異世界バトルキッチン:最強料理人への道~美少女たちを添えて~

雪見クレープ

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第14話 醤油を作ろう!

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 俺のものになった(俺は認めてはいない)ガーネットは結局、王城に錬金術師として雇われることになった。

 薬を作るといった仕事を任されている。

 それでも暇があると俺の部屋を訪ねてくる。

「リク君、ちょっと手を見せてくれないか?」

 ガーネットの声が艶っぽく響き、俺は思わず目を向けた。

 彼女は俺の前に立ち、いつもの少し余裕を感じさせる笑顔で、俺の手を取ろうとする。

「え? 手って、どうかしたのか?」

 俺は不意を突かれ、少し戸惑いながらも彼女の意図がわからず手を差し出した。

 すると、彼女は俺の手をそっと握り、優しく包み込む。

「ただね、こうして君の手を見ていると、君がどれだけ料理に情熱を注いでいるのかが伝わってくるよ。すごく魅力的だ……リク君」

 彼女の声はまるで甘い囁きのようで、俺の心拍が少し早まるのを感じた。

「そ、そんなこと言われると、照れる……」

 俺は顔が熱くなるのを感じ、慌てて視線を逸らした。

 ずっと料理一筋でやってきたから、それを褒められるのは直にうれしい。

「ふふ、リク君は素直だね。でも、こうやって君の力強い手に触れていると……他の……料理だけじゃなく、もっと……特別なものも作ってみたくならないかな?」

 ガーネットはさらに一歩俺に近づき、柔らかい指先で俺の手を撫でた。

 彼女の瞳が妖しく輝き、俺を見つめる。

「え、えっと……?」

 何を言っているのかわからず、俺はさらに混乱した。

「ちょぉっと待ったぁ!」

 その瞬間、レイラの鋭い声が響き、ガーネットと俺の間に割り込んできた。

 彼女の顔には明らかな不満が表れている。

「ガーネット、リクをからかうのもいい加減にして! リクは真面目に料理に向き合っているんだから、邪魔しないでよっ!」

 レイラは俺の腕を取り、ガーネットから引き離そうとする。

 ガーネットはふふっと笑う。

「おっと、レイラ王女。私は少しからかっていただけですよ、本気じゃないさ」

 と、軽く肩をすくめる。

「まあ、リクはそんなことで動揺するような男じゃないけど!」

 レイラは俺を守るように前に立ち、真剣な目でガーネットを睨みつける。

 俺はどうすればいいかわからず、ただ黙って見守るしかなかった。

 しかし、レイラの気持ちははっきり伝わってくる。

 彼女は俺を、セレスティアルに選ばれた俺を、守ろうとしてくれているんだ。

「レイラ、ありがとう。でも、大丈夫だよ。俺だってセレスティアルをそんな簡単に取られる真似はしない」

 俺は少し苦笑いを浮かべながら、レイラを安心させるように肩を叩いた。

「そうじゃなくてっ……。まあ、リクはリクだから……余計な心配した」

 レイラは少し顔を赤らめながらも呆れ顔だった。

 ガーネットはそのやり取りを見て微笑し、

「リク君は本当に愛されているね。これからも楽しみだ。では、仕事に戻りますか」

 と、急に真面目な表情に戻った。

 ガーネットもイリス同様、俺に魔法を教えてくれている。

 3人で厨房に移動する。

「じゃあ、また今日も黄金の鍋、使わせてもらうよ」

「いちいち承諾はいらないさ、それはもう君のものだから」

 俺はガーネットから“黄金の鍋”の使い方を教わっていた。

 この鍋で食材を煮ると単純においしくなる(以前ガーネットが作った金色のチキンブイヨンのように)が、それだけじゃなく、煮込む時間が短くなる。

 魔力の注ぎ方次第では、食材の温度を急激に変化させたりと様々な応用が効く。

 そして今日はとうとうアレに挑戦する。

 俺が異世界アストリアに来て、一番困っていたこと……。

 醤油、味噌、ウスターソースといった日本でお馴染みの調味料がないことだ。

 特にこの3つは人に聞いても書籍を読んでも出てこない。

 世界の全てを知っているわけではないので、どこかの国や、どこかの部族が作っているかもしれないが、少なくともこの国にはない。

 野菜の出汁をメインに使って煮詰めたソースはあるが、元の世界のあそこまで濃縮された調味料はない。

 ウスターソースの原材料はわかっているので、挑戦はしてみたものの、うまく作れない。

 元の世界でもさすがに自分で作ってはいないし、分量まではわからないから当然ではある。

 醤油や味噌に関してはそもそも麹がない。

 そういうわけで諦めていたのだが、ここにきて魔法の鍋が手に入った。

 俺はさっそく黄金の鍋を使って調合を始める。

「とにかく醤油だ。麹はないが、魔法はある。なんとかなる」

 醤油は絶対にほしいので、絶対に出来ると自分に言い聞かせる。

 俺の目の前には昨日から水に浸しておいた大豆の入ったボウルが並んでいる。

 準備はオッケーだ。

 まずは大豆を蒸す。

 次第に白い蒸気がふわりと立ち上る。

 その間に麦を炒って、砕く。

 次に、黄金の鍋の中に、大豆、麦、そしてたっぷりの塩水を入れる。

 あとは全力で魔力を注ぎながら、混ぜる!

「醤油になれ、醤油になれ、醤油になれ……」

 ひたすら願いながら混ぜる。

 鍋が微かに輝き、まるで俺の意図を察したかのようにその中の材料がゆっくりと変化を始める。

 魔力を注ぎながら、木べらで混ぜるたびに、鍋の中で材料が躍るように溶け合い始めた。

「いい調子だ、リク君。鍋はきっと君の想いを感じ取ってくれる」

「リク、大丈夫? 目が怖いよ?」

 ガーネットは鍋の使い方を褒めてくれて、レイラはガチガチに集中している俺を見て少し引いていた。

 すると、中に入れた食材がまろやかに融合し、独特の香りが広がり始めた。

 大豆が崩れ、茶色くなっていき、沈殿物が貯まる。

「もろみだ……」

 感動した。

 麹はないが、魔法とやる気でどうにかしてやった。

 黄金の鍋がまさに奇跡を生み出している。

 何とも言えない芳醇な香りが強くなっていき、部屋中に広がっていく。

 味を見て、ちょうどいいところで、ガーネットにもらった清潔な布袋で濾す。

 ゆっくりと流れ出す濃厚な液体――赤黒いその色は、間違いなく醤油だ。

 瓶に詰め、そして蓋を閉める。

 俺はその瞬間、深い達成感に包まれた。

「できた……」

 瓶を握りしめ、わずかに香りを嗅ぐと、深みのある香りが鼻を突き抜けた。

「醤油が完成したんだ」

 味を見る。

「ちゃんと醤油だ……。だけど、なんだこの匂い……! 今まで感じたことのない深い香りだ」

 思わず声に出してしまった。

 黄金の鍋が持つ力が、素材を最大限に引き出しているのがはっきりと感じられる。

 ガーネットもレイラも驚きの表情を浮かべ、俺の作った醤油を見つめる。

「すごいな、リク君! これが醤油という調味料か」

「作っているときは真剣すぎてちょっと怖かったけど、ちゃんと出来上がってよかったね!」

「ありがとう、ふたりとも。この醤油を使った料理は無限大だ。楽しみにしていてくれ」

「そして、次は味噌だ」

 俺はさらに挑戦心を燃やし、同じく大豆を使って味噌の発酵に取り掛かる。

「醤油ができたんだ、味噌だってできる、絶対に」

 こちらも昨日から水に浸しておいた大豆を使う。

 まずは大豆を煮る。

 本来なら、時間のかかる工程も黄金の鍋のおかげで時短できる。

 次は大豆をすり潰す。

 ここでセレスティアルをの出番。

 大豆をセレスティアルでみじん切りをする。

 しかし、実際はすり潰している。

 魔力を込めて食材を切るとすり潰すこともできるようになっていた。

 黄金の鍋に大豆、塩、大豆の煮汁を入れる。

 そして、ひたすら混ぜる。

 麹無しで醤油ができた以上、麹無しで味噌だってできる。

 そう信じて混ぜ続けた。

「味噌になれ……味噌になれ……味噌になれ……」

 俺の魔力とガーネットの鍋の力で、徐々に美しい色合いの味噌ができあがっていく。

「どうだ?」

 俺は鍋から少しすくって、味を確認する。

「うん! これならいける! 発酵のバランスも良いし、深い味わいだ」

 俺は満足げに笑みを浮かべた。

「しかし、これは……米味噌か」

 使う麹の違いで米味噌、豆味噌、麦味噌になるが、今回は米味噌になった。

 材料の配分はおそらく関係ない。

 自分の込めた魔力と想いが慣れ親しんだ米味噌にしたんだろう。

「でも、もう少しだけ熟成させたい」

 味噌自体は出来上がったから、容器に移して熟成させてもいい。

 しかし、このまま混ぜてしっかり熟成させたい。

 今すぐ、おいしい味噌が食べたいから――。

 鍋に魔力を注ぎ、味噌を混ぜる。

 いい色艶が出て、香りも良く、味に深みが増した。

「おいしい味噌が、完成した」

「やったわね、リク!」

「よくやったよ、君は……」

「ありがとう、ふたりとも。俺はやりきった」

 ただ、もうクタクタだ……。

 腕は疲れたし、魔力は尽きて気だるさが襲う。

「もうお疲れのようだね。今日はここまでにしておくかい?」

 ガーネットが微笑みながら問いかけた。

「ウスターソースはまた今度、魔力が回復してからにするよ……」

 レイラもずいずいと近寄ってきて褒めてくれる。

「今日はがんばったよ、リク! これでもっとおいしい料理が出来るようになるね!」

「ああ、今夜は醤油と味噌を使った料理を作るよ」

 そして改めて俺はガーネットに感謝の意を伝えた。

「これで俺の料理の幅はもっと広がる。ありがとう、ガーネット。お前の鍋のおかげだ」

「ふふ、どういたしまして。これからも一緒に、いろんな料理を作っていこう」

 ガーネットは軽くウインクしながら言い、俺の隣に立った。

 ――――――――――

 この日はご飯に味噌汁、豚の生姜焼きを作った。

 みんなおいしいと言って喜んでくれた。

 この世界でも日本の味は認められるようだ。

 そして――その夜、俺はひとり泣いた。

 日本の味のなつかしさ、日本への恋しさ、無事に帰れるのかという不安。

 いろんな感情が溢れた……。
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