?」
アレッシアはどうやら自分の宛がわれた部屋のベッドに寝かされていたようで、衝立の向こうからグイドのそんな声が聞こえ、アレッシアは答える。
「うん。…あの、私…?」
(あら?お風呂場へ行ったはずだったけれど…?)
ベッドから足を投げ出し座ったアレッシアは、自身の膝に手を当てると服を着ている事に気づく。
「こちらへ来れますか?それとも僕らがそちらへ行きますか?」
遠慮がちにグイドがそう聞いたので、アレッシアは考え、体が動きそうであったので二人がいる中央の居間スペースへと行くと告げる。
ゆっくりと立ち上がったアレッシアは、少しだけ頭がぼーっとするが、自分でベッドに戻ってきたのかと考えたが、やはり思い出せず、もしかしたら風呂へは行かずにベッドで寝てしまっていたのではないかと思い始める。
居間のスペースには、グイドとジャンパオロが座っていて、机には蓋付きの瓶が三本置いてあり、二つは封が開いていて中身が少し減っていた。
「アレッシア、どうぞ。中身は水です。」
そう言って、封が開いていない一つをグイドはアレッシアへと手渡す。
蓋付きの瓶は中身の入っていない洗われたものが食堂に置いてあり、いつでも個人で持って行っていいと昨日、仕事中に教えられた。水は自分達で補充しなければならないが、それがあれば部屋にも作業場にも持って行けるのだった。
使用済みの瓶は、食堂の洗い場の所定の位置に置いておけば洗ってくれるので、働く人達は助かっている。
「ありがとう。」
手渡されたそれを飲もうとしたアレッシアは、未だ一言も発せずにジッとアレッシアの顔を凝視しているジャンパオロに気がついた。
「?」
「あ、や、えーと、な、なんだ…そ、そうそう!心配したからな!よかった!普通通りで!」
「?普通通りって?」
「ジャンパオロ!さっき言いましたよね!?
…いえ、アレッシア。なんでもないのです。さ、明日も早いですよ。それを飲んだら寝ましょう。ほら、ジャンパオロも!さっさと寝る!」
半ば追い立てるようにジャンパオロへとそう言ったグイドもまた立ち上がり、何かあったら遠慮無く声を掛けて下さい、と言ってさっさと自身のベッドへと向かうべく衝立の奥へ行ってしまう。
(…?まぁ、確かに明日も作業なのよね。明日聞けばいいか。)
あまり頭の回っていないアレッシアも、二人が衝立の奥へと行ってしまった為に、一人ポツンと二口ほど水を飲むと、疲れた体を休める為に自分のベッドへと戻った。
☆★
翌朝。
未だ少し頭がぼーっとするが、アレッシアは体を起こし部屋の中央へと向かうとグイドとジャンパオロはすでに起きていて、アレッシアを見るとグイドがまず労いの言葉を掛けた。
「おはよう、アレッシア。体調は大丈夫ですか?」
「おはようございます。ええ…うん。」
アレッシアは、頭がスッキリとしないが言えば心配掛けるだろうし、朝起きてすぐだからぼーっとするのかと思い、特に不調を訴えなかった。
すると安心したようにジャンパオロが言葉を繋ぐ。
「よかったよかった!風呂に入って寝たら、体もスッキリだろ!?」
そう言われたので、アレッシアはそのまま寝たと思っていたが風呂に入ったのか…と考えた所でグイドが思い切りゴホンゴホンと空咳をする。
「おい、グイド!大丈夫か!?」
「ええ…ってジャンパオロのせいでしょうに!
さ、体調が大丈夫であれば、朝食を摂りに行きますよ。今日も今日とて作業しなければなりませんからね。」
そう言ってグイドは立ち上がったので、三人で食堂へと向かった。
☆★
食堂に入ったすぐ右側が、人だかりになっていた。よく見ると、その土壁に、杭で打たれた紙が張られていて、それを見ている人達のようだった。
「なんだぁ?」
「何でしょうね。あとで見てみますから、我々は先に朝食にしましょう。」
グイドにそう言われ、配られている奥のカウンターから朝食の乗ったお盆を持ってアレッシア達は空いた席へと座った。
「今日は大麦パンか-。」
「文句言いませんよ、ジャンパオロ。これも自然のめぐみなのですから感謝していただきましょう。」
「分かってるって!ただ、力仕事の前に、大麦パン三つとミルクスープじぁあ力が出ないと思っただけだ!」
「それは…まぁ、栄養満点ですからね。」
ジャンパオロは成長期なのだろう、もっと力がみなぎるような、大きな肉でもかぶりつきたいのかもしれない。
そうでなくても、この鉱山では力仕事をする男達が働いている。肉がもっと食事に出ればいいのだが、たいていは夕食に出るし、しかも毎日出るわけではない。
グイドも、食べられるのであれば肉がいいが、ここの食事も慈善事業ではないから仕方ないのだろうと思っている。
グイドはささっと食事を終え、先ほど人だかりになっていた場所を見てくると言って素早く席を立つ。
ジャンパオロは眠い目をこすりながら食事を惰性で食べていた。
アレッシアも、頭はまだぼーっとしていたがそのような時にこんな流し込めるような食事で良かったと思った。
(私は朝から肉じゃなくて良かったわ。ミルクスープにパンを浸して食べられるもの。)
アレッシアがあらかた食べ終わる頃に、グイドは神妙な面持ちでずいぶんとゆっくり席へと戻ってくる。ジャンパオロも、気になったのかそんなグイドに食べ終わっていたジャンパオロは声を掛ける。
「おい、グイド。どうした?見えなかったのか?」
「いえ…。」
そのまま、どう言うのがいいかと迷っているのか宙を彷徨うような、視線を泳がせているグイドに、再度ジャンパオロは催促する。
「なんだよ、気になるじゃねぇか!あんな張り紙、おれらがここに来てから張り出された事なかったろ!?」
「え、えぇまぁ…。」
「で?いいから言えよ。時間無くなっちまうよ。」
「そうですね…実は……」
グイドが意を決して口を開こうとした時、いつの間にかチーロが張り紙の所に来たのか、大声を出した。
「おーい、聞いてくんろ!ここに張り紙もしてあるんが、読め無い奴らもいるっちゅー事で、わいが読んだるでよ!
昨夜、風呂場で忘れ物があったんじゃ!それ、自分のだと思うもんは、わいんとこへ来てくんろ!」
そう言って、辺りを見渡す。
(へー忘れ物ね…ん?お風呂場?……!!あれ?そういえばやっぱり私、お風呂に入って、下着洗ったよね?それって、どうしたっけ?)
アレッシアはそれを聞いて考えると、突如風呂の湯船でくつろぐ自分の姿が頭に思い浮かんだのだ。とても気持ちよく、思わず寝てしまいそうになるほどで長い事いろいろと考えていたけれど、そのあとどうしたのだっけ、と考えた末になんとなく思い出した。
(!!私、立ち上がろうとして、そのあとは!?どうしたのだっけ?)
そのあとがどうしても思い出せなかったが、最悪の事が頭をよぎる。
(お風呂場には行ったわ!確かに入ったのよ。でも、帰ってくるのを覚えてないってある?
…もしかして、湯あたりでもした!?)
「はーい!おれです!」
「!」
アレッシアがそう考えていた時、唐突にジャンパオロの声が隣から聞こえた。手を挙げ、大きな声で発言したのだ。
「ジャンパオロ、本当に大丈夫ですか?」
なぜだがグイドが声を低くしてジャンパオロへ話すが、ジャンパオロは笑ってグイドへと頷く。
「あぁ。ちょっと行ってくるな!」
そう言ってジャンパオロは、チーロへと駆け出した。
「全く…ん?アレッシア、大丈夫ですか?顔が真っ青ですよ。」
グイドはアレッシアを見ると、顔色が良くなかった為にそう心配の声をあげる。
「あ、はい。えっと、私昨日その……ご迷惑お掛けしましたか?忘れ物って、私かもしれないと思って……」
アレッシアは俯き、下着が見られていたのかもしれないと恥ずかしく思ってか細い声を出す。
「あぁ…大丈夫ですよ。アレッシアは何も迷惑なんて掛けておりませんから。
ジャンパオロもオッチョコチョイなんですよ、見てたら分かるでしょう?でも、いざとなれば頼りになる男ですからね。」
と、なんだか慰めにもならないような言葉を言ったグイドは、ジャンパオロへと視線を少し見遣ってからアレッシアへ声を掛ける。
「食事は終わりましたか?片付けてきますから、貸して下さい。」
グイドはそう言って、ジャンパオロの残していた食器も持って立ち上がった。
アレッシアは、ふと声が聞こえた為に意識が浮上する。
「…どうすりゃ………!?」
「ですから!…今までと変わらずですよ、忘れるのです。」
「無理じゃね!?なんでーーも、グイドも普通なんだよ!」
「それは…ジャンパオロより大人ですから?」
「はぁ!?」
「それより、もう少し声を落として下さい!アレッシアが起きてしまいます。」
そのように聞こえたので、はて、自分は風呂場にいたはずでは?と思ったアレッシアは、目を開けてからゆっくりと体を起こした。体を動かした事で、ベッドがギシリと音を立てる。
「…アレッシア?起きましたか?」
アレッシアはどうやら自分の宛がわれた部屋のベッドに寝かされていたようで、衝立の向こうからグイドのそんな声が聞こえ、アレッシアは答える。
「うん。…あの、私…?」
(あら?お風呂場へ行ったはずだったけれど…?)
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「こちらへ来れますか?それとも僕らがそちらへ行きますか?」
遠慮がちにグイドがそう聞いたので、アレッシアは考え、体が動きそうであったので二人がいる中央の居間スペースへと行くと告げる。
ゆっくりと立ち上がったアレッシアは、少しだけ頭がぼーっとするが、自分でベッドに戻ってきたのかと考えたが、やはり思い出せず、もしかしたら風呂へは行かずにベッドで寝てしまっていたのではないかと思い始める。
居間のスペースには、グイドとジャンパオロが座っていて、机には蓋付きの瓶が三本置いてあり、二つは封が開いていて中身が少し減っていた。
「アレッシア、どうぞ。中身は水です。」
そう言って、封が開いていない一つをグイドはアレッシアへと手渡す。
蓋付きの瓶は中身の入っていない洗われたものが食堂に置いてあり、いつでも個人で持って行っていいと昨日、仕事中に教えられた。水は自分達で補充しなければならないが、それがあれば部屋にも作業場にも持って行けるのだった。
使用済みの瓶は、食堂の洗い場の所定の位置に置いておけば洗ってくれるので、働く人達は助かっている。
「ありがとう。」
手渡されたそれを飲もうとしたアレッシアは、未だ一言も発せずにジッとアレッシアの顔を凝視しているジャンパオロに気がついた。
「?」
「あ、や、えーと、な、なんだ…そ、そうそう!心配したからな!よかった!普通通りで!」
「?普通通りって?」
「ジャンパオロ!さっき言いましたよね!?
…いえ、アレッシア。なんでもないのです。さ、明日も早いですよ。それを飲んだら寝ましょう。ほら、ジャンパオロも!さっさと寝る!」
半ば追い立てるようにジャンパオロへとそう言ったグイドもまた立ち上がり、何かあったら遠慮無く声を掛けて下さい、と言ってさっさと自身のベッドへと向かうべく衝立の奥へ行ってしまう。
(…?まぁ、確かに明日も作業なのよね。明日聞けばいいか。)
あまり頭の回っていないアレッシアも、二人が衝立の奥へと行ってしまった為に、一人ポツンと二口ほど水を飲むと、疲れた体を休める為に自分のベッドへと戻った。
☆★
翌朝。
未だ少し頭がぼーっとするが、アレッシアは体を起こし部屋の中央へと向かうとグイドとジャンパオロはすでに起きていて、アレッシアを見るとグイドがまず労いの言葉を掛けた。
「おはよう、アレッシア。体調は大丈夫ですか?」
「おはようございます。ええ…うん。」
アレッシアは、頭がスッキリとしないが言えば心配掛けるだろうし、朝起きてすぐだからぼーっとするのかと思い、特に不調を訴えなかった。
すると安心したようにジャンパオロが言葉を繋ぐ。
「よかったよかった!風呂に入って寝たら、体もスッキリだろ!?」
そう言われたので、アレッシアはそのまま寝たと思っていたが風呂に入ったのか…と考えた所でグイドが思い切りゴホンゴホンと空咳をする。
「おい、グイド!大丈夫か!?」
「ええ…ってジャンパオロのせいでしょうに!
さ、体調が大丈夫であれば、朝食を摂りに行きますよ。今日も今日とて作業しなければなりませんからね。」
そう言ってグイドは立ち上がったので、三人で食堂へと向かった。
☆★
食堂に入ったすぐ右側が、人だかりになっていた。よく見ると、その土壁に、杭で打たれた紙が張られていて、それを見ている人達のようだった。
「なんだぁ?」
「何でしょうね。あとで見てみますから、我々は先に朝食にしましょう。」
グイドにそう言われ、配られている奥のカウンターから朝食の乗ったお盆を持ってアレッシア達は空いた席へと座った。
「今日は大麦パンか-。」
「文句言いませんよ、ジャンパオロ。これも自然のめぐみなのですから感謝していただきましょう。」
「分かってるって!ただ、力仕事の前に、大麦パン三つとミルクスープじぁあ力が出ないと思っただけだ!」
「それは…まぁ、栄養満点ですからね。」
ジャンパオロは成長期なのだろう、もっと力がみなぎるような、大きな肉でもかぶりつきたいのかもしれない。
そうでなくても、この鉱山では力仕事をする男達が働いている。肉がもっと食事に出ればいいのだが、たいていは夕食に出るし、しかも毎日出るわけではない。
グイドも、食べられるのであれば肉がいいが、ここの食事も慈善事業ではないから仕方ないのだろうと思っている。
グイドはささっと食事を終え、先ほど人だかりになっていた場所を見てくると言って素早く席を立つ。
ジャンパオロは眠い目をこすりながら食事を惰性で食べていた。
アレッシアも、頭はまだぼーっとしていたがそのような時にこんな流し込めるような食事で良かったと思った。
(私は朝から肉じゃなくて良かったわ。ミルクスープにパンを浸して食べられるもの。)
アレッシアがあらかた食べ終わる頃に、グイドは神妙な面持ちでずいぶんとゆっくり席へと戻ってくる。ジャンパオロも、気になったのかそんなグイドに食べ終わっていたジャンパオロは声を掛ける。
「おい、グイド。どうした?見えなかったのか?」
「いえ…。」
そのまま、どう言うのがいいかと迷っているのか宙を彷徨うような、視線を泳がせているグイドに、再度ジャンパオロは催促する。
「なんだよ、気になるじゃねぇか!あんな張り紙、おれらがここに来てから張り出された事なかったろ!?」
「え、えぇまぁ…。」
「で?いいから言えよ。時間無くなっちまうよ。」
「そうですね…実は……」
グイドが意を決して口を開こうとした時、いつの間にかチーロが張り紙の所に来たのか、大声を出した。
「おーい、聞いてくんろ!ここに張り紙もしてあるんが、読め無い奴らもいるっちゅー事で、わいが読んだるでよ!
昨夜、風呂場で忘れ物があったんじゃ!それ、自分のだと思うもんは、わいんとこへ来てくんろ!」
そう言って、辺りを見渡す。
(へー忘れ物ね…ん?お風呂場?……!!あれ?そういえばやっぱり私、お風呂に入って、下着洗ったよね?それって、どうしたっけ?)
アレッシアはそれを聞いて考えると、突如風呂の湯船でくつろぐ自分の姿が頭に思い浮かんだのだ。とても気持ちよく、思わず寝てしまいそうになるほどで長い事いろいろと考えていたけれど、そのあとどうしたのだっけ、と考えた末になんとなく思い出した。
(!!私、立ち上がろうとして、そのあとは!?どうしたのだっけ?)
そのあとがどうしても思い出せなかったが、最悪の事が頭をよぎる。
(お風呂場には行ったわ!確かに入ったのよ。でも、帰ってくるのを覚えてないってある?
…もしかして、湯あたりでもした!?)
「はーい!おれです!」
「!」
アレッシアがそう考えていた時、唐突にジャンパオロの声が隣から聞こえた。手を挙げ、大きな声で発言したのだ。
「ジャンパオロ、本当に大丈夫ですか?」
なぜだがグイドが声を低くしてジャンパオロへ話すが、ジャンパオロは笑ってグイドへと頷く。
「あぁ。ちょっと行ってくるな!」
そう言ってジャンパオロは、チーロへと駆け出した。
「全く…ん?アレッシア、大丈夫ですか?顔が真っ青ですよ。」
グイドはアレッシアを見ると、顔色が良くなかった為にそう心配の声をあげる。
「あ、はい。えっと、私昨日その……ご迷惑お掛けしましたか?忘れ物って、私かもしれないと思って……」
アレッシアは俯き、下着が見られていたのかもしれないと恥ずかしく思ってか細い声を出す。
「あぁ…大丈夫ですよ。アレッシアは何も迷惑なんて掛けておりませんから。
ジャンパオロもオッチョコチョイなんですよ、見てたら分かるでしょう?でも、いざとなれば頼りになる男ですからね。」
と、なんだか慰めにもならないような言葉を言ったグイドは、ジャンパオロへと視線を少し見遣ってからアレッシアへ声を掛ける。
「食事は終わりましたか?片付けてきますから、貸して下さい。」
グイドはそう言って、ジャンパオロの残していた食器も持って立ち上がった。
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