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第21話 何もしない抵抗、効きすぎる
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第21話 何もしない抵抗、効きすぎる
結論から言う。
市場に出ただけで、事態は悪化した。
「……どうして?」
朝食の紅茶を前に、私は真顔でつぶやいた。
「お嬢様が“自ら民の中へ降り立たれた”と」
「ただの買い物よ?」
「“沈黙の象徴が、沈黙したまま動いた”そうです」
マーガレットの説明は、相変わらず意味が分からない。
「余計な解釈を付けないで」
「世間が勝手に……」
「それが一番怖いのよ」
ロバートが追加情報を持ってきた。
「王宮が動きました」
「……何を?」
「“今後、レイラ・フォン・アーデルハイドの私的行動を、政治的判断として扱わない”という通達です」
私は、紅茶を吹きそうになった。
「それ、逆に意識してるわよね?」
「はい。
“扱わない”と宣言することで、
“扱ってきた事実”を認めた形になります」
「詰んでない?」
「半分ほど」
父が、静かに席についた。
「レイラ」
「なに」
「お前はな、
“動かないことで均衡を作り、
動くことで波紋を広げる”
稀有な存在になっている」
「それ褒めてないわよね?」
「心配している」
私は、ため息をついた。
「……私は、
静かに暮らしたいだけなの」
「分かっている」
「目立ちたくないし、
国家に影響も与えたくないし、
象徴にもなりたくない」
「だがな」
父は、少しだけ苦笑した。
「お前はもう、
“何もしないという選択を、
自分で選び取った存在”だ」
――それが、重い。
午後。
私は決めた。
さらに何もしない。
部屋に籠もり、
本を読み、
昼寝をし、
菓子を食べる。
完全な日常。
結果。
「お嬢様……」
「また噂?」
「はい。
“沈黙を貫いている”と」
「だから、それが余計なのよ!」
私が叫ぶと、
マーガレットがぽつりと言った。
「……でしたら」
「なに」
「“何もしないことを、
意識的に見せない”のはいかがでしょう」
私は、眉をひそめる。
「どういう意味?」
「何もしないことを、
あえて、
誰にも観測させないのです」
沈黙。
「……姿を消す?」
「はい。
“存在しているが、確認できない状態”」
私は、目を閉じた。
「……それ、
さらに神格化しない?」
「可能性は高いです」
「却下」
その夜。
日記を書いた。
『今日も何もしていない。
だが、世界は私に意味を押し付ける。
私はただ、
静かに菓子を食べたいだけなのに』
ペンを置き、
天井を見上げる。
(……どうしてこうなるのよ)
だが、同時に理解してしまった。
何もしないことは、
この世界では
最も理解されにくい行為なのだ。
なら。
私は、次の段階に進むしかない。
“意味を持たない行動”を、
意味が壊れるほど繰り返す。
明日は――
庭で、
本気で、
昼寝をする。
誰にも期待されないために。
誰の象徴にもならないために。
それが、
私の静かな戦いだ。
結論から言う。
市場に出ただけで、事態は悪化した。
「……どうして?」
朝食の紅茶を前に、私は真顔でつぶやいた。
「お嬢様が“自ら民の中へ降り立たれた”と」
「ただの買い物よ?」
「“沈黙の象徴が、沈黙したまま動いた”そうです」
マーガレットの説明は、相変わらず意味が分からない。
「余計な解釈を付けないで」
「世間が勝手に……」
「それが一番怖いのよ」
ロバートが追加情報を持ってきた。
「王宮が動きました」
「……何を?」
「“今後、レイラ・フォン・アーデルハイドの私的行動を、政治的判断として扱わない”という通達です」
私は、紅茶を吹きそうになった。
「それ、逆に意識してるわよね?」
「はい。
“扱わない”と宣言することで、
“扱ってきた事実”を認めた形になります」
「詰んでない?」
「半分ほど」
父が、静かに席についた。
「レイラ」
「なに」
「お前はな、
“動かないことで均衡を作り、
動くことで波紋を広げる”
稀有な存在になっている」
「それ褒めてないわよね?」
「心配している」
私は、ため息をついた。
「……私は、
静かに暮らしたいだけなの」
「分かっている」
「目立ちたくないし、
国家に影響も与えたくないし、
象徴にもなりたくない」
「だがな」
父は、少しだけ苦笑した。
「お前はもう、
“何もしないという選択を、
自分で選び取った存在”だ」
――それが、重い。
午後。
私は決めた。
さらに何もしない。
部屋に籠もり、
本を読み、
昼寝をし、
菓子を食べる。
完全な日常。
結果。
「お嬢様……」
「また噂?」
「はい。
“沈黙を貫いている”と」
「だから、それが余計なのよ!」
私が叫ぶと、
マーガレットがぽつりと言った。
「……でしたら」
「なに」
「“何もしないことを、
意識的に見せない”のはいかがでしょう」
私は、眉をひそめる。
「どういう意味?」
「何もしないことを、
あえて、
誰にも観測させないのです」
沈黙。
「……姿を消す?」
「はい。
“存在しているが、確認できない状態”」
私は、目を閉じた。
「……それ、
さらに神格化しない?」
「可能性は高いです」
「却下」
その夜。
日記を書いた。
『今日も何もしていない。
だが、世界は私に意味を押し付ける。
私はただ、
静かに菓子を食べたいだけなのに』
ペンを置き、
天井を見上げる。
(……どうしてこうなるのよ)
だが、同時に理解してしまった。
何もしないことは、
この世界では
最も理解されにくい行為なのだ。
なら。
私は、次の段階に進むしかない。
“意味を持たない行動”を、
意味が壊れるほど繰り返す。
明日は――
庭で、
本気で、
昼寝をする。
誰にも期待されないために。
誰の象徴にもならないために。
それが、
私の静かな戦いだ。
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❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
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