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第1章 偽りの騎士
第21話 決戦 2
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そこでお願いしたウロボロスの出番である。スキル、ラウンドシールドEx、サクリファイスモード。広範囲にシールドを展開して一定量のダメージをカット、許容量を超えた場合は盾持ちが全てのダメージを肩代わりするというものだ。その性質上、余りにも強大な攻撃に使用したら自殺行為だが、ウロボロスはこの程度、と言った。そう、単純な馬鹿火力如きでは、どれだけ強力であろうともウロボロスを倒すことなどできない。
「ば……馬鹿な……あれだけの火力を……受け止めた?」
絶句しているところ悪いが良くないことは続くぞ、アデル。
まず、ゾンビの命運は尽きた。あそこまで破壊されてもなお再生できるのかもしれないが、残念ながら立つ地面が残っていない。生き返ったそばからどこまで続くかわからない奈落の底へ落下していく。そして新たな個体の出生すら許さず、生まれたそばから奈落行きであった。
これで邪魔者はいなくなった。そう、本丸の狙い撃ちが始まるのである。
「あのシールドは如何するかのう、魔王様?」
「そうだなぁ……」
アデルの周りには3種類のシールドが展開されていた。ステータスをチェックするものの、どれもがアンノウン、つまり未知のシールドらしい。闇雲に突っ込んで痛い目に遭うのはごめんだ。1枚ずつその特性を紐解きながら破壊していくか、なんて考えていると、
「じゃあ、私が行きまーす!」
元気よく手を挙げたフェンリスが駆け出していく。まだ返事もしていないのに、まるで許可でも得たかのように、ためらいの無い軽やかな身のこなしだった。欠片みたいな所がポツポツとしか残っていない地面をジャンプだけで踏破していき、そのままの勢いで大きく振りかぶる。
「一枚目、貰うよ!」
返事をしていないと言った。だが、正確には止める間も無いくらい、と言うべきだ。そのくらい速く、まさに電光石火のスピードで詰め寄ったのである。そしてこれまた止める間も無く、体重をしっかりと乗せた前傾姿勢の型で殴りかかる。
「……あれ?」
拳は弾かれた。傷ひとつ付いていない。いくら速度重視で育てたフェンリスとはいえ、あの殴打は中々の威力が出るはず。それを防ぐなんて、こりゃ、もしかすると楽しめる相手なのかもしれない。なんて内心ワクワクしながらシールドを観察していると、あることに気が付いた。
「あぁ、そういうことか」
殴った箇所だけ周囲より色が濃くなっており、攻撃が終わるや否や、たちまち周囲と同色に戻っていく。お陰で理解した。あれは攻撃を受けた個所にシールドが集中するタイプなのだ。それを証明するように、フェンリスが別の所に蹴りを入れるも、同じようにそこだけシールドが厚くなって突破できない。
「無駄だ! この流動性シールドの前に敵は無い!」
あ、教えてくれるんだ。なるほど、流動性ね。フェンリスの攻撃速度にも反応して厚くなれるシールドだ。そりゃ自慢もしたくなるだろうよ。でもお陰で解析する手間が省けた。その点については感謝しよう。
さて、どう対処したものか。この手のタイプは空間攻撃、つまり全面へ均一に高火力魔法をぶつけてやればあっさりと破壊できる。だが今に限っては駄目だ。あんなシールドを張られている状態で、シールドだけ破りつつアデルを守るのは正直骨が折れる。
「この速さの流動性……うーん、じゃあ、取って置きの方法で!」
何か策を思い付いたらしいフェンリスは、くるりとバク転しながら距離を取り、アイテムストレージから弓矢を取り出す。金色に光輝くそれはアルテミスといい、獣人属のみ装備可能な最高レアの武器だ。
その様子を見て納得してしまう。確かにその方法なら確実にあのシールドだけを破壊できるだろう。その上、アデルの度肝を抜けるに違いない。一石二鳥だ。
「フェンリス、任せたぞ!」
「はいっ! お任せください、魔王様!」
対して、アデルは高笑いを始める。恐らく俺と同じように考えていたのだろう。このシールドを突破するには全面へ均一に負荷をかけて、その上で破壊しなくてはならないと。そう考えると、弓矢はどう頑張っても一点集中の攻撃なのだから、単純な火力で上回らない限り破壊は困難であるように思える。
「これは傑作だ! この流動性シールドに対して弓矢など!」
「おい、アデル。余り、俺たちを舐めてくれるなよ?」
勿論、単純な火力で上回れないことはない。だが矢で貫いたらアデル諸共殺してしまいかねない。そういう意味でも力ずくでシールドを破壊するのは無理である。ただ、だからといって勘違いされては困る。これは妙手だ。
「やれ、フェンリス!」
「はいっ! いきます――っ!」
いっぱいに弦を引いてから矢を放つ。その瞬間フェンリスの姿が消え、一筋の稲妻がアデルの横を駆け抜ける。これまでの速さとは段違い。文字通り、雷速。落雷のような音を立ててフェンリスはアデルの背後へ。その時、矢がシールドへ接触する。
「――スキル、雷速轟拳!」
正面からはアルテミスの矢、真後ろからは超速の拳。傍目には同時攻撃。しかし僅差で拳を遅らせた。結果、矢を止めるために背後が最も薄くなってしまった所を的確に突くことができ、木っ端微塵に破壊する。
「で……電子演算速度を追い抜く程の僅かな隙を……狙い撃ちしたというのか……!? なんだ、これは。何なんだ、これは!」
「寝ている暇は無い――!」
次に出たのはムラクモだ。カチリと音が鳴ったと思いきや、既に一刀を打ち込んで納刀するところである。
「ば……馬鹿な……あれだけの火力を……受け止めた?」
絶句しているところ悪いが良くないことは続くぞ、アデル。
まず、ゾンビの命運は尽きた。あそこまで破壊されてもなお再生できるのかもしれないが、残念ながら立つ地面が残っていない。生き返ったそばからどこまで続くかわからない奈落の底へ落下していく。そして新たな個体の出生すら許さず、生まれたそばから奈落行きであった。
これで邪魔者はいなくなった。そう、本丸の狙い撃ちが始まるのである。
「あのシールドは如何するかのう、魔王様?」
「そうだなぁ……」
アデルの周りには3種類のシールドが展開されていた。ステータスをチェックするものの、どれもがアンノウン、つまり未知のシールドらしい。闇雲に突っ込んで痛い目に遭うのはごめんだ。1枚ずつその特性を紐解きながら破壊していくか、なんて考えていると、
「じゃあ、私が行きまーす!」
元気よく手を挙げたフェンリスが駆け出していく。まだ返事もしていないのに、まるで許可でも得たかのように、ためらいの無い軽やかな身のこなしだった。欠片みたいな所がポツポツとしか残っていない地面をジャンプだけで踏破していき、そのままの勢いで大きく振りかぶる。
「一枚目、貰うよ!」
返事をしていないと言った。だが、正確には止める間も無いくらい、と言うべきだ。そのくらい速く、まさに電光石火のスピードで詰め寄ったのである。そしてこれまた止める間も無く、体重をしっかりと乗せた前傾姿勢の型で殴りかかる。
「……あれ?」
拳は弾かれた。傷ひとつ付いていない。いくら速度重視で育てたフェンリスとはいえ、あの殴打は中々の威力が出るはず。それを防ぐなんて、こりゃ、もしかすると楽しめる相手なのかもしれない。なんて内心ワクワクしながらシールドを観察していると、あることに気が付いた。
「あぁ、そういうことか」
殴った箇所だけ周囲より色が濃くなっており、攻撃が終わるや否や、たちまち周囲と同色に戻っていく。お陰で理解した。あれは攻撃を受けた個所にシールドが集中するタイプなのだ。それを証明するように、フェンリスが別の所に蹴りを入れるも、同じようにそこだけシールドが厚くなって突破できない。
「無駄だ! この流動性シールドの前に敵は無い!」
あ、教えてくれるんだ。なるほど、流動性ね。フェンリスの攻撃速度にも反応して厚くなれるシールドだ。そりゃ自慢もしたくなるだろうよ。でもお陰で解析する手間が省けた。その点については感謝しよう。
さて、どう対処したものか。この手のタイプは空間攻撃、つまり全面へ均一に高火力魔法をぶつけてやればあっさりと破壊できる。だが今に限っては駄目だ。あんなシールドを張られている状態で、シールドだけ破りつつアデルを守るのは正直骨が折れる。
「この速さの流動性……うーん、じゃあ、取って置きの方法で!」
何か策を思い付いたらしいフェンリスは、くるりとバク転しながら距離を取り、アイテムストレージから弓矢を取り出す。金色に光輝くそれはアルテミスといい、獣人属のみ装備可能な最高レアの武器だ。
その様子を見て納得してしまう。確かにその方法なら確実にあのシールドだけを破壊できるだろう。その上、アデルの度肝を抜けるに違いない。一石二鳥だ。
「フェンリス、任せたぞ!」
「はいっ! お任せください、魔王様!」
対して、アデルは高笑いを始める。恐らく俺と同じように考えていたのだろう。このシールドを突破するには全面へ均一に負荷をかけて、その上で破壊しなくてはならないと。そう考えると、弓矢はどう頑張っても一点集中の攻撃なのだから、単純な火力で上回らない限り破壊は困難であるように思える。
「これは傑作だ! この流動性シールドに対して弓矢など!」
「おい、アデル。余り、俺たちを舐めてくれるなよ?」
勿論、単純な火力で上回れないことはない。だが矢で貫いたらアデル諸共殺してしまいかねない。そういう意味でも力ずくでシールドを破壊するのは無理である。ただ、だからといって勘違いされては困る。これは妙手だ。
「やれ、フェンリス!」
「はいっ! いきます――っ!」
いっぱいに弦を引いてから矢を放つ。その瞬間フェンリスの姿が消え、一筋の稲妻がアデルの横を駆け抜ける。これまでの速さとは段違い。文字通り、雷速。落雷のような音を立ててフェンリスはアデルの背後へ。その時、矢がシールドへ接触する。
「――スキル、雷速轟拳!」
正面からはアルテミスの矢、真後ろからは超速の拳。傍目には同時攻撃。しかし僅差で拳を遅らせた。結果、矢を止めるために背後が最も薄くなってしまった所を的確に突くことができ、木っ端微塵に破壊する。
「で……電子演算速度を追い抜く程の僅かな隙を……狙い撃ちしたというのか……!? なんだ、これは。何なんだ、これは!」
「寝ている暇は無い――!」
次に出たのはムラクモだ。カチリと音が鳴ったと思いきや、既に一刀を打ち込んで納刀するところである。
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