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第13話 錬金術師、再び
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異世界アストリアに来てから、もうどれくらいの日々が過ぎただろう。
こちらの世界の食材や魔法に関していろいろと詳しくなってきた。
王都から出て農園や牧場を見てまわったり、厨房にこもって調理の研究をしている。
平和でいいことなんだが、料理皇帝ラズフォード・アルカディアに関する報告もない。
今日も王城での一日は静かに過ぎるはずだった。
しかし、そんな穏やかな時間も長くは続かない。
「リク、お客さんだよ! すぐに来て!」
フィーナの声に呼ばれ、少し戸惑いながらも廊下に出る。
王城に招かれる客は珍しいわけではないが、俺に会いに来る者となると限られている。
それが誰なのか、思いを巡らせながら広間に向かった。
――――――――
「久しぶりだな、リク君」
俺に会いに来たというのは、錬金術師、ガーネット・オーラムだった。
ガーネットは以前戦った相手だ。
錬金術と料理を組み合わせた彼女の独特なスタイルに、俺も苦しめられたのを覚えている。
しかし、こんなに早く再会することになるとは思わなかった。
「ガーネット……旅に出てそんなに経ってないんじゃないか、なぜここに?」
彼女はにやりと微笑み、肩をすくめる。
「噂を聞いたんだ。君があの料理皇帝ラズフォードの配下の料理人と戦ったって話をね」
彼女の目が鋭く光る。
「その話を聞いて、いてもたってもいられなくなった。リク君、私ともう一度戦ってくれないかい?」
どうやらそれがガーネットの闘志を再び呼び起こしたらしい。
「まさかこんなに早く再戦する日が来るとは……」
「ふふ、君も分かっているだろう? 私たちの前回の戦いは決着がついていない。君は戦いを経て、あの時よりさらに技術を磨いているはず。今ならもっといい勝負ができる」
ガーネットはそう言いながら、真剣なまなざしで俺を見つめる。
その挑戦的な視線に、俺も自然と気持ちが高ぶってきた。
さらに成長した自分を彼女に見せたいという気持ちもある。
「いいだろう。もう一度勝負しよう、ガーネット」
俺がそう答えると、彼女の表情が少し緩み、微笑みが浮かんだ。
「嬉しいよ、リク君」
――――――――――
前回同様、バトルキッチンは王城の厨房を使って行われることになった。
審査員にレイラ王女、イリスとフィーナも観戦に駆けつけてくれた。
セレスティアルの力を少しずつ使いこなせるようになってきた。
技術も食材の知識もあの時の比ではない。
「今の俺なら勝てる!」
気合いも十分入れたところで、ガーネットに賭けるものを聞く。
「賭けるものは前回と一緒でいいのか?」
「あ、そういえば忘れていたよ。強くなった君の実力を試すことしか頭になかった」
「おいおい……」
「まあ、前回と一緒でいいよ。私が勝ったら君の不思議な包丁をもらう。君が勝ったら、“黄金の鍋”と私を差し出そう」
レイラ王女は一瞬、ムッとした表情を見せたが、すぐに真剣な表情に戻り、テーマを発表する。
「テーマは『融合』。魔法と料理、食材と食材、どういった組み合わせでも構いません。あなたたちふたりの料理が私たちの想像の上をいくことを期待しています」
融合か……。
難しいテーマだが、日本人に愛される「昆布とかつおの合わせだし」もうまみの融合と言えるだろう。
あれを意識して考えてみることにした。
そしてイリスが開始の合図をする。
「今回は『融合』をテーマとして一品を作り、その出来栄えをレイラ王女が評価するという形になります」
「リク・アマギは包丁を、ガーネット・オーラムは鍋と自分自身を賭けることとします。それでは、バトルキッチン開始!」
イリスが高らかに声をあげ、俺たちはそれぞれ調理台に向かう。
今回のテーマは『融合』。
ガーネットがどんな料理を作ってくるのか、俺も期待と同時に緊張感が走った。
まずガーネットは、以前にフィーナが使っていた“魔法のゼラチン”を少量の水でふやかす。
次に、黄金の鍋に、輝く赤いベリーと砂糖を入れ、潰しながら弱火にかける。
ベリーが潰れる瞬間、果汁が鍋の中でじわりと広がり、鍋底から立ち上る蒸気がたなびいた。
ゆっくりと混ぜながら、砂糖が溶けて甘く濃厚な香りが広がる。
火を止めて、牛乳、魔法のゼラチンを入れ、ゼラチンがしっかり溶けるように混ぜる。
ボウルに移し、6分立てにした生クリームと混ぜ合わせる。
「ムースを作っているのか……」
俺がそうつぶやくと、ガーネットが赤いベリーを手に取り俺に説明してくれる。
「この鮮やかなルビーのような赤い色の『ルビーナベリー』。口に含むと甘みと酸味が絶妙に広がり、かすかに辛味と熱が感じられるんだ」
そう説明しながら、次は青いベリーを使い、同じ工程でムースを作り始める。
「こっちの冷たく透き通るような青い色のベリーは『ネビュラベリー』と言って、食べるとひんやりとした清涼感が広がり、甘さの中にミントのような爽やかさがある」
「そう、このふたつのベリーのムースは口の中で一瞬のうちに溶け、温かさが爆発するような『炎のムース』と、冷たい清涼感を感じさせる『氷のムース』が合わさるわけさ」
彼女の手元で、透明の器にふたつのとろみがついたムースが芸術品のように流れていく。
魔法を駆使して流し込み、前の世界ではありえない美しい模様を描いている。
そして氷冷箱にいれて冷やし固める。
「さあ、リク君。君の『融合』をみせてくれ」
「おう、任せとけ!」
まずは今回の味の決め手である昆布としいたけを使う。
こちらの世界では生の昆布は普通の海藻類と同じように食べられているが、俺はアタアクアの町長に乾燥させたものを送ってもらっていた。
しいたけも出汁の研究用に以前から乾燥させておいたものを使う。
このふたつから出汁を取っておく。
そして、アタアクアの特産品「ジャイアント・デッドクロー」の大きなハサミを取り出す。
これもアタアクアの町長に送ってもらったものだ。
堅い殻だろうが、セレスティアルなら問題なく切ることができる。
殻から中の白い身を取り出す。
その身はぷりぷりで、海の恵みを凝縮したような弾力だ。
次は根菜の「テラフォンド」。
テラフォンドは、アルティナの豊かな栄養を含んだ地下で育つ、黄金色こがねいろの大きな根菜。
一度下茹でをしておく。
こうすることで、えぐみがなくなり、食感も柔らかく仕上がる。
別の鍋に出汁を温め、塩、白ワイン、しょうが汁を入れ、テラフォンドを煮る。
テラフォンドが柔らかくなったら、ジャイアント・デッドクローの身を入れ、軽く煮る。
本当は醤油を入れたいところだがそんなものはない。
それでも、白ワインと特別なカニのおかげで十分強めの風味を感じられる。
そこに水溶き片栗粉をまわし入れる。
こちらの世界での片栗粉は、元の世界での「カタクリ」とは違うユリ科の根茎から採れる。
だから正確には「カタクリコ」ではないのだが、用途は同じで便宜上そう呼んでいる(勝手に翻訳されている)。
そして、器に盛る。
煮込んだカニの身とテラフォンドがトロリとしたあんで包み込まれる。
料理全体がきらめきを帯びたように輝き、視覚的にも華やかな一品となった。
これで、「根菜のカニあんかけ」の完成だ。
ガーネットも冷やし固めたムースに生クリームを軽く絞り、ルビーナベリーとネビュラベリー、ミントを飾る。
赤と青が混ざり合いながらも、どこか対立しているかのような不思議で美しい模様をしている。
ガーネットの「デュオムース ~炎と氷の共演~」の完成。
ふたりの料理が、審査員であるレイラ王女の前に運ばれ、審査が始まる。
レイラ王女が俺の料理から口をつける。
「なんて優しい味……テラフォンドの風味が口の中で広がり、次に海の旨味がじんわりと追いかけてくる。まるで、大地と海が一つになったかのような調和です」
レイラはもう一口、あんをしっかり味わう。
「このあんもまた、大地と海の融合なのですね。昆布にこのような使い方があるのは知りませんでした。全体のバランスが完璧です。リク、あなたは自然の味わいを見事に融合させたわ」
レイラが喜んでくれてよかった。
和風の出汁もちゃんとわかってくれたようだ。
次にレイラ王女がガーネットのムースを口に運ぶ。
「これは……温かくて、辛味が広がる。でも……不思議なことに、次第に冷たいムースが来て、辛さがすぐに和らいで全く別の味が生まれる! 後味のミントのような爽やかさが心地よい……」
レイラの表情は驚きに満ちている。
熱さ、冷たさ、対立するはずの二つの要素が見事に融合していることに感動した。
「まさに錬金術の妙技。味の変化がこんなにも楽しいとは……」
彼女は笑顔でガーネットに賛辞を送った。
そして、勝敗の結果が言い渡される。
レイラ王女は深く考え込んだ後、ゆっくりと立ち上がった。
「どちらも素晴らしい料理だったわ。ガーネット、あなたのムースは味の変化が驚くべきもので、錬金術の技が存分に発揮されていた」
彼女はガーネットを見て微笑んだ。
「しかし、リクの煮物は……味の融合だけでなく、山と海、自然の恵みを最大限に活かしていた。僅差ではありますが、勝者はリク・アマギです!」
俺はほっと息をつき、ガーネットに向き合う。
「いい勝負だった、ガーネット」
ガーネットは一瞬迷うような表情を見せたが、すぐに笑みを浮かべ、「黄金の鍋」を差し出してくれた。
「リク君、君の腕前は確かに本物だ。約束通り、この鍋は君のものだよ」
彼女が差し出した、輝く「黄金の鍋」。
彼女の最高傑作だというその鍋を俺はしっかりと受け取り、感謝の気持ちがこみ上げてくる。
「ありがとう、ガーネット。この鍋は存分に活用させてもらうよ」
だが、その瞬間、ガーネットがにやりと笑みを浮かべて、少しからかうような口調で言ってきた。
「さて、もうひとつ、私自身も君のものになったわけだが、私のことも存分に活用してくれるのかな?」
「えっあっ、その……っ」
頬が一気に熱くなるのを感じた。
ガーネットの瞳が俺を見つめて、彼女の微笑みには余裕すら感じられる。
冗談だと分かっていても、心臓が早鐘のように打ち始める。
だが、その余韻に浸る暇もなく、突然、遠くから聞こえてきた声が俺の耳を突き抜けた。
「「「リクぅ(さん)ーーーーっ!!!」」」
3つの声が重なって、俺の名を呼んでいる。
振り返ると、レイラ、フィーナ、そしてイリスが、全速力でこちらに向かってくる。
目を輝かせながら駆け寄る姿が、まるで嵐のようだ。
「ど、どうしよう、ガーネット」
俺は完全に混乱してしまい、鍋を抱えながらガーネットに助けを求めた。
しかし彼女は、楽しそうに微笑んでいたのだった。
バトルキッチンは終わり、俺は黄金の鍋を手に入れ、ガーネットと共に新たなステップへと進む。
この錬金術師のお姉さんがさらなる高みへ導いてくれることを予感しながら。
こちらの世界の食材や魔法に関していろいろと詳しくなってきた。
王都から出て農園や牧場を見てまわったり、厨房にこもって調理の研究をしている。
平和でいいことなんだが、料理皇帝ラズフォード・アルカディアに関する報告もない。
今日も王城での一日は静かに過ぎるはずだった。
しかし、そんな穏やかな時間も長くは続かない。
「リク、お客さんだよ! すぐに来て!」
フィーナの声に呼ばれ、少し戸惑いながらも廊下に出る。
王城に招かれる客は珍しいわけではないが、俺に会いに来る者となると限られている。
それが誰なのか、思いを巡らせながら広間に向かった。
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「久しぶりだな、リク君」
俺に会いに来たというのは、錬金術師、ガーネット・オーラムだった。
ガーネットは以前戦った相手だ。
錬金術と料理を組み合わせた彼女の独特なスタイルに、俺も苦しめられたのを覚えている。
しかし、こんなに早く再会することになるとは思わなかった。
「ガーネット……旅に出てそんなに経ってないんじゃないか、なぜここに?」
彼女はにやりと微笑み、肩をすくめる。
「噂を聞いたんだ。君があの料理皇帝ラズフォードの配下の料理人と戦ったって話をね」
彼女の目が鋭く光る。
「その話を聞いて、いてもたってもいられなくなった。リク君、私ともう一度戦ってくれないかい?」
どうやらそれがガーネットの闘志を再び呼び起こしたらしい。
「まさかこんなに早く再戦する日が来るとは……」
「ふふ、君も分かっているだろう? 私たちの前回の戦いは決着がついていない。君は戦いを経て、あの時よりさらに技術を磨いているはず。今ならもっといい勝負ができる」
ガーネットはそう言いながら、真剣なまなざしで俺を見つめる。
その挑戦的な視線に、俺も自然と気持ちが高ぶってきた。
さらに成長した自分を彼女に見せたいという気持ちもある。
「いいだろう。もう一度勝負しよう、ガーネット」
俺がそう答えると、彼女の表情が少し緩み、微笑みが浮かんだ。
「嬉しいよ、リク君」
――――――――――
前回同様、バトルキッチンは王城の厨房を使って行われることになった。
審査員にレイラ王女、イリスとフィーナも観戦に駆けつけてくれた。
セレスティアルの力を少しずつ使いこなせるようになってきた。
技術も食材の知識もあの時の比ではない。
「今の俺なら勝てる!」
気合いも十分入れたところで、ガーネットに賭けるものを聞く。
「賭けるものは前回と一緒でいいのか?」
「あ、そういえば忘れていたよ。強くなった君の実力を試すことしか頭になかった」
「おいおい……」
「まあ、前回と一緒でいいよ。私が勝ったら君の不思議な包丁をもらう。君が勝ったら、“黄金の鍋”と私を差し出そう」
レイラ王女は一瞬、ムッとした表情を見せたが、すぐに真剣な表情に戻り、テーマを発表する。
「テーマは『融合』。魔法と料理、食材と食材、どういった組み合わせでも構いません。あなたたちふたりの料理が私たちの想像の上をいくことを期待しています」
融合か……。
難しいテーマだが、日本人に愛される「昆布とかつおの合わせだし」もうまみの融合と言えるだろう。
あれを意識して考えてみることにした。
そしてイリスが開始の合図をする。
「今回は『融合』をテーマとして一品を作り、その出来栄えをレイラ王女が評価するという形になります」
「リク・アマギは包丁を、ガーネット・オーラムは鍋と自分自身を賭けることとします。それでは、バトルキッチン開始!」
イリスが高らかに声をあげ、俺たちはそれぞれ調理台に向かう。
今回のテーマは『融合』。
ガーネットがどんな料理を作ってくるのか、俺も期待と同時に緊張感が走った。
まずガーネットは、以前にフィーナが使っていた“魔法のゼラチン”を少量の水でふやかす。
次に、黄金の鍋に、輝く赤いベリーと砂糖を入れ、潰しながら弱火にかける。
ベリーが潰れる瞬間、果汁が鍋の中でじわりと広がり、鍋底から立ち上る蒸気がたなびいた。
ゆっくりと混ぜながら、砂糖が溶けて甘く濃厚な香りが広がる。
火を止めて、牛乳、魔法のゼラチンを入れ、ゼラチンがしっかり溶けるように混ぜる。
ボウルに移し、6分立てにした生クリームと混ぜ合わせる。
「ムースを作っているのか……」
俺がそうつぶやくと、ガーネットが赤いベリーを手に取り俺に説明してくれる。
「この鮮やかなルビーのような赤い色の『ルビーナベリー』。口に含むと甘みと酸味が絶妙に広がり、かすかに辛味と熱が感じられるんだ」
そう説明しながら、次は青いベリーを使い、同じ工程でムースを作り始める。
「こっちの冷たく透き通るような青い色のベリーは『ネビュラベリー』と言って、食べるとひんやりとした清涼感が広がり、甘さの中にミントのような爽やかさがある」
「そう、このふたつのベリーのムースは口の中で一瞬のうちに溶け、温かさが爆発するような『炎のムース』と、冷たい清涼感を感じさせる『氷のムース』が合わさるわけさ」
彼女の手元で、透明の器にふたつのとろみがついたムースが芸術品のように流れていく。
魔法を駆使して流し込み、前の世界ではありえない美しい模様を描いている。
そして氷冷箱にいれて冷やし固める。
「さあ、リク君。君の『融合』をみせてくれ」
「おう、任せとけ!」
まずは今回の味の決め手である昆布としいたけを使う。
こちらの世界では生の昆布は普通の海藻類と同じように食べられているが、俺はアタアクアの町長に乾燥させたものを送ってもらっていた。
しいたけも出汁の研究用に以前から乾燥させておいたものを使う。
このふたつから出汁を取っておく。
そして、アタアクアの特産品「ジャイアント・デッドクロー」の大きなハサミを取り出す。
これもアタアクアの町長に送ってもらったものだ。
堅い殻だろうが、セレスティアルなら問題なく切ることができる。
殻から中の白い身を取り出す。
その身はぷりぷりで、海の恵みを凝縮したような弾力だ。
次は根菜の「テラフォンド」。
テラフォンドは、アルティナの豊かな栄養を含んだ地下で育つ、黄金色こがねいろの大きな根菜。
一度下茹でをしておく。
こうすることで、えぐみがなくなり、食感も柔らかく仕上がる。
別の鍋に出汁を温め、塩、白ワイン、しょうが汁を入れ、テラフォンドを煮る。
テラフォンドが柔らかくなったら、ジャイアント・デッドクローの身を入れ、軽く煮る。
本当は醤油を入れたいところだがそんなものはない。
それでも、白ワインと特別なカニのおかげで十分強めの風味を感じられる。
そこに水溶き片栗粉をまわし入れる。
こちらの世界での片栗粉は、元の世界での「カタクリ」とは違うユリ科の根茎から採れる。
だから正確には「カタクリコ」ではないのだが、用途は同じで便宜上そう呼んでいる(勝手に翻訳されている)。
そして、器に盛る。
煮込んだカニの身とテラフォンドがトロリとしたあんで包み込まれる。
料理全体がきらめきを帯びたように輝き、視覚的にも華やかな一品となった。
これで、「根菜のカニあんかけ」の完成だ。
ガーネットも冷やし固めたムースに生クリームを軽く絞り、ルビーナベリーとネビュラベリー、ミントを飾る。
赤と青が混ざり合いながらも、どこか対立しているかのような不思議で美しい模様をしている。
ガーネットの「デュオムース ~炎と氷の共演~」の完成。
ふたりの料理が、審査員であるレイラ王女の前に運ばれ、審査が始まる。
レイラ王女が俺の料理から口をつける。
「なんて優しい味……テラフォンドの風味が口の中で広がり、次に海の旨味がじんわりと追いかけてくる。まるで、大地と海が一つになったかのような調和です」
レイラはもう一口、あんをしっかり味わう。
「このあんもまた、大地と海の融合なのですね。昆布にこのような使い方があるのは知りませんでした。全体のバランスが完璧です。リク、あなたは自然の味わいを見事に融合させたわ」
レイラが喜んでくれてよかった。
和風の出汁もちゃんとわかってくれたようだ。
次にレイラ王女がガーネットのムースを口に運ぶ。
「これは……温かくて、辛味が広がる。でも……不思議なことに、次第に冷たいムースが来て、辛さがすぐに和らいで全く別の味が生まれる! 後味のミントのような爽やかさが心地よい……」
レイラの表情は驚きに満ちている。
熱さ、冷たさ、対立するはずの二つの要素が見事に融合していることに感動した。
「まさに錬金術の妙技。味の変化がこんなにも楽しいとは……」
彼女は笑顔でガーネットに賛辞を送った。
そして、勝敗の結果が言い渡される。
レイラ王女は深く考え込んだ後、ゆっくりと立ち上がった。
「どちらも素晴らしい料理だったわ。ガーネット、あなたのムースは味の変化が驚くべきもので、錬金術の技が存分に発揮されていた」
彼女はガーネットを見て微笑んだ。
「しかし、リクの煮物は……味の融合だけでなく、山と海、自然の恵みを最大限に活かしていた。僅差ではありますが、勝者はリク・アマギです!」
俺はほっと息をつき、ガーネットに向き合う。
「いい勝負だった、ガーネット」
ガーネットは一瞬迷うような表情を見せたが、すぐに笑みを浮かべ、「黄金の鍋」を差し出してくれた。
「リク君、君の腕前は確かに本物だ。約束通り、この鍋は君のものだよ」
彼女が差し出した、輝く「黄金の鍋」。
彼女の最高傑作だというその鍋を俺はしっかりと受け取り、感謝の気持ちがこみ上げてくる。
「ありがとう、ガーネット。この鍋は存分に活用させてもらうよ」
だが、その瞬間、ガーネットがにやりと笑みを浮かべて、少しからかうような口調で言ってきた。
「さて、もうひとつ、私自身も君のものになったわけだが、私のことも存分に活用してくれるのかな?」
「えっあっ、その……っ」
頬が一気に熱くなるのを感じた。
ガーネットの瞳が俺を見つめて、彼女の微笑みには余裕すら感じられる。
冗談だと分かっていても、心臓が早鐘のように打ち始める。
だが、その余韻に浸る暇もなく、突然、遠くから聞こえてきた声が俺の耳を突き抜けた。
「「「リクぅ(さん)ーーーーっ!!!」」」
3つの声が重なって、俺の名を呼んでいる。
振り返ると、レイラ、フィーナ、そしてイリスが、全速力でこちらに向かってくる。
目を輝かせながら駆け寄る姿が、まるで嵐のようだ。
「ど、どうしよう、ガーネット」
俺は完全に混乱してしまい、鍋を抱えながらガーネットに助けを求めた。
しかし彼女は、楽しそうに微笑んでいたのだった。
バトルキッチンは終わり、俺は黄金の鍋を手に入れ、ガーネットと共に新たなステップへと進む。
この錬金術師のお姉さんがさらなる高みへ導いてくれることを予感しながら。
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