【完結】毒殺疑惑で断罪されるのはゴメンですが婚約破棄は即決でOKです

早奈恵

文字の大きさ
24 / 42
本編

24.取り戻したもの

しおりを挟む
「え……っと。もしかして……」

「殿下は偶然選んだ婚約破棄こたえが、たまたま俺の望みあたりで良かったよね?」



 どうやら私の想像は的外れではないみたい。

 途端に昨日の別れ間際の事が思い出されて鼓動が速くなった。

 ヴィックがゆっくり、テーブルを回り込んで私の隣に座る。



「何のためにシアと殿下の婚約破棄を望んだのか……? 昨日はちゃんとその意味を分かってくれたと思ったんだけど……違うのかな?」

「だけど……勘違いって事もあるし……」

「そっか。それならやっぱり、きちんと言葉にするよ……」



 ──絶対に勘違いできないように。

 確かに最後、そう聞こえた気がした。



 ヴィックは私の手を取りひざまずく。

 それはまるで物語の一場面のように、優雅で洗練された動きだった。



「グレイシア、キミを取り戻すためにこんなに時間がかかってごめん。もし可能であれば……あのケンカをする前から、もう一度やり直すチャンスを俺に与えて欲しい」

「ヴィック……」



 それはクラウン殿下に婚約を申し込まれた時から、ずーっと私が後悔していた事だ。

 あの時ヴィックとケンカなんてしなければ良かったって……。



「……ダメかな?」

「そんな事ないわ。私も、あの時ごめんなさい。お母様から『バラ園ではお兄様やヴィックと離れないように』って言われてたのに……だからバチが当たったんだって、そう思ってた。もしやり直せるなら、私もあの時からやり直したいもの」

「……良かった。ありがとう」



 安堵したヴィックがポケットから何か取り出し、私の手に乗せる。



「指輪?」

「あの時渡しそこなった」



 それは銀色に輝く鷲目石イーグルアイをダイヤで囲んだ、小さな小さな指輪だった。



「あの時言ってた渡したいものって……」



 あの日、何かくれると言っていたヴィック。

 ちっとも教えてくれなくて、バラ園に行ったらって言ってたのに、着いてからもまだダメって言って……。



「これ、本当は婚約式で渡すはずだったのを待てなくて、親に内緒であの日渡そうとしたんだ」



 それなら……。

 ヴィックはお兄様が離れるのを待ってたのかも?

 なのに私は待てなくて、何度もくり返し聞いてしまった。

 きっとヴィックはお兄様の前では恥ずかしかったんだわ。

 だって知られたら揶揄からかわれるもの。

 子供の時のお兄様なら……絶対やる。



「バラ園で渡したら、きっとシアは喜ぶと思った。なのに上手くいかなくて……」



 それであんなに速歩はやあしでぐるぐる歩いてたのね。

 余計に渡しつらくなってた所へ私まで困らせた……。



「しかもシアまで不機嫌にさせた。気が付いたら心にもないこと言っていて……自分でもなんであんなに怒ったのか分からないんだ」



 それならあれは『たわいも無い理由のケンカ』なんかでは無かったんだわ。

 きっとヴィックは私よりずっと深く傷ついていたのかもしれない。

 私は後悔に襲われ俯いた。

 その時一瞬ヴィックと目が合った。

 真剣な銀の瞳で強く見詰められハッとする。



「今なら……いや、こんなに遅くなってしまったけど、受け取ってもらえるかな?」

「はい」



 子供用に作られた指輪は、今の私では小指の途中までしか入らない。

 本当に小さな指輪。

 私はそっとつまんで眺めた。



「貸して?」



 ヴィックは用意周到で、銀色のチェーンに通してペンダントヘッドのようにしてくれる。

 そのまま彼が付けてくれて、ついでにギュッて抱きしめられた。



「シア、ずっと好きだった。ぜんぜん諦められなかった」

「嬉しい……私もヴィックが好きよ」



 束の間離され見つめ合い、そして目を閉じた。

 唇に温かく柔らかいものが触れ離れていく。

 私が思い切ってヴィックに抱き付いたら、彼も優しく腕を回してくれた。

 私たちはやっと今、あの日の本当の仲直りができたような気がする。



 * * * * *


 このお話を見つけて、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 このあとは舞台裏編として、それぞれの視点で『どんな末路を辿るのか』見ていく事になります。

 『ざまぁ』や『ボヤき』などを楽しんでいただければと思いますので、引き続きよろしくお願いします(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

転生令嬢はのんびりしたい!〜その愛はお断りします〜

咲宮
恋愛
私はオルティアナ公爵家に生まれた長女、アイシアと申します。 実は前世持ちでいわゆる転生令嬢なんです。前世でもかなりいいところのお嬢様でした。今回でもお嬢様、これまたいいところの!前世はなんだかんだ忙しかったので、今回はのんびりライフを楽しもう!…そう思っていたのに。 どうして貴方まで同じ世界に転生してるの? しかも王子ってどういうこと!? お願いだから私ののんびりライフを邪魔しないで! その愛はお断りしますから! ※更新が不定期です。 ※誤字脱字の指摘や感想、よろしければお願いします。 ※完結から結構経ちましたが、番外編を始めます!

悪役令嬢に仕立て上げたいのならば、悪役令嬢になってあげましょう。ただし。

三谷朱花
恋愛
私、クリスティアーヌは、ゼビア王国の皇太子の婚約者だ。だけど、学院の卒業を祝うべきパーティーで、婚約者であるファビアンに悪事を突き付けられることになった。その横にはおびえた様子でファビアンに縋り付き私を見る男爵令嬢ノエリアがいる。うつむきわなわな震える私は、顔を二人に向けた。悪役令嬢になるために。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

真実の愛とやらの結末を見せてほしい~婚約破棄された私は、愚か者たちの行く末を観察する~

キョウキョウ
恋愛
私は、イステリッジ家のエルミリア。ある日、貴族の集まる公の場で婚約を破棄された。 真実の愛とやらが存在すると言い出して、その相手は私ではないと告げる王太子。冗談なんかではなく、本気の目で。 他にも婚約を破棄する理由があると言い出して、王太子が愛している男爵令嬢をいじめたという罪を私に着せようとしてきた。そんなこと、していないのに。冤罪である。 聞くに堪えないような侮辱を受けた私は、それを理由に実家であるイステリッジ公爵家と一緒に王家を見限ることにしました。 その後、何の関係もなくなった王太子から私の元に沢山の手紙が送られてきました。しつこく、何度も。でも私は、愚かな王子と関わり合いになりたくありません。でも、興味はあります。真実の愛とやらは、どんなものなのか。 今後は遠く離れた別の国から、彼らの様子と行く末を眺めて楽しもうと思います。 そちらがどれだけ困ろうが、知ったことではありません。運命のお相手だという女性と存分に仲良くして、真実の愛の結末を、ぜひ私に見せてほしい。 ※本作品は、少し前に連載していた試作の完成版です。大まかな展開は、ほぼ変わりません。加筆修正して、新たに連載します。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

婚約破棄された令嬢は、幸せになると決めました~追放先で出会った冷徹公爵が、なぜか溺愛してくる件~

sika
恋愛
名家の令嬢・アイリスは、婚約者の王太子から「平凡すぎる」と婚約破棄を突きつけられる。全てを奪われ、家からも冷たく追放された彼女がたどり着いたのは、戦場帰りの冷徹公爵・レオンの領地だった。誰にも期待しないようにしていたアイリスだったが、無愛想な彼の優しさに少しずつ心を開いていく。 やがて、笑顔を取り戻した彼女の前に、あの王太子が後悔と共に現れて——。 「すまない、戻ってきてくれ」 「もう、あなたの令嬢ではありません」 ざまぁと溺愛が交錯する、幸福への再生ストーリー。

処理中です...