【完結】毒殺疑惑で断罪されるのはゴメンですが婚約破棄は即決でOKです

早奈恵

文字の大きさ
12 / 42
本編

12.真っ向否定

しおりを挟む
 せっかく緊迫した雰囲気で始めた断罪劇のはずが、今や弛緩しかんした空気で騒めき始めている。

 これに腹を立てたのはクラウン殿下だ。

 彼は忌々しそうに口元を歪め、不機嫌そうにフールに命ずる。



「もう良い! 毒だ! 毒の説明をせよ!」

「はい!」



 これって聞く必要あるのかしら?

 だって、その毒入りトウモロコシを食べたのって、ニワトリですよね?


 そう言いたいが、ヴィクターが止めるので大人しくしていよう。



「飼料のトウモロコシに毒を混入させた人物を僕は確認しています」

「それは誰かな? この場に居るのだろう?」



 クラウン殿下がフールから、欲しい言葉を引き出していく。



「そこに居る、グレイシア様でした!」

「私ですの? 本当に?」



 念押しするとフールは一瞬怯んだが、ルーザリアの視線を感じて背筋を伸ばす。

 そこへ台本通りなのか、わざとらしくクラウン殿下が進み出て来て。



「お前が毒を混ぜたのだろう?」

「いいえ。先ほどから申し上げているのですが、私ではありません」

「何を言う! 僕はちゃんと見たんだ! あなたが餌に何か混ぜて……その直後に異変が起きたんだ!」

「本当の事を言え。今この場で正直に言うなら、侯爵家や縁者までとがめられないよう手を打つが?」

「やってないものは認められませんわ」



 私はここに来てようやく、クラウン殿下に顔がよく見える位置まで進み出る事ができた。

 するとさすがに違和感を覚えたようで、クラウン殿下はオヤっというように目を見張る。

 最近まともに顔さえ見ていないから、私の顔など忘れてしまったのかしらと意地の悪い事を考えていたら……。

 殿下の頬に赤味が走る。



 え? 

 まさか、顔を見ただけで怒りが増すほど私を疑っているの?

 それにしては目を合わせてくれないのが気になるけど、いったいなんだろう?



「フール、本当にグレイシアで間違いないのだな? 彼女は唯一放牧場に許可無く入れる人物だ。堂々と入って行って、その後すぐにチャボットが死んでは、自分が疑われると分からないほどバカでもない。それなのに彼女は毒を盛ったのか?」

「え? しかし確かにグレイシア様が……」



 おやおや?

 何だか雲行きが怪しくなってきたみたいね。

 やっぱり腐っても王太子殿下。

 何でもかんでも盲目に信用してはならないという、幼い頃に叩き込まれた帝王学が仕事をし始めたらしいわ。

 その調子でもう少し深く考えてくれたら、私が犯人だというのがおかしいと気が付きそうなんだけど……。



 私が成り行きを見守る中、ルーザリア嬢は忌々しげに私を睨み付けている。

 誰彼なしに喧嘩を売っていたら、いつかその内に叩き潰されるだろうに。



 あ。

 もしかして、されるまで分からない人なのかも……?

 おっと、うっかり同情しそうになったわ。



「どうしたフール、間違いではないのだろうな?」

「間違いはございません。僕は彼女が餌箱の中に手を入れているところを見たのです」

「それが本当に私だと、ご証明いただけますか?」
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

転生令嬢はのんびりしたい!〜その愛はお断りします〜

咲宮
恋愛
私はオルティアナ公爵家に生まれた長女、アイシアと申します。 実は前世持ちでいわゆる転生令嬢なんです。前世でもかなりいいところのお嬢様でした。今回でもお嬢様、これまたいいところの!前世はなんだかんだ忙しかったので、今回はのんびりライフを楽しもう!…そう思っていたのに。 どうして貴方まで同じ世界に転生してるの? しかも王子ってどういうこと!? お願いだから私ののんびりライフを邪魔しないで! その愛はお断りしますから! ※更新が不定期です。 ※誤字脱字の指摘や感想、よろしければお願いします。 ※完結から結構経ちましたが、番外編を始めます!

悪役令嬢に仕立て上げたいのならば、悪役令嬢になってあげましょう。ただし。

三谷朱花
恋愛
私、クリスティアーヌは、ゼビア王国の皇太子の婚約者だ。だけど、学院の卒業を祝うべきパーティーで、婚約者であるファビアンに悪事を突き付けられることになった。その横にはおびえた様子でファビアンに縋り付き私を見る男爵令嬢ノエリアがいる。うつむきわなわな震える私は、顔を二人に向けた。悪役令嬢になるために。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

真実の愛とやらの結末を見せてほしい~婚約破棄された私は、愚か者たちの行く末を観察する~

キョウキョウ
恋愛
私は、イステリッジ家のエルミリア。ある日、貴族の集まる公の場で婚約を破棄された。 真実の愛とやらが存在すると言い出して、その相手は私ではないと告げる王太子。冗談なんかではなく、本気の目で。 他にも婚約を破棄する理由があると言い出して、王太子が愛している男爵令嬢をいじめたという罪を私に着せようとしてきた。そんなこと、していないのに。冤罪である。 聞くに堪えないような侮辱を受けた私は、それを理由に実家であるイステリッジ公爵家と一緒に王家を見限ることにしました。 その後、何の関係もなくなった王太子から私の元に沢山の手紙が送られてきました。しつこく、何度も。でも私は、愚かな王子と関わり合いになりたくありません。でも、興味はあります。真実の愛とやらは、どんなものなのか。 今後は遠く離れた別の国から、彼らの様子と行く末を眺めて楽しもうと思います。 そちらがどれだけ困ろうが、知ったことではありません。運命のお相手だという女性と存分に仲良くして、真実の愛の結末を、ぜひ私に見せてほしい。 ※本作品は、少し前に連載していた試作の完成版です。大まかな展開は、ほぼ変わりません。加筆修正して、新たに連載します。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

婚約破棄された令嬢は、幸せになると決めました~追放先で出会った冷徹公爵が、なぜか溺愛してくる件~

sika
恋愛
名家の令嬢・アイリスは、婚約者の王太子から「平凡すぎる」と婚約破棄を突きつけられる。全てを奪われ、家からも冷たく追放された彼女がたどり着いたのは、戦場帰りの冷徹公爵・レオンの領地だった。誰にも期待しないようにしていたアイリスだったが、無愛想な彼の優しさに少しずつ心を開いていく。 やがて、笑顔を取り戻した彼女の前に、あの王太子が後悔と共に現れて——。 「すまない、戻ってきてくれ」 「もう、あなたの令嬢ではありません」 ざまぁと溺愛が交錯する、幸福への再生ストーリー。

処理中です...