『婚約破棄された令嬢、白い結婚で第二の人生始めます ~王太子ざまぁはご褒美です~』

鷹 綾

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第21話「王都に呼び戻される?」

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伯爵領の朝は、澄んだ空気と柔らかな日差しに包まれていた。
リオネッタは温かい紅茶を口にしながら、庭で咲き誇る花々を眺めていた。
王都で過ごした息の詰まるような日々が、まるで遠い昔のように思える。

そこへ、執務室から戻ってきたクリスが、少しだけ険しい表情をして声をかけた。

「リオネッタ。……王都から正式な書状が届いた」

「王都から、ですの?」

彼は頷き、封蝋を解いたばかりの書状を手渡した。
国王印が押された、極めて格式の高い文書だった。

リオネッタは丁寧に広げ、文面を読み進める。


---

“王太子アルヴィス殿下の素行に関し、調査を行う。
関係者として、元婚約者であるリオネッタ・アスティリア嬢の証言を必要とするため、王宮へ出頭を命ずる。”


---

「……やはり、あの件が問題になったのね」

リオネッタは静かに息をついた。

王太子による“リリィへの監禁同然の扱い”
虚偽の噂の流布
予算の横領疑惑――

彼自身が招いた混乱が、ついに国王の耳に届いた。

侍女ミーナが不安そうに言う。

「リオネッタ様……行かれるのですか? 王宮は、殿下の味方ばかりでは?」

「でも、呼び出しに応じないわけにはいかないでしょう?」

リオネッタは微笑むが、ミーナの不安は消えない。

だが――その心配を払うように、クリスが毅然と宣言した。

「彼女を一人で行かせるつもりはない。伯爵家として同行する」

「え……でも、これは私への個人的な召喚で――」

「ならばなおさらだ。彼女の安全を守るのは、婚約者である僕の義務だよ」

リオネッタは一瞬、胸を打たれたように目を瞬かせた。

(“義務”と言いながら……本当に心配してくれているのが伝わってくる)

ミーナも涙ぐみながら拳を握る。

「さすがクリス様です! あの王太子なんて、もう近づけさせませんわ!」

その時、メイド長マルグリットも足早に入室してきた。

「伯爵様、リオネッタ様。王都では、すでに“リオネッタ様は無実である”という噂が広まっています。証言は、むしろ殿下の破滅に直結するでしょう」

「破滅……」

リオネッタは小さくつぶやく。

彼を憎んではいない。
ただ、あの理不尽な婚約破棄から今日まで、振り返れば胸が締め付けられるような日々だった。

(私はただ……自分の人生を取り戻したいだけ)

クリスはリオネッタの手をそっととった。

「怖がらなくていい。僕も、伯爵家も、領民も、君の味方だ」

その言葉に、リオネッタの心はふっと軽くなる。


---

そして翌日。

伯爵家公式の馬車がゆっくりと動き出す。
リオネッタは王太子との決別以来、初めて王都へ向かうのだった。

向こうで何が待ち受けているのか――
それが、王太子にとって最大の“ざまぁ”の始まりになることを、まだ彼女は知らない。


---
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