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王都防衛編
111.密談と治療方法
しおりを挟むその日、私はむかむかと暴れてしょうがない腹の虫を抑えるべく、ジュストを抱いて布団の中に潜っていた。騎士服のジャケットは邪魔なので脱いでいる。
篭って少し息苦しい暗い空間に、ぽっと明かりが揺らめいた。指先の爪ほどの球体の、明るすぎない熱くない炎だ。オレンジと朱色がぐるぐる丸く丸まっている。生活魔法の一つだが、ロウソクやランプや、光石があるので覚えても使わない者も多い。私は当然のごとく、使えなかった。
「これで、クンツの顔を見ながら話ができるね」
ほっそりとした指先にその明かりを浮かべ、穏やかな笑みを浮かべているのは、この部屋の主だ。
「なにも、ディー先輩まで潜らなくとも」
「いや……正直ちょっと楽しい。こんなところで密談なんてしたことないから」
秘密を共有している者同士の気安さでそう言われると、私の腹の虫はじゅっと水をかけられた炎のように小さくなった。
「ふふ……そうだな、楽しいな」
「ね」
2人で笑いあうだけで、気分が浮上する。私が自室の布団で立てこもりをした時には、ユストゥスにあっという間に剥がされてしまったからな、あいつには情緒が足りない。まったく。
心配が滲む眼差しを向けられたが、邪険にしてしまいそうで逃げてきた。
それでこうして落ち着けるところを探して、私はディー先輩の部屋を訪れたところだった。今日は随分と顔色が良く、体調も悪くなさそうだ。私がむかむかする胸の内をどうにかやり過ごしたくて、布団の中で立てこもりをしたのに剥がされた話をしたら、こうしてディー先輩の布団に潜らせてくれた。
ディー先輩の優しさが染みる。あとちょっと、この布団、いい匂いがする。
「ここに来た時より、だいぶ落ち着いた顔になったね」
「うむ。……少し聞いてくれるか、ディー先輩」
「うん。いいよ、話して」
私はぎゅっとジュストを抱いたまま、つらつらと話し始めた。
先日の私の娼館突撃事件のことだ。そのは瞬く間に寮内に広がり、物議を醸しだしたらしいのだが、それは正直どうでもいい。私が身勝手をして怒られた。それで反省した。そこで完結するべき話だったのだ。
なのにだ。エリーアス様とユストゥスは、突撃事件の裏で私が兄弟に切られそうになったことや、その兄弟が近衛騎士で何かよくわからないが、娼館に任務で詰めていたことを群青騎士である私、ひいてはエリーアス様が知ってしまったこと、そのせいでもしかしたら揉めるかもしれないことを、私の敬愛するベッカーおじさまに全部、バラしてしまったのだ。
そうなればもちろん、おじさまは私のことを心配しながら、諫めてくる。でも、終わった話を蒸し返されるのは嫌だった。私はちゃんと反省しているのに。
皆が外に行こうとも、私は粛々と訓練所と時折の出撃で外出する以外は、ずっと寮で過ごす心持ちだというのに。伝えるにしても、おじさまが心配しないように伝える方法は、あの2人ならいくらでもできるはずだ。
「確かに私が勝手をしたのが悪いが、それでも、反省した私の決意を疑うように、おじさまに小言を言わせるのは酷い」
ジュストの腹に顔を埋めたままくぐもった声で訴えると、そっと頭を撫でられた。
「クンツは偉いね。それで八つ当たりしないように、立てこもろうとしてたんだ?」
「……ん」
私の様子がおかしいと、ユストゥスに布団を剥ぎ取られてしまったが、私とて、時には1人で考えたいこともあるのだ。エリーアス様が、私のことを心配しているのも良くわかるし、切られそうになった時に、私との間に割って入ったユストゥスのことを想うと、胸が苦しくなる。
今だって、私が付いてくるなと怒ったら肩を落としていた。なぜ、時々あの男が無性に気になるときがあるのだろう。あれは、私の狼ではないのに。
「クンツは、いい子だ」
「そうか?ふふ……」
よしよしと頭を撫でられて、私はこそばゆい気持ちで首を竦めた。こんな内心をおじさまに吐露すれば、それこそおじさまが気にしてしまう。でも私は誰かに話を聞いてもらいたかったのだ。ディー先輩にさらけ出したら、少し気が楽になった。
私が褒められて気を良くしていると、明かりを浮かせて、ディー先輩が顔を近づけてきた。暗い布団の中で表情が良く見えない。何だろうかと私が瞬きしていると、頬に柔らかな唇が当てられた。それからちろりと軽く舐められる。
「ディー先輩?」
「涙はやっぱり、少ししょっぱいかな」
「そうなのか?」
ぽろんと瞬きで溢れた雫を指先で取り舐めてみる。ふむ、確かに少し塩気を感じる。汗も舐めるとしょっぱいので似たような物なのだろう。納得していると、私の唇に、ディー先輩の呼吸が当たった。唇がそっと重なる。薄く開いた唇に遠慮がちに舌を差し込まれて、さてどうしよう、と私は動きを止めた。
ディー先輩は、いつも少し、血の匂いを纏っている。
悪魔の実の種がうまく身体に根付かなかったせいで、いつも腹痛に悩まされているし、私や他の群青騎士にとっては、快楽であり食事でもある性交が痛みを伴うものだと聞く。
それでもディー先輩は生きるために、誰かから精液をもらわなければいけない。専属奴隷のイェオリが、一手にそれを引き受けていた。
苦痛が大半の性交をしていると知って、非常食の栄養剤ではだめなのかエリーアス様には聞いたことがあるが、それこそ鮮度のよい精液出ないとディー先輩の身体は受け付けないそうだ。
「ン……」
私が逡巡していると、さらに舌が入り込んできた。たとたどしくも私の口内をまさぐられる。飴もラムネも金平糖もなく交わされる口づけに、私は先ほど分け合ったサブレの味を思い出していた。じわ、と唾液がいつもよりにじみ出てくる。
ディー先輩と唇を重ねるときは、何か食べている時なのだ。反射的に唾液の分泌量が増えるのも仕方がないことだろう。
口づけし合う私とディー先輩だからこそ、わかるぐらいの水音に目を細めると、じゅ、っとその唾液を吸われた。こくんと飲み干しているのを見て、私はなんだかそわそわしてしまう。
ほのかな明かりで照らされたディー先輩の表情が、どこか蕩けて、色香を纏っているように見えたのだ。もしかしたら息苦しくて呼吸が跳ねているのかもしれない。
ディー先輩の身体の気遣いが抜けていることに遅まきながら気づいた私は、ぱさりと布団を裏返した。ほのかな燈火で慣れていた目を、明るい部屋の明かりが突き刺した。思わず目を細める。
狭い空間から出たことで、改めてディー先輩を見つめながら首を傾げた。
「申し訳ないが、もう菓子はないのだ。口の中に隠し持ってもいないぞ?」
「あ……うん、そう、だね。ごめん」
「ディー先輩?」
少し頬を火照らせたディー先輩は、いつもと違って、どこか悩んでいる素振りを見せていた。その態度に私はぴんとくる。もしや、ディー先輩も何か私に相談事があるのではないだろうか。そわそわする心を抑えつつ、私はベッドに正座した。
膝の上にはしっかりとジュストも載せておく。エリーアス様は私がジュストを抱いて歩くと怒るが、クリス先輩はお茶会にちゃんとジュストも招いてくれるし、ディー先輩も私のジュストのことを可愛いと言ってくれる。
「ディー先輩も、何か腹の虫が暴れるようなことがあったのだな。私で良ければ話を聞くぞ」
「えっ」
少し面食らった表情を浮かべたディー先輩に、私はさあと先を促した。ディー先輩は、私の愚痴に対して余計なことは一切言わなかった。我慢をできた良い子だと褒めてもらったのだ。
どんな話が飛び出すかわからないが、私もディー先輩のことを良い子だと褒める準備は万端である。
「相談、というか……いや、相談なのかな?………、……その、ね?」
もじもじとどこか恥じらいを感じるような仕草で、ディー先輩は上目遣いに私を見上げてきた。
ほっそりとした体つきに大きめな瞳。赤く色づいた唇。私はその胸が平らなのも、男性器が付いているのも良く知っているが、こうしてみると、確かに性の判別が難しく見える。
うっかり私のお友達のツェルリリを思い出して懐かしくなった。リリちゃんは立派な淑女だが、ディー先輩と似たような意味で、私には最初、性の判別が難しかったからな。
「ディー先輩の相談になら、なんでも乗ろう」
「……僕、ほんっと他の騎士も奴隷も駄目なんだ。ここのやつらは、みんな気のいい奴だってわかってるんだけど、それでも無理。触られると鳥肌立つし、他のやつとクンツみたいにキスとか、それ以上のことは絶対無理だし。イェオリは……まあ慣れるしかなかったから、慣れたけど。でもやっぱ犯されんのは好きじゃないし……」
「ディー先輩は頑張っているのだな。すごいな」
ぽんぽんと、私とは身体の作りが違うディー先輩の頭を撫でていると、彼の目じりが下がった。普段は痛みのせいか、強張った表情をしていることも多いが、こうして穏やかな笑顔を見ると、私まで嬉しくなってくる。
「だから、クンツだけなんだ。嫌悪感なしで触ったり、触られたりできるの。……だから、クンツは嫌かもしれないけど、その……少し、僕に協力してくれないかな?」
「無論だ、手伝うぞ」
「……少しも、悩まないんだね」
「? なぜ悩む必要があるのだ?」
「だって僕、何を協力してほしいか、何も言ってないのに」
「そんなことか。私にできることなら、断る理由もない。それに、ディー先輩の役に立てるなら喜ばしい」
「クンツ……ありがとう」
珍しく上気した表情で、目をきらきらと輝かせて、ディー先輩は感極まったように私の手をぎゅっと握ってくれた。生き生きとしているディー先輩を見ていると、私まで笑顔になってしまう。本当にここに来てよかった。イライラなど吹き飛んでしまった。
「イェオリ」
ディー先輩がふと部屋の奥に備え付けてある、奴隷専用のプライベートルームを見やった。音もなくドアが開き、これといって特徴のない中年男性が、頭を掻きながら姿を現す。ディー先輩の専属奴隷のイェオリだ。
私が部屋に入って来た時にはディー先輩が1人で迎え入れてくれたから、イェオリはいないものだと思った。獣群連邦であれだけ気配に敏感になったのに、少しもわからなかった。
「バルタザールに、研究所からの申し出、受けるって伝えてきて」
<そうか、君の判断なら僕も尊重するよ>
「うん。イェオリも、その……ありがとう」
ディー先輩が少し照れながら礼を口にすると、イェオリはその温和な顔立ちに驚愕の色を乗せた。手が何かを言おうと動くが、よくわからない私が見ても、それは言葉になっていない。まじまじと凝視されて、ディー先輩の表情がだんだんと羞恥と怒りに変わっていく。
「もう、いいから!さっさと行ってきてって!」
ぴんと伸ばした指先を出入り口に向け、そう怒鳴ると、イェオリが慌てながら部屋を飛び出していく。あんなに足音を立てて走るイェオリ、見たことがないな……。
ぽかんと見送ると、私の胸板にぽすんとディー先輩の額が当たった。興奮しすぎたのか、今度は逆に血の気が引いている。私がディー先輩を寝かそうとすると、抱き上げてくれないか、と頼まれた。
私は頷いて自分の膝の上にディー先輩を乗せて、少しだけ悩んだが、苦しそうに浅く呼吸を漏らすディー先輩に、断腸の思いでジュストを渡して抱かせる。
「ジュストはな、抱いていると元気になるからな。……腹と腰、どちらを擦った方がいい?」
「こしを、さすってほし……あと、ジュスト、借りてごめん」
「い、いやいいのだ。ジュストは万病に効くぬいぐるみなのだ。だから私はいつも元気に過ごせるのだぞ。だから、ディー先輩も元気になる」
私が未練がましくジュストを見ているせいで、具合の悪くなったディー先輩に気を使わせてしまった。視線を剥がし、うろうろと室内に彷徨わせながら、私は寄り掛かってくるディー先輩を抱き締めながら、腰をゆっくりと温めるように撫でる。すると、虫の羽音のような音の揺らぎが耳を刺激した。
『ぴんぽんぱんぽーん。えー招集です!全員、リビングに集まってください。繰り返します。招集です。全員リビングに集まってくださーい』
「こんな時に……」
出動ではなく、通常の招集だ。全員に何か通達があるのだろう。
緊急でなければ、後から個別に話を聞きに行けばいい。こんな状態のディー先輩を置いてはいけない。そう思って私が動かずにいると、そっと腕を掴まれた。
「クンツ。僕も連れてって。多分僕の身体の話だから」
「そういえば、イェオリにバルタザールのところに行かせていたな。だが、もう少し落ち着いてからの方がよいのではないか?」
「ううん。後回しにしても、どうせ行かなきゃ行けないし。ね、お願い」
そこまで頼まれては断れない。先ほど協力すると言ったばかりなのだ。なるべくディー先輩に刺激を与えないように横抱きにしたまま、ベッドから降りて靴を履き、部屋を出る。
リビングに向かえば、私は後ろから数えた方が早い到着だった。私とディー先輩という組み合わせが珍しいのか、リビングに入ると視線が集中する。基本的に私はディー先輩の部屋でしか会わないからな。あんぐりと口を開けたユストゥスと、どこか面白くなさそうな表情のエリーアス様の視線が気になった。他の皆は、どこか面白そうな眼差しになっている。
「ぃた……」
「無理をするな。酷い様なら部屋に連れ戻る」
「ありがと、クンツ」
身じろぎをしたディー先輩の額に、うっすらと汗がにじんでいた。耳元で囁き合い、私はリビングの端に設置されている空いていた椅子に、ディー先輩を気遣いながら腰を下ろす。
痛がらせないようにと意識するあまり、ディー先輩がユストゥスを見ては不敵に笑い、エリーアス様には意味深な視線を投げかけていたことには気づかなかった。バルタザールのそばに立っていたイェオリは、にこにことした表情を崩さない。
「なんか面白いことになってるけど、まーこのまま話進めるよ~!」
何が面白いのか少しもわからずに首を傾げていたが、バルタザールは書類の束を取り出して全員に一通り視線を向けた。
私はと言えば、部屋の端にいたはずのユストゥスがずんずんと鼻息荒く近づいてきて、私の隣の椅子に腰を下ろしたことにやや戸惑いつつ、バルタザールの言葉を待つ。ばちばちと、なにか、何かが私の隣と胸元あたりで弾けているような気配があるが、なんなのだ。
「では早速ですが、悪魔の実の種と、君たち魔肛持ちに関する画期的な論文が出ました。一部の効能は知られてるけど、改めて効果があることが実証されました」
アッ、私には理解ができなそうな話!
「実証実験も団長自らしてくれてね~。療養施設のエーゴン医師からも太鼓判出たよ。って言っても何人かよくわかんなさそうな顔してるから、結論から言うね!」
私だけではないのか、と視線を巡らせば、同じように視線を巡らせていたライマー先輩と目が合った。とても親近感が湧くな。彼の専属奴隷のジルケはいつもの通りよくわからない表情をしているし、クリス先輩の奴隷のエイデンも興味なさそうな顔をしている。
「君たちが性行為中に魔肛から分泌している体液に催淫作用が認められました。性交での粘膜摂取することでも活性化するけど、経口摂取の方が2.5倍、効能が高いと出ています。なんで奴隷のみんなは、積極的に担当騎士から摂取してください。副作用については、すでに一部の奴隷が毎日のように摂取してるけど、体調に問題はないので大丈夫でしょう!ね、前に舐めすぎてエーゴン医師に怒られたユストゥスくん」
<……やなこと思い出させんなよ……>
眉間にしわを寄せてわずかに唸ってみせるユストゥス。だが周囲の騎士には、それを弄るような余裕はなかった。
「……はぁ?!つまりケツ舐めさせろって言うこと?!こいつに?!」
ワンテンポ置いてから、ライマー先輩が身も蓋もない悲鳴を上げた。指差されたジルケは変わらない態度で軽く何か頷いている。
周囲を見れば、他にもどことなく引き気味の騎士たちに対して、余裕を持っているのは奴隷たちの方だった。そろりと見れば、エリーアス様でさえ仏頂面になっている。
「はいはーい。まだ話はあるから聞いてね!そして、魔肛から分泌される体液……淫液は、悪魔の実の果汁とほぼ同じ成分らしいです。あれは種を埋め込む際の、激痛を和らげる役割もあると仮説が立てられていたのですが、この度改めて鎮痛効果も確認されました。経口摂取と腸内……魔肛内摂取で、催淫効果、鎮痛効果は格段に上がるそうです。そこで」
言葉を区切り、バルタザールが眼鏡を押し上げながら、こちらを見た。思わずぴんと背筋を伸ばす。
「種の位置が悪かったディーターくんに、淫液を摂取してもらい、種の位置を動かすことができるかの被験者及び治療を施すことになりました。クンツくん、ディーターくんが、摂取するなら君じゃないと受け付けられないって言うんだけど、クンツくんに頑張ってもらう形でいい?」
「へっ?あっ?……私にできることなら、するぞ」
ぐっと拳を握りながら宣言すると、ディー先輩には花開くような笑みを向けられ、隣の男からは禍々しいまでの威圧とため息が漏れた。
「というわけでユストゥスくんは、しばらくクンツくんと性交中に、魔肛舐めちゃだめだから」
「えっ、ユストゥス、私のおまんこ舐めてくれないのか?」
一番は無論おちんぽを入れてもらうことなのだが、少し長めの舌で、くちゅくちゅと襞を嬲られるのは、それなりに気持ちいい。連邦から帰ってきて以降、身体は舐められるのが苦手だが、挿入前に刺激を与えられるのは気持ちいいのに。
<お前、それより、ディーに舐め取られるんだぞいいのか?!>
「なめ……うん?ディー先輩が、わたしを?」
「一応魔具は用意してるけど、鮮度が高い摂取方法の方がより効果があるなら、直接舐めるってこともあるかもしれないね」
「舐める……」
バルタザールが丁寧に伝えてくれたが、あまりイメージが湧かない。私がきょとんとしたことで、場の空気が緩んだ。エリーアス様が軽くこめかみを抑えながら、そこで初めて言葉を発する。
「僕はだいぶ昔のことだったから、あんまり詳しく覚えてないけど、悪魔の実の中で、果汁を上から下から大量に飲まされた記憶があるよ。クンツ1人で足りるの?」
「ディーターくんが、クンツくん以外の騎士は吐くっていうから……摂取できないと困るしね……。試してみて、実際に無理ならその時対応を考えるつもりだよ。なんでクンツくんは今日からしばらく出陣はなしで、白藍魔道団の作ったこの張り型を挿入したまま、過ごしてもらいたい」
「え”ッ」
そこで初めて、私は事態の大きさに気づいた。
狼狽する私に、バルタザールが陰茎を模した魔具を手渡してくる。何か所か内側に向かって穴が開いており、魔具の中に私の体液を貯め込むシロモノらしい。魔具に軽く魔力を通してみると、みにょんみにょんといやらしく蠕動を始める。
「ユストゥスや他の奴隷たちと性交するときは、もちろん抜いていいけど、それ以外は寝ている時も入れててね。ディーター君がどれだけ摂取したら、種が動くようになるかわかんないから、なるべく多く取りたい。今回は引き抜くことは考えてないんだ。種がどう反応するかわからないからね。奥に押し込むことを考えてる」
「ずっと……」
それは、だいぶ……何というか……。言葉を失くした私に、腕の中のディー先輩が青い顔で、申し訳なさそうに唇を震わせた。
「……クンツは手伝ってくれるって言ったけど、少しでも無理だと思ったら言って。すぐに中断させるから」
「いやいや、治療法の確立もしなきゃいけないから。今はディーターくんだけその状態だけど、今後万が一のために対処方法は判明しておかないと」
バルタザールのいうことももっともだ。それに、辛そうに臥せるディー先輩から、その痛みを取り除きたい。バルタザールの言う通り、不幸から生まれる群青騎士が、その後も痛みで過ごさなくていいように尽力するべきだろう。
「無理などということはない。何事も試してみないとな!」
ふんす、と胸を張った私に、ユストゥスがもう一度大きなため息を零した。
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