魔王と配下の英雄譚

るちぇ。

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第2章 暁の竜神

第8話 紅竜同盟の話し合い 4

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 ローレンは立体映像器を操作する竜人たちにいくつか指示を出す。それが済むとナディアとナーガにだけ一礼してから、レヴィに代わって説明を始めた。

「まずはこの者、名をウロボロスと言います。こいつは大した戦力じゃありませんね。祭りの様子を見ても魔王にベタベタくっ付いているだけで部下の蛮行を注意もしない。典型的な無能。見た目はその、大変に見目麗しくあります。しかしなればこそ傾国の美女……つまり見た目を武器にしているだけと推測できます」
「待ってください! ウロボロスは最も危険で……!」

 反論しかけたレヴィは身を強張らせて言葉に詰まる。ローレンの話の邪魔をするなと威嚇するように、大勢の竜人たちに睨み付けられたからだ。もう認められないのだ。信用ならない者の反対意見など誰も聞こうとしない。しかも、ローレンにお情けで与えられた反論の機会すら生かせなかったのだ。なおのことどうしようもない。
 次に映し出されたのはフェンリスだった。竜神祭で射的をしている姿である。レヴィは今度ばかりは期待した。ウロボロスは何もしなかったが、この子は屋台を散々荒らし回った張本人。その功績があれば脅威と思って貰えるだろうと思ったのだ。しかしその望みは易々と絶たれる。

「この獣人は中々に芸達者と言える。荒らされた屋台は百を越えると聞いた。しかしそれだけだ。並外れたパワーがある訳でもなく魔法が使えるのでもない。曲芸師としては優れていても我らの敵にはなり得ない」
「そ……そんな……」

 基本スペック、要は高い身体能力や唯一無二の飛行能力を持つ竜人は何者にも劣らない。ローレン、いや、この場のほとんどの竜人たちはそう強く確信していた。フェンリスは小柄だ。どう見てもパワーがあるようには見えないだろう。魔法感知センサーの反応も無かったことから、あれだけ屋台を荒らしたというのに問題と捉えられなかったのだ。

「次はカルマという子どもだな。こいつは同一時刻に複数の店舗で確認されている。分身を作るのだろう。厄介ではあるが、それだけだ。腕力も見た目通り大したことが無さそうだ。荷物持ちは全て男に任せているのがその証拠」

 フェンリスに続き目に見える曲者のカルマまで軽視されてはレヴィも黙ってはいられない。小細工なしの戦場では個の質と数が勝敗を分かつ。魔王と戦うことになれば紅竜同盟の絶対的に有利に立てる点はその数しかない。しかし、ウロボロスやフェンリスは個の性能が高いだけだが、カルマは分身を作ってしまう。その数ですら迫られる恐れがあるのだ。

「だから、待って――」

 レヴィはグッと恐怖に負けないよう堪えながら、何とか声を振り絞る。しかしそれは許されなかった。周囲から次々と威圧的な誹りの言葉が飛び出す。

「黙れ、この小娘が!」
「今はローレン様が話されている! 口を慎め!」

 この明確な拒絶を受けては、レヴィはまた口を塞ぐしかなかった。
 その胸の内は悔しさでいっぱいだ。俯き、唇を噛みしめ、握った拳を震わせる。そうでもしないと怒りと悔しさでおかしくなりそうだったから。涙が溢れそうだったから。耐えなければならない。だが諦める訳にはいかない。このままローレンに主導権を握られたままでは本当に開戦することになってしまうから。

「それからアザレアという男。大量のゴーレムを使役していた奴だな。この体躯だ。肉体派ではないのは明白。では肝心のゴーレムはといえば、どれもこれも大した脅威にはならないとこちらの解析班は言っている」

 もはや無駄とわかっている。でもこれではほぼ敵の戦力など恐れるに足らないと結論が出てしまうではないか。それは駄目。滅びてしまう。紅竜同盟が。ナディアの大切な居場所が。恐れてはならない。屈してはならない。誰に何と言われようとも、こんな言い分を認めるくらいなら後ろから刺された方がマシだ。そう自分に言い聞かせてレヴィは待ったをかける。

「確かにゴーレムは然したる戦力じゃないと解析班は言っていました。でも数多く集まれば話は別です!」
「お前の頭に脳みそは入っているのか? 俺の話を止めるな。これは総意だ」
「いいえ、止めま――」

 突然後ろから肩を叩かれてレヴィは振り返る。止めたのはナディアだった。傍目にはわからない、でもレヴィにだけはわかる悲しげな目をしている。そんなものを見せられてはもう黙るしかなかった。
 ローレンの言う通りこれは彼らの総意だった。ここはあくまでも同盟。ナディアはその代表者であって国王ではない。その役目は彼らの意思を統べること。断じて彼らの意思を捻じ曲げてはならない。ただ今回のように明らかに滅亡に繋がるのだとすれば強引にでも止めることは許されないのか。いや、許されない。彼らは魔王の恐怖からの解放や雪辱を心から願っている。無理に押し込めたところでやがてもっと悪い形で爆発してしまうだろう。ならば、今がまだ悪くない状況なのだと思うしかないのだ。
 ローレンの指示で最後の映像が映し出される。魔王ユウの姿だった。ウロボロスに腕を組まれ、困ったような、それでいてどこか嬉しそうな顔をしている。

「この男こそ魔王を名乗る悪党だ。見た感じは大したことが無さそうに見えるだろう? 話してみるとこれがただの優男でな、もの凄く腰の低い野郎だ。しかしキダを倒したのは確実。こいつにだけは警戒が必要だろう。我らの力を結集し、必ずや息の根を止めようではないか」

 それだけなのかとレヴィは絶句する。たった1人だから大丈夫だろう。周りを見渡せばそんな言い分が通ってしまおうとしている雰囲気だ。誰もが既に交戦モード。ナディアが命令を下せば今すぐにでも飛び出しそうなほど、血気盛んに頷いている。
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