魔王と配下の英雄譚

るちぇ。

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第1章 偽りの騎士

第21話 決戦 3

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 何の指示も出していないが、この対応は正解だ。あのシールドが再展開されるリスクも考えれば速攻でケリを付けてしまいたい。

「ふ、ふん! だが、これは破れまい!」

 ムラクモは確かに切り捨てた。しかし切り裂いたはずのシールドはまだそこにある。これはもう明確。高速で再生されるシールドなのだろう。硬度こそ大したことは無いだろうが、これまた厄介なタイプである。

「流動性シールドが破れても、この即時再生シールドを貫けるものか!」

 うーん、アデルの奴め、次から次へと珍妙な物を出す割にはネタバレが早いな。そんなに俺たちよりも上に立ったと自慢したいのだろうか。馬鹿だなぁ。ただ単に強いだけの相手ですら恐れるに足らないのに、アデルに関してはそもそも強くすらない。救いようのない奴だ。

「そら、反撃といくぞ! 魔法発動、ダークネス・スピア!」

 闇色の槍が生成され、一直線にムラクモへと放たれる。防御はまだ頑張っているくせに攻撃はなんとお粗末なことか。あのレベルであれば、魔法に関しては全く不得手のフェンリスでも大したダメージにならないぞ。まして防御の硬いムラクモには何の影響も出ないだろう。
 どうするも自由だ、あんな小粒の魔法。そう思ってただ静観していると、ムラクモは納刀したまま居合いの構えを見せる。

「居合抜きなど!」
「知っているか? 居合い抜きとは本来、奇襲に備えた剣技だと」

 刹那、槍を真っ二つに切り裂いて消滅させる。それと同時に刀を上段に構え、ムラクモは必殺技の態勢へと移行していた。

「秘剣、朧桜!」

 放たれたのは一刀であり、一刀ではない。ただの一閃で何百もの斬撃を叩き込んだのである。舞い上がる。キラキラと、シールドを形成していた魔力の破片が桜の花びらのように。そして、やがて崩壊したと悟ったのか霧散していった。

「う……嘘だ……このシールドまでもが……」

 即時再生シールドの名は伊達ではないらしい。どれだけ滅多切りにされてもすぐに再生する。いや、正確には再生しているらしい、としか言いようがない。なぜなら、生憎と、あの程度の再生など意味を成していないからだ。もはや存在していない。そう言い切れる程に徹底的に、神速の剣技によって消滅させられているのだから。

「師匠!」
「吠える必要はありません。その切れ目……私も見切っています」

 ムラクモのお陰で、即時再生シールドの向こう側も把握できている。最後は極めて高い物理耐性を持つシールドらしい。全く本気でないとはいえ、ムラクモの斬撃を受けてもビクともしていない程度の硬度とはな。最初からあれを複数枚展開しておけばいいのになぁ、とか思いつつ、ウロボロスに任せることにした。

「ウロボロス、ド派手に頼むぞ?」
「畏まりました。御心のままに敵を圧倒しましょう」

 ウロボロスの防御力はとくと堪能してくれたと思う。だが、まだだ。俺がウロボロスに託したのは盾だけではない。オラクル・ナイツの剣であることも望み、攻撃、防御両面共にトップレベルまで育てた。トップレベル。いや、もう言い切ってしまおう。ドミニオンズ時代に培った全ての知識、技術をフル活用して、リアル財力を惜しげなく投入して達成したのだ。理論上最高値を。その威力、とくと味わってくれよ。

「ムラクモの刃が立たないとは、なるほど、それなりに頑丈のようですね」
「当たり前だ! 理論上最高硬度の盾だからな!」

 ウロボロスはニヤリと笑うと、足元に魔法陣を展開した。すると手にしたグングニル改12に取り付けられたブースターが着火。気流を大きく乱し、木々が根元から舞い上がる程の暴風を周囲に生み出す。

「矛盾という言葉があります。最高硬度の盾に最強の槍をぶつけた時、どちらかの絶対神話は崩れ去るでしょう」
「ふん、やってみるがいい! そして絶望しろ! 如何にお前でもこの盾は抜けん!」
「では、解答といきましょうか」

 投てきの構えを取ると、ウロボロスは渾身の力を込めてグングニル改12を放つ。その様はロケットのようである。火を噴きながら瞬く間に宙を駆けてシールドに接触。それで終わりだ。ドラマも無ければ慈悲も無い。わかっていたことだ。拮抗などあり得ないと。

「び、ビット――!」

 アデルは大量の盾を排出すると、グングニル改12へぶつけて防御を試みた。だがそれすら無駄だ。全て粉々に砕けてしまい一瞬たりとも止められない。巨体を強引に動かして何とか直撃は避けたものの、掠っただけで右半身は壊滅状態になる。

「ここは僕の出番ですね?」

 あいつの防御を完全にぶち抜いた今、残るのは仕上げ。聞いておきたいこともあるし、ここはまず抑え込んでしまいたい。
 ただ、あの巨体だ。人間サイズならウロボロスでもいいんだけど大き過ぎる。いくらステータスが高くても物理的に手が届かないのなら、抑え込みたくても指一本の自由を奪うのがやっとだろう。だからここは自由自在にゴーレムを用意できるアザレアが適任である。

「あぁ、特大のを頼むな」
「畏まりました。出でよ、巨大ゴーレム。あれを押さえ込め!」

 ポイっとカプセル状のアイテムが放り投げられると、瞬く間に、アデルと同じくらいの大きさのゴーレムが現れる。あれはゴツゴツした岩々で造られたパワータイプだ。他に特徴は無いが、パワーに関してはこれ以上のゴーレムはいないだろう。そんな剛腕の両手が伸びる。逃がさない。易々とキダを羽交い絞めにしてしまう。

「さて、これで準備が整った訳だが……」

 ここからは、これまでの破壊活動とは全く違う。この程度の敵ならこれくらいの攻撃で十分だろう、みたいな予測が全く立たない。試したことすらない、ぶっつけ本番というやつである。
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