成績表に書けない才能

深渡 ケイ

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第18話:文化祭の裏側で

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 体育館の裏手は、表の喧騒から切り離された別世界だった。搬入口のシャッターが半分だけ上がっていて、そこから風と一緒に焼きそばの匂いが流れ込む。床には養生テープの線。舞台袖には黒い布。機材のケースが積まれ、誰かの上履きが走る音だけが反響していた。

 橘マリは、腕時計を一度見てから、インカム代わりのスマホを頬に挟んだまま、ガムテープをちぎった。

「照明、いま青。次、赤。赤のあと白に戻す。……うん、戻す。戻すって言った」

 言い終える前に、別の一年生が顔を出す。

「橘先輩、衣装の安全ピンが足りなくて!」

「足りないなら、足りる数だけ留める。どこが一番開く?」

「え、えっと……背中の――」

「背中なら見えない。前だけ死守。ピンは職員室の文具箱にある。走るな。歩いて行け」

 一年生が「はい!」と消える。

 マリはその背中を見送らず、次の紙をめくった。進行表は何枚も、角が丸くなるほど触られている。ペン先が紙を叩く音が、彼女の心拍みたいに一定だった。

 舞台袖に、桐生静が入ってきた。通路を塞がないよう、壁際に寄る。相沢陸がその後ろに付いてくる。陸は首から「進路室スタッフ」の札を下げている。誰が作ったのか、文字が妙に整っていた。

「橘」

 静が呼ぶと、マリは一瞬だけ視線を上げた。目が合って、すぐ戻る。

「桐生先生。今、何か落ちました?」

「落ちてない。探し物じゃない」

「じゃあ後で。今、落ちるものが多いので」

 言い方が冷たいわけじゃない。ただ、余白がない。

 陸が小声で静に言う。

「橘先輩、マジで舞台全部回してるんすよ。表には出ないけど。……怖いぐらい」

 静は「見ればわかる」とだけ返した。

 舞台袖の奥で、男子が大きなパネルを持ち上げようとして、手元が滑った。角が床に当たって鈍い音がする。

「止めて」

 マリの声が飛ぶ。叫ばないのに、通る。

「その角、養生してない。手、切る。置いて。いま」

 男子が固まる。

「でも時間――」

「時間より血。血が出たら進行止まる。置け」

 男子が渋々パネルを下ろす。

 マリは静の存在を感じたまま、段ボール箱から緩衝材を引っ張り出し、角に巻いた。テープを一周、二周。手つきが早い。余計な動きがない。

 静が言う。

「橘、五分だけ」

「五分で済む話なら」

 マリは手を止めずに返す。静はそれでも動かない。

 陸が横で、言いづらそうに口を挟む。

「橘先輩、飲み物……」

「後で。いま飲むとトイレ行きたくなる」

「いや、そういう……」

 マリが初めて顔を上げ、陸の首元の札を見た。

「それ、誰が作ったの」

 陸が胸元を押さえる。

「え、これ? 橘先輩じゃないっすか。昨日、進路室に置いてあって」

 マリの眉がわずかに動く。

「……置いたのは私。先生が困ると思って」

 静の視線が札からマリへ戻る。

「困ってるのは俺だけじゃない。橘、お前も困ってる」

 マリは口を閉じる。進行表を指で押さえたまま、紙がずれないように力が入っていた。

「困ってません。回ってます」

「回ってる。だから言ってる。止まったとき、誰が責任取る」

「止めません」

「人は止まる」

 静の声は低い。説得するというより、現実を置いていく言い方だった。

 マリはテープを切り、指先で端を撫でて浮きを潰した。そこまでやってから、ようやく静の方を向く。

「先生、今は文化祭です。進路の話なら、月曜に」

「月曜まで待てない話じゃない」

「じゃあ文化祭の話ですか」

 静は舞台の方を見た。照明の色が変わる。音響がリハの音を小さく流し始めた。表の拍手が、壁越しに膨らんで聞こえる。

「お前、表に出ないな」

 マリは即答した。

「出ません」

「出たくない?」

「出ると崩れます。私が出ると、誰が裏を見るんですか」

「誰かに任せればいい」

「任せられません」

 その言葉が、今までで一番短くて硬かった。

 陸が唾を飲む音を立てた。マリはその音に気づいて、少しだけ目を逸らす。

「……任せたら、失敗します。去年、そうでした。私が二十分抜けたら、衣装が消えて、音源が違って、先生が走り回って。結局、私が謝りました」

 静は「謝る必要はなかった」と言わない。そういう言葉は、彼女の肩に新しい荷物を乗せるだけだと知っている。

「今年は?」

「今年はミスゼロにします」

「ミスゼロは無理だ」

 マリの目が細くなる。

「無理でも、やります」

「やった先で、何が残る」

 その問いに、マリはすぐ答えない。進行表の端を折り、折り目を揃える。整える動作で時間を稼いでいる。

「……残ります。『橘がいると回る』って」

「それ、卒業したらどうなる」

 マリの指が止まる。舞台から、笑い声が上がった。観客の笑いが追いかける。彼女の顔は動かないのに、肩の位置だけがわずかに上がる。

「卒業したら、次がやればいい」

「次が、やれるようにしてるか」

 マリが言い返す。

「してます。指示書も作った。チェックリストも。機材の配置図も」

「読める人がいるか」

「……います」

 声が小さくなる。

 静は一歩だけ近づいた。通路を塞がない距離で。

「橘。お前の才能は『回す』だ。表に立つ人間じゃないって意味じゃない。裏で全体を見て、穴を埋める。これは仕事になる」

 マリの目が動く。「仕事」という単語に反応した。

「先生、就職の話ですか」

「進学でもいい。専門でもいい。現実は、選択肢が多い方が強い」

 マリが鼻で息を抜く。笑いではなく、堪え損ねた空気。

「私、偏差値ないですよ」

「偏差値がなくても採る世界はある。ただし、証拠がいる」

「証拠?」

 静は舞台袖の掲示板に貼られたタイムテーブルを顎で示した。そこにはマリの手書きで、細かい注意事項がびっしり書かれている。

「それ。誰が読んでも動けるように書けてる。現場の言葉だ。あと、今日の運営。記録を残せ」

 マリが即座に返す。

「そんな暇――」

「暇は作る。作らないと、いつまでも『橘がいると回る』で終わる」

 マリは口を開け、閉じた。言い返す言葉が見つからないときの顔を、彼女は舞台袖で初めて見せた。

 陸が横から、恐る恐る言う。

「橘先輩、俺、記録係やります。写真とか、タイムラプスとか。あと、先輩の指示、メモります」

 マリが陸を見る。

「相沢、あなた、走ると転ぶからやめて」

「走らないっす。歩いて……いや、早歩きで」

「早歩きも危ない」

「じゃあ普通に。でも、ちゃんとやります」

 マリの視線が静に戻る。

「先生、なんで今なんですか。文化祭の日に」

 静は答える前に、舞台の方で一瞬音が途切れたのを聞き取った。音響のミスだ。マリの顔が反射的にそっちへ向きかける。彼女の身体は、もう立ち上がっていた。

 静が言う。

「行け。今はお前の現場だ」

 マリが走り出そうとして、足を止めた。「走るな」と自分が言ったのを思い出したのだろう。早足で音響卓へ向かう。

「音、止まった。ケーブル、抜けた? 触った人、手挙げて。……挙げて。怒らないから。今だけ」

 男子が恐る恐る手を挙げる。

「ごめん、足引っ掛けた」

「いい。足元、養生足す。今は差し直して、同じトラックに戻す。次の曲、番号何番?」

「えっと、四……」

「四じゃない。リスト見て。見て言って」

「三、です」

「三。戻す。戻したら、私を見る。私が頷いたら出す」

 音が戻る。舞台の笑いが途切れず繋がった。マリは一度だけ深く息を吐いて、袖に戻ってきた。

 静が言う。

「今のも記録だ」

 マリが眉を寄せる。

「失敗の記録なんて、残したくない」

「残さないと、次も同じ場所で引っ掛ける。現場は『ミスゼロ』じゃなくて『復旧が早い』で評価される」

 マリは黙って、足元のケーブルを見た。養生テープの端が少し浮いている。彼女はしゃがんで押さえた。

「……先生、うち、進学しろって言われてます。『大学出ないと詰む』って」

「親か」

 マリは頷きもしない。代わりにテープを押さえる指に力が入る。

「進学は否定しない。けど、『どこでもいい』は危ない。金も時間も消える」

 マリの声が小さくなる。

「でも、私、何がしたいかって言われたら……裏方、って言っても、笑われます」

 陸が反射的に言った。

「笑わないっすよ。俺、今日、先輩いなかったら終わってたって思ってる」

 マリは陸を見ずに言う。

「そういうの、表に出ないから」

 静が短く言う。

「出す方法はある。文化祭の『運営実績』を、言葉と形にする。学校の成績表には載らないけど、履歴書には載せられる」

「履歴書……」

「総務、イベント会社、舞台技術、ブライダル、地域の文化施設。『回す』はどこでも要る。資格もある。取れるものは取る」

 マリが顔を上げた。

「資格って、何ですか」

「今すぐ取れるのは少ない。だから段階を踏む。まず、今日の運営を『成果物』にする。次に、外の現場を見に行く。ボランティアでもアルバイトでもいい。学校の外の大人に評価される経験を作る」

 マリは唇を噛む。噛んで、離す。

「……外、ですか」

 静のポケットでスマホが震えた。画面が一瞬見える。「黒川」。静は出ない。切らずに、裏返してポケットに戻す。

 マリの視線がそれを追った。

「教頭?」

 静は「今は関係ない」とは言わない。

「関係ある。学校は数字を欲しがる。文化祭も『事故ゼロ』『来場者数』でしか見ない人がいる」

 マリが乾いた声で言う。

「それ、私の仕事ですね。事故ゼロ」

「だから、橘の仕事は価値がある。だが学校の数字にされるだけで終わらせない。お前の将来の数字に変える」

 マリは進行表を胸に抱えた。

「先生、私、今日が終わったら……何すればいいですか」

 静は答えを一つにしない。

「二つ。まず、今日のログ。何時に何が起きて、誰がどう動いて、どう戻したか。陸が手伝う。もう一つ、月曜の放課後、第3進路室に来い。親の話も聞く。進学か就職か、決めなくていい。選択肢を並べる」

 マリが小さく息を吸う。舞台の音が一段大きくなる。次の演目が始まる合図だ。

「……五分って言いましたよね」

「伸びた」

「伸びた分、取り返します。先生、邪魔しないでください」

「邪魔はしない。手伝う」

 マリは静を一度だけ見た。頼った顔ではない。確認する顔だ。静が頷くと、マリは背中を向けた。

「相沢。メモ帳、ある?」

「あります。ってか、買いました。先輩に怒られたくないんで」

「怒らない。……走らないで」

「走らないっす!」

 陸が普通の速度で、しかし必死に動き出す。

 静は舞台袖の暗がりに残り、もう一度ポケットのスマホを触った。着信履歴に黒川の名前が残っている。画面を消すと、背後から別の足音が近づいた。

 廊下側の扉が少し開き、担任の声が聞こえた。

「小森、いいから来い。教頭が待ってる」

 静の首が、音の方へゆっくり向く。舞台の拍手が、扉の隙間から鋭く刺さった。


 扉の隙間から、担任の声がもう一度刺さった。

「小森、いいから来い。教頭が待ってる」

 廊下の白い光が舞台袖の暗がりに線を引く。静はその線を跨がずに、扉の方へ寄った。

「いま文化祭中だ。担任、ここは裏だ。声が通る」

「桐生。ちょうどいい。橘もいるな」

 担任――学年主任代理の佐伯は、ネームプレートを指で弾く癖のまま、マリを見た。マリは進行表を胸に抱えたまま、視線だけで返す。

「橘。お前、いつまで裏に隠れてる」

「隠れてません。仕事してます」

「仕事? 文化祭は“発表の場”だ。評価にも関わる。目立て。壇上に立て」

 マリの指が進行表の角を押し潰した。

「私が立ったら、ここが空きます」

「空いたら誰かが埋める。お前が全部抱えるから、下が育たないんだ」

 静が口を挟む前に、マリが返した。

「育ちます。指示書も作りました」

「紙じゃ育たない。人前でやれ。委員長なんだろ。挨拶ぐらいしろ」

「挨拶は、司会が」

「司会は司会だ。運営の顔はお前だ」

 マリは一拍置いて、静を見た。助けを求める目ではない。計算の目だ。今ここで揉めたら、舞台が崩れる。そう言っている。

 静は一歩、佐伯の前に出た。

「佐伯、今は稼働中だ。人を動かすなら、止まってからにしろ」

「止まってからじゃ遅い。今がピークだ。今“映え”ないと意味がない」

「“映え”って言葉、進路指導室でも使うのか」

 佐伯の口元が硬くなる。

「揚げ足取りはいい。教頭からも言われてる。学校として見せ場を作れってな。来賓も回ってる。写真も撮られる。橘が舞台袖にいる写真なんか、誰も欲しがらない」

 マリの喉が動いた。言い返しそうで、飲み込む。

 その沈黙に、陸が耐えきれずに口を開いた。

「……でも、橘先輩がいなかったら、さっき音止まってましたよ。誰も気づいて――」

「相沢、黙れ。お前はどこの委員だ」

「第3進路室の……」

「そんなもの文化祭に関係ない」

 静が陸を手で制した。陸の言葉が余計に燃料になる。

 静は佐伯に言う。

「橘の動きが、文化祭の安全と進行を支えてる。それが“実績”だ」

「実績? 文化祭の実績は、来場者数と外向きの見栄えだ。進行表なんか誰も見ない」

「見る人はいる。現場を見る人間は、裏を見て採る」

「採る? 橘をどこに採らせるつもりだ。こいつの成績で?」

 マリの肩がほんの少しだけ揺れた。すぐに戻る。戻し方が速い。

 静は言い方を変えない。

「成績で詰むなら、詰まないように材料を増やす。今日の運営は材料だ」

 佐伯は鼻で笑った。

「材料? そんな曖昧なもので、推薦の書類が書けるか? 大学は数字を見てる。教頭も数字を見てる。お前も分かってるだろ、桐生」

 静のポケットのスマホが、また短く震えた。今度は通知だけで止まる。画面に一瞬、黒川の名前が浮かぶ。

 佐伯がその動きを見逃さない。

「ほらな。黒川先生も待ってる。文化祭が終わったら面談だ。ヒナの推薦書類、今週中に形にする。お前も立ち会え」

 静は目を逸らさずに返す。

「本人の同意と軸が先だ。書類の“形”は後」

「またそれか。現実逃避するな。期限があるんだよ」

「期限があるから、雑に決めない」

「雑に? 医療系は堅い。親も喜ぶ。学校も助かる。何が不満だ」

 静が言葉を選ぶ前に、マリが小さく言った。

「……私も、親、喜ぶ方がいいって言われます」

 佐伯がすかさず食いつく。

「ほら。分かってるじゃないか。親を安心させろ。お前だって、進路で“目立つ”必要がある。推薦でも、総合型でも、面接で目立てないやつは落ちる」

 マリの視線が床に落ちた。ケーブルの束。養生テープ。誰かの靴跡。

「目立つの、苦手です」

「苦手で済ませるな。克服しろ」

 マリの指が進行表を握り直す。紙が鳴った。

 静が言う。

「佐伯。目立つのが正義じゃない。必要なのは、役割に合った場に出すことだ」

「役割? 役割って便利だな。逃げ口上だ」

 静は一歩引かない。

「逃げじゃない。適性だ。橘は“場を回す”適性がある。そこに投資する方が現実的だ」

 佐伯がマリに顔を寄せる。

「橘。去年のこと、まだ引きずってるのか? あれは事故だ。いつまで怯えてる」

 マリの顔が上がった。目の奥が固い。

「事故じゃないです」

「は?」

「私が確認しなかった。私が、舞台に出て――」

 言葉が途切れた。舞台の方から歓声が上がる。マリの声が歓声に飲まれそうになって、彼女は一度口を閉じた。

 静は促さない。待つ。

 マリは息を整え、短く続けた。

「……去年、挨拶させられて。袖を空けたら、衣装が消えました。誰かが勝手に持ってって、別のクラスの出し物で使ってた。探して、戻して、間に合わなくて。舞台、止まりました」

 佐伯が手を振る。

「だから事故だと言ってるだろ。誰が悪いかなんて――」

「私が謝りました」

 マリが言った。淡々としているのに、言葉だけが重い。

「“委員長なんだから管理しろ”って。私が泣いたら、“泣く暇があるなら動け”って。……それ、先生が言いました」

 佐伯の眉が動く。覚えていない顔だ。

「……俺が?」

「はい」

 静は佐伯を見た。責める目ではない。ただ、事実を置く目だ。

 佐伯は一瞬だけ言葉を失い、それから声を強めた。

「それで? だから一生裏にいるのか。失敗したなら、次は成功しろ。表に出て、取り返せ」

 マリの唇が薄くなる。

「取り返すの、嫌です」

「嫌?」

「私が表に出たら、また袖が空く。誰かがミスする。ミスしたら、また私が謝る。……それが嫌です」

 佐伯が苛立ちを隠さずに言う。

「じゃあ一生、謝ってろ。社会に出たら、誰かの尻拭いは当たり前だ」

 静の声が静かに割って入った。

「当たり前だから、仕組みにする。人に背負わせるな」

「仕組み? 文化祭で何ができる」

「できる。今も橘がやってる。指示書、配置図、チェック。あとは“引き継ぎ”だ。袖を空けても回る体制にする」

 佐伯が吐き捨てる。

「理想論だ。今日中にできるか?」

 静はマリを見る。

「できる範囲でやる。全部は無理だ。だから、優先順位を決める」

 マリが小さく頷いた。頷いたこと自体が、彼女にとっての返事だった。

 佐伯が食い下がる。

「で、挨拶は?」

 静が即答する。

「やらない。今は」

「は?」

「代わりに、終わった後に“運営報告”を作る。写真とログ。来賓の導線、安全対策、復旧事例。学校が欲しがる数字も入れる。来場者数、トラブル件数、復旧時間。黒川が好きな数字だ」

 佐伯の目が細くなる。

「教頭に媚びるのか」

「媚びじゃない。交渉材料にする。橘の価値を、学校の言葉に翻訳する」

 マリが静を見た。進行表を抱える腕が、少しだけ緩む。

 佐伯は舌打ちした。

「勝手にしろ。ただし、教頭の機嫌を損ねるな。今、学校は内定と進学の枠でピリピリしてる。余計なことをするなよ」

 静は返す。

「余計じゃない。生徒の一年だ」

 佐伯は小森を促すように、廊下側へ顎を振った。

「小森、行くぞ。桐生も後で来い。逃げるなよ」

 扉が閉まりかける瞬間、小森シンの横顔が見えた。唇が動く。声にならない。

 静は扉に手を伸ばし、止めた。

「小森」

 小森が足を止める。佐伯が振り返る。

「何だ」

 静は小森にだけ届く声で言った。

「文化祭が終わってからでいい。逃げない。だから、今ここで壊すな」

 小森の目が一瞬だけ揺れ、すぐに固まった。小さく頷いたのか、首の筋が動いただけなのか分からない。

 佐伯が苛立って言う。

「行くぞ」

 扉が閉まる。廊下の光が切れて、舞台袖の暗さが戻った。

 マリはしばらく動かなかった。進行表の紙が、指の汗で少し波打っている。

 陸が小声で言う。

「橘先輩……挨拶、しなくていいんすか」

「したくない」

「……怖いんすか」

 マリは陸を見た。睨むでも笑うでもなく。

「怖いって言うと、また“克服しろ”って言われる」

 静が言った。

「怖いなら、怖いままやる方法を探す。表に出るのが唯一じゃない」

 マリは進行表を一枚めくり、ペンを取った。

「ログ、今から書きます。音が止まったの、何分でした?」

 陸が慌ててスマホを見る。

「えっと……14時07分。復旧が……14時08分、たぶん」

「たぶんじゃなくする。次から秒まで見る」

「はい」

 マリのペン先が走り始める。紙の上で、彼女の仕事が形になっていく。

 静は舞台の方を見た。拍手がまた起きる。文化祭は回っている。回っている間に、別の歯車が軋む音がする。

 ポケットのスマホが、今度は鳴らずに光った。メッセージの通知だけが出る。

『教頭室。今すぐ。』

 静は画面を消し、息を吐いた。

「陸」

「はい」

「ここ、頼む。橘のログ、途切れさせるな」

「任せてください」

 マリがペンを止めずに言った。

「先生、行くんですか」

「行く」

「戻ってきますか」

 静はマリの手元の紙を見た。震えていない字。

「戻る。戻れないなら、連絡する」

 静が扉の方へ向かうと、舞台袖の暗がりが一段濃く見えた。廊下の白い光がまた線を引く。

 その線の向こうに、教頭室がある。小森がいる。ヒナの書類もある。

 静は線を跨いだ。


 教頭室へ向かう廊下は、文化祭のポスターが貼られた壁だけがやけに静かだった。体育館の歓声は遠く、代わりに自販機のうなりと、靴底がワックスに擦れる音が響く。

 静は歩きながら、ポケットのスマホを握り直した。通知の文面だけが指に残る。

 教頭室の前で立ち止まる。ノックをしかけて、やめた。中の声が聞こえる。

「……推薦ならどこでもいいんだろ。贅沢言うな」

 担任の佐伯だ。

 静は扉を開けた。

 教頭室は、文化祭の装飾と無縁だった。書類の山。進路関係のファイル。鍵付きケースが棚に鎮座していて、黒川の机の横に置かれている。黒川は椅子に深く腰掛け、ペンを指で回していた。

 小森シンは立ったまま。背中が硬い。目線は床と机の間をさまよっている。

「遅いな、桐生」

 黒川が言った。声は低いのに、部屋の空気を決める。

「文化祭の現場から来た」

「言い訳はいい。座れ」

 静は座らない。立ったまま、黒川の机と小森の距離を測るように見る。

 佐伯が口を挟む。

「小森がさ。推薦でどこでもいいって言ってたのに、急に条件つけ始めて」

 小森の指が、ズボンの縫い目を掴んだ。掴んで、離して、また掴む。

 黒川が小森に言う。

「お前の成績で選べる立場か?」

 小森は返事をしない。唇だけが動いて、止まる。

 静が言った。

「小森。ここで言え。『どこでもいい』は、撤回でいい」

 佐伯が眉を吊り上げる。

「桐生、煽るな」

 静は佐伯を見ない。

「撤回するなら、理由も言え。家を出たいんだろ。『どこでも』って言ったら、逃げ道が塞がる」

 小森の喉が鳴った。黒川が机を指で二回叩く。

「家庭の事情は同情するが、学校は結果を出す。推薦は枠だ。枠に入るか、落ちるか。簡単だ」

 静は黒川に視線を向けた。

「簡単にしないために、俺がいる。小森の軸を作る。推薦で行くなら、推薦の戦い方がある」

 黒川が笑うでもなく言う。

「戦い方? 書類だろ。志望理由だろ。お前、書けるんだろ」

 静は答えない。代わりに、小森の顔を見る。

「小森。『推薦でどこでも』って言ったのは、何から逃げたいからだ」

 小森が小さく言った。

「家」

 その一言で、佐伯が「ほらな」と言いたげに肩をすくめた。

 黒川が続ける。

「なら、早い方がいい。内定でも進学でもいい。とにかく決めろ」

 静が口を挟む。

「決める。だけど“早く”の中身を変える。今日決めるのは、『何を嫌がるか』じゃない。『何ができるか』だ」

 佐伯が苛立つ。

「また曖昧なことを。できることなんて、成績見れば――」

 静が遮る。

「成績表に載ってないことがある。文化祭の裏を見てきた」

 黒川の眉がわずかに動く。

「文化祭?」

「橘マリ。舞台裏の運営を一人で回してる」

 黒川が興味なさげに言う。

「だから何だ」

 静は言い切った。

「プロデュース能力だ。計画、調整、復旧。人の動きと時間と物を管理してる。ああいうのは、点数じゃ測れない。でも仕事になる」

 佐伯が鼻で笑う。

「橘は委員長だろ。そりゃ回すだろ」

 静が首を振る。

「委員長だから回してるんじゃない。回せるから委員長をやってる。でも、委員長って肩書きは卒業したら消える。残すべきは“運営”の実績だ」

 黒川が指を止めた。

「桐生。今は小森の話だ」

「繋がってる」

 静は小森に向き直る。

「小森。お前、文化祭の準備で何してた」

 小森は目を上げない。

「……何も」

「嘘だ。廊下で見た。看板の塗り直し、誰がやった」

 小森の肩が少しだけ沈む。

「……俺。ムラが気になって」

「誰に言われた」

「誰にも」

 静が頷く。

「それが軸だ。『気になるところを直す』。地味だけど、現場で効く」

 佐伯が食ってかかる。

「それが進路にどう繋がるんだよ。そんなの、趣味だ」

 静は淡々と返す。

「趣味で終わらせない。形にする。文化祭の運営も、看板も、全部“成果物”だ。写真、工程、時間。説明できるようにする」

 黒川が机の上の書類を指で弾いた。

「説明? 面接で誤魔化すつもりか」

「誤魔化さない。説明する。できることを、できると言う」

 静は一度、息を吸って吐いた。

「橘の話をしたのは、学校が“表に出るやつ”しか評価しないからだ。橘は表に出ない。だけど回してる。小森も似てる。表で目立つのが苦手でも、現場を整える力はある」

 小森の指が止まった。縫い目を掴むのをやめた。

 黒川が静を見た。

「で? お前は何をさせたい」

 静は即答しない。教頭室の隅の鍵付きケースを見た。管理体制の監査。牽制。逃げ道を塞ぐやり方。

 静は視線を戻す。

「橘には、運営・企画職の道を見せる。イベント会社、ホール運営、制作進行、総務。現場の裏を回す仕事。いきなり就職は厳しいなら、専門で制作や舞台技術を学ぶ手もある」

 佐伯が呆れたように言う。

「文化祭で人生決めるのか」

「文化祭で“向いてるもの”が露出する。決めるのはその先だ」

 黒川が小森に向けた。

「小森は?」

 静は小森の方へ半歩寄る。

「小森も同じだ。『どこでもいい』じゃなく、『こういう現場ならやれる』にする。家を出るなら、寮付きの専門や、住み込みに近い求人もある。だが、条件は増える。覚悟も要る」

 小森の喉が動く。

「……住み込み、嫌です」

 佐伯が即座に言う。

「贅沢言うな!」

 静が佐伯を見た。目だけで止める。

「嫌なら、嫌でいい。代わりに、現実の選択肢を増やす。奨学金、給付は限りがある。貸与は返す。親と揉めるなら、福祉に繋げる必要も出る。簡単じゃない」

 黒川が頷いたように見せて、言った。

「聞こえはいい。だが時間がない。学校としては、内定三、進学二。枠を埋める。文化祭が終わったら、すぐ動けるのか」

 静は言う。

「動く。橘のログを今日から作る。小森は、今週中に“できること”の棚卸しをする。俺が面接練習もする」

 佐伯が机の上の書類を叩いた。

「じゃあヒナの推薦書類はどうすんだ。教頭が立会いだぞ。桐生、お前が書かないなら誰が――」

 黒川が佐伯を手で制した。静に向けて、淡々と告げる。

「桐生。お前は“軸”と言ったな。なら見せろ。数字で。形で。学校が納得する形で」

 静は頷いた。

「形にする。だから今、文化祭の現場を止めない。橘は裏で成果を出してる。そこを潰すと、学校の“数字”も落ちる」

 黒川の目が細くなる。

「脅しか?」

「事実だ」

 黒川はペンを置いた。

「よし。文化祭が終わるまで猶予をやる。その代わり、月曜の放課後。橘も小森も、進路室に呼べ。資料を持ってこい。写真でもログでもいい。口だけは要らない」

 静は短く答えた。

「了解」

 小森が初めて、静の方を見た。目が合って、すぐ逸れる。だが足は動かなかった。

 静が小森に言う。

「文化祭、終わったら来い。逃げるなら、逃げ方も一緒に考える。雑に逃げるな」

 小森の唇が震えて、声になった。

「……逃げ方って、何ですか」

 静は答えを急がない。

「今は、文化祭を壊さないこと。終わったら話す」

 黒川が椅子にもたれ直した。

「桐生。戻れ。現場が荒れたら、お前の責任だ」

 静は教頭室を出た。廊下に出た瞬間、体育館の歓声がまた近づく。

 スマホが震える。陸からだ。

『音響またヤバいです。橘先輩が一人で足りない。』

 静は歩幅を上げた。背中に、黒川の「数字」の匂いがまだ貼り付いている。

 体育館の搬入口が見えた。シャッターの隙間から光と熱気が漏れている。

 静はその隙間に身体を滑り込ませた。


 搬入口のシャッターの隙間から、熱気が押し返してきた。静が身体を滑り込ませると、舞台袖は相変わらず薄暗いのに、空気だけが粘ついている。

 音響卓の周りに人が固まっていた。誰も大声を出していないのに、焦りの匂いがする。

 陸が静を見つけて、手を振る代わりに顎で示した。

「先生、こっち。今、マイクが……」

 橘マリは音響卓の横に立っていた。手元のリストに指を置き、目だけで舞台と卓を往復している。頬に汗が光って、髪の生え際が少し乱れている。

「ワイヤレス、二番が死んだ。電池じゃない。受信が落ちてる」

 マリが言った。

 音響担当の男子が青い顔で首を振る。

「さっきからノイズが……俺、触ってないのに」

「触ってないなら、周り。誰が通った」

 一年生が恐る恐る手を挙げた。

「ケーブル、踏んだかも……」

「踏んだなら、謝らなくていい。踏める場所にした私が悪い」

 マリはそう言いながら、ケーブルの束を足で避け、養生テープの端を剥がした。剥がして、見て、すぐに言う。

「コネクタ、半抜け。差し直す。誰も触らないで」

「はい!」

 静はそのやり取りを、袖の影から見ていた。口を出す場面じゃない。手を出す場面でもない。

 マリが差し直すと、ノイズが消えた。舞台上の役者の声が、客席にまっすぐ届く。歓声が遅れて返ってくる。

 陸が小さく息を吐いた。

「助かった……」

 マリは返事をせず、すぐ次の指示を飛ばす。

「ケーブル、通路から外す。養生は二重。今日中は“踏めない配置”にする。誰がやる」

 音響担当が手を挙げる前に、陸が言った。

「俺やります。メモも取ってるんで」

 マリが陸を見て、短く言う。

「走らない」

「走らないっす」

「喋りすぎない」

「……はい」

 静は口元だけで笑いそうになって、やめた。

 舞台では最後の演目に入っていた。照明が落ち、スポットが中央を切り取る。客席が静かになる。静かになるほど、裏の小さな音が怖い。

 マリは進行表を見て、秒針と照らし合わせる。

「次、暗転三秒。音、フェード。……来る」

「了解」

 音響がフェーダーに指を置く。

 舞台袖の一年生が囁く。

「橘先輩、今、客席めっちゃ盛り上がってますよ」

「盛り上がるのは勝手。終わるまでは油断しない」

 一年生が「すみません」と引っ込む。

 静は袖の壁にもたれ、舞台の端だけを見る。表の拍手も歓声も、裏の彼女の呼吸に比べたら遠い。

 暗転。三秒。音が落ちる。照明が切り替わる。役者が動く。動線が詰まらない。

 何も起きない。

 その「何も」が、どれだけ難しいかを静は知っている。

 最後の台詞が決まり、音楽が上がる。客席の拍手が爆発した。体育館が揺れるみたいに鳴る。

 幕が下りる。暗転。終演。

 裏側の空気が、一気に緩んだ。誰かが「終わった……」と呟き、誰かが笑い、誰かが泣きそうな声を出す。

 マリだけが、すぐには動かなかった。

 進行表を胸に抱えたまま、舞台袖の奥へ歩く。機材ケースが積まれたさらに裏。来賓も担任も通らない、掃除用具が置かれた小さなスペース。

 静は追わない。距離を保って、その背中だけを視界に入れた。

 マリは壁に手をつき、肩で息をした。次の瞬間、喉の奥から漏れた音が笑いなのか息なのか分からない。肩が小刻みに揺れる。笑っているのに、頬を伝うものが光った。

 声は出さない。出したら、何かが崩れると知っているみたいに。

 静はそのまま、足を止めた。声をかけない。背中に言葉を投げない。ここは、言葉が邪魔になる場所だ。

 少し離れたところで、陸が機材ケースを抱えて走りかけ、マリの「走らない」を思い出して歩きに変えた。静に気づいて、近づいてくる。

「先生……橘先輩、あれ」

 静は陸にだけ小さく言う。

「見ない。今は」

 陸が足を止める。

「でも、俺、なんか……」

「分かるなら、分かるままでいい。手は動かせ」

 陸は唇を噛み、頷いて、また音響卓の方へ戻っていった。裏の片付けが始まる。誰かがガムテープを剥がす音。誰かが椅子を運ぶ音。誰かが「お疲れ!」と叫ぶ声。

 マリの背中はまだ揺れていたが、やがて肩が落ち着いた。袖で頬を拭き、鼻を鳴らさないように口で息をする。進行表を一枚めくり、何かを書き込む。終演後のチェック欄に、ペン先が小さく丸を打つ。

 静は心の中で数字を置いた。復旧一分。トラブル二件。事故ゼロ。来賓導線問題なし。今日の「成果」は、黒川が好きな形にもできる。

 ポケットのスマホが震えた。画面に黒川の名前。今度は着信ではなく、短いメッセージ。

『月曜、資料。鍵ケース確認もする』

 静は画面を消した。ため息は出さない。

 マリがふいに振り返った。静がいることに気づいて、目を細める。泣いた跡を隠さない。隠す余裕がない顔だ。

「先生」

 声は掠れていた。

 静は一歩も近づかずに言った。

「終わったな」

「……終わりました」

「ミスゼロは無理って言った」

 マリが口の端を上げる。上がるのに、目の下が濡れている。

「二件、ありました」

「復旧は早かった」

「……はい」

 静はそれ以上褒めない。褒め言葉で今日を終わらせない。

「ログ、残ってるか」

 マリが進行表を掲げた。

「相沢が秒まで書いてました。うるさいぐらい」

 遠くで陸が「聞こえてます!」と叫び、誰かに「黙って運べ!」と叱られる。

 マリが短く笑って、また目尻を拭いた。

 静は言う。

「月曜、進路室。親の話もする。運営の資料、持ってこい。今日のは“思い出”じゃなくて“実績”にする」

 マリは頷いた。頷き方が、さっきまでの指示と同じ速さだった。

「……はい。作ります」

「作れ。作ったら、見せろ。通る書き方に直す」

 マリの手が少し震えて、それでも進行表を抱え直した。

「先生、私、表に出なくても……いいですか」

 静は即答しない。舞台の裏で泣いて笑った彼女の背中を、もう一度だけ見た。

「表に出る場面は、選べ。無理に増やすな。必要なときだけ出ろ」

 マリの喉が動く。

「必要なときって」

「交渉するとき。自分の条件を言うとき。そういうときは、裏にいても伝わらない」

 マリは目を伏せて、短く言った。

「……練習します」

「練習でいい。今日みたいに、段取りを組め」

 マリが「はい」と言い、進行表を胸に当てたまま、片付けの輪へ戻ろうとした。

 その背中に、静は声をかけない。代わりに、自分のスマホを取り出し、陸の送ってきたメモの写真を開く。ログの文字がぎっしり詰まっている。

 そこへ、別の通知が割り込んだ。佐伯から。

『小森、教頭室で揉めてる。来い』

 静の指が止まる。体育館の熱気の中で、冷たい線が背中を走った。

 静はスマホを握り、舞台袖の出口へ向かった。背後で、マリの「次、ケーブルまとめて。養生剥がす順番、決めて!」が飛ぶ。

 文化祭は終わった。だが、終わっただけだ。

 静は廊下の白い光へ踏み出した。


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