109 / 176
第1章 偽りの騎士
第20話 守護神 3
しおりを挟む
「やっと出て来られたか……」
そう、俺はやっと戦場に出て来られた。安全が確保されるまでともっともらしいことを言われて、ルシファーにがんじ絡めにされていたのだ。確かに頭に血は上ったよ。ルーチェの過去を聞かされて、感動したと同時にアデルの父親に怒りを覚えたよ。でも出て来ていきなり木っ端微塵にはしないっての。分別くらいは付けられるっての、まったく。
「申し訳ありませんでした、我が君」
「いや……もう済んだことだ。過去にアデルの村を吹っ飛ばしているのは事実だし。それよりも」
ところでルーチェの状態は、正直に言うと、目を反らしたいくらい酷い。よく生きているなって心から思えるくらいボロボロだった。いくらアイテムで回復しているとはいえ、これではまた意識を失ってしまいかねない。
「あー、ゴホン。まずは治療させて貰うかな。魔法、パーフェクト・リザレクト」
見る見る内にルーチェの傷は癒えていき、何事もなかったように立ち上がる。肉体的な損傷がこれで確実に治るのは前回試して知っている。副作用か何かでまた昏睡状態に陥る恐れもあったが大丈夫らしい。まぁ、それもそうか。あんな死にかけでも立ち上がれるような強靭な精神力の持ち主だ。こんな大切な場面で寝たりしないだろう。
「話は全て聞かせて貰った。お前たちの過去も含めて、な。その上で俺に言えることはひとつだ。きっとお前の……いや、お前たちの痛みは理解できそうにない」
「冷たい人なんですね。それなら、私なんか放っておいても良かったのでは?」
2人の歩んできた人生は並大抵のものではない。境遇も、背負った苦労も、それでも前に進み続けた思いの強さも、そのどれもが、俺なんかがどうこう言える内容ではなかった。だから俺は、この気持ちをそのまま伝えようと思う。
「お前たちの生涯は俺ごときに理解されていいものなのか? わかる、わかるよって言われて、素直に嬉しく思えるか? 嫌だろ、そんな同情なんて、むしろ腹立たしいだろ」
「それは……」
「お前たちを助けるためには、俺たちの力だけじゃ駄目だ。お前の力が必要だ。力を貸してくれ。俺はお前とアデルの力になりたいんだ」
ルーチェは目頭を押さえて、嗚咽を漏らし始めた。抑えきれない涙がボロボロと、頬を伝ってこぼれ落ちていく。本当に、俺ごときじゃ理解できそうにないよ、お前たちの長く苦しい戦いは。だからこそ力になりたい。生きて貰いたい。ルーチェの言葉を借りるなら1人くらいいてもいいじゃないか。お前たちの力になる魔王がいてもさ。
「……なるほど、貴方が。いえ、貴方様が、ウロボロスに慕われる理由がわかった気がします」
そして、ルーチェは両手を地面に着くと、深く、深く頭を下げる。よしてくれ、と止める間もなく言葉を続けてきた。
「お願いします……私たちを……助けてください!」
何だろう、この言いようのない高揚感は。たくさん間違えてきた。何も事情を聞かずに村を吹き飛ばしたり、殺したり、助けられなかった人もいた。でも今は違う。助けられる。そう望まれて、それに応えられる。あぁ、そうか。俺はウロボロスたちと、こういうことをしたかったんだろうな。
「……確かに聞き届けた。いくぞ、ウロボロス! それに皆!」
「全ては御心のままに。誇り高きオラクル・ナイツよ、これより我らは、かの敵と正式に交戦に入ります!」
頼もしいかけ声と共に皆は立ち上がると、陣形を組む。前衛は守護神のウロボロス。中衛は遊撃手のカルマとフェンリス、それにムラクモ。後衛に俺、そして最後方にアザレア。万全の布陣で、助けてくれというその願い、何としても叶えてやる。
そう、俺はやっと戦場に出て来られた。安全が確保されるまでともっともらしいことを言われて、ルシファーにがんじ絡めにされていたのだ。確かに頭に血は上ったよ。ルーチェの過去を聞かされて、感動したと同時にアデルの父親に怒りを覚えたよ。でも出て来ていきなり木っ端微塵にはしないっての。分別くらいは付けられるっての、まったく。
「申し訳ありませんでした、我が君」
「いや……もう済んだことだ。過去にアデルの村を吹っ飛ばしているのは事実だし。それよりも」
ところでルーチェの状態は、正直に言うと、目を反らしたいくらい酷い。よく生きているなって心から思えるくらいボロボロだった。いくらアイテムで回復しているとはいえ、これではまた意識を失ってしまいかねない。
「あー、ゴホン。まずは治療させて貰うかな。魔法、パーフェクト・リザレクト」
見る見る内にルーチェの傷は癒えていき、何事もなかったように立ち上がる。肉体的な損傷がこれで確実に治るのは前回試して知っている。副作用か何かでまた昏睡状態に陥る恐れもあったが大丈夫らしい。まぁ、それもそうか。あんな死にかけでも立ち上がれるような強靭な精神力の持ち主だ。こんな大切な場面で寝たりしないだろう。
「話は全て聞かせて貰った。お前たちの過去も含めて、な。その上で俺に言えることはひとつだ。きっとお前の……いや、お前たちの痛みは理解できそうにない」
「冷たい人なんですね。それなら、私なんか放っておいても良かったのでは?」
2人の歩んできた人生は並大抵のものではない。境遇も、背負った苦労も、それでも前に進み続けた思いの強さも、そのどれもが、俺なんかがどうこう言える内容ではなかった。だから俺は、この気持ちをそのまま伝えようと思う。
「お前たちの生涯は俺ごときに理解されていいものなのか? わかる、わかるよって言われて、素直に嬉しく思えるか? 嫌だろ、そんな同情なんて、むしろ腹立たしいだろ」
「それは……」
「お前たちを助けるためには、俺たちの力だけじゃ駄目だ。お前の力が必要だ。力を貸してくれ。俺はお前とアデルの力になりたいんだ」
ルーチェは目頭を押さえて、嗚咽を漏らし始めた。抑えきれない涙がボロボロと、頬を伝ってこぼれ落ちていく。本当に、俺ごときじゃ理解できそうにないよ、お前たちの長く苦しい戦いは。だからこそ力になりたい。生きて貰いたい。ルーチェの言葉を借りるなら1人くらいいてもいいじゃないか。お前たちの力になる魔王がいてもさ。
「……なるほど、貴方が。いえ、貴方様が、ウロボロスに慕われる理由がわかった気がします」
そして、ルーチェは両手を地面に着くと、深く、深く頭を下げる。よしてくれ、と止める間もなく言葉を続けてきた。
「お願いします……私たちを……助けてください!」
何だろう、この言いようのない高揚感は。たくさん間違えてきた。何も事情を聞かずに村を吹き飛ばしたり、殺したり、助けられなかった人もいた。でも今は違う。助けられる。そう望まれて、それに応えられる。あぁ、そうか。俺はウロボロスたちと、こういうことをしたかったんだろうな。
「……確かに聞き届けた。いくぞ、ウロボロス! それに皆!」
「全ては御心のままに。誇り高きオラクル・ナイツよ、これより我らは、かの敵と正式に交戦に入ります!」
頼もしいかけ声と共に皆は立ち上がると、陣形を組む。前衛は守護神のウロボロス。中衛は遊撃手のカルマとフェンリス、それにムラクモ。後衛に俺、そして最後方にアザレア。万全の布陣で、助けてくれというその願い、何としても叶えてやる。
0
あなたにおすすめの小説
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる