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第十七話 残された選択
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第十七話 残された選択
廃嫡から七日。
王宮の空気は、驚くほど滑らかだった。
会議は予定通り進み、報告は整理され、発言には間がある。
誰かが遮ることもなく、誰かが即断することもない。
順序が戻っていた。
アルベルトは、かつて自分が座っていた円卓の席を遠くから見ていた。
そこには別の椅子が置かれている。
まだ正式な後継は決まっていない。
だが空気は既に“次”へ向いている。
「元殿下」
侍従が一礼する。
「陛下よりお呼びです」
呼称に感情はない。
慣れた響きになりつつある。
玉座の間。
父王は静かに座っている。
「アルベルト」
“殿下”ではない。
「今後の身の振り方について話す」
声は低く、穏やか。
「辺境伯領での静養を勧める」
「……追放か」
「違う。退避だ」
退避。
王都から距離を置く。
表向きは療養。
実質は、影響力の切断。
「拒否は」
「できる」
だが父王は続ける。
「拒否した場合、貴族全会は再び開かれる」
意味は明白。
今回は“再考”だった。
次は違う。
完全な排除。
アルベルトは黙る。
合法。
すべて合法。
だが選択肢は狭い。
退出後、廊下でリュシエラが待っている。
「どうなさいましたか」
「辺境へ行けと言われた」
「……当然ですわ」
その言葉に、彼は目を上げる。
「当然?」
「王都は狭いのです。強い方には広い場所が必要」
彼女は微笑む。
「どこまでも私がお供します」
その声音は変わらない。
だが最近、悪夢と重なる。
夜。
アルベルトは眠れない。
目を閉じると、白い衣が浮かぶ。
返り血。
笑顔。
“殿下に従わないものは、私が処理しておきます”。
誰もそんなことは言っていない。
だが、言われた気がする。
目を開ける。
静寂。
燭台の炎。
隣国。
エリシアは新たな商業区画の設計図を確認していた。
「王都の安定化は進んでおります」
「ええ」
彼女は冷静に答える。
「安定は人を戻します」
「元王太子は辺境へ」
「影響は限定的でしょう」
彼女の物語は進み続ける。
復讐も興味もない。
構造だけを見る。
王宮。
アルベルトは庭を歩く。
噴水の水音。
護衛は最小限。
視線は少ない。
孤独は、静かに濃くなる。
かつては強さと信じていた。
迅速な決断。
迷いなき命令。
だが貴族社会は、強さより予測を好む。
規範を飛ばした瞬間から、孤立は始まっていた。
リュシエラが並ぶ。
「辺境は静かでございます」
「静かか」
「ええ。邪魔もなく」
邪魔。
その言葉に、何かが引っかかる。
邪魔だったのは誰か。
反対意見か。
沈黙か。
規範か。
夜風が吹く。
王都の灯は遠い。
彼は初めて、自分に問いかける。
合法であれば、正しかったのか。
強ければ、支持されるはずだったのか。
答えはない。
あるのは、静かな距離。
翌朝、辺境行きの準備が始まる。
公式には“療養”。
実際には“切り離し”。
王都は動き続ける。
隣国も進み続ける。
そしてアルベルトは、自分だけが止まっていることに気づき始めていた。
廃嫡から七日。
王宮の空気は、驚くほど滑らかだった。
会議は予定通り進み、報告は整理され、発言には間がある。
誰かが遮ることもなく、誰かが即断することもない。
順序が戻っていた。
アルベルトは、かつて自分が座っていた円卓の席を遠くから見ていた。
そこには別の椅子が置かれている。
まだ正式な後継は決まっていない。
だが空気は既に“次”へ向いている。
「元殿下」
侍従が一礼する。
「陛下よりお呼びです」
呼称に感情はない。
慣れた響きになりつつある。
玉座の間。
父王は静かに座っている。
「アルベルト」
“殿下”ではない。
「今後の身の振り方について話す」
声は低く、穏やか。
「辺境伯領での静養を勧める」
「……追放か」
「違う。退避だ」
退避。
王都から距離を置く。
表向きは療養。
実質は、影響力の切断。
「拒否は」
「できる」
だが父王は続ける。
「拒否した場合、貴族全会は再び開かれる」
意味は明白。
今回は“再考”だった。
次は違う。
完全な排除。
アルベルトは黙る。
合法。
すべて合法。
だが選択肢は狭い。
退出後、廊下でリュシエラが待っている。
「どうなさいましたか」
「辺境へ行けと言われた」
「……当然ですわ」
その言葉に、彼は目を上げる。
「当然?」
「王都は狭いのです。強い方には広い場所が必要」
彼女は微笑む。
「どこまでも私がお供します」
その声音は変わらない。
だが最近、悪夢と重なる。
夜。
アルベルトは眠れない。
目を閉じると、白い衣が浮かぶ。
返り血。
笑顔。
“殿下に従わないものは、私が処理しておきます”。
誰もそんなことは言っていない。
だが、言われた気がする。
目を開ける。
静寂。
燭台の炎。
隣国。
エリシアは新たな商業区画の設計図を確認していた。
「王都の安定化は進んでおります」
「ええ」
彼女は冷静に答える。
「安定は人を戻します」
「元王太子は辺境へ」
「影響は限定的でしょう」
彼女の物語は進み続ける。
復讐も興味もない。
構造だけを見る。
王宮。
アルベルトは庭を歩く。
噴水の水音。
護衛は最小限。
視線は少ない。
孤独は、静かに濃くなる。
かつては強さと信じていた。
迅速な決断。
迷いなき命令。
だが貴族社会は、強さより予測を好む。
規範を飛ばした瞬間から、孤立は始まっていた。
リュシエラが並ぶ。
「辺境は静かでございます」
「静かか」
「ええ。邪魔もなく」
邪魔。
その言葉に、何かが引っかかる。
邪魔だったのは誰か。
反対意見か。
沈黙か。
規範か。
夜風が吹く。
王都の灯は遠い。
彼は初めて、自分に問いかける。
合法であれば、正しかったのか。
強ければ、支持されるはずだったのか。
答えはない。
あるのは、静かな距離。
翌朝、辺境行きの準備が始まる。
公式には“療養”。
実際には“切り離し”。
王都は動き続ける。
隣国も進み続ける。
そしてアルベルトは、自分だけが止まっていることに気づき始めていた。
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