永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる

鷹 綾

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第39話 王の選択、少女の覚悟

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第39話 王の選択、少女の覚悟

 夜明けの光が、王城の高窓から差し込み始めていた。

 王城・執務室。
 アルフェリットは、一睡もしていない顔で地図と報告書を見つめていた。

 ――“公開の場”。

 それは、避け続けてきた最悪の選択肢であり、
 同時に、すべてを終わらせる唯一の道でもある。

     ◆ ◆ ◆

 扉が静かに開く。

「……考えはまとまった?」

 キクコが入ってきた。
 いつもの皮肉めいた笑みはなく、ただ静かな表情。

「正直に言えば……迷っている」

 アルフェリットは認めた。

「公表すれば、帝国も教会も黙ってはいない。
 だが、隠し続ければ、いずれもっと歪んだ形で暴かれる」

「ええ。三百年、見てきたもの」

 キクコは窓辺に立ち、朝焼けを見つめた。

「秘密はね、腐るのよ。
 腐った秘密は、必ず誰かを殺す」

     ◆ ◆ ◆

「……それでも」

 アルフェリットは、彼女を見る。

「君を“見世物”にするような形だけは、選ばない」

 その言葉に、キクコは小さく目を伏せた。

「ありがとう。でもね――」

 振り返り、はっきりと言う。

「私は、守られるだけの存在じゃない」

     ◆ ◆ ◆

 キクコは、扇子を机に置いた。

「公表するなら、条件がある」

「条件?」

「語るのは、あなた。
 私は“象徴”でいい」

 アルフェリットの眉が動く。

「君が語らなければ、真実は歪む」

「それでいいのよ」

 彼女は静かに微笑んだ。

「人は、真実そのものより、“物語”を信じる。
 だから、王が語る“枠”の中で、私は存在する」

     ◆ ◆ ◆

「……君は、本当にそれでいいのか」

「いい」

 即答だった。

「三百年、ずっと“誰かのために語られる存在”だった。
 今さらよ」

 だが、その声には覚悟があった。

     ◆ ◆ ◆

 アルフェリットは、深く息を吸い、頷いた。

「分かった」

 ゆっくりと立ち上がる。

「ならば、俺が語る。
 この国の王として、責任をもって」

     ◆ ◆ ◆

 その瞬間、キクコの胸に、奇妙な感情が広がった。

 安堵。
 寂しさ。
 そして――ほんの少しの、期待。

     ◆ ◆ ◆

「ねえ、アルフェリット」

「何だ」

「後悔するわよ?」

「するだろうな」

 だが彼は、迷わなかった。

「それでも選ぶ」

     ◆ ◆ ◆

 その日の正午。

 王都全域に、布告が出された。

――国王陛下より、国民への正式な告知あり。
――王城大広間にて、公開演説を行う。

 人々はざわめき、集まり始める。

 誰もが感じていた“違和感”が、
 ついに言葉になる予感を、誰もが察していた。

     ◆ ◆ ◆

 キクコは、控えの間で深呼吸をした。

「……長かったわね」

 三百年。
 隠れ、守り、嘘を重ねてきた時間。

 そして今。

 王の選択と、
 少女の覚悟が、交差する。

     ◆ ◆ ◆

 次に開く扉の向こうで、
 この国の“物語”は、決定的に書き換えられる。

 逃げ場はない。
 だが――恐怖もなかった。

 それはきっと、
 誰かと並んで立つことを選んだから。
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