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第40話 永遠の十七歳は、今日も笑う
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第40話 永遠の十七歳は、今日も笑う
王城大広間は、人で埋め尽くされていた。
貴族、騎士、聖職者、商人、そして城下から集まった民衆。
誰もが息を潜め、玉座前の演壇を見つめている。
重い扉が閉じられ、ざわめきが静まった。
◆ ◆ ◆
玉座の前に立ったのは、若き国王アルフェリット・ロワイヤル。
彼は一歩前に出て、はっきりと宣言した。
「――これより、国王として、国民に真実を語る」
空気が張り詰める。
「近年、帝国使節の来訪、噂の拡散、不穏な動きが相次いだ。
その中心にいた人物について、憶測が飛び交っている」
視線が、自然と広間の一角へ向かう。
そこに立つ少女――
イソファガス家の令嬢、キクコ・イソファガス。
◆ ◆ ◆
「彼女は、不老であるか」
一瞬、ざわめきが走る。
アルフェリットは、間を置いて続けた。
「――その問いに、私は答えない」
広間がどよめいた。
「なぜなら、それは国家が裁くべき問題ではないからだ」
◆ ◆ ◆
「重要なのは、彼女が“何者か”ではない。
“何をしてきたか”だ」
アルフェリットは、力強く言い切った。
「三百年前から、この国が幾度も滅びの瀬戸際に立ったとき。
名もなく、功績も語られず、ただ“被害が出なかった”という結果だけが残った」
「その裏にいた者がいる」
◆ ◆ ◆
「それが、キクコ・イソファガスだ」
広間が、静まり返った。
「彼女は、聖女と呼ばれたこともあった。
魔女と罵られた時代もあった」
「だが私は、王として断言する」
◆ ◆ ◆
「――彼女は、この国の敵ではない」
はっきりとした声。
「むしろ、この国がここまで続いてきた理由の一つだ」
◆ ◆ ◆
沈黙。
次いで、ぽつりと――
誰かが拍手をした。
一人、また一人。
やがて、大広間は拍手に包まれた。
称賛でも、信仰でもない。
理解しようとする、音。
◆ ◆ ◆
アルフェリットは、最後にこう告げた。
「彼女は象徴ではない。
神でも、道具でも、見世物でもない」
「――ただの一人の人間だ」
◆ ◆ ◆
演説が終わり、人々が退いていく。
控えの間で、キクコは壁にもたれ、深く息を吐いた。
「……あー、疲れた」
「お疲れ様」
隣に立つアルフェリットが、少し照れたように言う。
「言い切ったわね。
“不老かどうか答えない”なんて」
「君が決めた条件だ」
「そうだけど」
キクコは、ふっと笑った。
「案外、悪くなかったわ」
◆ ◆ ◆
「ねえ、アルフェリット」
「何だ」
「後悔してる?」
彼は、即答した。
「していない」
「即答はズルいわ」
「王の特権だ」
「暴走君」
「自覚している」
◆ ◆ ◆
キクコは、少しだけ空を見上げた。
三百年、生きてきた。
隠れ、別れ、守り続けた。
けれど今日、初めて――
“並んで立つ”という選択をした。
「……まあ、いいわ」
扇子を開き、いつもの笑みを浮かべる。
「永遠の十七歳でも、
たまには、未来を選んだっていいでしょう?」
アルフェリットは、静かに頷いた。
◆ ◆ ◆
こうして。
永遠の十七歳は、
神にも魔女にもならなかった。
王の妃になるかどうかも、まだ決めていない。
ただ――
今日もこの国のどこかで、紅茶を飲み、笑っている。
それで十分だと、
彼女自身が、初めて思えたのだから。
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王城大広間は、人で埋め尽くされていた。
貴族、騎士、聖職者、商人、そして城下から集まった民衆。
誰もが息を潜め、玉座前の演壇を見つめている。
重い扉が閉じられ、ざわめきが静まった。
◆ ◆ ◆
玉座の前に立ったのは、若き国王アルフェリット・ロワイヤル。
彼は一歩前に出て、はっきりと宣言した。
「――これより、国王として、国民に真実を語る」
空気が張り詰める。
「近年、帝国使節の来訪、噂の拡散、不穏な動きが相次いだ。
その中心にいた人物について、憶測が飛び交っている」
視線が、自然と広間の一角へ向かう。
そこに立つ少女――
イソファガス家の令嬢、キクコ・イソファガス。
◆ ◆ ◆
「彼女は、不老であるか」
一瞬、ざわめきが走る。
アルフェリットは、間を置いて続けた。
「――その問いに、私は答えない」
広間がどよめいた。
「なぜなら、それは国家が裁くべき問題ではないからだ」
◆ ◆ ◆
「重要なのは、彼女が“何者か”ではない。
“何をしてきたか”だ」
アルフェリットは、力強く言い切った。
「三百年前から、この国が幾度も滅びの瀬戸際に立ったとき。
名もなく、功績も語られず、ただ“被害が出なかった”という結果だけが残った」
「その裏にいた者がいる」
◆ ◆ ◆
「それが、キクコ・イソファガスだ」
広間が、静まり返った。
「彼女は、聖女と呼ばれたこともあった。
魔女と罵られた時代もあった」
「だが私は、王として断言する」
◆ ◆ ◆
「――彼女は、この国の敵ではない」
はっきりとした声。
「むしろ、この国がここまで続いてきた理由の一つだ」
◆ ◆ ◆
沈黙。
次いで、ぽつりと――
誰かが拍手をした。
一人、また一人。
やがて、大広間は拍手に包まれた。
称賛でも、信仰でもない。
理解しようとする、音。
◆ ◆ ◆
アルフェリットは、最後にこう告げた。
「彼女は象徴ではない。
神でも、道具でも、見世物でもない」
「――ただの一人の人間だ」
◆ ◆ ◆
演説が終わり、人々が退いていく。
控えの間で、キクコは壁にもたれ、深く息を吐いた。
「……あー、疲れた」
「お疲れ様」
隣に立つアルフェリットが、少し照れたように言う。
「言い切ったわね。
“不老かどうか答えない”なんて」
「君が決めた条件だ」
「そうだけど」
キクコは、ふっと笑った。
「案外、悪くなかったわ」
◆ ◆ ◆
「ねえ、アルフェリット」
「何だ」
「後悔してる?」
彼は、即答した。
「していない」
「即答はズルいわ」
「王の特権だ」
「暴走君」
「自覚している」
◆ ◆ ◆
キクコは、少しだけ空を見上げた。
三百年、生きてきた。
隠れ、別れ、守り続けた。
けれど今日、初めて――
“並んで立つ”という選択をした。
「……まあ、いいわ」
扇子を開き、いつもの笑みを浮かべる。
「永遠の十七歳でも、
たまには、未来を選んだっていいでしょう?」
アルフェリットは、静かに頷いた。
◆ ◆ ◆
こうして。
永遠の十七歳は、
神にも魔女にもならなかった。
王の妃になるかどうかも、まだ決めていない。
ただ――
今日もこの国のどこかで、紅茶を飲み、笑っている。
それで十分だと、
彼女自身が、初めて思えたのだから。
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