婚約破棄?責任を取らされた王太子はホームレスになりました

鷹 綾

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第三十二話 公然たる支持

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第三十二話 公然たる支持

王家が責を認め、王位の扱いを再検討すると表明したことで、国の空気は決定的に変わった。

もはや誰も、王城を中心とは見ていない。

王都の商会連合の会館では、有力商人たちが円卓を囲んでいた。

「王家の歳費削減が確定すれば、次に動くのは軍費だ」

「軍費が諸侯管理になれば、補給契約は公爵領経由になる」

「ならば今のうちに、公爵家と正式に長期契約を結ぶべきだ」

計算は冷静だった。

情ではない。

利益でもない。

安定だ。

王家は不安定。

公爵領は安定。

その比較が、すべてを決める。

同じ頃、辺境伯の館では各地の有力貴族が集まっていた。

誰も王家を罵らない。

だが、結論は一つ。

「国家の実務を担えるのは公爵家のみ」

「王家の監督下では、軍も財も揺らぐ」

「ならば明確に支持を示すべきだ」

これまでは暗黙だった。

水面下の協調。

だが今は違う。

曖昧さは混乱を生む。

公然と旗を立てる時が来た。

その決定は、正式な書面となる。

国家安定のため、公爵家の統治参加を全面支持。

諸侯の署名が並ぶ。

印章が重なる。

それは事実上の信任投票だった。

王城。

財務官が国王に報告する。

「有力諸侯が、公爵支持を公にいたしました」

国王は目を閉じる。

怒りはない。

驚きもない。

予測された流れだ。

「民はどう見ている」

「歓迎が多数。市場も安定傾向です」

王家が動かぬほど、国は安定する。

皮肉だが現実だった。

教会も動く。

大聖堂での祈祷にて、司祭が宣言する。

「国家の安寧のため、賢明なる統治者を支持する」

名は出さない。

だが参列者は理解する。

祈りは、すでに王家へ向いていない。

公爵領。

報告が次々に届く。

商会、諸侯、教会。

すべてが“公然と”支持を表明。

父公爵は書簡を読み終え、ゆっくりと息を吐く。

「これで後戻りはできぬ」

ヒロインは窓辺に立つ。

王都の方向を見つめる。

「彼らは自ら選びました」

強制していない。

圧力もかけていない。

王家が空洞になった。

だから支える柱を選んだ。

それだけ。

王都では、掲示板に新たな布告が貼られる。

国家安定委員会発足。

公爵家参与。

民は立ち止まり、読む。

「ようやく落ち着くな」

「公爵家なら安心だ」

歓声はない。

だが恐れもない。

王家の名はまだ残っている。

しかし実務は完全に移った。

軍は公爵裁定を待ち。

財は公爵承認で動き。

文官は公爵案を基準に書類を整える。

王家は象徴。

公爵家は中枢。

それが公然と認められた瞬間だった。

王城の高窓から、かつての旗が揺れる。

だがその下で動くのは、別の力。

公然たる支持は、もはや覆らない。

血は流れていない。

だが王座は、静かに傾いた。

国は新たな主を受け入れる準備を終えている。
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