婚約破棄?責任を取らされた王太子はホームレスになりました

鷹 綾

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第三十一話 責を認める王

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第三十一話 責を認める王

王城の広間に集う諸侯たちは、もはや感情を露わにしてはいなかった。

怒りも失望も、すでに言葉にし尽くしている。

残るのは結論だけだった。

平民娘は処刑された。
王太子は廃嫡された。

だが王都の市場は静まらず、軍の再編も進まない。

民の不満は消えていない。

辺境伯が低く告げる。

「秩序は戻っておりません」

財務官が続ける。

「王家の威信は回復していない」

文官代表が資料を差し出す。

「税の滞納が増加。王命に対する反応も鈍化」

それは反乱ではない。

だが、信頼の喪失だ。

国王は静かにそれらを聞いている。

かつては王の一言で空気が変わった。

今は変わらない。

王の言葉が、重さを失っている。

教会代表が問う。

「陛下、王家はどこまで責を負われますか」

広間が凍る。

国王はゆっくりと視線を上げる。

「どこまで、か」

低く繰り返す。

「王太子の愚行は、彼個人のものだ」

誰も口を挟まない。

「だがそれを止められなかったのは、私だ」

沈黙。

逃げ道はない。

「平民娘の処刑は、秩序のための決断だった」

その言葉に冷ややかな空気が流れる。

「だが処刑が必要な状況を作ったのも、王家だ」

言葉は、自らを追い詰める。

王は理解している。

責任は下へは流れない。

上へ集まる。

辺境伯が静かに問う。

「陛下は、王家の統治能力をどう見ておられますか」

それは事実上の問い詰めだ。

国王は玉座の肘掛けに手を置く。

かつて揺るがなかった場所。

「王家は、国を守る存在でなければならぬ」

一呼吸置く。

「だが今、国は王家を必要としていない」

広間の空気が変わる。

決定的な言葉。

王は自らの無力を認めた。

「私が座にある限り、責任は消えぬ」

「ならば、責を明確にする必要がある」

誰も止めない。

誰も反論しない。

財務官が確認する。

「王位の扱いを、再検討なさると」

国王はうなずく。

「国家の安定が最優先だ」

それは降伏ではない。

判断だ。

王家の名を守るためではなく、国を守るため。

広間の緊張が緩む。

ようやく、前に進む道が見えたからだ。

その日の夜、王城の灯は遅くまで消えなかった。

王は一人、執務室に残る。

壁に掛けられた歴代王の肖像。

彼らは王位を守った。

だが今は違う。

守るべきは椅子ではない。

秩序だ。

「王家は、国より上にあってはならぬ」

再び、独り言のように呟く。

翌朝、文官局に指示が下る。

王位の扱いに関する正式協議の準備。

それは事実上の譲位への道。

王家は逃げなかった。

だが耐えられなかった。


王は責を認めた。

それは王家の終焉を決定づける一歩だった。
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