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第22話 昼寝は戦略ですか?――はい、違います
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第22話 昼寝は戦略ですか?――はい、違います
私は決めていた。
今日は――
本気で昼寝をする。
戦略ではない。
示威でもない。
抗議でもない。
ただの、昼寝。
それ以上でも以下でもない。
「マーガレット」
「はい、お嬢様」
「今日は庭に寝床を用意して」
「……はい?」
「木陰。
風が通るところ。
毛布と枕と、
あと、蜂蜜入りの紅茶」
「……承知しました」
ほんの一瞬、彼女の表情が揺れたが、
すぐにいつもの完璧な侍女の顔に戻った。
庭。
大樹の下。
木漏れ日。
芝生の上に、長椅子。
私は靴を脱ぎ、
毛布にくるまり、
ごろんと横になる。
「……最高」
鳥の声。
風の音。
遠くで噴水が静かに水を打つ音。
私は、目を閉じた。
――そして、眠った。
……はずだった。
「……あれ?」
目を開けると、
周囲が、静かすぎる。
いや、
人の気配が多い。
視線。
私は、そっと顔を横に向けた。
――使用人たちが、
遠巻きに、整列している。
「……何してるの?」
マーガレットが、一歩前に出た。
「お嬢様の“重要なご活動”を、
妨げぬようにと……」
「昼寝よ?」
「はい。
“庭での静養”と記録しております」
私は、ゆっくり起き上がった。
「……お願いだから、
ただの昼寝として扱って」
「ですが」
「指示」
マーガレットは、一瞬迷い、
深く一礼した。
「……皆、下がりましょう」
人影が、散った。
ようやく、静寂。
私は再び横になる。
(これでいい)
――十分後。
再び、気配。
今度は、重い。
「……父?」
「すまん」
公爵――父が、木の陰から現れた。
「噂になっている」
「でしょうね」
「“あえて人目のある庭で、
無防備な姿を晒すことで、
緊張を緩和している”そうだ」
「誰が考えたのそれ」
「王宮」
私は、芝生を見つめた。
「……昼寝って、
そんなに高度な行為だった?」
「この家では、な」
父は、苦笑した。
「だが、安心しろ。
今日は介入しない」
「ありがとう」
父は、踵を返す前に言った。
「……本当に、何も考えてないんだな?」
「考えてたら、
昼寝できないわ」
父は、声を立てずに笑った。
午後。
私は、ついに眠りに落ちた。
深い、深い眠り。
目を覚ましたとき、
空は、夕焼け色だった。
マーガレットが、そっと声をかける。
「お嬢様、よくお休みになられましたね」
「……うん」
「評判が……」
「聞かない」
「“あの方が眠っている間、
不思議と争いが起きなかった”そうです」
私は、毛布を握りしめた。
「……偶然よ」
「はい。
“奇跡的な偶然”と」
私は、天を仰いだ。
(もうやだ、この世界)
部屋に戻り、
日記を書く。
『今日は昼寝をした。
それだけ。
なのに世界は、
意味を探すのをやめない』
ペンを置く。
私は、結論を出した。
何もしないことは、
この世界では
最大のノイズだ。
なら――
私は、
もっと自然に、
もっと当たり前に、
何もしない。
意味が壊れるまで。
明日は、
おやつの後に、
もう一度、昼寝をする。
今度こそ、
ただの、
本当の昼寝を。
私は決めていた。
今日は――
本気で昼寝をする。
戦略ではない。
示威でもない。
抗議でもない。
ただの、昼寝。
それ以上でも以下でもない。
「マーガレット」
「はい、お嬢様」
「今日は庭に寝床を用意して」
「……はい?」
「木陰。
風が通るところ。
毛布と枕と、
あと、蜂蜜入りの紅茶」
「……承知しました」
ほんの一瞬、彼女の表情が揺れたが、
すぐにいつもの完璧な侍女の顔に戻った。
庭。
大樹の下。
木漏れ日。
芝生の上に、長椅子。
私は靴を脱ぎ、
毛布にくるまり、
ごろんと横になる。
「……最高」
鳥の声。
風の音。
遠くで噴水が静かに水を打つ音。
私は、目を閉じた。
――そして、眠った。
……はずだった。
「……あれ?」
目を開けると、
周囲が、静かすぎる。
いや、
人の気配が多い。
視線。
私は、そっと顔を横に向けた。
――使用人たちが、
遠巻きに、整列している。
「……何してるの?」
マーガレットが、一歩前に出た。
「お嬢様の“重要なご活動”を、
妨げぬようにと……」
「昼寝よ?」
「はい。
“庭での静養”と記録しております」
私は、ゆっくり起き上がった。
「……お願いだから、
ただの昼寝として扱って」
「ですが」
「指示」
マーガレットは、一瞬迷い、
深く一礼した。
「……皆、下がりましょう」
人影が、散った。
ようやく、静寂。
私は再び横になる。
(これでいい)
――十分後。
再び、気配。
今度は、重い。
「……父?」
「すまん」
公爵――父が、木の陰から現れた。
「噂になっている」
「でしょうね」
「“あえて人目のある庭で、
無防備な姿を晒すことで、
緊張を緩和している”そうだ」
「誰が考えたのそれ」
「王宮」
私は、芝生を見つめた。
「……昼寝って、
そんなに高度な行為だった?」
「この家では、な」
父は、苦笑した。
「だが、安心しろ。
今日は介入しない」
「ありがとう」
父は、踵を返す前に言った。
「……本当に、何も考えてないんだな?」
「考えてたら、
昼寝できないわ」
父は、声を立てずに笑った。
午後。
私は、ついに眠りに落ちた。
深い、深い眠り。
目を覚ましたとき、
空は、夕焼け色だった。
マーガレットが、そっと声をかける。
「お嬢様、よくお休みになられましたね」
「……うん」
「評判が……」
「聞かない」
「“あの方が眠っている間、
不思議と争いが起きなかった”そうです」
私は、毛布を握りしめた。
「……偶然よ」
「はい。
“奇跡的な偶然”と」
私は、天を仰いだ。
(もうやだ、この世界)
部屋に戻り、
日記を書く。
『今日は昼寝をした。
それだけ。
なのに世界は、
意味を探すのをやめない』
ペンを置く。
私は、結論を出した。
何もしないことは、
この世界では
最大のノイズだ。
なら――
私は、
もっと自然に、
もっと当たり前に、
何もしない。
意味が壊れるまで。
明日は、
おやつの後に、
もう一度、昼寝をする。
今度こそ、
ただの、
本当の昼寝を。
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