23 / 25
23. 幸せに
しおりを挟む
フォルス様がとても哀しそうに、蚕を育てているのは気持ち悪いだろうと言った。投げやりに見えたのよ。それに、それがあるから侯爵家は収益があるのだから、本当は誇るべきものなんじゃないかしら?
そう思ったら私、思わず口走ってしまったわ。軽蔑されたらどうしましょう!?
「食べていた?」
「いえ、あの…そ、そうです!私の実家は恵みの森が近くて。それで、食材はあそこで賄っていたのです。生きているものならなんでも食べられると聞いたから。蚕に似た感じのやつのフリッターなんて、とっても美味しかったのです!あ、でも美味しくいただけるものを、適量いただいていたのです。乱獲はしていませんわ!」
もう、言うしかないわよね。私こそ、気持ち悪いと言われないかしら…。
フォルス様は口をあんぐりと開けて固まり、少しすると端正な顔を思い切りくしゃくしゃにして大笑いしだした。
「あはは!食べた!そっかー、美味しかったか!でも、うちのやつらは食べないでくれ。あいつらの作ったもので、ヴェーバー領は潤っているんだ。あはは!アンリエッタはやっぱり、今までの人達と違って素晴らしいね!あ、比べるとかそんなんじゃないんだけど。僕一人で悩んでいないで、アンリエッタにきちんと初めに伝えておけば良かったな、ごめんな、アンリエッタ。」
そう言って、フォルス様は私の頭を撫でてくれた。そして、私の頭をフォルス様の胸の方へ引き寄せた。
私、フォルス様の胸と腕に囲まれてるわ、嬉しいけれど恥ずかしい…。
心臓も、今までにないほどばくばくと音を立てているの。フォルス様に聞こえたりしないわよね?
「フ、フォルス様も悩まれていたのですか?」
「そうだよ。アンリエッタに嫌われたらどうしようって。全てを知って母みたいに、亡くなったらどうしようって。でも、そんな事、些細な事だったんだね。アンリエッタ、やばい、とっても愛おしいよ…アンリエッタ、どう?これから一緒に僕の部屋を使わない?」
「え。いいのですか?」
「だから言ったろ、僕は初めから君と片時も離れたくないよ。でもそうすると、アンリエッタも覚悟を決めてくれないと困るなぁ。」
「覚悟ですか…」
「うん。だって、愛らしいアンリエッタと一緒に寝るんだから。手を出さない保証は出来ないかな。…まだ、覚悟が出来ないなら、まだしばらくはこの部屋を」
「いいえ!私、フォルス様が大好きです!だから、一緒にいたいです!」
「え。…でもそれって…」
「はい!覚悟しますから、一緒に寝て下さいね、旦那様!!」
私は、噂の人に嫁ぎました。けれど世間の噂は、やはりただの噂で、とっても心優しい素敵な人でした。
これからも私はヴェーバー領のテイラー侯爵夫人として、フォルス様と一緒に侯爵家を盛り上げていきますわ。
☆★☆★
これで、本編は終わりです。最後に二話、他者視点があります。
しおりを挟んでくれた方、お気に入り登録してくれた方、読んでくれた方本当にありがとうございました。
そう思ったら私、思わず口走ってしまったわ。軽蔑されたらどうしましょう!?
「食べていた?」
「いえ、あの…そ、そうです!私の実家は恵みの森が近くて。それで、食材はあそこで賄っていたのです。生きているものならなんでも食べられると聞いたから。蚕に似た感じのやつのフリッターなんて、とっても美味しかったのです!あ、でも美味しくいただけるものを、適量いただいていたのです。乱獲はしていませんわ!」
もう、言うしかないわよね。私こそ、気持ち悪いと言われないかしら…。
フォルス様は口をあんぐりと開けて固まり、少しすると端正な顔を思い切りくしゃくしゃにして大笑いしだした。
「あはは!食べた!そっかー、美味しかったか!でも、うちのやつらは食べないでくれ。あいつらの作ったもので、ヴェーバー領は潤っているんだ。あはは!アンリエッタはやっぱり、今までの人達と違って素晴らしいね!あ、比べるとかそんなんじゃないんだけど。僕一人で悩んでいないで、アンリエッタにきちんと初めに伝えておけば良かったな、ごめんな、アンリエッタ。」
そう言って、フォルス様は私の頭を撫でてくれた。そして、私の頭をフォルス様の胸の方へ引き寄せた。
私、フォルス様の胸と腕に囲まれてるわ、嬉しいけれど恥ずかしい…。
心臓も、今までにないほどばくばくと音を立てているの。フォルス様に聞こえたりしないわよね?
「フ、フォルス様も悩まれていたのですか?」
「そうだよ。アンリエッタに嫌われたらどうしようって。全てを知って母みたいに、亡くなったらどうしようって。でも、そんな事、些細な事だったんだね。アンリエッタ、やばい、とっても愛おしいよ…アンリエッタ、どう?これから一緒に僕の部屋を使わない?」
「え。いいのですか?」
「だから言ったろ、僕は初めから君と片時も離れたくないよ。でもそうすると、アンリエッタも覚悟を決めてくれないと困るなぁ。」
「覚悟ですか…」
「うん。だって、愛らしいアンリエッタと一緒に寝るんだから。手を出さない保証は出来ないかな。…まだ、覚悟が出来ないなら、まだしばらくはこの部屋を」
「いいえ!私、フォルス様が大好きです!だから、一緒にいたいです!」
「え。…でもそれって…」
「はい!覚悟しますから、一緒に寝て下さいね、旦那様!!」
私は、噂の人に嫁ぎました。けれど世間の噂は、やはりただの噂で、とっても心優しい素敵な人でした。
これからも私はヴェーバー領のテイラー侯爵夫人として、フォルス様と一緒に侯爵家を盛り上げていきますわ。
☆★☆★
これで、本編は終わりです。最後に二話、他者視点があります。
しおりを挟んでくれた方、お気に入り登録してくれた方、読んでくれた方本当にありがとうございました。
44
あなたにおすすめの小説
【完結】1王妃は、幸せになれる?
華蓮
恋愛
サウジランド王国のルーセント王太子とクレスタ王太子妃が政略結婚だった。
側妃は、学生の頃の付き合いのマリーン。
ルーセントとマリーンは、仲が良い。ひとりぼっちのクレスタ。
そこへ、隣国の皇太子が、視察にきた。
王太子妃の進み道は、王妃?それとも、、、、?
【完結】謀られた令嬢は、真実の愛を知る
白雨 音
恋愛
男爵令嬢のミシェルは、十九歳。
伯爵子息ナゼールとの結婚を二月後に控えていたが、落馬し、怪我を負ってしまう。
「怪我が治っても歩く事は難しい」と聞いた伯爵家からは、婚約破棄を言い渡され、
その上、ナゼールが自分の代わりに、親友のエリーゼと結婚すると知り、打ちのめされる。
失意のミシェルに、逃げ場を与えてくれたのは、母の弟、叔父のグエンだった。
グエンの事は幼い頃から実の兄の様に慕っていたが、彼が伯爵を継いでからは疎遠になっていた。
あの頃の様に、戻れたら…、ミシェルは癒しを求め、グエンの館で世話になる事を決めた___
異世界恋愛:短編☆(全13話)
※魔法要素はありません。 ※叔姪婚の認められた世界です。 《完結しました》
お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
【完結】死に戻り8度目の伯爵令嬢は今度こそ破談を成功させたい!
雲井咲穂(くもいさほ)
恋愛
アンテリーゼ・フォン・マトヴァイユ伯爵令嬢は婚約式当日、婚約者の逢引を目撃し、動揺して婚約式の会場である螺旋階段から足を滑らせて後頭部を強打し不慮の死を遂げてしまう。
しかし、目が覚めると確かに死んだはずなのに婚約式の一週間前に時間が戻っている。混乱する中必死で記憶を蘇らせると、自分がこれまでに前回分含めて合計7回も婚約者と不貞相手が原因で死んでは生き返りを繰り返している事実を思い出す。
婚約者との結婚が「死」に直結することを知ったアンテリーゼは、今度は自分から婚約を破棄し自分を裏切った婚約者に社会的制裁を喰らわせ、婚約式というタイムリミットが迫る中、「死」を回避するために奔走する。
ーーーーーーーーー
2024/01/13 ランキング→恋愛95位 ありがとうございました!
なろうでも掲載20万PVありがとうございましたっ!
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~
水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。
ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。
しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。
彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。
「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」
「分かりました。二度と貴方には関わりません」
何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。
そんな中、彼女を見つめる者が居て――
◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。
※他サイトでも連載しています
何度時間を戻しても婚約破棄を言い渡す婚約者の愛を諦めて最後に時間を戻したら、何故か溺愛されました
海咲雪
恋愛
「ロイド様、今回も愛しては下さらないのですね」
「聖女」と呼ばれている私の妹リアーナ・フィオールの能力は、「モノの時間を戻せる」というもの。
姉の私ティアナ・フィオールには、何の能力もない・・・そう皆に思われている。
しかし、実際は違う。
私の能力は、「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」。
つまり、過去にのみタイムリープ出来るのだ。
その能力を振り絞って、最後に10年前に戻った。
今度は婚約者の愛を求めずに、自分自身の幸せを掴むために。
「ティアナ、何度も言うが私は君の妹には興味がない。私が興味があるのは、君だけだ」
「ティアナ、いつまでも愛しているよ」
「君は私の秘密など知らなくていい」
何故、急に私を愛するのですか?
【登場人物】
ティアナ・フィオール・・・フィオール公爵家の長女。リアーナの姉。「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」能力を持つが六回目のタイムリープで全ての力を使い切る。
ロイド・エルホルム・・・ヴィルナード国の第一王子。能力は「---------------」。
リアーナ・フィオール・・・フィオール公爵家の次女。ティアナの妹。「モノの時間を戻せる」能力を持つが力が弱く、数時間程しか戻せない。
ヴィーク・アルレイド・・・アルレイド公爵家の長男。ティアナに自身の能力を明かす。しかし、実の能力は・・・?
【完結】溺愛される意味が分かりません!?
もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢
ルルーシュア=メライーブス
王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。
学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。
趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。
有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。
正直、意味が分からない。
さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか?
☆カダール王国シリーズ 短編☆
婚約破棄は綿密に行うもの
若目
恋愛
「マルグリット・エレオス、お前との婚約は破棄させてもらう!」
公爵令嬢マルグリットは、女遊びの激しい婚約者の王子様から婚約破棄を告げられる
しかし、それはマルグリット自身が仕組んだものだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる