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第3話 風の旅立ち
5 病の奥底へ
しおりを挟むるりなみはそれから何日も高熱にうなされた。
天蓋つきの大きなベッドに横たわり、一歩も部屋の外に出ることはできなかった。
そのベッドのかたわらにずっと、あの風の伯爵と風の子が、揃って立っていた。
風の子は心配そうにるりなみをうかがっている。
伯爵はそんな風の子を制するように、険しいおももちで杖をついていた。
頭ががんがんとし、すべてがぼうっとする。
だがその中でるりなみは、伯爵と風の子を見つめていた。
風の子が時折「るりなみ……」と弱々しく呼びかけるほかは、言葉も交わさなかった。
るりなみの様子を見に、教育係のゆいりが部屋に現れると、伯爵と風の子は、ひゅん、と風の姿に戻り、窓から出ていった。
だがゆいりがいなくなると、彼らはまたやってくる。
ゆいりはしかし、最初からこの来客たちに気づいていたようだった。
「るりなみ様……あの変わった者たちですが、お引き取り願いましょうか?」
言葉こそ丁寧だが、ゆいりは強い調子でそう言った。
るりなみは小さな声で、だがはっきりと答えた。
「いや、もうちょっとあの人たちといたいんだ。だから、そのままにしておいて」
「ですが、るりなみ様のそのお体の具合は……あの者たちが原因では……」
「もうちょっとだから、お願い」
ゆいりは小さく息をつくと、「わかりました」と言って出ていった。
入れ替わるように、伯爵と風の子が入ってきて、人の姿になって現れた。
「変わってますね、あなたは」
伯爵がはじめて、るりなみに声をかけた。
るりなみはぼうっとしたまま「そうでしょうか」と答えた。
風の子がなにか言おうとしたが、伯爵がさえぎった。
「そんなあなたには特別に……これを見せてしんぜましょう」
その言葉を聞いたとたん、体がどくん、と波打ったかと思うと、闇に引きこまれるように視界が暗くなった。
* * *
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