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第1章 偽りの騎士
第8話 緊急速報 4
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グッと我慢しながら何とか転移魔法を起動。一緒に村へ飛ぶと、アデルと見慣れない街に出迎えられた。
「こんにちは、魔王様。お陰さまで随分と復興が進みましたよ!」
「……あー、うん。これは街だわ、村とは言えない」
村と言われると童話の桃太郎に出て来るおじいさん、おばあさんの暮らす家がポツポツと並ぶイメージを持ってしまうんじゃなかろうか。失礼かな。だったら俺だけでもいい。要は、そんな光景を少なくとも俺は思い浮かべていたし、実際、最後に見た時はそれに街灯と公園が付いているだけだった。
でも今はどうだ。家々は急造の木造建築から煉瓦造りに改築され、道には石畳が引かれ、両端には街灯が並んでいる。それだけじゃない。シャッター付きの車庫らしき建物の窓から、トラクター的な乗り物の姿も確認できる。
現実の村にもこういう所はあるのかもしれないが、そういう土地で暮らしたことのない俺からすれば、ここはまさに街だった。アザレアの言う通りだった。
「この世界じゃこれが普通なのか?」
「技術は元々ありましたから。必要な資材や機材は……えーっと、アザレアさん、ですよね。あの方に作って頂きました」
そうか、元々技術はあったのか。科学技術もある程度は発達しているのかもしれないな。だからって、この尋常じゃない速さはやっぱりアザレアの力によるところが大きいだろうけど。
「アザレアさんは凄いです。こんな感じって伝えると、数段上のレベルのものをポンと出してくれますから。この分なら、空を飛ぶ日も遠くないと思います」
「ふむぅ……なるほどな」
アザレアは凄い、と。惜しかったな、実に惜しかった。あれで眼鏡をかけた女の子キャラなら攻略にかかっただろうに。白衣とか着せてさ、黒縁眼鏡でさ。
なんて、余計な妄想はここまでだ。今、アデルは聞き捨てならないことを言ったな。元々技術はあった、と。言っちゃ悪いが、こんな辺鄙なところで暮らす村娘がどうしてそんなことを知っているんだ。いや、ただ知っているだけならいいんだ。例えば現実世界でさ、その原理は知らなくても、電磁砲とかレーザーガンとかカッコいい武器があることは知っているだろう。そこまでいかなくても、テレビや冷蔵庫、電子レンジなんかもそうだ。当り前に活用している科学技術だが、その原理はほとんどの人が知らないはず。
話を戻そう。今のアデルの言い方は、まるで技術提供をしたように聞こえる。まさか、技術だけなら誰もが知っていて当り前な訳があるまい。これについてはアザレアに確認しなくちゃいけないな。
「ところで、村人たちの様子はどうだ?」
「それは……まぁ、その、ご覧の通りですよ」
村消失から謎の現象まで起きてまたパニックになっているかと思いきや、みんな普通に生活しているように見える。もっとも、その表情は明るくはないけど。無理に普通の生活に戻ろうと頑張ってくれているんだ。そう思いたかった。でも、今はそうは思えない。はっきり言おう。この落ち着き具体はただただ不気味だ。そうだな、酷い言い方をしてしまえば、まるでゾンビが徘徊しているようにも見える。
――アデルに気を付けろ
正確に聞き取れたかどうかも怪しいけど、聞こえた通りなら、四大将軍などという大それた奴に警戒されている。見た目は普通の村娘に過ぎないアデルが、である。
ただ、疑って距離を取るのはいつでもできる。そういう曖昧な情報は一旦除けておいて、まだ友好的な関係を保てている内に色々な情報を聞き出しておきたい。
「なぁ、どうして聖リリス帝国から攻められるんだ? 一生懸命に考えたんだけど皆目見当も付かないんだよ」
「そうですか……いえ、そうですよね。気になっても仕方ないと思います」
心当たりがあって、しかも教えてくれるのか。どういうつもりだ。俺たちを欺くために友好的に接してくれているのか、はたまた罠を張ろうと言うのか。いずれにしても初めての話を聞けるのなら構わない。その真偽は後で確認すればいい。
そんな風に悠長に構えていたのだが、それを見せられて固まってしまった。
「そ……それは……?」
アデルは首から下げている女神のペンダントを見せてくれた。両翼を広げた横姿の形をしている。念のため手に取って確認してみたが、やはり見間違いじゃない。無駄と知りつつステータスをチェックしてしまい、確定してしまった。
「これは、聖リリス帝国の四大将軍に贈られる物です」
四大将軍に贈られた、そんなことはどうでもいい。こいつは守護のアーティファクトだ。装備者が命の危険に遭った時、如何なる攻撃も必ず最低一撃は打ち消す守護精霊、イージス・スピリットを召喚できる魔法が込められている。
この魔法の特徴的なところは、その発動タイミングは任意ではなくオートであり、予期せぬ攻撃にも後れを取らない点である。そのため上級者なら誰しも習得する召喚魔法である。もう一度言おう。上級者なら、である。しかもそれをアーティファクトに込めて他人に譲渡するなんて、上級者の中でも一握りしかできまい。俺ですら面倒な手順を踏まないとできないぞ。
「……あぁ、そうなのか」
俺には難しい。でも、俺の配下には可能な奴が1人だけいる。
「こんにちは、魔王様。お陰さまで随分と復興が進みましたよ!」
「……あー、うん。これは街だわ、村とは言えない」
村と言われると童話の桃太郎に出て来るおじいさん、おばあさんの暮らす家がポツポツと並ぶイメージを持ってしまうんじゃなかろうか。失礼かな。だったら俺だけでもいい。要は、そんな光景を少なくとも俺は思い浮かべていたし、実際、最後に見た時はそれに街灯と公園が付いているだけだった。
でも今はどうだ。家々は急造の木造建築から煉瓦造りに改築され、道には石畳が引かれ、両端には街灯が並んでいる。それだけじゃない。シャッター付きの車庫らしき建物の窓から、トラクター的な乗り物の姿も確認できる。
現実の村にもこういう所はあるのかもしれないが、そういう土地で暮らしたことのない俺からすれば、ここはまさに街だった。アザレアの言う通りだった。
「この世界じゃこれが普通なのか?」
「技術は元々ありましたから。必要な資材や機材は……えーっと、アザレアさん、ですよね。あの方に作って頂きました」
そうか、元々技術はあったのか。科学技術もある程度は発達しているのかもしれないな。だからって、この尋常じゃない速さはやっぱりアザレアの力によるところが大きいだろうけど。
「アザレアさんは凄いです。こんな感じって伝えると、数段上のレベルのものをポンと出してくれますから。この分なら、空を飛ぶ日も遠くないと思います」
「ふむぅ……なるほどな」
アザレアは凄い、と。惜しかったな、実に惜しかった。あれで眼鏡をかけた女の子キャラなら攻略にかかっただろうに。白衣とか着せてさ、黒縁眼鏡でさ。
なんて、余計な妄想はここまでだ。今、アデルは聞き捨てならないことを言ったな。元々技術はあった、と。言っちゃ悪いが、こんな辺鄙なところで暮らす村娘がどうしてそんなことを知っているんだ。いや、ただ知っているだけならいいんだ。例えば現実世界でさ、その原理は知らなくても、電磁砲とかレーザーガンとかカッコいい武器があることは知っているだろう。そこまでいかなくても、テレビや冷蔵庫、電子レンジなんかもそうだ。当り前に活用している科学技術だが、その原理はほとんどの人が知らないはず。
話を戻そう。今のアデルの言い方は、まるで技術提供をしたように聞こえる。まさか、技術だけなら誰もが知っていて当り前な訳があるまい。これについてはアザレアに確認しなくちゃいけないな。
「ところで、村人たちの様子はどうだ?」
「それは……まぁ、その、ご覧の通りですよ」
村消失から謎の現象まで起きてまたパニックになっているかと思いきや、みんな普通に生活しているように見える。もっとも、その表情は明るくはないけど。無理に普通の生活に戻ろうと頑張ってくれているんだ。そう思いたかった。でも、今はそうは思えない。はっきり言おう。この落ち着き具体はただただ不気味だ。そうだな、酷い言い方をしてしまえば、まるでゾンビが徘徊しているようにも見える。
――アデルに気を付けろ
正確に聞き取れたかどうかも怪しいけど、聞こえた通りなら、四大将軍などという大それた奴に警戒されている。見た目は普通の村娘に過ぎないアデルが、である。
ただ、疑って距離を取るのはいつでもできる。そういう曖昧な情報は一旦除けておいて、まだ友好的な関係を保てている内に色々な情報を聞き出しておきたい。
「なぁ、どうして聖リリス帝国から攻められるんだ? 一生懸命に考えたんだけど皆目見当も付かないんだよ」
「そうですか……いえ、そうですよね。気になっても仕方ないと思います」
心当たりがあって、しかも教えてくれるのか。どういうつもりだ。俺たちを欺くために友好的に接してくれているのか、はたまた罠を張ろうと言うのか。いずれにしても初めての話を聞けるのなら構わない。その真偽は後で確認すればいい。
そんな風に悠長に構えていたのだが、それを見せられて固まってしまった。
「そ……それは……?」
アデルは首から下げている女神のペンダントを見せてくれた。両翼を広げた横姿の形をしている。念のため手に取って確認してみたが、やはり見間違いじゃない。無駄と知りつつステータスをチェックしてしまい、確定してしまった。
「これは、聖リリス帝国の四大将軍に贈られる物です」
四大将軍に贈られた、そんなことはどうでもいい。こいつは守護のアーティファクトだ。装備者が命の危険に遭った時、如何なる攻撃も必ず最低一撃は打ち消す守護精霊、イージス・スピリットを召喚できる魔法が込められている。
この魔法の特徴的なところは、その発動タイミングは任意ではなくオートであり、予期せぬ攻撃にも後れを取らない点である。そのため上級者なら誰しも習得する召喚魔法である。もう一度言おう。上級者なら、である。しかもそれをアーティファクトに込めて他人に譲渡するなんて、上級者の中でも一握りしかできまい。俺ですら面倒な手順を踏まないとできないぞ。
「……あぁ、そうなのか」
俺には難しい。でも、俺の配下には可能な奴が1人だけいる。
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