魔王と配下の英雄譚

るちぇ。

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第1章 偽りの騎士

第20話 守護神 3

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「やっと出て来られたか……」

 そう、俺はやっと戦場に出て来られた。安全が確保されるまでともっともらしいことを言われて、ルシファーにがんじ絡めにされていたのだ。確かに頭に血は上ったよ。ルーチェの過去を聞かされて、感動したと同時にアデルの父親に怒りを覚えたよ。でも出て来ていきなり木っ端微塵にはしないっての。分別くらいは付けられるっての、まったく。

「申し訳ありませんでした、我が君」
「いや……もう済んだことだ。過去にアデルの村を吹っ飛ばしているのは事実だし。それよりも」

 ところでルーチェの状態は、正直に言うと、目を反らしたいくらい酷い。よく生きているなって心から思えるくらいボロボロだった。いくらアイテムで回復しているとはいえ、これではまた意識を失ってしまいかねない。

「あー、ゴホン。まずは治療させて貰うかな。魔法、パーフェクト・リザレクト」

 見る見る内にルーチェの傷は癒えていき、何事もなかったように立ち上がる。肉体的な損傷がこれで確実に治るのは前回試して知っている。副作用か何かでまた昏睡状態に陥る恐れもあったが大丈夫らしい。まぁ、それもそうか。あんな死にかけでも立ち上がれるような強靭な精神力の持ち主だ。こんな大切な場面で寝たりしないだろう。

「話は全て聞かせて貰った。お前たちの過去も含めて、な。その上で俺に言えることはひとつだ。きっとお前の……いや、お前たちの痛みは理解できそうにない」
「冷たい人なんですね。それなら、私なんか放っておいても良かったのでは?」

 2人の歩んできた人生は並大抵のものではない。境遇も、背負った苦労も、それでも前に進み続けた思いの強さも、そのどれもが、俺なんかがどうこう言える内容ではなかった。だから俺は、この気持ちをそのまま伝えようと思う。

「お前たちの生涯は俺ごときに理解されていいものなのか? わかる、わかるよって言われて、素直に嬉しく思えるか? 嫌だろ、そんな同情なんて、むしろ腹立たしいだろ」
「それは……」
「お前たちを助けるためには、俺たちの力だけじゃ駄目だ。お前の力が必要だ。力を貸してくれ。俺はお前とアデルの力になりたいんだ」

 ルーチェは目頭を押さえて、嗚咽を漏らし始めた。抑えきれない涙がボロボロと、頬を伝ってこぼれ落ちていく。本当に、俺ごときじゃ理解できそうにないよ、お前たちの長く苦しい戦いは。だからこそ力になりたい。生きて貰いたい。ルーチェの言葉を借りるなら1人くらいいてもいいじゃないか。お前たちの力になる魔王がいてもさ。

「……なるほど、貴方が。いえ、貴方様が、ウロボロスに慕われる理由がわかった気がします」

 そして、ルーチェは両手を地面に着くと、深く、深く頭を下げる。よしてくれ、と止める間もなく言葉を続けてきた。

「お願いします……私たちを……助けてください!」

 何だろう、この言いようのない高揚感は。たくさん間違えてきた。何も事情を聞かずに村を吹き飛ばしたり、殺したり、助けられなかった人もいた。でも今は違う。助けられる。そう望まれて、それに応えられる。あぁ、そうか。俺はウロボロスたちと、こういうことをしたかったんだろうな。

「……確かに聞き届けた。いくぞ、ウロボロス! それに皆!」
「全ては御心のままに。誇り高きオラクル・ナイツよ、これより我らは、かの敵と正式に交戦に入ります!」

 頼もしいかけ声と共に皆は立ち上がると、陣形を組む。前衛は守護神のウロボロス。中衛は遊撃手のカルマとフェンリス、それにムラクモ。後衛に俺、そして最後方にアザレア。万全の布陣で、助けてくれというその願い、何としても叶えてやる。
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