『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ

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第7話:お茶会準備と、花よりスコーン

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 貴族令嬢たちからのお茶会の提案は、想像以上に大きな反響を呼んだ。

 リリアの元には、翌日から次々と依頼や確認の伝令が届くようになった。

 ──会の人数は十人ほど。
 ──衣装に合わせた華やかなテーブル装飾を。
 ──提供される紅茶は三種以上が望ましい。
 ──話題の“映える菓子”があると喜ばれる、などなど。

「まるで、前世で女子会の幹事をやった時みたい……」

 頭を抱えるリリアの手元には、走り書きだらけのメモ帳がある。

 テーブルクロスの色、食器の統一感、ウェルカムティーの種類、会話が弾むようなセッティング。
 前世では、SNS映えを意識した“ゆるカワ”なお菓子やティースタンドを工夫していたのを思い出す。

「この世界にスマホはないけれど、“話題になる”という感覚はきっと一緒……だよね」

 リリアは庭をぐるりと見渡した。

 あの花の前にテーブルを置いて、ここには座布団代わりのクッションを——
 イメージは浮かぶ。あとは、どこまで形にできるか。



「マルタさん、ラズベリーのような甘酸っぱい果実、何か知りませんか?」

「ああ、あるとも。赤実のソナラっていう実がちょうど熟れてきたところじゃよ」

「じゃあそれを砂糖で煮て、ソースにできるかも……!」

 朝から市場と森を何往復もしながら、リリアは食材とアイデアをかき集めた。
 厨房では、何度も焼き直したスコーンやクッキーが並び、出来上がったばかりのローズヒップティーの香りが漂う。

 さらには、前世のカフェで人気だった“ジャム3種のティースタンド”を思い出し、
 ソナラの赤、蜜りんごの金、ブルーフラワーの紫で彩り豊かに用意することにした。

「見た目も華やかで、少しずつ味が違って……これ、絶対に喜んでもらえるはず!」



 午後、庭の隅ではカリムがテーブルの位置を整えていた。

「リリアさん、こっちの日陰側の席、少しだけ風が通りすぎるな。布か何かで遮ったほうが良さそうだよ」

「ありがとう、気づかなかった……!」

 村の人々も、彼女の奮闘を見て自然と手を貸すようになっていた。

「娘さんのスコーンは、外はさっくり、中はふんわり。昔、王都で食べたのにそっくりだよ」

「それなら明日は、きっと賑やかになるね」

 リリアは笑って「がんばります」と答えながらも、心の中では必死だった。

(貴族のお嬢さまたちを相手に、庶民の私がどこまで通用するんだろう)

 不安は、正直に言えばある。

 でも——前世で身に付けた「心をくすぐる小さな工夫」だけは、きっと通じると信じていた。

 あのころは、都会のOLたちに好まれるように、季節のスコーンや限定の紅茶を出していた。
 話題になるように、ちょっとした花びらや金箔を散らしていた。

 この世界にはインスタもレビューもないけれど——

「でも、笑顔で“美味しい”って言ってもらえたら、それがいちばんの評価だよね」

 夕暮れ。庭に咲いた花たちが、静かに風に揺れていた。

 明日は、お茶会本番。

 リリアは、作業を終えた手を見下ろし、小さく息をついた。

「大丈夫。きっと、うまくいく。だって、これは——私の、庭なんだから」
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