魔王と配下の英雄譚

るちぇ。

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第1章 偽りの騎士

第1話 おはようございます 3

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 顔を真っ赤にして、頬を膨らませて、ズンズンと迫ってくる。それがまた可愛らしい、とは思いつつ、何だろう。この得も言われぬ恐怖感は。身の毛もよだつ感じといえばいいのだろうか。とにかく、ダラダラと嫌な汗をかき始めてしまう。

「待て、師匠。魔王様が困っているではないか」

 もの凄くありがたいことに懲りる様子もなくムラクモが割り込んで止めようとしてくれる。師匠、つまりそれはウロボロスのことだが、目上に対して全く怖気づくことなく言ってくれる。

「これは我が君の今後を、ひいては私たちの未来すら左右する重大な問題です。口を挟まないで貰えますか?」
「何を大げさなことを……師匠は一体、どのような未来を思い描いたと言うのか」
「それは勿論、我が君と愛を育んだ証! あぁ、きっと我が君によく似て、利発でカッコいい御子様になるに違いありません!」

 ムラクモがちらりとこちらを見たので、必死に首を振って否定しておいた。
俺はまだ一線を越えていない。知らない内に添い寝はしていたみたいだが、キスはおろか、手を繋いだこともない。それなのに色々と大切な過程をすっ飛ばして妊娠なんてさせてたまるか。

「そうです、何ならこれから既成事実を作ります! カルマ、フェンリス、そこを退きなさい! フィアンセは私なのですから!」
「何を言うておる。反対が空いておろう」
「そういう問題ではありません! 私は立場の話をしているのです!」

 本当にそういう問題じゃないよね。それはウロボロス、君の言い分全てに言えることだよ。その辺、わかってくれ。

「なら、そこは僕の席にさせて貰おう!」

 なぜそこで名乗りを上げる、アザレア。引っ込んでいてくれ。お前は男だ。俺と同じ側に立って幸せを感じるべき立場だろう。なんでそっちにいく。はい、俺のせいですね。本当にごめんなさい。設定文って直せるのかなぁ。

「何人たりとも我が君の隣は許しません!」
「ふむ、では両隣はいっぱいか。そうなるとワシは……」

 言いながらカルマはケルベロスから降りると、テクテクと俺の前まで歩いて来る。諦めてくれたのかと少し期待しつつ、大変に残念に思いつつ見守る。すると、俺の太ももに手をかけたかと思うと、あろうことか上に乗って座ってしまう。

「ここを頂く」

 カルマの体は小さくて股の間にすっぽりとハマってしまっている。ヤバい、この感触は理性を崩壊させてくれかねない。確かな密着による温かみが伝わってくるし、ギュッと足で挟む形だから柔らかさがこれでもかと味わえてしまう。少しだけ変態的な発言が許されるのなら、元気にならないか、それだけが心配でならない。
 あ、言っておくが、これは羞恥心以上に、身の危険を感じてのことだ。ここで万が一のことが起これば、大惨事間違い無し。血で血を洗う争いが起こりかねない気がする。
 耐えろ、俺。理性を保て。邪念を捨てろ。この世界を平穏無事に過ごしたいのなら、この一時くらい、乗り越えてみせろ。

「なら、僕は後ろを……!」

 だから、どうしてそこで名乗りを上げる。それは危険かつ救世主的な発言で、とてもじゃないが聞き逃せない。
だが、馬鹿とハサミは使いようとも言う。何を言いたいかといえば、アザレアの裸体を想像すれば冷静になれるという訳だ。この諸刃の剣を物にすれば、この難所、きっと越えられるに違いない。

「それはダメだ」

 そうは言っても、アザレアに体を許すつもりは毛頭ない。キッパリと断るのは忘れない。

「なんと、魔王様は前をお望みか!」
「言ったはずだぞ、アザレア。お前はそこで待機だ。これは厳命、そうだったな?」
「おぉ……そうでありました。このアザレア、一生の不覚であります」

 そんな大それたことじゃないけど、そう思ってくれるなら俺の貞操は守られそうだな。訂正しないでおこう。
 何はともあれ、努めて威厳ある発言をしたこともあり、少しばかり心臓の鼓動が落ち着いた気がする。中二病臭い台詞の方がマシって、この状況はどれだけ危機的な天国かわかる気もするが、そういう方向に思考を進めると墓穴を掘るだけだから止めておく。ここは一気に別の話に切り替えてしまうのが吉。

「それはそうと、なるほど、オラクル・ナイツの面々は揃った訳か。後は……」

 あの3人とメイドたちだな。そう言おうとした時、1人のメイドが現れる。メイド長の神無月だ。緑色のショートヘアーとアクアマリン色の目が特徴的で、人間の女性にとても近い外観をしている。近い、と言ったのには関節の節々を見ればわかる。彼女らは人形だ。マリオネットというアイテム的な、武器的な、ようはそういうものだ。
神無月は優雅に一礼すると、生暖かい目でこちらを見た。

「魔王様、お楽しみ中のところを失礼します」
「どこをどう見たら楽しそうなんだ?」
「失礼しました。鼻の下が伸びていましたので」

 それは男として正常な反応だ、と言おうとしたけど、また暴走される気がしてぐっと堪えた。そんなことよりわざわざ神無月だけが来たんだ。あの3人の使いでやって来たのだろう。
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