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第10話 王の顔、偽りの覚悟
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第10話 王の顔、偽りの覚悟
「……公爵殿を通せ」
ロネ国王の姿をしたライアーは、低く告げた。
声色は落ち着いている。いつもより一段、深い。
扉が開き、入ってきたのはリシュリュー公爵だった。
一歩進み、膝を折り、深く頭を下げる。
「陛下、ご機嫌麗しゅう」
その所作に、迷いはない。
彼は、“王の顔”を見ている。
ライアーは、玉座には座らない。
だが、玉座の前に立つ。
その位置が、最も“王らしい”ことを、彼女はすでに理解していた。
「近う」
短く命じる。
リシュリューは、顔を上げる。
その目に、一瞬だけ浮かんだ違和感。
だが、すぐに消えた。
(……違う)
彼は、直感で悟っていた。
(この“王”は、
私の知るロネ国王ではない)
だが、口には出さない。
「王太子の件、報告せよ」
「はっ」
リシュリューは、淡々と告げる。
「王太子オレンは、謹慎命令に強く反発しております。
自分は正当な王太子であり、
不当な命令であると」
「……当然であろうな」
ライアーは、嘲るでもなく言った。
「己の行いを、
正当化し続けてきた男だ」
その言葉に、リシュリューは確信した。
(やはり、この方は違う)
ロネ国王は、
王太子を“息子”として見ていた。
叱らず、諭さず、
ただ放置していた。
だが、この王は――
人間を“行い”で見ている。
「ところで……」
ライアーは、わずかに視線を落とす。
「例の“男”はいかがする」
リシュリューは、一瞬だけ言葉を選んだ。
「……世に紛れ込み、
自分こそが本物の国王であると主張しております」
「不敬者か」
「はい」
ライアーは、しばし沈黙した。
(……殺せば、終わる)
(だが、それでは――)
「生かしておくと、
トラブルの元となるな」
低い声で言う。
「……これまでの罪を、
命で贖わせるか?」
リシュリューは、息を呑んだ。
だが、次の言葉に、目を見開く。
「いや」
ライアーは、きっぱりと否定した。
「死ねば、終わりだ。
反省も、後悔も、
何一つ残らぬ」
静かな声だった。
「遠方の流刑地へ。
無期限で、だ」
「……無期限、ですか」
「雨水をすすり、
木の根でもかじって、
生涯を終えてもらおう」
残酷な言葉だ。
だが、感情はない。
ただ、因果の整理だった。
「そして……」
ライアーは、続ける。
「王太子オレンも、
同様に流刑にせよ」
リシュリューの眉が、わずかに動く。
「国王とは、
別の流刑地に」
「……孤独を?」
「ええ」
ライアーは、冷ややかに言う。
「孤独と、永遠を味わってもらいましょう」
それは、復讐ではない。
感情的な“ざまあ”でもない。
国家に不要な存在を、
国家の外へ出す。
それだけの判断。
「……承知いたしました」
リシュリューは、深く頭を下げた。
(この偽王は……)
(情ではなく、
秩序で裁く)
それができる人間は、
この国に、もう一人もいなかった。
---
公爵が下がり、
部屋に静寂が戻る。
ライアーは、ゆっくりと息を吐いた。
(私は、王ではない)
(だが……)
(この国を壊した者たちの責任を、
誰かが取らなければならない)
彼女は、窓の外を見る。
王都の灯りは、穏やかだった。
(血税を吸って太った豚に、
ふさわしい未来が、
待っているわ)
それは、怒りではない。
決着だった。
この夜、
“本物の国王”は、
すでに王ではなくなっていた。
ただ、
それに気づいていないだけで。
そして――
偽王ライアーは、
確かに、
王としての覚悟を得ていた。
「……公爵殿を通せ」
ロネ国王の姿をしたライアーは、低く告げた。
声色は落ち着いている。いつもより一段、深い。
扉が開き、入ってきたのはリシュリュー公爵だった。
一歩進み、膝を折り、深く頭を下げる。
「陛下、ご機嫌麗しゅう」
その所作に、迷いはない。
彼は、“王の顔”を見ている。
ライアーは、玉座には座らない。
だが、玉座の前に立つ。
その位置が、最も“王らしい”ことを、彼女はすでに理解していた。
「近う」
短く命じる。
リシュリューは、顔を上げる。
その目に、一瞬だけ浮かんだ違和感。
だが、すぐに消えた。
(……違う)
彼は、直感で悟っていた。
(この“王”は、
私の知るロネ国王ではない)
だが、口には出さない。
「王太子の件、報告せよ」
「はっ」
リシュリューは、淡々と告げる。
「王太子オレンは、謹慎命令に強く反発しております。
自分は正当な王太子であり、
不当な命令であると」
「……当然であろうな」
ライアーは、嘲るでもなく言った。
「己の行いを、
正当化し続けてきた男だ」
その言葉に、リシュリューは確信した。
(やはり、この方は違う)
ロネ国王は、
王太子を“息子”として見ていた。
叱らず、諭さず、
ただ放置していた。
だが、この王は――
人間を“行い”で見ている。
「ところで……」
ライアーは、わずかに視線を落とす。
「例の“男”はいかがする」
リシュリューは、一瞬だけ言葉を選んだ。
「……世に紛れ込み、
自分こそが本物の国王であると主張しております」
「不敬者か」
「はい」
ライアーは、しばし沈黙した。
(……殺せば、終わる)
(だが、それでは――)
「生かしておくと、
トラブルの元となるな」
低い声で言う。
「……これまでの罪を、
命で贖わせるか?」
リシュリューは、息を呑んだ。
だが、次の言葉に、目を見開く。
「いや」
ライアーは、きっぱりと否定した。
「死ねば、終わりだ。
反省も、後悔も、
何一つ残らぬ」
静かな声だった。
「遠方の流刑地へ。
無期限で、だ」
「……無期限、ですか」
「雨水をすすり、
木の根でもかじって、
生涯を終えてもらおう」
残酷な言葉だ。
だが、感情はない。
ただ、因果の整理だった。
「そして……」
ライアーは、続ける。
「王太子オレンも、
同様に流刑にせよ」
リシュリューの眉が、わずかに動く。
「国王とは、
別の流刑地に」
「……孤独を?」
「ええ」
ライアーは、冷ややかに言う。
「孤独と、永遠を味わってもらいましょう」
それは、復讐ではない。
感情的な“ざまあ”でもない。
国家に不要な存在を、
国家の外へ出す。
それだけの判断。
「……承知いたしました」
リシュリューは、深く頭を下げた。
(この偽王は……)
(情ではなく、
秩序で裁く)
それができる人間は、
この国に、もう一人もいなかった。
---
公爵が下がり、
部屋に静寂が戻る。
ライアーは、ゆっくりと息を吐いた。
(私は、王ではない)
(だが……)
(この国を壊した者たちの責任を、
誰かが取らなければならない)
彼女は、窓の外を見る。
王都の灯りは、穏やかだった。
(血税を吸って太った豚に、
ふさわしい未来が、
待っているわ)
それは、怒りではない。
決着だった。
この夜、
“本物の国王”は、
すでに王ではなくなっていた。
ただ、
それに気づいていないだけで。
そして――
偽王ライアーは、
確かに、
王としての覚悟を得ていた。
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