きもちいいあな

松田カエン

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王都防衛編

112.にじみ出る嫉妬

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 簡単な説明を受けて部屋に戻ってきた私は、さっそく渡された張り型を押し込もうと服を脱いで畳みつつ、ベッドに上がった。
 快感を得れば得るほど、魔肛は分泌液を増やす。それが催淫剤や鎮痛剤やらになるのだ。よくわからないが、いつも以上に水分を取って挑むように、とバルタザールが言っていた。
 エリーアス様はバルタザールの手にしていた論文を借りて読み始め、そして顔をしかめると、珍しく荒々しく足音を踏み鳴らしながら、リビングを後にしていた。
 少し気に掛かったが、私には重大な任務がある部屋に戻った。ディー先輩の今後の生活がかかっているのだ。気を引き締めてやらねば。

 ディー先輩と別れるときに返してもらったジュストをベッドに置き、私は足を開いて中腰になりながら、ぐいぐいと小さな穴の開いた張り型を臀部に押し付けた。安定感のない玩具はすぐにぱたりと倒れてしまう。
 固定するようなものがあれば良いのだが、ときょろきょろと視線を彷徨わせると、黙って付いてきた黒髪い青と金の瞳の男と目が合った。むっつりと、何か怒っているような表情で、閉めたドアに寄り掛かり、腕を組みながらこちらに視線を投げかけてくる。

 つられて私はむっと睨み返した。

 ユストゥスとは娼館の件で冷戦状態だ。とにかくどこに行くにも見張るように付いてくるので辟易している。エリーアス様の命だというのはもちろん知っているが、私がそんなに信用ならないと思うと腹が立つ。エリーアス様に怒られるのは、何となくまだ許せるのだが、ユストゥスに小言を言われるのはなぜだか許せない。
 感情のままに口を開けば、酷い言葉を吐いてしまうことを、私はうすうすわかっているのだ。
 だから私はこの奴隷とは口を利かないことにした。幸いに朝晩普通に、私におちんぽをきちんとくれる。だがそれには優しい愛撫付きだ。
 私がキスを拒めば、素直に引くし、耐え切れずに強請れば……うっとりするほど柔らかい口づけをくれる。それが妙に癇に障って、ささくれ立った心がさらに尖るのだ。私が黙っているのと同じだけ、声の出せない男も言いたいことがあるだろうに、そんなこと少しも出さない。
 そのせいで、うっかり甘えて罵倒してしまいそうで自分に嫌悪が湧く。

<手伝うか?>
「いらん」
 そこに立たれてると目障りだからどこか行け、と言いそうになって私は大きく息を吐いた。

「部屋から出ないから、飲み水を貰ってきてくれ」
 まだ水差しの水は十分にあるのは重々承知しているが、少し離れてほしくてそう頼んで背を向けると、男は静かに出ていった。ちらり、と見てもその姿はない。

「はぁー……ジュスト、なぜ私はこんなにいらいらしているのだろうな?まるで悪い子になったかのようだ。……私は、悪い子になってしまったのか?」

 緊張から身体が硬直してしまい、うまく入らない張り型を投げ出して、ジュストを抱き締めて愚痴る。
 実家にいた時にはこんなことはなかった。そもそもこんな持て余すような感情の大きな起伏自体がなかった。淡々と毎日を過ごし、訓練をして戦場にいき、帰ってきて寝る。その毎日だ。
 兄弟に殺されそうになっても、同じ戦場に出陣した従兄弟が亡くなっても、何も感じないし何も思わない。任務によっては血縁者が敵味方に分かれることもあるのだ。なのに、私は情緒が不安定で、ポンコツ具合にさらに拍車がかかっている。
 魔肛持ちになってから一度も、実家に帰っていないせいだろう。おまんこすることしか頭になかっただけあって、帰りたいとも思わなかった。今でも帰りたくない。でも。

「でも、こんなわがままになるのは問題だとは思わないか、ジュスト」

 実家に帰って、少ししてもらった方が良い気がする。そうすればこのわがままも少しは収まるだろう。そう思うと、少しだけ前が開けた気がした。

「でもその前に、ディー先輩に元気になってもらわなければな!」

 ありがとうクンツ、大好き!と喜ばれるディー先輩を想像してふふふ、と含み笑いをした私は、もう一度身体を起こして、男性器を模した魔具を手にした。
 ディー先輩が元気になったら、外で手合わせもできるかもしれないし、クリス先輩と同じようにお茶会をしてもいい。クッキーを半分こにわけるときに、ちょっと、ほんのちょっとだけ、大きく割った破片を私が食べてもいいだろうし、ラムネは私に多くくれるようになるかもしれない。でもそれではやはり可哀想だから、口の中で溶かして2人で分け合おう。

 たくさん褒められる想像をした私は悦に入りながら、ぐうっと、魔具を自分のおまんこに挿入し、そうにゅう、そう……。

「……入らんぞ?」

 わずかに痛みを伴って引き攣れた感覚に、私は首を傾げた。長さはユストゥスのおちんぽと同等程度だが、直径は細い。えらは張っていて、その下にぽつぽつと穴がある。魔力を通せばくねくねと動いて、より快感を与えてくれる仕組みらしい。
 部屋にユストゥスが戻ってきて、ベッドヘッドに水差しを置くのを横目で見つつ、再度ぐりぐりと後孔に先端を押し付けた。

 自慢ではないが、私のおまんこはよわよわおまんこである。ユストゥスが触ればすぐに達するし、他の奴隷に触られても同様だ。エリーアス様にだってすぐに負ける。絶頂しすぎてあまり触らないでくれと訴えるほどに弱い。
 なのに入らないとはどういうことだ。

「ン……ん、っ」

 仕方なく、私はうつ伏せに丸まるように臀部に指先を伸ばして、慎ましく閉じているアナルを弄り始めた。ぐにぐにと刺激すれば、すぐに柔らかく綻びをみせる。うむ。お手軽まんこである。ぎゅむ、と指を締め付けてくる穴から指を引き抜き、ほら代わりに咥えるといい美味しくないおちんぽだ、と魔具を押し付けて押し込もうとする。
 が、やはり入らない。

「んむ?」

 刺激が足りなかったかと引き抜こうとすれば、先端のえらの部分が入り込んでいるせいで、抜こうとすると痛みが走った。えっ、魔肛だぞ?なんでもすぐに引き込もうとするえっちな穴だぞ??なぜ、痛い。

 こうなったらむりやりにでも押し込めばどうにかなるだろう、そう安直に考えてぐっと押せば、思いもよらない反発と、明確な痛みに、私は身体を固くした。ただでさえ自分でソコを弄ろうとすると、筋肉が邪魔で指が届きにくいというのに、うまく入らないなど。そんな馬鹿な。

「んっ、よっ……ぅう……っ」

 ぶわりと全身から汗が噴き出始めた。抜けないし入らない。体位を変えようにも、足を動かすだけで無機質な張り型が、腹の中を抉る。ディー先輩はこんな痛みを耐えているのかと思うと、血の気が引いた。
 外傷であれば、痛みの度合いも損傷具合も何となく把握ができるせいか、痛くとも我慢できるが、自分では見えない肛門から奥の鈍痛は恐怖を煽る。

「な、ん、……これは、どう、すれば……」

 身動きが取れないまま頭が真っ白になってしまった。臀部から張り型をぶら下げたままという情けない恰好のまま、私は浅く呼吸を繰り返す。どうにかしようとすればするほど、より悪化していく状態に、じわりと目に涙が浮かんだ。
 すると、ぱさりと布団を掛けられた。

「ユス、トゥス……、まぐが、ぬけなっ……」

 横目で見れば、ユストゥスがそばに来てくれているのがわかる。ゆっくりと息を吸って吐かないとまた痛みが走りそうで、私はユストゥスを見ることが出来なかった。
 男のごつごつとした手が、私の頭を撫でる。汗で張り付いた前髪を軽くかき分け、ちゅっと額に口づけが落とされた。割り込むように私の前にユストゥスが上がってくる。

<ちゃんと愛撫しねえと駄目だろ。触っていいか?>

 私に言い聞かせるようにゆっくりとした手話だ。かすかに頷くと、ユストゥスの鋭くも整った顔が近づいてきた。指で刺激された唇が、反射的に開いて男の唇を受け入れる。そろりと入ってきた舌が、私の歯列を割った。

「っふ、んっ、ん、……」

 私の反応を伺うような控えめな口づけだ。さらに受け入れようと口を開くと、男の両手が私の身体に伸びる。軽く両方の乳首を摘ままれて、私はビクンと身体を跳ねさせた。ぎゅっと魔具を締め付けてしまい、小さく呻く。じろりと睨みつけても、ユストゥスは私の乳首を弄るのを止めなかった。
 人差し指と親指ですりすりと表面を擦り、触らずともふっくらと芯を持つと、むにむにと胸部全体を揉み、かりかりと爪先で突起の先端をくすぐる。くすぐったい。男の手のひらを押し返すように反射的に力を込めれば、引き締まった筋肉も撫でるように揉まれた。その間にも口づけは止まらない。

 角度を変えて啄み、舌を引きずり出されて甘噛みされる。大胆になっていく愛撫に、私は身体をくねらせた。開発された身体は、すぐに熱くなってくる。乳首をびんびんに勃起させると、名残惜しそうに離れたユストゥスの手が、私のペニスを握った。

「ひゃ、うっ」
 そこへの刺激に腰が逃げる。それをもう片方の手が抑え込み、ユストゥスのがうつ伏せの、足の間に顔を潜り込ませた。

「ぁんっ」
 ちろちろとまるで飴を舐めるように、先端を舌先で刺激される。痛みに萎えていた私はフェザータッチからの刺激でソコを半勃ちにさせていた。さきっぽをぱくっと咥え込まれ、包茎と亀頭の間に、唾液を伴なった舌を差し込まれる。

「ああ”ぁあっ、ユス、だめ、っだめ!そこよわいっからっぁああ”っ!」

 おちんぽをもぐもぐとユストゥスに食べられて、私は悲鳴を上げた。熱い口内に愛撫されて腰を揺らす。その揺れに釣られて、中途半端に咥え込んだ張り型がびよんびよんと揺れた。それをユストゥスは掴んで引っ張るが、やはり引き攣れていて、私は身体を強張らせた。

 眉間にしわを寄せたユストゥスは、がちがちに育て上げた私のペニスを口から離した。ひんやりと外気に触れ、腰がぶるりと震える。正座のまま上半身を倒したような恰好のまま、私は肩で呼吸を繰り返し、わずかに力を抜いた。すると、次は臀部を揉まれて、私は慌てて背後を見た。ユストゥスが掛けてくれた布団が大きく膨らんでいる。ユストゥスはの足がはみ出しているのが見えた。

「っなに、ひぁっ?!」

 くいくいっと魔具を引っ張った後、ぬるりと濡れた感触が、ぎちぎちになった肉筒のふちに感じられて私は身じろぎをした。動きたくても動けない私をよそに。ぬるぬると張り型と魔肛の境目を何かが行き来している。
「ひぃいっ!」
 それと合わせるように舐められて濡れそぼった私のペニスを、ユストゥスは扱き始めた。両方の刺激に身体がびくびくと跳ねる。違和感はあったが、痛みが消えていて、私は心のどこかで安堵しながら、ユストゥスの手に身体を委ねた。
 玩具を締め付けて動かなかったソコは、快感に反応して愛液を滲みだし、締め付けもただきついものではなく、精液を強請るような蠕動を含んだものに変わる。ぐぷっぐぷっと水音を立てながら、ユストゥスが動かす玩具が快感を引きずり出すように動き、じゅぷんっと引き抜かれた。

「ふぁっ……あー……」

 ぴくぴくっと甘イキに身体を浸す。物足りない快感ではあるが、甘く心地よい。異物が取り除かれたことで身体が弛緩し、私はそのままうつ伏せに寝転がった。足を伸ばしたいが、ユストゥスの身体が邪魔で、ややがに股に開いたままだ。それでも身体から力を抜くことが出来て、私はほっと一息ついた。

「……」

 結局ユストゥスの手を煩わせてしまった。最初から大人しく手を借りておけばよかったな。そんなことを考えながら身を横たえていると、再度むにっと臀部を割り開くように鷲掴みにされて、私は慌てて下半身を見た。

「なっ、なにを……!」
 ユストゥスが掛けてくれた布団で下肢が見えない。身体を冷やさないようにという気遣いだとはわかったが、今なにが起こっているかがわからず、私は意を決してばさりとはぎ取った。

「んなっ!」
 そこで私が見たのは、無理に押し込んたせいでぽってりと熱を持ってぷっくりと縁がふくらんだ後孔に、今にも舌をねじ込もうとしている男の姿だった。

「ぁああ”っ!」

 柔らかくなったソコに舌をねじ込み、指でむにっと広げながら、くちゅくちゅとわざとらしい水音を立てて中を掻きまわす。私が前に這って逃げようとすれば、腰を掴んで引き上げられた。
 咄嗟に蹴ろうと足を動かすも、ベッドに座ったユストゥスの顔を太ももで挟むような形で身体を持ち上げられ、その状態でおまんこを舌と唇で嬲られた。

「あっ、ああっあっあ”っ」

 おちんぽの圧倒的質量とは違う、ぐねぐねと動く軟体動物のような舌に翻弄される。指を二本押し込まれ、こりこりと前立腺から敏感な縁まで、どこもかしこも嬲られた。快感に弱い身体はあっという間に上り詰め、舌と指をペニスに見立てて搾り取ろうときゅうううんっと締め付ける。

 その瞬間に、ぢゅっと音がするほど吸い付かれた。
 ごくっと喉を鳴らす音が聞こえ、羞恥に身体が熱くなる。

「ひぁあ、あああ”あ”あ”っ!!」

 太ももでユストゥスの頭を締め付けながら、私ははしたなくも絶頂した。上半身はベッドに沈んだまま、びくびくと快感に身を浸す。腹部から胸部にかけて、硬いものがあることには気づいたが、身体が動かなかった。

「ひぐう、っあ、や……ひろげ、らいでっ」

 舐め嬲ったユストゥスは、両手の指を二本差し入れると、そのまま収縮をくりかえそうとする肉膣を押し広げた。はあっとユストゥスが熱い呼吸を漏らしているのが聞こえる。
 中を、見られている。じゅわ、ととろみのある淫液を滲みだしながら、雄を求めるいやらしい穴を間近で眺められて、恥ずかしいのにそれでも軽く達してしまった。

「やだっやぁ……ゆす……!やだっ!!」

 よくわからない涙がこぼれてくずぐずになる。するとユストゥスはゆっくりとベッドに降ろしてくれた。こてんと転がったジュストを抱き、身体に布団を巻き付けてひくっと喉を震わせながら、ベッドの端まで逃げる。

 そこまでいってからようやくユストゥスを見上げた。

 仏頂面でこちらに視線を向ける男に、私は首を竦ませてジュストの腹に顔をうずめる。片目でちらりと様子を伺いながら鼻を啜った。

「なん、なぜ、こんな、急に」

 声が震える。普通に性交してくれるならまだしも、あんなに、す、吸われ……っ。まだ中に何か入っているような、ひりひりとした違和感を感じる。
 もう少し経ては魔肛なら落ち着くだろうが、体液を貯めるために魔具を預かったし、ユストゥスは舐めるなと言われてなかったか?

 何か申し開きする気はあるのか、とじろりと睨みつけると、ゆっくりと息を吸ったユストゥスが、そのまま大きく息を吐いた。

<俺のお嫁様がほかの男と性交するのはいい。あれは食事であって必要不可欠なもんだからな。それは仕方ない。俺だって割り切ってる。クンツが気持ち良くなるようにアドバイスだってするし、円滑に精液貰えるようにお膳立てだってする。けどな、ただでさえエリーアスが触るのだって気に食わねえのに、今度はディーだあ?ふっざけんなよ。魔肛から分泌される液体が必要なら、俺が今からエリーアスからでも搾り取ってやるっつーの!絶対クンツの体液なんざあいつにはやらねえよ!ディーが苦しんでるのは知ってるけど、クンツじゃなきゃ駄目ってのがマジで気に食わねえ。なんなんだあいつ、クンツは俺のもんで、俺はクンツのもんなんだよ!ほかの誰かが入る余地なんてどこにもねえんだ。くそ……こんな、だれにも、触らせたく、ねえのに……>

 怒涛の乱雑な手話に、言葉を拾いきれない。かと思えば、急に燃料が切れたかのようにぱたりと手話が止まった。……これは、あれだな?娼館で、ユストゥスが泣いた時と似ているな?
 思った以上に嫉妬深いなこいつ。
 私は物珍しいものでも見るかのように、男を見つめたままそっと近づく。

「どうして、私なのだ?お前はなんなのだ。……ほんとうに、お前は、私の狼なのか……?」

 だれに何を言われようとも、ユストゥスにだけは聞くものかと思っていた言葉が、するりと零れ落ちた。


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