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本編
23.今後のこと
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次の日の午後。
ヴィックはお茶の時間にやって来た。
昨日の今日で内心ドギマギしていたが、彼はぜんぜん普通で拍子抜けしたというか……安心した。
だからすんなりと質問できる。
「それで、何か進展はあった?」
「うーん。あのフールって奴がけっこう頑固で中々口を割らない」
「あの人結局誰なの?」
王妃殿下は間者だと言っていた。
私の記憶では学園名簿に載っていなかったと思うし、貴族名鑑──貴族の当主夫妻と後継者が載っている名簿にも載っていなかったと思う。
だから王妃殿下の推測が正しいとは思うけど……。
では誰の密偵?
きっとヴィックは見当付けていそうだ。
「彼は……クラウン殿下を失脚させたい者の手先だ」
「それは、第二王子派ということ?」
「……どうだろう?」
ん?
私は首を傾げた。
だって、クラウン殿下が失脚して、次に王太子に成るのは第二王子のベイト殿下だ。
実際に彼が直接フールを送り込んだのか、派閥の誰かなのかは分からないが、結局罪を問われるのはベイト殿下なのでは?
「シア、そんな顰めっ面するなって」
「だって……」
「第二王子派は言い換えれば、フェロニー侯爵派という事だ」
フェロニー侯爵は、ベイト殿下の母クラマラス側妃の父──つまり殿下の祖父である。
「彼らの派閥は国王派の次に多かった」
「多かった?」
「そう。ジドリーの件があるまでは……」
「あ……あれで均衡が崩れた?」
私が殆どやったと言って過言ではないが、それでも世間でアレはクラウン殿下の業績になっている。
なるほど。
出る杭は打たれた訳か……。
「王妃殿下はかなり巧妙に画策している。身内が見捨てない限りクラウン殿下が失脚はしないよ」
「……それって、フォックス侯爵が裏切らない限りってことよね? おじ様はなぜクラウン殿下をお支えするの? ヴィックの為?」
「半分正解で半分ハズレ。父上はシアの為にも動いていたんだよ?」
「あ……」
言われて初めて気が付いた。
私の父とヴィックの父が仲が良いから一度は私たちの婚約話も出た訳で、その私が妃に成るのならおじ様がクラウン殿下の味方になるのも不思議じゃない。
「私は本当にたくさんの人に助けてもらっていたのね」
多分ほかにも気が付かない事はたくさんあるのかもしれないと考え込んだ私に、ヴィックはにっこりと笑う。
「父上に昨日言ったんだ」
「何を?」
「真面目に仕事しようかと思うって……」
「それはヴィックがクラウン殿下の第一補佐官になるって事?」
「まずはそこからだね」
「だってあんなに嫌がっていたのに、殿下の下で働くの?」
今までクラウン殿下を助ける気にならないって言って、最低限の補佐しかして来なかったヴィックとは思えない言葉だ。
びっくりして固まる私に彼は言う。
「下で働くかどうかは分からない」
「え?」
「どっちかって言うと上? これから殿下を鍛え直すから」
「うわぁ。……殿下にできるのかしら?」
「できなくてもやってもらう」
「ヴィックが大変なんじゃない? 無理しないでね?」
「それは大丈夫。俺らの仕事を邪魔しないように仕込むだけだから、そこまで大変じゃないよ」
そう言うヴィックの背後には黒いオーラが見える気がする。
思わず震えた私にヴィックが微笑む。
あれ?
今度は百花繚乱、目の保養。
「そ、それはヴィックらしいって言うか、何と言うか……。だけど何がキッカケ? どういう心境の変化?」
「分かってないね……」
面白そうに私を見てニヤリとする。
あれ?
私、まずい事言ったかしら?
ヴィックはお茶の時間にやって来た。
昨日の今日で内心ドギマギしていたが、彼はぜんぜん普通で拍子抜けしたというか……安心した。
だからすんなりと質問できる。
「それで、何か進展はあった?」
「うーん。あのフールって奴がけっこう頑固で中々口を割らない」
「あの人結局誰なの?」
王妃殿下は間者だと言っていた。
私の記憶では学園名簿に載っていなかったと思うし、貴族名鑑──貴族の当主夫妻と後継者が載っている名簿にも載っていなかったと思う。
だから王妃殿下の推測が正しいとは思うけど……。
では誰の密偵?
きっとヴィックは見当付けていそうだ。
「彼は……クラウン殿下を失脚させたい者の手先だ」
「それは、第二王子派ということ?」
「……どうだろう?」
ん?
私は首を傾げた。
だって、クラウン殿下が失脚して、次に王太子に成るのは第二王子のベイト殿下だ。
実際に彼が直接フールを送り込んだのか、派閥の誰かなのかは分からないが、結局罪を問われるのはベイト殿下なのでは?
「シア、そんな顰めっ面するなって」
「だって……」
「第二王子派は言い換えれば、フェロニー侯爵派という事だ」
フェロニー侯爵は、ベイト殿下の母クラマラス側妃の父──つまり殿下の祖父である。
「彼らの派閥は国王派の次に多かった」
「多かった?」
「そう。ジドリーの件があるまでは……」
「あ……あれで均衡が崩れた?」
私が殆どやったと言って過言ではないが、それでも世間でアレはクラウン殿下の業績になっている。
なるほど。
出る杭は打たれた訳か……。
「王妃殿下はかなり巧妙に画策している。身内が見捨てない限りクラウン殿下が失脚はしないよ」
「……それって、フォックス侯爵が裏切らない限りってことよね? おじ様はなぜクラウン殿下をお支えするの? ヴィックの為?」
「半分正解で半分ハズレ。父上はシアの為にも動いていたんだよ?」
「あ……」
言われて初めて気が付いた。
私の父とヴィックの父が仲が良いから一度は私たちの婚約話も出た訳で、その私が妃に成るのならおじ様がクラウン殿下の味方になるのも不思議じゃない。
「私は本当にたくさんの人に助けてもらっていたのね」
多分ほかにも気が付かない事はたくさんあるのかもしれないと考え込んだ私に、ヴィックはにっこりと笑う。
「父上に昨日言ったんだ」
「何を?」
「真面目に仕事しようかと思うって……」
「それはヴィックがクラウン殿下の第一補佐官になるって事?」
「まずはそこからだね」
「だってあんなに嫌がっていたのに、殿下の下で働くの?」
今までクラウン殿下を助ける気にならないって言って、最低限の補佐しかして来なかったヴィックとは思えない言葉だ。
びっくりして固まる私に彼は言う。
「下で働くかどうかは分からない」
「え?」
「どっちかって言うと上? これから殿下を鍛え直すから」
「うわぁ。……殿下にできるのかしら?」
「できなくてもやってもらう」
「ヴィックが大変なんじゃない? 無理しないでね?」
「それは大丈夫。俺らの仕事を邪魔しないように仕込むだけだから、そこまで大変じゃないよ」
そう言うヴィックの背後には黒いオーラが見える気がする。
思わず震えた私にヴィックが微笑む。
あれ?
今度は百花繚乱、目の保養。
「そ、それはヴィックらしいって言うか、何と言うか……。だけど何がキッカケ? どういう心境の変化?」
「分かってないね……」
面白そうに私を見てニヤリとする。
あれ?
私、まずい事言ったかしら?
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