10 / 42
本編
10.婚約破棄の魅力
しおりを挟む
あぁ、だけど『殿下から婚約破棄してくれる』このチャンスは見逃せなかったのよ……。
「……ごめん。でもこのチャンスは潰したくなくてさ」
タイミング良くそう言われた私はヴィクターの言葉にギョッとして彼を見た。
でもやっぱり、彼の横顔からは何を企んでいるのか窺い知れない。
私の知る彼はその優秀な頭脳をすべて、いたずらや遊びに使っている印象しかないのだけど。
大人たちから見るとまた意見が違うようで、彼は『ぜひクラウン殿下の側近に』と王家から声が掛かるほど優秀らしい。
ただどうしてだか、ヴィクターはクラウン殿下を嫌っていて表向きには完全に隠しているが、あんまり側近としてその頭脳や能力を使いたがらないという。
だから今回のことは、クラウン殿下が失脚して自分もお役御免になる良い機会くらいに思っているのかもしれない。
彼らしいと言えばそうなのだけど、このやる気のない彼が次期公爵かと思うと、幼なじみとしてはちょっと心配だった。
「そんな事言って……。もしあなたも一緒に粛清されたらどうするつもり?」
「俺がそんな間抜けだと思う?」
「え? 思わない……かも」
「……でもまぁ、俺の心配してくれたのは嬉しいな」
「だけど、私はこれで傷もの決定よ?」
「そうだね。でも、それを分かってて尚、婚約破棄を煽ってたのは誰?」
「……知ってたの?」
「さぁ?」
そう言って肩をすくめて見せる。
なんかヴィクターには全部見透かされてそう。
それより。
今は、このチャボットの毒殺事件を何とかしなくちゃね。
私は気を取り直して本題に戻る事にした。
「チャボットが厩舎でのたうち回ったらしいわね」
「それ、本当なら怪我人が出てるよ……」
「膝に乗せて看取ったんですって」
「……頭だけにしたって大変だ」
「チャボットが食べるなら、トウモロコシ数粒では利かないわ。単位は本よ」
「あの毒なら甘い匂いがするだろう? 数本なんて食べれっこないさ」
片っ端から突っ込むヴィクター。
さっき私が思ったのと同じで、やっぱりそうだよねって安心してしまったわ。
でもチャボットはもういない。
だって、あの子は……。
「チャボットの餌は、良質の干し草だったの……」
「それを縛ってた針金が残っていて、知らずに食べたんだっけ……。かわいそうに」
お互い無言で考え込む。
そして唐突に疑問が湧いた。
もしかして、二ヶ月前のチャボットの死も仕組まれていたりしないわよね?
でも、もしアレが誰かの差し金だったら?
瞬間、言いようの無い怒りが心に湧いた。
「……ごめん。でもこのチャンスは潰したくなくてさ」
タイミング良くそう言われた私はヴィクターの言葉にギョッとして彼を見た。
でもやっぱり、彼の横顔からは何を企んでいるのか窺い知れない。
私の知る彼はその優秀な頭脳をすべて、いたずらや遊びに使っている印象しかないのだけど。
大人たちから見るとまた意見が違うようで、彼は『ぜひクラウン殿下の側近に』と王家から声が掛かるほど優秀らしい。
ただどうしてだか、ヴィクターはクラウン殿下を嫌っていて表向きには完全に隠しているが、あんまり側近としてその頭脳や能力を使いたがらないという。
だから今回のことは、クラウン殿下が失脚して自分もお役御免になる良い機会くらいに思っているのかもしれない。
彼らしいと言えばそうなのだけど、このやる気のない彼が次期公爵かと思うと、幼なじみとしてはちょっと心配だった。
「そんな事言って……。もしあなたも一緒に粛清されたらどうするつもり?」
「俺がそんな間抜けだと思う?」
「え? 思わない……かも」
「……でもまぁ、俺の心配してくれたのは嬉しいな」
「だけど、私はこれで傷もの決定よ?」
「そうだね。でも、それを分かってて尚、婚約破棄を煽ってたのは誰?」
「……知ってたの?」
「さぁ?」
そう言って肩をすくめて見せる。
なんかヴィクターには全部見透かされてそう。
それより。
今は、このチャボットの毒殺事件を何とかしなくちゃね。
私は気を取り直して本題に戻る事にした。
「チャボットが厩舎でのたうち回ったらしいわね」
「それ、本当なら怪我人が出てるよ……」
「膝に乗せて看取ったんですって」
「……頭だけにしたって大変だ」
「チャボットが食べるなら、トウモロコシ数粒では利かないわ。単位は本よ」
「あの毒なら甘い匂いがするだろう? 数本なんて食べれっこないさ」
片っ端から突っ込むヴィクター。
さっき私が思ったのと同じで、やっぱりそうだよねって安心してしまったわ。
でもチャボットはもういない。
だって、あの子は……。
「チャボットの餌は、良質の干し草だったの……」
「それを縛ってた針金が残っていて、知らずに食べたんだっけ……。かわいそうに」
お互い無言で考え込む。
そして唐突に疑問が湧いた。
もしかして、二ヶ月前のチャボットの死も仕組まれていたりしないわよね?
でも、もしアレが誰かの差し金だったら?
瞬間、言いようの無い怒りが心に湧いた。
97
あなたにおすすめの小説
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
転生令嬢はのんびりしたい!〜その愛はお断りします〜
咲宮
恋愛
私はオルティアナ公爵家に生まれた長女、アイシアと申します。
実は前世持ちでいわゆる転生令嬢なんです。前世でもかなりいいところのお嬢様でした。今回でもお嬢様、これまたいいところの!前世はなんだかんだ忙しかったので、今回はのんびりライフを楽しもう!…そう思っていたのに。
どうして貴方まで同じ世界に転生してるの?
しかも王子ってどういうこと!?
お願いだから私ののんびりライフを邪魔しないで!
その愛はお断りしますから!
※更新が不定期です。
※誤字脱字の指摘や感想、よろしければお願いします。
※完結から結構経ちましたが、番外編を始めます!
悪役令嬢に仕立て上げたいのならば、悪役令嬢になってあげましょう。ただし。
三谷朱花
恋愛
私、クリスティアーヌは、ゼビア王国の皇太子の婚約者だ。だけど、学院の卒業を祝うべきパーティーで、婚約者であるファビアンに悪事を突き付けられることになった。その横にはおびえた様子でファビアンに縋り付き私を見る男爵令嬢ノエリアがいる。うつむきわなわな震える私は、顔を二人に向けた。悪役令嬢になるために。
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
真実の愛とやらの結末を見せてほしい~婚約破棄された私は、愚か者たちの行く末を観察する~
キョウキョウ
恋愛
私は、イステリッジ家のエルミリア。ある日、貴族の集まる公の場で婚約を破棄された。
真実の愛とやらが存在すると言い出して、その相手は私ではないと告げる王太子。冗談なんかではなく、本気の目で。
他にも婚約を破棄する理由があると言い出して、王太子が愛している男爵令嬢をいじめたという罪を私に着せようとしてきた。そんなこと、していないのに。冤罪である。
聞くに堪えないような侮辱を受けた私は、それを理由に実家であるイステリッジ公爵家と一緒に王家を見限ることにしました。
その後、何の関係もなくなった王太子から私の元に沢山の手紙が送られてきました。しつこく、何度も。でも私は、愚かな王子と関わり合いになりたくありません。でも、興味はあります。真実の愛とやらは、どんなものなのか。
今後は遠く離れた別の国から、彼らの様子と行く末を眺めて楽しもうと思います。
そちらがどれだけ困ろうが、知ったことではありません。運命のお相手だという女性と存分に仲良くして、真実の愛の結末を、ぜひ私に見せてほしい。
※本作品は、少し前に連載していた試作の完成版です。大まかな展開は、ほぼ変わりません。加筆修正して、新たに連載します。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
婚約破棄された令嬢は、幸せになると決めました~追放先で出会った冷徹公爵が、なぜか溺愛してくる件~
sika
恋愛
名家の令嬢・アイリスは、婚約者の王太子から「平凡すぎる」と婚約破棄を突きつけられる。全てを奪われ、家からも冷たく追放された彼女がたどり着いたのは、戦場帰りの冷徹公爵・レオンの領地だった。誰にも期待しないようにしていたアイリスだったが、無愛想な彼の優しさに少しずつ心を開いていく。
やがて、笑顔を取り戻した彼女の前に、あの王太子が後悔と共に現れて——。
「すまない、戻ってきてくれ」
「もう、あなたの令嬢ではありません」
ざまぁと溺愛が交錯する、幸福への再生ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる