【完結】周りの友人達が結婚すると言って町を去って行く中、鉱山へ働くために町を出た令嬢は幸せを掴む

まりぃべる

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12. 忘れ物は誰のもの?

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 忘れ物に見覚えのある者は名乗り出よ、とチーロが言い、それに対してジャンパオロはチーロの方へと行ってしまった事で、アレッシアは自分の忘れ物下着ではなかったのかもしれないと思い始めた。けれども昨夜からの記憶が朧気で、はっきりと覚えていない事に確信が持てなくて胸がドキドキと早打ちしだし、ジャンパオロを目で負った。


(そもそも私、お風呂に入ったのって夢じゃなかったのよね?それとも、夢?うーん…聞くのもなんだか恥ずかしいし……。)


 すると、ジャンパオロはチーロについて食堂から出て行こうとしたので、アレッシアは声が出てしまう。


「あ!」


 アレッシアは言葉を発するが、もちろんジャンパオロに届くわけもなく。


「お待たせしました。アレッシア、行きましょうか。」


 少しして、グイドが戻ってきたので慌ててアレッシアは言葉を繋ぐ。


「ねぇグイドさん、ジャンパオロさんが行ってしまったの。」


 グイドはその言葉にチラリと先ほどまで人だかりが出来ていた箇所を見たが、すぐにアレッシアへと視線を移しニッコリと安心させるように笑う。


「あぁ、きっとチーロ採掘長と共に忘れ物を取りに行ったのでしょう。僕らは先に作業場へ行きましょうか。理由も無く遅れるといけませんから。」

「う、うん…。」


 グイドの言葉に、アレッシアはそうかもしれないと思い、その言葉に従った。






☆★

 午前中の作業が始まり、昨日のようにスコップで穴を幾らか掘り進めていたアレッシアは、ふう、と息を吐き出して腕の動きを緩める。


「アレッシア、大丈夫ですか?」


 傍ではグイドが、台車にアレッシアが掘った土をスコップで乗せる作業をしていて、腕の動きを止めたアレッシアに声を掛ける。


「うん…ジャンパオロさん、来ないなーって。」


 疲れもあるが、未だ戻って来ないジャンパオロが気になりそう言葉を返す。


「あぁ…確かにそうですね。もしかして、チーロ採掘長に違う仕事を頼まれているかもしれませんね。」

「そっか。」

「ま、そのうち帰って来るでしょう。僕らは、僕らの作業をするだけですよ。」

「うん。」


 そう答えたアレッシアは、疲れてきた腕に力を入れ、また掘り進めるのを再開した。






☆★

 午前の作業が終わり、昼食となった。


 結局、ジャンパオロは作業場に来なかったのでいよいよどうしたのだろうとグイドも疑問を口にした。

 アレッシアとグイドは、とりあえず一度部屋へ戻ってから共に食堂へ向かう。部屋へ戻ったのは、ジャンパオロがいつものように午前中の作業が疲れたとベッドで休んでいるのではないかとグイドが言ったからだ。しかし、部屋には誰もいなく、そこにいた形跡も無かった。


「考えても仕方ありません。食事にしましょう。」


 そう言われたアレッシアだったが、グイドの顔色がだんだんと青くなってきている事に気づいて言葉を掛ける。


「グイドさん、顔色悪いわ。大丈夫?休んでいた方がよくありません?」

「え?…いえ。大丈夫です、行きましょう。」


 明らかに顔色が悪いのに、と思ったアレッシアはきっとグイドはジャンパオロの心配をしているのだろうと思い、労いの声を掛ける。


「ジャンパオロさんはきっと昼食には来るんじゃないかしら。もし来なかったら、チーロ採掘長さんに聞いてみれば分かるんじゃないかしら。」

「!
そうですね、ありがとうございます、アレッシア。僕が焦ってはいけませんね。」

「心配するのは当然だもの。グイドさんとジャンパオロは兄弟みたいに仲がいいものね。」

「兄弟、ですか?恐れ多い…でもまぁ、あながち間違ってはいませんね。」


 そう言って、グイドはハハッと乾いた声を出すと、食堂へと入って行った。



☆★

「あーやっと来た!おーいグイド、アレッシア!!」

「ジャンパオロ!」
「ジャンパオロさん!」


 空いた席を探そうとした二人に声を掛けたのは、少し遠くに座っていたジャンパオロであった。食事も、三人分を盆に乗せて持って来てあり、ジャンパオロの隣と向かいの席が空いていた。
グイドとアレッシアはジャンパオロのいる方へと駆け寄った。


「心配掛けないで下さい!」


 グイドが、半泣きになりながら声を張り上げた。


「悪い!でも、チーロ採掘長に連れてかれちまってよ、そこで作業してたからそっちに行けなくなったんだ。
でもよ、おかげで早く終われたから食事取っておいたぜ、待ちくたびれちまった!早く食べようぜ!」


 ジャンパオロはそう言って楽しそうに笑うので、グイドは拍子抜けしてしまった。そして、安堵したのかジャンパオロの隣に半ば崩れるように座り顔を両手で隠した。


「良かった…本当に良かったぁ……」

「悪かったって!ほれ、グイドも食べようぜ!
今日は野菜スープと…うん、もはや定番となった大麦パンだ。まぁ、同じようなやつしか出ないけど、腹が減ってりゃなんでも美味いしな!」


 そう言って、グイドの肩をポンポンと叩くジャンパオロは、アレッシアにも食べようぜと言って先に食べ始める。


「おいおい、兄ちゃんは新入りかー?
今の飯に文句なんか言っちゃぁ罰が下るぜ!?以前よりもかなり品数が増えたんだからな?」

「んだ、んだ!最近じゃ何日かに一度は肉も出るし、魚みたいなんも出る!以前よりもかなり贅沢になったんだべ?味も格段と美味くなったしなぁ!」


 と、隣に座っているがっしりとした体型の壮年の男性二人がジャンパオロへと話し掛けてきた。


「そうなんかー?」


 ジャンパオロが、大麦パンをかじりつきながら隣の人の顔を見て聞く。


「そうだ。以前はパンなんて大層なもんも何日かにいっぺんだった。だから、このパンも、ありがたいってもんよ!」

「んだべ!スープも幾らか味付けがされるようになったもんで、ありがてぇだ!以前はほとんど水に食べ物が浮いてるって感じだったべ。」

「ハハッそうだったなー。懐かしいぜ!
でもま、どんなのでも以前は腹が減ってるからそれを食べるしかなくてなぁ。」

「んだんだ!
…あー今日もうまかった!」

「ま、だでよ兄ちゃん、これ以上格が下がったら困るだろ?文句言っちゃあいけねぇぞ!じゃあな!」


 そう言うだけ言うと、壮年の男性二人はさっさと食べ終わって席を立った。


「へー、これでも格が上がった方だったんだな!」

「そうですね。確かに、味付けは薄いですが美味しいですからね。」


 いつの間にか顔を上げたグイドも、食事を始めていた。
アレッシアも、慌てて食べ始める。二人よりも食べる早さが遅いので、焦ったのだ。


(今の話が本当なら、確かにありがたいわ。以前は水みたいなものだったって、塩とかが無かったのかしら?
でも、食事が頂けるだけでもすごいと思ったけれど、確かに味付けは薄味なのよね。
あ!それよりも早く食べなくっちゃ!)



「あーうまかった!」


 ジャンパオロは食べ終わるとそう言って机に上半身を投げ出す。


「アレッシア、あんま急がなくてもいいぞ。今から部屋に戻っても中途半端な時間だし、ここで少し寝るわ。
グイド、起こしてくれよ。」

「分かっていますから。…ゆっくり寝てください。」


 グイドも、最後の一口を食べ終わると優しい目をしてジャンパオロへと言葉を掛ける。
 アレッシアも、ジャンパオロの寝顔を見ながら残りの食事をひたすら口へと運んだ。




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